コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 恋桜 [Cherry Love] ——完結——
- 日時: 2013/09/16 17:34
- 名前: 華憐 (ID: SUkZz.Kh)
おはようございます、こんにちは、こんばんは!
華憐というものです。
今回は恋愛ものを書こうと思い、スレを立ち上げさせていただきました!
行き当たりばったりの小説になるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
ちなみに、3つほど記事を消去したことがあるため、記事番号が多少ズレております。ご了承ください。
【お客様】
・莉緒那様
一番最初にコメントをくださったお客様です♪
・くろねこ様
感動の言葉の数々、ありがとうございます☆
・あるま様
ゴマ猫樣と合作して素晴らしい作品を書き終えた素晴らしいお方です\(^o^)/
・ゴマ猫様
いつも応援して頂いているお客様です!!励みになっております(*^^*)
・修羅様
素晴らしい作品を執筆中のお客様です!!恋桜を見てくださってありがとうございます(ToT)
・夕衣様
久しぶりのお客様です♪徹くんと真奈ちゃんペアがお気に入りなのでしょうか……?
【登場人物】
>>1
【本編】
*プロローグ
視点なし >>2
*第一話...桜並木
真奈side >>3
徹side >>6
*第二話...宣戦布告
真奈side >>12
凜side >>15
徹side >>18
*第三話...思惑が交差する入学式
真奈side >>22 >>27 >>30 >>34 >>36-37
美樹side >>44 >>46-47 >>50-53
*第四話...中間テスト
真奈side >>54-59 >>61-62 >>68-72
徹side >>73
*第五話...修学旅行
真奈side >>75-76 >>79-88 >>92-94 >>96-97
>>102-103 >>105 >>108 >>110 >>112-113 >>118
*第六話...水辺に咲く花
真奈side >>120 >>122 >>124-127
徹side >>128
凜side >>129
美樹side >>130
*第七話...誰かを想う、その果てに
真奈side >>132 >>134-135
凜side >>136
美樹side >>137
徹side >>138
*第八話...お誘い
真奈side >>139-142 >>145
亮side >>148
*第九話...体育祭
真奈side >>151 >>155-159 >>161-164 >>169-173
*第十話...お月見(最終回)
真奈side >>176-177
*第零話...あとがき
作者side >>178
【番外編】
参照500突破記念
*甘いモノにはご注意を。 >>115
参照1000突破記念
*いい天気になりそうね。 >>181-183
【TALK】
>>63 >>89 >>167
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- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.68 )
- 日時: 2013/06/06 19:09
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
日曜日、飛んで月曜日…。
「おっはよー!」
「っわ!誰!?」
私は背中を思いっきり叩かれ振り向くと、そこには美樹が居た。
「美樹!…おはよ」
「ん?何か元気ないね」
「…そうかな?」
実は私、人に背中を叩かれるのが2番目に大嫌いなのだ。
「あ!分かった!背中を叩かれたのが嫌だったんでしょ!?」
「ど、どうしてそれを!?」
「あたしの情報力を嘗めないでよね!えーっと、確か…」
そう言いながら、スマホを取り出す美樹。
そして、自分でアプリを組んだのか”INFORMATION”というアプリを起動させ、私にその中身を見せてきた。
そこには、名簿順に名前が配列されており、自分が選択した人の名前を開くとその人の情報が取り出せるというシステムになっているのだ。
勿論、ロックは5重式だが。
「ほら、ココ見て!」
そう言って、私の名前の”中”にある1つの項目を指差しながら、私に見せた。
私はそこへ顔を近づけて読み上げる。
「背中を…叩かれることが大嫌い」
「っね?間違ってないでしょ?」
「…どうしてこれを知ってるの!?」
私は目を見開きながら後ずさった。
だって、これを知ってるのはたった1人の人物しかいないはずなのに…!
