REVERSE WORLD
作者/ 将軍

1
陸軍士官学校の朝は早い
「こらぁ! 候補生ども起床の時間だっ」
尾崎教官がスピーカーに向かってそう怒鳴った
(後5分だけ寝かせてくれ)
野々村は心の中でそう呟いた。しかしそんな事はお構いなしに
ドアが壊れるのではないかと思うほどの蹴りで誰かが部屋に入って来た
「起きろ、野々村候補生」
尾崎教官が入って来た
「もう少しだけでも良いので寝かせて下さい」
そう言おうとしたら、尾崎教官が首根っこ掴んで野々村を立たせた
「早く訓練着に着替えてグラウンド10周走って来い、また最下位だったら5周追加だからな」
教官は言うことだけ言ってそのまま出て行った
一息ついてから、クローゼットの中にある訓練着を出して
急いで着替え始めた
(あんなバカでかいグラウンド10周でもきついのに、また5周追加されたら体が持たねぇっつうの)
そう思いながらも訓練着に着替えるのはやめない
グラウンドに着いた頃にはもう他の候補生が走っていた
野々村もそれに混ざりながら最下位にならないように懸命に走ったが
しかし、他の候補生が終わっても野々村は、まだ走っていた
「野々村候補生、お前はまた15周走っとけ」
「教官は私に過労死しろと言いたいのですか?」
「お前のためにやってるんだ、無駄口叩いているならまた増やすぞ」
仕方なく野々村は、走る事に専念した
早朝の走りこみが終わった後は朝食の時間だった
「また、あんた無駄にグラウンド走らされていたね」
呆れた声でそう言いながら隣に座る女子
「朝は弱ぇから仕方ねぇだろ、美鈴」
この隣に座った女子の名前は紅鳥 美鈴
親同士が昔からの友達で俺たちもよく遊んでいた幼なじみだ
「けど、あんた此処に入隊した時から毎日のように繰り返してるじゃない、少しぐらい直そうと思わないの?」
「思わない」
きっぱり言うと、美鈴は頭を抑えて
「あんたって奴は昔っからそうなのよね」
と呟き、朝食である鮭定食を食べ始めた、野々村は納豆定食を食べ始めた、
午前中の訓練は銃や戦車を使用した訓練だ,尾崎教官が
「この92式歩兵用小銃は対人攻撃に優れた……」
長々と説明をしてから
「ではマガジンを一つずつ渡すからあそこにある的を狙って撃つ訓練を開始する、マガジンを使い終わったら俺に渡すように」
尾崎教官がそう告げて訓練が始まった
バンッ バンッ バンッ
92式歩兵用小銃が火を噴いた、そこから出た弾丸は的に当たっていた
野々村の順番が来たとき、尾崎教官が
「今日は全弾はずすなよ」
「いくら俺でも何回もやっているのですから大丈夫ですよ」
「だといいがな」
野々村は銃を構え、的を狙って引き金を引いた
バンッ バンッ バンッ
銃から出た弾丸は的を大きく反れていった
「ありゃ」
「だから言っただろうが」
「この銃の性能が悪いんです」
「お前以外は下手でも半分は当てれている」
尾崎教官は頭を抑えながら呆れていた、こうして午前中の訓練は終了した。
午後の訓練は主に座学でこの世界の歴史や戦術、今の戦線はどうなっているかなどの頭を使う訓練でもある
「では、この時はどのような戦術が良いか分かる人」
座学担当の堀倉教官が候補生を見回し、ある候補生の所でため息をついた
「野々村君、この時はどういう戦術が良いですか」
「zzzzzzzz]
「野々村君っ!」
バコンっ と出席簿で野々村の頭を思いきっり叩いた
「痛っ」
思わず声を上げて、頭を抑えた
「座学で寝るなと何回言わせるつもりですか?」
「すいません」
「罰として10kgの重りを持って、廊下に立っていなさい」
堀倉教官の言われたとおりに廊下に出ようとした時
「ばーっか」
小声で美鈴言われた
午後の座学の終わるベルが鳴り陸軍士官育成学校の1日が終わった
しかし、こんな日が明日も続きはしなかった

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