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ロストヒーロー計画(完結)/ラストヒーロー計画
作者: 彩都&Lメイドウィン ◆B/lbdM7F.E  (総ページ数: 221ページ)
関連タグ: メイドウィン小説 オリジナル仮面ライダー 仮面ライダー 原作、設定:彩都、執筆:メイドウィン 
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*199*

「…………」
 筆記試験が終了し、戦場雁陸人は部屋を出、無言で近くの椅子に座った。あぁ、完全に解けなかった。解けなかったけど、合格していたらいいなぁ……戦場雁陸人はそう思いながら、溜息を吐いた。その瞬間だった。頬に冷たい感覚が走り、びくぅっ! と体を揺らす。
「!?」
「おっすおっすぅ?」
 そう言って、現れたのは笹原大尽と花咲陸咲だった。
「元気に問題を解いたかぁ?」
「…………」
 無言で二人を見る戦場雁陸人を見て、『これは無理だったな』、『これは無理じゃな』と判断する二人。そして合否が分かる一時間後迄時間を潰す事にした。
「……それで? 二人はどうして俺の所に?」
「そんなの簡単じゃないか。私達も『カリギュラ』のヒーローだ。試験官をしないといけないんだ」
「へぇ、そうなんだ」
 二人に挟まれる様に座る戦場雁陸人の軽い返答に『うーん』と思う二人。そして笹原大尽は静かに戦場雁陸人に言う。
「……なぁ、お前さん、どうしてヒーローになりたいんだ? 海斗以外にも理由があるんじゃないか?」
「別に? 海斗さんの後を追う為以外に理由は無いです」
「……本当に?」
「……本当です」
 戦場雁陸人はそう言って、笹原大尽から受け取ったペットボトルのスポーツドリンクを両手で握る、くしゃっと音が鳴る。
「……逆に言いますが、何で俺がそれを隠さないといけないんですか?」
「そんなん簡単じゃないか? 親から逃げる為とか……」
「俺にはそんな気持ち、湧きませんね。どうせ『忌み子』として、生きてきたから……」
 戦場雁陸人がそう言うと、花咲陸咲が首を傾げる。
「『忌み子』……? どういう事だ陸人?」
「えっ? あぁ、言っていなかったね。実は俺、『大神災』の生き残りなんですよ」
「!? だ、『大神災』!? だ、『大神災』ってあの『大神災』ですか大尽さん!?」
「そう……みたいだ点々」
 静かに返答する笹原大尽に対し、驚く花咲陸咲。そして戦場雁陸人は淡々と言う。
「『大神災』で生きてきたから、俺は『忌み子』として、疎まれ、妬まれた。でも、俺は『海斗さん』っていう心の支えがあるから、此処迄立ち上がり、前に進む事が出来た。だから、俺は海斗さんの為に恩返しをしなきゃいけない。だからそれをするには手っ取り早く『ヒーローになった方が良い』んじゃないか? って考えて、今に至る……」
「成程な……と言う事は大陸に放ったパンチも努力の結晶であぁなったって事か?」
 戦場雁陸人の発言に頷きながら呟く笹原大尽に戦場雁陸人が返答する。
「いんや? あれは前からだよ。もしかして俺は異常?」
「えっ? 前から……? それって『生まれ付き』なのか……?」
 焦る笹原大尽、戦場雁陸人が淡々と答えた。
「うん。そうだよ」
「それなら異常だぁ!? 普通一般じゃねぇ!」
「へぇ、そうだったのか」
「えぇっ……大陸って、あの『巨塔』の大陸ですか?」
「あ、あぁ……実は昨日、受付嬢近くの所、何か変だろ?」
「えっ……あぁ……気にしていなかったけど」
 笹原大尽から話を聞く花咲陸咲、そして花咲陸咲は立ち上がって、二階の筆記会場近くから、受付嬢近くの所を確認する。
「実はあれ、『貫通している』んだよ。それで、誰が穴を開けたか、分かるか……?」
「えっ? 今迄の話からして陸人君じゃないんですか?」
 簡単に返答する花咲陸咲に対し、『あっ』と思い、静かに口に手を当てる。
「そう、『確かに陸人が開けた』、でも、何か可笑しくは無いか?」
「か、『カリギュラ』の壁は『最低でも20cmはある』……!」
「そう! つまり、『こんな幼い陸人の力で『カリギュラ』の壁が壊れた』って事だよ」
「なっ……!? と、とんでもない怪力……!」
 驚く花咲陸咲に対し、皿に言葉を続ける笹原大尽。
「そして何とあの『穴』、実は『外迄続いている』んだよ……!!」
「えっ……!? こ、こんな幼い肉体なのに!? り、陸人君、君は一体……!?」
 戦場雁陸人を見て驚く花咲陸咲、そんな花咲陸咲に対し、静かに戦場雁陸人は言う。
「んー? 俺は俺、戦場雁陸人だぞ? ただの『大神災』で生き残った、『人間』だ」
 戦場雁陸人がそう呟いた瞬間、『筆記試験の解答が終わりました。それでは合否発表と行きます。一階の受付前に来て下さい』とアナウンスが掛かる。
「あっ、俺、もう行かなきゃ。あっ、大尽さん、ジュース有難う」
「あ、あぁ……何時でも奢ってやるよ……」
「それじゃあ、昼食代と相談料、合否発表が終わったら払いますね」
「い、いや、いいよ……年上は自分より若い者に奢らないといけないからな……」
「そうですか。それでは、色々と有難う、二人共」
 戦場雁陸人はそう言って、その場で頭を下げ、一階の受付前へと移動する為にエスカレーターを使用する──その様子を見ていた笹原大尽と花咲陸咲。そして静かに笹原大尽が呟く。
「……一体、『戦場雁陸人』って何者なんだ……?」
「そ、そんなの『大神災』で生き残った存在、でしょう?」
「果たしてそうかな? 昨日俺は調べたんだよ。ネットで『大神災』を……」
 そう言う笹原大尽、花咲陸相は『えっ? どういう事ですか?』と発言する。
「どういう事か? そんなの簡単だよ。『『戦場雁陸人』という存在は『大神災』の被害者一覧には載っていない』存在なんだよ。つまり、『戦場雁陸人は嘘を吐いている』ってこった」
「は、はぁ? どうして嘘なんか吐く理由が……?」
「それが分かれば良いんだがな……」
 不思議がる花咲陸咲に対し、静かに溜息を吐く笹原大尽。一体お前は『何者』だ? 戦場雁陸人……? 笹原大尽はそう思いながら、エスカレーターを走って降りる戦場雁陸人を見つめる──

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