「真奈ー、顔に書かれてるわよ?まさかあの凜が情報を渡したのか?ってね」
「え!?嘘!?」
「本当よー。まぁ、情報提供者の名前は職務上口には出せないけどねー」
職務って、もうあなたはキャリアウーマンなんですか、と突っ込みたくなるようなセリフだ。
「もう最悪ー!」
「そう言わないでよー。これはあたしの本性なんだから。でもね」
「何?」
「真奈にとってデメリットばかりがあるわけじゃないのよ?」
「美樹がいることによって、デメリット以外に私にとってのメリットは何?」
「やっぱ、さっきのこと根に持ってるのね。まぁ、いいわ。質問に答えるわ。…それはね、逢坂の情報を無料で手に入れられるってことよ」
「…無料で?」
「えぇ、そうよ」
「…無料で?」
「どうして同じセリフを二度も言うの。そうよ」
「…信じられない!」
私は美樹の言葉を聞いて興奮するのを覚えた。
いつでも美樹に聞けば、逢坂くんのことを知れるんだ!
なんて幸せなの!
そんなことを考えて、思い切り頬が緩んでると、美樹が真顔で警告してきた。
「でも、情報は知りすぎると扱い切れなくなるの。ほどほどにしてよね」
「…うん、分かった」
私は美樹のあまりにも真剣な目に、首を縦に振ることしかできなかった。
「取り敢えず、歩き出そうよ」
その掛け声とともに歩き出した私達。
いつも私達は早めに登校しているので、少し立ち話をした所で支障はない。
「美樹!そ、それじゃあね…」
「あ、早速逢坂の情報を提供してほしいって?」
「うん」
「何か聞きたいこと、ある?」
「そうだなぁ。無難に兄弟がいるかどうか、かなぁ?」
「えーっと、いるね。高3の兄が1人。逢坂亮さん。こちらもそれはそれはイケメンという噂だよー」
「イケメン…」
「何イケメンに反応してるのよ」
「別に〜?ちょっとどんな人かなーって思っただけで…」
「言い訳にしか聞こえませーん」
「言い訳じゃないもん!」
私はそう言ってそっぽを向いた。
しかし、美樹がまた逢坂くんについての口を開き始めたので、仕方なく前に向き直った。
「ちなみにそのお兄ちゃん、超頭もいいみたいだねー。この学校より上の高校行ってるみたいだよ?」
「ここより上って、あそこしかないんじゃ…?」
「そう、まさに”あそこ”よ。日本でもトップ3には入る…泉燈高校」
「す、凄いね…」
「しかも運動神経も抜群ならしいし、モテモテならしいよ?」
「へぇ」
「でも残念なことに…」
「うん」
「彼女さんがいらっしゃるんだってー!」
「あらら」
「しかもその彼女さんの名前がなんと!」
「うん」
「藤井愛菜(ふじいまな)って言うんだって!」
「ま、まな…」
「真奈と同じよ!愛菜って!」
「そ、そうだね」
「凄いよねー!一回会ってみたいよねー!」
「うん、そうだね」
私はこの時、逢坂くんのお兄ちゃん、というだけの興味しか持っていなかった。
先に何が待っているのか、もっと早く気付くべきだったんだ。
「今度、逢坂に会わせてもらおっか!」
「え!?どうやって?」
全く、美樹はどうしてそんな突拍子もないことを言うのだろうか…。
「簡単よー。もう一回勉強会しよ!って言って、今度は逢坂の家でやらせてもらうの!そしたら、会えるでしょ?」
「なるほど…」
私は素直に感心してしまった。
その発想を勉強にでも活かせたらいいのだが…。
「そうと決まれば学校へダッシュよ!」
「ど、どうして!?」
「逢坂とかが来る前に計画を立てなきゃ!」
「立ててどうするの?」
「押し付けるの!逢坂に!そしたら断れなくなるでしょ!」
「なるほど!」
「ほらほら、早く!」
こうして私達はまだ肌寒い風を切って、学校へと走って行った。
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.69 )
- 日時: 2013/06/09 19:45
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
