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恋桜 [Cherry Love]  ——完結——
日時: 2013/09/16 17:34
名前: 華憐 (ID: SUkZz.Kh)

おはようございます、こんにちは、こんばんは!

華憐というものです。

今回は恋愛ものを書こうと思い、スレを立ち上げさせていただきました!

行き当たりばったりの小説になるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。

ちなみに、3つほど記事を消去したことがあるため、記事番号が多少ズレております。ご了承ください。


【お客様】
・莉緒那様
一番最初にコメントをくださったお客様です♪
・くろねこ様
感動の言葉の数々、ありがとうございます☆
・あるま様
ゴマ猫樣と合作して素晴らしい作品を書き終えた素晴らしいお方です\(^o^)/
・ゴマ猫様
いつも応援して頂いているお客様です!!励みになっております(*^^*)
・修羅様
素晴らしい作品を執筆中のお客様です!!恋桜を見てくださってありがとうございます(ToT)
・夕衣様
久しぶりのお客様です♪徹くんと真奈ちゃんペアがお気に入りなのでしょうか……?

【登場人物】
>>1

【本編】
*プロローグ
視点なし >>2

*第一話...桜並木
真奈side >>3
徹side >>6

*第二話...宣戦布告
真奈side >>12
凜side >>15
徹side >>18

*第三話...思惑が交差する入学式
真奈side >>22 >>27 >>30 >>34 >>36-37
美樹side >>44 >>46-47 >>50-53

*第四話...中間テスト
真奈side >>54-59 >>61-62 >>68-72
徹side  >>73

*第五話...修学旅行
真奈side >>75-76 >>79-88 >>92-94 >>96-97
>>102-103 >>105 >>108 >>110 >>112-113 >>118

*第六話...水辺に咲く花
真奈side >>120 >>122 >>124-127
徹side >>128
凜side >>129
美樹side >>130

*第七話...誰かを想う、その果てに
真奈side >>132 >>134-135
凜side >>136
美樹side >>137
徹side >>138

*第八話...お誘い
真奈side >>139-142 >>145
亮side >>148

*第九話...体育祭
真奈side >>151 >>155-159 >>161-164 >>169-173

*第十話...お月見(最終回)
真奈side >>176-177

*第零話...あとがき
作者side >>178

【番外編】
参照500突破記念
*甘いモノにはご注意を。 >>115

参照1000突破記念
*いい天気になりそうね。 >>181-183

【TALK】
>>63 >>89 >>167

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Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.56 )
日時: 2013/06/01 23:40
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「あー、疲れたー!今日一日、すっごく長く感じた!」

夕日を背に美樹は私の前を歩きながらそう言う。
そう、今は下校中。
帰宅部の美樹はなぜかいつも部活動が終わるまで私を待っていてくれる。

「本当に楽しみなんだねー。そんなに楽しみなことって何かある?」
「そりゃあ、あるよ!」
「何?」
「そ、それは諸事情で話せないんだけど…」
「ふーん?」

こんなに慌てている美樹を私は初めて見た。
…もしかすると私はこの時から気付いていたのかもしれない。
彼女の淡い恋心に。
でも、それを私は認めたくなかった。
今の心地よい関係を壊したくなかったから。
でも、関係でも何でも、過去以外に変わらないものなんてない。
こんなことわかっていたはずなのに。

