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第34話「届け、ジジーロンの思い イブキが掴むクリスタル」パート1
ヒビキ現在の手持ち
オーダイル、コンパン、アローラロコン、ルージュラ、ホウオウ、アクジキング
・今回の注目ポケモン
・ジジーロン
・ジャラランガ
・クロバット
・オーダイル
・今回の注目ポイント
・イブキの過去
・ジジーロンとの関係
・ジジーロンを狙う存在
・イブキに向き合うヒビキ
小さい頃の事、あの時の出会いを今も覚えている。
『返してーっ、あたしの首飾り返してーっ!』
いつも自分はいじめられていた。子供のトレーナーから意地悪をされる日々を送り、今も大事な物を取られて遊ばされる。
『ギャオーーーーーっ!!!』
その時、荘厳な竜の声が聞こえて来た。いじめっ子達は首飾りを捨てて逃げていく、飾りを拾い、涙で頬を濡らしていると、のっしと近付いている気配がして来る。振り返ると髭を生やした穏やかな顔をしている首長のドラゴンポケモンがいた。顔で頬ずりをして自分の顔を撫でて来る。それがこのポケモンとの出会いだった、でも今は・・・。
「・・・・・・」
イブキはピリピリしていた。ジャラランガ達と共に修行していたのだ。彼女にとってはこの日は屈辱的とも言える出来事が多かった。トレーナーとしての実力は申し分なくワタルとも互角に渡り合えると思っていたが・・・。
「・・・・・・」
切り株に座って頬杖を付いている少年に敗けたのだ。イブキにとっては偶然にも敗けたと思っていて本当なら自分が勝っていたのだと、それでいてちょうろうに認められたのが余計に苛立ちを覚えていたのだ。
「どういう風の吹き回しなのかしら?何で貴方がここにいるの?」
「好きで来たって訳じゃねえよ、ちょうろうさんに頼まれたからな」
「全く、ちょうろう様もどうしてこいつを・・・私は誰の助けなんかいらないのに・・・」
「おいおい、眉間に皺が入ってるぜ」
「乙女に皺は余計よ」
相変わらずの素っ気なさにヒビキは溜息を吐いた。
「なあ、ジムリーダーだからってそんなに気負わなくてもいいんじゃねえの?」
「気負う?私が?」
「何かさ、ちょっとでも自分を強く見せようとしてる気がしてさ・・・何があったかは知らねえけど、もう少し余裕ってもんを持った方がいいんじゃねえの?」
「そんな事無いわよ!余計なお世話だわ!」
「ま、そうだよね。心配してんのは俺の勝手だし・・・」
ちょうろうから言われた事、イブキは確かに強くトレーナーとしての実力も責任感も使命感もある、しかしその強さ故に弱さを見せる事が出来ず意地を張ってしまう、全てを背負い込もうとしている、一人で戦っていると言う危うさもある、彼女のために力を貸してほしいと言われた。
「あんた本当にかりかりしてんな、だったらもうひと勝負するか?」
腕を回してイブキに言う。
「勝負?」
「そうそう、少しくらいは肩慣らしにはなるだろう?」
「ふん、まぐれで勝った奴との勝負何て見えているからしないわ」
「へえそう、そうだもんな、俺と戦うなんておっかなくてしょうがないもんなあ・・・」
イブキの性格を踏まえてあえて煽る様な台詞を言ってみる。
「何ですって・・・?」
「だって俺あんたに勝ったし、俺と戦う何て怖くて無理って奴だよな」
「今の取り消しなさい、見せてやるわよ、貴方なんて私の足元にも及ばない事を」
イブキがボールを構えるとヒビキはニカッとした。
しばらくして・・・。
「全く・・・」
バトルが終わり隣同士で切り株に座っている。イブキはプンスカと怒って不貞腐れている、と言うのもまたもヒビキとのバトルに敗けてしまったのだ。ジャラランガの時はホウオウの素早い旋回に翻弄されて隙を作れず、クリムガンの時はルージュラに手も足も出なかった。
「またまぐれで敗けたわ」
「相変わらずだなあ、あんた・・・」
「そうじゃない、大体伝説のポケモンを使う何てセコイんじゃないかしら」
「べらんめえ、結果が全てだよ」
「じゃあホウオウ無しだったらどうだったの?」
「ホウオウに頼らなくても勝てていたさ」
「さあ、どうかしらね、今度は私が勝つかもよ」
「てやんでい、こっちだって敗けちゃいねえよ」
「じゃあ、もうひと勝負でもするかしら?」
「お、いいな、じゃあやってみるか」
そして数時間後・・・。
「・・・・・・」
イブキは冷や汗をかいて苦い顔をしていた。勝負の結果は言うまでもない訳である。
「はい、俺の勝ち!」
「ぐ、ぐぐぐ、ふ、ふん、私はもう大人よ、ムキに怒って取り乱すなんて事はしないのよ」
怒りを堪えて汗をかきながら作り笑顔を作る、ヒビキも別の意味で苦笑いをしていた。自分の気持ちを隠すのが下手だと。
「でも、一体どうしてよ、私だって努力しているつもりなのに・・・どうして貴方に・・・」
「まだ言ってんなあ。う〜ん・・・ちょっと待ってろ」
そう言って街の方角へ向かう。
「ちょっとどこへ行くのよ?」
「ちょいとな、いいもんを取りに行って来るから待ってな」
イブキに手を振ってイブキシティへと向かって行った。再び切り株に座って溜息を吐くイブキ。そんな時。
「何?」
何かの気配に気付いた、振り返るとそこにはあのポケモンがいた・・・。
続く・・・。