まだ、数人しかいない教室で一人の少女の声がこだまする。
「で!どうする!?」
美樹は私の机をパンッと軽く叩きながら私に尋ねた。
勿論、好奇心旺盛な目で。
「どうする、と聞かれてもなぁ。逢坂くんに直接聞いてみるしか…」
「そうだよねー。逢坂に頼むしかないよねー。あ、じゃあ、真奈が逢坂に頼んでよ」
「な、何で!?」
「チャンスじゃん?」
「どこが!」
「色々とー」
「…」
「じょ、冗談ですってばー、真奈さん。あたしが頼みますよー」
そう言って、少し不服そうに口を尖らす美樹。
可愛いなぁ。私も、こんな風になれればよかったのに。
「あ、そういえば!」
「今度は何?」
「いやー、あたしらってよくよく考えたら、メーアド交換してないなーと思って」
「本当だ!」
「もし真奈が良ければだけど、メーアド交換しない?」
「勿論、OKだよ。ちょっと待って。スマホ出すから」
私はそう言って、机の隣に置いてあったリュックのポケットからスマホを取り出す。
美樹は、自分の席に一端取りに戻った。
と、言っても私たちの席はそこまで遠くない。
というか、向かい合って話せるほどの近さだ。
「それじゃあ、あたしの奴出すから真奈はそれを読み込んで」
「はーい」
私は言われるがままに美樹のスマホに映し出されたQRコードを読み取った。
そして、読み取れたあとは私と美紀の立場は逆転。
今度は私がQRコードを提示する側になった。
「…はい、OK!完了したよ!」
そう言って、えへへと笑う美樹。
私もそれにつられて微笑んでしまう。
そして、十分に微笑み合ったあと、スマホをリュックに仕舞い、雑談を始める。
「そういえば、真奈、知ってる?あの剥げ親父いるじゃん?」
「剥げ親父?」
「そう。えーっと、何の教科だったかなー?んーと、あ!社会の歴史担当の先生だよ!」
「あー、あの先生ね。その人がどうしたの?」
「実はね、あの剥げ、浮気したらしいんだー」
「え?浮気?」
「そ。それでね、今奥さんと気まずいらしくって、イライラしてんのよー。だから、最近よく怒るでしょ?」
「なるほど。そういうことだったのか」
急に私の頭上から声が降ってきた。
しかし美樹は自分の情報に納得してもらえたのが嬉しかったのか、うんうんと頷きながら話している。
「でしょでしょー。ほら、やっぱあたしって凄い…」
しかし、後半の方になって違和感に気付いたのか、首を傾げながら視線を私から私の頭上へ…。
すると、そこには凜が立っていた。
「あ、浅井!?」
美樹が狼狽えた。
確かに、こういう行動、1つ1つを見てみると、恋する乙女そのものだ。
「おはよ」
と凜。
「おはよー」
と私。
「お、おはよ…」
と美樹。
美樹は顔を真っ赤にしながら俯く。
恥ずかしいのだろう。
「ん?枝下。熱あんのか?顔赤いぞ」
「な、なんでもないわよ」
「そうか」
そう言って、私の前に座る凜。
もー、凜ったらー!
どうしてそんなにあっさりしてるの!?
そんな怒りを覚えながらも、口に出さずに黙っていた。
すると、今度は私たちが待ち侘びていた人が…。
「おはよー、綾川さん!枝下さん!」
今日も朝から爽やか笑顔を振りまきながら挨拶をしてくれる人はたったひとりしかいない。
「逢坂くん!おはよー」
私の頬も自然と緩んで、満面の笑みになってしまう。
それを見てか、逢坂くんは顔を赤くして少し照れる。
そんな仕草も全部好き。
「もー、何微笑み合っちゃってんのさー」
こうやって、私達の間に入ってくる美樹も”お決まり”。
こんな風に”日常”って形成されていくものなんだね。
「あ、逢坂!」
「どうしたの?」
「来たところで悪いけど、1つ頼まれてくれないかな?」
「何?」
「実はさ、逢坂の家見に行きたいなーって話になって」
「うん」
「だから、逢坂の家で勉強会もう一回できたらいいなー、なんて思ったんだけど…駄目かな?」
少し上目遣いで頼みごとをする美樹。
何かすごく慣れてる気がする!!