「何よ?その疑い深い目」
「別になんでもありませーん」
「なんかムカつく。あ!そっちこそあたしに何も話してないじゃない!」
「何を?」
「真奈の好きな人のこと!」
「え!?私、好きな人いるなんて言ったことないよ!」
「それでも顔に書いてあるの」
「嘘!?誰がいつの間に書いたのかな!?本当、最近はそういう悪質ないたずらが目立つよね」
「…慣用句が通じない。本当に、真奈って賢いの?」
「え?今の慣用句だったの?あ、そういえば!顔に書いてあるってよく言うね!ちょっと焦ってたみたい」
「へ〜?何に焦ってたの?」
「べ、別になんでもないよ?」
「嘘だね。あたしが情報屋なの忘れてないでしょうね?」
「え…?」
「たくさーん、真奈の情報、仕入れてるんだから」
「た、例えば?」
「そうね、小学2年生の頃、友達と喧嘩した後にムカついて、宿題だった”あのね日記”に、”あのね今日ね、友達にねムカついたんだよ。先生、人の黙らせ方って知ってる?”と記したとか、小学5年生の頃の運動会で大コケして、恥ずかしさのあまりに”今のは宇宙から見えない星が降ってきたんです”と訳の分からないことを突然叫びだしたりとか…」
「ちょっと待って!美樹さん、ちょっと待って?」
「どうしたの?真奈さん」
「いやー。聞いてる限り、私の黒歴史を掘り起こしているようにしか見えないんですが」
「…否定はしないわ」
「否定してよ!」
「じゃあ、否定する」
「信用できません。というか、どこからその情報、仕入れてきたの?」
「秘密よ。情報提供者の身柄の安全の確保は情報屋の責任でもあるのよ?これでも、情報屋って案外大変な仕事なの。情報は万金に値するからね!」
「そ、そう。なんでもいいけど、その話、誰にもしないでね?」
「さぁ、どうでしょう?夏休みの宿題全部やる、という交換条件をもとに真奈の情報を求めてきたらあたしも揺らいじゃうなぁ?」
「そ、そんなぁ」

私が力なくうなだれていると、美樹が笑い始めた。

「冗談よ、冗談。本当に真奈って面白いわね。友情が一番に決まってるでしょう?」
「本当!?ありがと!」
「でも」
「…でも、何?」

私が美樹の言葉に身構えると、美樹は優しく微笑みながら言った。

「でも、そのうちに真奈の好きな人、あたしに話してよね。信頼できる、と思ってからでいいから」

私はその言葉に”嬉しさ”というものを感じた。
本当に、心からの友達が出来た、と思えた瞬間だった。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.57 )
日時: 2013/06/01 23:57
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

そして翌日。
今日は土曜日なので学校はない。
本来ならば土曜日も部活動もあるが、テスト2週間前ということで、現在は活動停止中である。

「うーん、今日は何着て行こうかな?」

私は朝早くから起きて、クローゼットの前に立っていた。

「まだ春だから、夜遅くなることも考えれば、絶対薄着は駄目だよね。となれば、重ね着が一番便利。それで、今回は女子だけじゃないからズボンを履こう。となれば、この服装が一番いいよね」

私は独り言をぶつぶつつぶやきながら今日の勉強会へと着ていく服を決めた。
それはというと、七分袖のブラウスに薄手のピンク色のニットを合わせた重ね着にジーンズを合わせる、といういたってシンプルな服装だった。
そもそもが、勉強会なのだから、そこまでお洒落する必要もない。

「よし、これで行こう」

私は鏡で自分の姿を確認しすると、髪型をどうするか考えた。
普段は、髪を下ろしているので、今日は結って行こうと思った。

「んー、勉強するときは、髪が邪魔にならないほうがいいよね…?」

そう呟やいた時に、1つの髪型が頭に浮かびあがった。
それは…ツインテールだった。
一応誤解を招かないようにするためにも説明をしておく。
ツインテールと言うと、頭の高い位置で結う、まさにA●Bのまゆゆとかいう女の人の髪型を想像する者が多いが、決してそればかりではない。
昭和風な頭の低い位置で結う2つ括りも立派なツインテールだ。
私のはというと、後者の方だ。

「よし、OK」

私はツインテールをし終えると、髪飾り選びを始めた。

せっかくツインテールをしたので、リボンを付けて行こう。

そう考えた私は髪飾りを大量に入れてある箱を開けた。
そして、そこから迷わずに、2つのリボンを取り出すと、それで髪を飾った。

「おぉ!ツインテールもなかなか良くなるものね!」

鏡の中のリボンに感動を覚えながら、私は朝食を取るべく、階下へと降りて行った。

リビングでは、母が既に朝食を作って待っていた。

「あら、今日はどこかへ出かけるの?」
「うん。凜の家に」
「なあに?そういう関係なったの?」
「なってません。というか、そういう関係ってなに?」
「お子ちゃまは知らなくていいのよ。それより、何しに行くの?」

お母さんが興味を示しだすと、止まらない。
それに、隠す必要性も見当たらなかったので、正直に答えた。

「勉強会をするの。勿論、凜の他にも最近仲良くなった美樹や逢坂くんとも一緒にやるの」
「あれ?逢坂くんて、新入生代表挨拶をしたあの子!?」
「うん。そうその人!その人が私たちに勉強を教えてくれるの」
「凄いわね、真奈!あなた、相当ついてるわよ!」

そう言って、2人で興奮気味に話しながら朝食を取っていると、いつの間にか約束の時間になりそうだった。

「あ!そろそろ行かなくちゃ!」
「まだ9時30分よ?」
「10時集合なの」
「そう。気を付けて行ってらっしゃい」

そう言って、私を笑顔で見送ってくれた母。

本当に優しいなぁ。

そんなことを思いながら、勉強道具を持った鞄を横に抱えて歩き出した私。
勿論、目的地は凜の家だ。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.58 )
日時: 2013/06/02 17:24
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「凜!」

私が声を掛けながら、凜の元へと駆け寄る。

「よぉ。早いな、真奈。まだ5分前だぞ」
「何か不満?」
「い、いや…」

そう言って、少し俯く凜。

怒ってるのかな…?

そんな心配をしていたが、すぐにその心配はかき消された。

「綾川さーん!それにえーと…凜!」
「徹、お前今のわざとだろ!絶対、今のわざとだろ!俺を付け加えた感を出そうとしているんだろう!?お前の意図などバレバレだ!」
「ありゃ、ばれちゃったか。こうなったら仕方ない。堂々と…」
「堂々としなくて大丈夫よ!」

向き合う2人の間に割って入るような形で登場してきた美樹。
さすが、頼りになる。

「枝下」「枝下さん」

同時に2人の驚いた声が聞こえる。
確かに、私も全く気配を感じなかったし、2人が驚くのもわかる。

「あたしが影薄いとでも言いたげな目ね?逢坂」
「いや、別に俺は…」
「ちょっと、そこで動揺しないでよね。ますます確信を持っちゃうじゃない」

そう言いながらも笑っている美樹。
なんだか楽しそうだ。

「よし、全員揃ったことだし、俺の家に入るか」
「うん、そうしよ!」「そうしようか」「そうだね!」

こうして私たちは凜の家で勉強会をすることになった。

「おー、ここが凜の部屋なのか。綺麗にしてんだな」
「徹に言われると、どんな言葉でもムカつく」
「何だよ、それ」

口を尖らせる逢坂くん。
女子よりもよっぽど可愛いかもしれない。

「取り敢えず適当に座れよ」

そう言って、凜は部屋の中央にある座卓を指した。
そこには、4枚の座布団が引かれていた。

「そんじゃあ、あたしここ!」

先陣を切って、陣取りをしたのは美樹だった。
一番扉に近いところを取ったようだ。

「俺はここかな」

そう言って、逢坂くんは窓側の席を陣取った。

「私は…ここ?」

私は逢坂くんと向かい合わせ状態になる、本棚側の席に着いた。

「それじゃあ、俺はここだな」

凜は美樹と向かい合うような形で座った。

「では、勉強会を始めるぞ」

凜の掛け声と共に、勉強会が始まった。
まず最初にやるのは理科。
取り合えず提出予定の、学校から配布された問題集を解き、分からなかったところを逢坂くんに質問する、という形を取っている。

「あのー、逢坂。早速1の①が分かりません」
「枝下さん、早くないですか?」
「…そこは突っ込まないでください」
「まぁ、教えるよ。えーっと、って、これ中学の復習問題じゃん」
「忘れた」
「そんなあっさり言わないでよ。ついこの間まで受験生だったんだよ?」
「嫌なことは忘れる主義なので」
「はいはい。もー、突っ込まないよ?…取り敢えず、問題を解こうか。物体Pが移動するのにかかる時間はいくらって書いてある?」
「えーっとね…」