私には到底身に着けられない技だなぁ!
なんて美樹の仕草に感動していると、先程から少し黙り込んでいた逢坂くんが、彼の声とは思えないくらい冷たい声で美樹に言い放った。
「それ、兄さんが目的でしょ?」
「え…?」
美樹の驚いた声が聞こえる。
しかし、逢坂くんはそれが聞こえなかったかのように、話を続ける。
「だったら、そういうのやめてほしいんだよね」
それだけ言って、一瞬だけ私を見据えたあと、自分の席へと歩いて行った逢坂くん。
美樹はというと、逢坂くんの背中を見つめながら放心状態。状況が全くつかめない様子。
私にだってよく分からない。
でも、逢坂くんの逆鱗に触れてしまったことだけは分かる。
それに、どうして去り際に私の方を見たのかも気になる…。
「ね、ねえ」
ようやく放心状態から解放されたのか、美樹が少し戸惑いながら私の肩をトントンと叩く。
私はそれに気付いて、一端思考を中断した。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないでしょ。詰まる所、勉強会は駄目だってことだよね?」
「そういうことだね」
「あー、逢坂のお兄さん見たかったよねー」
「うん、そうだね」
私はそう言って苦笑いをする。
それに対して美樹も苦笑い。
恐らく彼女も気付いているのだろう。逢坂くんの過剰なほどの反応に。
だけど、どちらともその話題については触れなかったので、先程のことは無かったかのように過ぎ去って行った。
——4限目終了後
「枝下さん!綾川さん!朝はごめんね!」
朝からずっと私たちと口をきいていなかった逢坂くんが、私達の所に謝りに来た。
「ううん、いいよ?誰だって触れられたくないことだって1つや2つあるだろうし」
「綾川さん…」
「おいおいおいおい、ちょっと待て。それだけで、お前許してもらえるとでも思ってんのか?」
凜が不機嫌そうに逢坂くんを見る。
逢坂くんはケロッとした顔で「何が?」と問う。
「何が、じゃねーよ!お前、真奈をどんだけ悲しませたのかわかってんのか?」
「え!?そうだったの!?てっきり、綾川さんは俺のコト、どうでもいいもんだと思ってたから…」
「そ、そんなことないよぉ」
私は力なく答える。
だって、そうでしょ?
逢坂くんにとって”私”という存在はそこまで大きなものではなかったと今判明したのだから。
「そ、そんなに落ち込まないで!俺、綾川さんの悲しい顔見たくないから!」
「…!」
私はそのセリフに驚いて顔をあげた。
すると、逢坂くんも自分で言ったセリフに驚いているのか目をぱちくりさせていた。
すると、すかさず凜が入ってきた。
「なんだよ、その乙ゲーみたいなセリフ。気持ち悪い」
「男の君に気持ち悪いなんて言われたくないね」
「あー、そうかよ。色男」
「俺は色男じゃないよ。何度も言うけど…」
こうしていつもの2人の口喧嘩が始まった。
教室の中でお弁当を広げている人も、それを肴として楽しんでいるようにも見える。
こりゃあ、1-Bの名物だねー!