こんな感じで早速逢坂くんが美樹に勉強を教えている。
私は問題を解きながらもその説明を聞いていたが、先生になったらいいんじゃないか、というくらい説明上手だった。

「なるほど!これ、中学の時、理解できてなかったんだよねー!お蔭でその範囲のテストの点数悲惨だった」
「何点だったの?」

私が話に割り込む。

「48点」
「…ご愁傷様です」
「え!?慰めそれだけ!?真奈、それだけ!?逢坂は何かあたしに慰めの言葉はないの!?」
「…ご愁傷様です」
「…コントかよ!」

そんな会話をしながら、問題集を解き続ける。

「凜、君は俺に聞かなくていいのかな?」
「何だよ、解けてるんだからいいじゃねーか」
「本当に?俺が見た限りでは、2問は間違ってるけど?」
「嘘だろ!?」

慌てて凜は自分の解答と問題集の解答を比べた。

「本当だ…。2問、間違ってる」
「言っただろ?」
「でも、なんで間違ってんのかよく分からん」
「何でだよ。問題文、よく見てみなよ」
「秒速何メートルですか…あ!!」
「わかった?」
「俺、秒速何センチメートルと勘違いしてた!」
「やっぱりね」
「っち、ムカつくな。徹に指摘されるなんて」
「しょうがないね。凜が間違ってたんだし」
「次の単元では絶対間違えねーよ!」
「頑張って」

静かに闘志を燃やした凜。

本当に、凜は努力家で一生懸命で可愛いなぁ。

そんなことを思っていると不意に逢坂くんが私に話しかけてきた。

「綾川さんは、何か分からないところある?」
「と、特にはないかなぁ…」
「そっか。何か分からなかったら言ってね」

そう言って、ニコッと笑う逢坂くん。

すっごくカッコイイ。こんなことされたら絶対好きになっちゃうよ。いや、そもそもが既に逢坂くんのことが好きなんだけど…。

「って、綾川さん!」
「え!?何!?」

一瞬、私の考えていたことが逢坂くんにバレたのかと思って、冷や汗を握った。
しかし、全くの別件だった。

「俺より進んでるじゃん!」
「え?そう?」

私は現在添削中の自分の問題集のページ数を見る。
34ページ。

会話を聞きながらやっていたので、結構遅い方かと思っていたのだけれど…。

「俺、まだ31ページだよ?速いなぁ。しかも、1問も間違ってないし」
「逢坂くんこそ、皆に教えながらそこまで行くなんてすごいと思う。というか、人の間違いを即座に見つけられるって凄いね」
「何だか目はいいみたい」

私たちはそう言って微笑み合っていると、美樹から暗いオーラが発せられているのに気が付いた。
そして、何気なく美樹の添削中の問題集のページを見ると…17ページだった。

「美樹、ごめんなさい」
「解ればよろしい」

私はすぐに美樹に謝った。
すると、美樹は苦笑いしながらそう答えた。
逢坂くんはというと、いきなり私が誤ったものだから、困惑状態だ。

「ね、今のってどういうこと?」
「逢坂くん、世の中には知らないほうがいいことだってあるんだよ?」
「えー、何それ!余計に気になるじゃん。教えてよ」
「駄目。美樹の権利は守る」
「え?権利?どこからその言葉が…?」
「はいはい、そこまでだ。早く勉強に集中しろ」
「はーい、スパルタ凜先生」
「誰がだ」
「君がだよ」

こうして、午前中はそんな会話を繰り広げながら、無事に理科を終了させていったのであった。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.59 )
日時: 2013/06/02 17:43
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「それじゃあ、昼飯にすっか」
「賛成!」「お腹空いた〜」「うん、そうしよ」
「あたし、今までこんなに頑張ったこと、無いかも!?」
「道理でいつも20位台なわけだ」
「な、なんであたしの順位を!?」
「だって、一応桜田高校って進学校なんだぞ?順位の張り出し位あるだろうさ」
「そ、そうだった!すっかり忘れてた!」
「相当ボケてるな」
「う、煩い」

美樹はそう言いながらも顔は真っ赤だ。

暑いのかな?
でも、今日の最高気温は確か22度だったはず。
そんな訳ないよね…?

私は美紀の反応を不思議に思いながらもなぜか、そこは突っ込んではいけない気がして、敢えてスルーすることにした。

「それじゃあ、誰がコンビニへ飯を買いに行くか、じゃんけんで決めるぞ」
「はーい!やろやろ!」
「俺、結構じゃんけん強いんだよ」
「私、じゃんけん弱い…」
「えーっと、それじゃあ、じゃんけん勝った人が買いに行って、しかもその人の奢りってことで行こうぜ」
「おー!いつも負けた人からじゃつまんないってことね!いいわよ」
「俺も賛成だ」
「真奈は?」

凜がこちらを見ながら問う。

「私も意義なし」
「よし決定だ。それじゃあ、行くぞ。じゃんけんほい!」

じゃんけんの結果、凜と逢坂くんが買い出しに行くことになった。

「どうしてよりによってお前となんだ」
「それはこっちのセリフだよ!でも、女の子に奢ってもらうのは男としてどうかと思ってたところだからね〜。よかったと言えばよかったのかな?」
「まぁ、確かに」
「そう言うわけだから、お二人さん。俺たちが何かってくるか楽しみにしててね〜」

そう言って、凛の家を出て行った2人。
部屋に残って2人が帰って来るのを待つことになった私と美樹。

…会話が見つからない。
朝からずっと勉強してたからかな?

「ねぇ、真奈」
「な、何?」
「そんなに構えなくても大丈夫よ。実はね、あたし、好きな人いるんだ」
「え…?」

一瞬、何を言ってるのか分からなかった。
だが、すぐに理解した。

「え!?好きな人!?てか、情報屋って大抵は自分のことを話さないんじゃ…?」
「あたしは真奈を信用したから自分のこと話してるの。…真奈に好きな人は誰か?って聞いた時、真奈、教えてくれなかったでしょ?」
「ご、ごめん…」
「ううん、謝らなくていいのよ。あれが正常な対応だわ。話を戻すわ。…あの時から、どうしてあたしに教えてくれなかったんだろう?って考えてたの。初めは初対面だったからかなって思ってた。確かに、それもあったけど、それよりも先にもっと重要な事を見落としてた。あたしが真奈に自分自身のことについて話してなかったんだ。だから、当然だったんだよね、真奈が教えてくれなかったのは」
「…何が言いたいのか分からないよ」
「そうだよね。要点をまとめて言うと、あたしはもっと真奈に自分のことを知ってほしくなった、ってことかな」
「なるほど!私も美紀に自分のことをもっと知ってほしい!」
「ふふふ、ありがと。そんなわけで…聞かせて!」
「はい!?」
「真奈の好きな人」
「え!?だって、美樹はまだ好きな人の名前言ってないよ!?」
「真奈が言ったら教えるよ」
「本当に?」
「本当よ」
「もし嘘を吐いてたら、1000円の罰金だからね」
「妙にリアルな金額ね。まぁ、いいわ。嘘ついてないから」
「わかった。それじゃあ、耳貸して」

私はそう言って、美樹に私の好きな人を教えることになった。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.61 )
日時: 2013/08/01 15:22
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「えーっと、私の好きな人は…逢坂くん、だよ」
「なるほどね〜」

そう言って、美樹はニヤニヤしている。

「も、もう、何?その顔〜!美樹だって教えてよ?約束なんだから」

私は頬を膨らませた。
すると、美樹は「可愛い」なんて言って、私の頬をぷにぷにと押し始めた。

「話、逸らさないでよ〜」
「逸らしてないよ〜」
「早く教えてくれなきゃ、1000円罰金だよ〜」
「言います!」

罰金の言葉を聞いた瞬間に、即答した美樹。
なんか、情報屋って不利な条件を突き出されるとすぐに飛びつく傾向がある気がするのは私だけ?