何てことを思いながら。
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.70 )
- 日時: 2013/06/09 20:12
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
そんなこんなで気付けば中間考査当日となっていた。
そして朝から美樹は
「真奈ー!どーしよー!あたし、他の教科、何の勉強もしてないよー!」
と、私に抱きついてくる感じで…。
「美樹、もうしょうがないよ。そこは授業中にやったことを思い出してやるしかないよ」
「もっとフォローしてよ…」
「フォローのしようがないなぁ。えーっと…」
「馬鹿正直に答えなくてよろしい」
「え?」
私が会話を理解できないでいると、後ろから声を掛けられた。
この声は凜だね。
「おはよ」
「おはよ、凜」
「おはよー!あ、浅井!浅井は勉強した?」
「は?テスト勉強ってことか?」
「うん、そう!」
そう言って、期待に目を輝かせる美樹。
しかし、彼はそんな彼女を見て憐みの色を含んだ目で見下ろしながら言った。
「俺が勉強してないわけねーだろ?」
そして、そのまま立ち去って行った。
美樹は凜の言葉に頭を抱えて蹲ってしまった。
「うわー、終わりだー!ついに終わりだー!」
なんて叫びながら。
しかし、そんな叫びを聞いても時間は冷酷だ。
刻々と秒針は進んでいき、いつの間にか私達は着席し、妙な緊張感を味わっていた。
何の音も聞こえない教室。
誰の息遣いも聞こえてこない。
聞こえてくるのは遠くの方で先生であろう人のスリッパが廊下を歩く音だけ。
やがて、先生の「始め!」の合図で一斉に問題用紙を開き、解答用紙に学年と名前を記入していく私達生徒。
そして、問題を解き始める。
今日の1時限目は国語Ⅰ。
いきなりハードなものが来たものだ。
2時限目は数学Ⅱ。
これは、大分前から問題を添削していたので、難なくクリア。
3時限目は物理。
最後の集中力が切れる頃になぜ持ってくる?と疑問を抱いてしまう教科だ。
——1日目の試験終了後
「ま、真奈。あたしは今日、死亡する」
「出来栄えが悪かったんだね」
「…うわーん」
そう言って、泣きつく美樹。
しかし、私には励ましの言葉が見つからない。
「ごめんね。何も言えなくて。私、こういうの慣れてなくって」
そう言って、力なく私が笑うと美樹は顔をあげながら
「大丈夫よ!そんなこと、気にしなくていって!あたしは真奈が隣に居てくれればそれで十分だから!」
と言ってくれた。
本当に、美樹は優しい。
もし彼女の心の中に闇があったのだとしても、私はそれを受け入れよう。
私は彼女の全てを受け止めたい。
そう決意した瞬間だった。
「ん?どうしたの、真奈?ぼーっとしちゃって。あ、また逢坂くんのこと考えてたんでしょー?」
「ち、違うよ」
「じゃあ、どうして動揺するの?」
「まさかそんなことを言われるとは思って」
「はい、考えてたねー。絶対考えてた!」
…前言撤回しようかな?
「ま、とにかく今日は帰って明日に備えないとねー!」
そんなことを呑気にいながら鞄を手に持った美樹。
私もそれに倣って鞄を背負う。
「よし、帰ろう!」
——こうして4日間続いた中間テストは終わりを告げた。
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.71 )
- 日時: 2013/06/09 20:28
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
「テスト返しするぞー」
今日は、毎時間、そう言いながら各教科の先生が教室に入ってくる。
その度に皆の表情には緊張が走った。
ちなみに3時限目の今は、数学Ⅱのテスト返しだ。
「名簿順で行くぞー。逢坂ー浅井ー綾川ー石島ー…」
こんな風にして名前を呼ばれては皆はテストを受け取りに行く。
そして、緊張しながら点数が掛かれている部分だけをチラリと見る。
その瞬間に、喜ぶ人と嘆く人に分かれる。
1-Bはほとんどの者が嘆いていた。
そんな様子を見て、先生は苦笑い。
しかし、すぐに先生は顔を引き締めた。
「いいか、皆。よく聞け。今日の昼休みに”張出”がある。それをよく見るんだ」
「どうしてですかー?」
後ろの方の席の男子が挙手しながら質問する。
すると、先生はふっと笑いながら答えた。
「このクラスの中に学年トップスリーがいるんだよ」
「…えぇ!?」
教室中にどよめきが起こる。
私も興味を示した。
「一体、誰なんだろう…?」
私がそう呟くと、凜が振り向きざまに前の席を指した。
「えーっと、それはつまり逢坂くんってこと?」
「そういうこと。絶対こいつがトップだろ。だって、あいつの数Ⅱの点数見てみろよ?」
私は言われるがままに身を乗り出して逢坂くんの答案を見る。
ま、丸しかない!?
ていうか、間違えてない!?
「てことは…まさか」
「そのまさかなんだよなー。こいつ満点だぜ?」
そう言って、笑う凜。
確かに笑うしかないかも。
「ちなみにお前は何点だったんだ?」
「えー、嫌だよ。言いたくない」
「なんだよ、それ」
少し不機嫌になる凜。
「わかった。じゃあ、凜も見せてくれたら私のも見せる」
「OK。それじゃあ、交換だ」
私達はそれぞれの答案を交換した。
そして、同時に開く。
「え?おま、え?」
凜が困惑気味に私の答案をまじまじと見る。
私も凛の答案を見る。
凜の点数は98点だった。
私の点数はというと…
「お前、99点だったんだな。あとちょっとで満点じゃねーか」
「凜だってそうじゃない」
「2点の差は大きい」
そう言って、溜め息を吐きながら私の答案を返してくる凜。
負けたのが悔しかったのだろうか?
頭を掻きながら問題と自分の答案を見比べている。
そして暫くすると、自分のケアレスミスに気が付いたのか「あっ!」という小さな呻き声と共に、物凄く悔しそうな顔をしているのが見えた。
そういうとこ、昔から変わらないよね。
そんなことを思いながら彼の後姿を見ていた私だった。
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.72 )
- 日時: 2013/06/10 18:05
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
——食堂にて
「聞いてよ、真奈!」
美樹が常に学生に人気の”日替わり定食”を前にしながら、口を尖らせて言う。
私はというと、持参のお弁当だ。
いつも自分で作っている。
「どうしたの?」
「あたしの数Ⅱ…」
「うん」
「死んだ…」
「ポテトチップスはお供えしてあげる」
「そーじゃないでしょ!」
美樹のそんな的確な突っ込みに安心感を覚えた。
「で、何点だったの?」
「聞きたい?」
「うん、聞きたい」
「しょーがないなぁ?じゃあ、教えてあげる。あたしの点数は…89点でした!」
「全然悪くないじゃん!」
「でしょ?死んだってのはあたしの喜びを隠すためよ!私の周り皆…逢坂は除くけど、そのほかは60点台だったのよー」
「そ、そうだったんだ」
私は美樹のあまりにも凄い勢いに負けそうになっていると、美樹が自ら墓穴を掘るような発言を…。
「ちなみに真奈は何点だったの?」
そうやってにっこり微笑まれると、私が点数を告げた次の瞬間の行動と表情が怖いんだけどなぁ。
なんてことは言えるわけもないので、言うしか道は残されていなかった。
「私の数Ⅱの点数は…99でした」
「…へ?」
美樹はナニソレ?オイシイノ?とでも聞きたそうな目で私を見てきたかと思えば、今度は手に握っていたお箸の先で皿をカンカンとたたき始めた。
「ですよねー。ですよねー。知ってましたよ?真奈さんが超お勉強ができることくらい。でもねーさすがにねー、あたしの数Ⅱがねー、馬鹿にされたようにしか思えないんだよねー。そりゃねー、あたしがねー妙な自信を持ちながら真奈に聞いちゃったのが悪いんだけどねー」
と永遠に続きそうな愚痴を言い出した。
私はそれを見て、苦笑しながらもコメントをすることはなかった。
いや、コメントできなかったのほうが正しいかな。
だって、今の私が美樹になんと声を掛けても嫌味にしか聞こえないだろうから。
「はぁ、何かもう、疲れた」
愚痴り終えたのか、美樹はそう言って、机に突っ伏した。
いつの間にか2人とも完食していた。
「よし、それじゃあ、そろそろ食堂は出ますか」
美樹のその掛け声とともに立ち上がり、私達は食堂を後にする。
勿論、美樹はちゃんとトレー等を返却口に返却しに行ったが。
「さーて、何する?恋話でもする?」
美樹の提案に私は目を輝かせながら答える。
「I'd like to!!」
「どうしてそこ英語?」
「次の授業が英語…文法のほうだから」
「そうだったっけ!?うっそー。そんじゃあ、それもまたテスト返ってくるじゃん!」
「だね」
「あー、もう!真奈に理由なんて聞くんじゃなかった!余計に暗い気持ちになった」
「あはは」
「…それだけかい!」
そんな会話をしながら私達の足は自然と1-Bへと向かう。
こういう時って大概は屋上に行くのだろうけれど、春って夏よりも紫外線が多いらしいから…。
メラニンが増えたら、シミになっちゃうしね!という訳で教室でしゃべる。
「うわ!人、少ない!」
美樹が教室の扉を開けての第一声はそれだった。
「確かに、人少ないね」
そう相槌を打ちながら私も教室中を見渡す。
本当に3人しか人がいなかった。
1人は本に熱中しており、1人は机に突っ伏しており、1人はヘッドホンで音楽を聴いていた。
「…なんかこの学校って自由よね」
「そう?」
美樹が苦笑いした理由もよく分からずに、私は答えると、適当に近くにあった椅子に腰かけた。
美樹もそれに倣って椅子に腰かけた。
「あ、なにはともあれ、最近はどう?」
「最近?そーだなー。特には。というか、メーアドすらも交換してなよ」
「え!?そうなの!?なんで!?」
「だって、恥ずかしいじゃん」
恐らく今の私の顔は真っ赤に染まっていることだろう。
だって、美樹がニヤニヤしているのだもの。
「そういう美樹はどうなの?」
「何が?」
「メーアド」
「あぁ!それは大分前から交換済み」
「え?そうなの!?」
「うん。だって、あたしら中学の時からの付き合いだよ〜?」
「そういえば、そう、だね」
私はその言葉に、笑みを浮かべながらも心のうちに寂しさをひしひしと感じた。
私には、凛と3年間ものブランクがあるんだね。
美樹の恋は応援したいはずなのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう?
…あぁ、そうか。
幼馴染の特権である”時間共有”を美樹に奪い去られたような錯覚を感じたのか。
本当、私って最低。
私はそんな黒い気持ちと葛藤しながら悶えていると、美樹が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
「…ううん、何でもない」
「そっか」
こういうところが、私は好き。
今までの友達って何かあるたびにどんちゃん騒ぎでそれはもう落ち着けるのが大変なくらいだった。
それに比べて美樹は意外とあっさりしている。
そんなところが付き合いやすい所だし、美樹と一緒にいたいと思う1つの理由だと思う。
「そうえいば!今思い出したんだけど!」
「うん、何?」
「逢坂のお兄さん、どうやって見よ!?」
「あはは、またそれね」
「何よー?」
「別にー」
「まぁ、いいけど。それにしても、あの時の逢坂は怖かったなぁ」
「うん」
「視線だけで人を殺せそうな目だった」
「あはは、言い過ぎだよ」
「ううん、過言ではないね。きっと、余裕がなかったんだね、逢坂にも」
「どういうこと?」
私は美樹の言った意味が分からず、首を傾げる。
すると、美樹は「やっぱ、何でもない!」と言って、話題転換をした。
一体、美樹は何を知っているのだろうか?
逢坂くんはどうしてあんなにも怒ったような顔をしたのか…?
私の心の中に疑問が積もるばかりの中間テスト開けだった。
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