「わ、笑わないでよ?」
「笑うわけないじゃん」
「約束よ?」
「うん」
「そ、それじゃあ、言うわよ?」
「うん」
「あたしの好きな人は…」

美樹の口が好きな人を言いかけたその瞬間、

「ただいま〜!飯買ってきたぞ〜!」

凜が扉を開け放ちながら、私たちが待機していた凜の部屋へと入ってきた。

「ん?真奈嬉しそうじゃないな。腹減ってないのか?」
「別に」
「なんか冷たい」
「ついに幼馴染の縁も切れてしまうのか…。凜くん、気にすんな」
「気にするっつーの!」

部屋に入ってきて早速そんな痴話喧嘩を始める2人。
そんな2人の様子を見て、美樹は言うのを諦めたのか「またあとでね」と私に小声でそう言った。

「取り敢えず、飯、分けようぜ」
「うん、そうしよう。綾川さんと枝下さんは何食べたい?女の子はパスタ系がいいかな?と思って、ミートスパゲティーと、ペペロンチーノを買ってきてみたんだけど…」
「それじゃあ、あたしペペロンチーノで!」
「私はミートスパゲティーで」
「俺はカツ丼」
「んじゃあ、俺は牛丼?」

何というか、皆食べてるものバラバラだなー。

そんなことを思いながらも、それぞれ渡された食料を電子レンジで温め始めた。
まず最初に食事にありついたのは美樹だった。

「すっごく美味しそう〜!」

そんなことを言いながら、美味しそうにペペロンチーノを口に含む美樹。

あぁ、私も早く食べたい!

「真奈、出来たぞ」

凜が電子レンジから私のスパゲティーを取り出しながら言う。

「ありがとう」
「熱いから底の淵、持てよ?」
「はーい」

何気に心配してくれる凜。

嬉しいなぁ。

「はい、次お前だ」
「お前って呼ぶなよ。俺の名前は徹だよ?」
「…なんか女々しく感じるのは俺だけか?」
「うん、君だけだと思う」
「…そうか」

謎の会話。
でも、聞いてると自然と笑みがこぼれる。

「何笑いながら食ってんだよ、真奈」
「だって、凜と逢坂くんの会話、面白いんだもん」
「どこがだよ!」「どこが!」

同時に否定する2人。
案外この2人は相性がいいのかもしれない。
そもそも、なぜこの2人が仲が悪いのかよく分からない。
こちらから見ている分には普通に仲の良い男友達、いやそれ以上の親友にしか見えないのだが。

「まあまあ、どこが面白いのかを真奈に追究したところで、何の得にもならないでしょ?それより、浅井。早く逢坂の分、温めてあげなさいよ。さっきからスタートボタンを推す寸前の所で止まってるわよ?」
「あ、本当だ」

美樹が私に助け船を出してくれて、なんとか助かった。
凜って不思議に思うと、とことん原因等々を追究しようとするから、少しそこが厄介なのだ。


「…ごちそうさま」「ごちそうさまでした」「うまかった」「美味しかったなぁ」

口々に感想を言って、食べ終わった後のトレイなどをビニール袋に捨てる。
そして、塵の処理をし終えた私たちは再び、勉強会を再開した。

「理科の次は数学〜!?あたし、文系なんですけど」
「枝下、文句言うな。2年になったら選択できる」
「そ、それはそうだけどさぁ…」

そう言っていじける美樹。
そっぽを向いている感じが堪らない。

「ほらほら、さっさと問題集を終了させちゃおう!たったの30ページだよ!」

私が元気づけるために美樹をフォローする。
すると、逢坂くんも乗ってきた。

「そうだよ、枝下さん!さっきの理科の40ページより全然マシだよ」
「うーん、そうだよね!」

始めは全然乗り気でなかった美樹もだんだん励まされてきたのか、最終的にはしっかり問題集を開いていた。

「よっしゃ、2時間で終わらせてやる!」

意気込みを述べてから、先程までのダラダラ感が嘘のように、美樹は問題を解き始めた。

「真奈ー、2πrって何だっけ?」
「円周の長さ」
「それじゃあ、この問題って√の中を…」

真剣に取り組む美樹に私も親身になって質問に答えた。
しかし、そのどれもが残念ながら中学生の復習なのだ。
美樹、本当に受験したの?と聞きたくなるくらいにほとんどのことを忘れている。
勿論、そんなこと言うはずもなければ顔にも出さないが。

「なるほど!答えは32平方センチメートルになるってことだよね!」
「そういうこと、だね」
「ありがと、真奈!先生になった方がいいと思うよ!すっごく教え方上手いじゃん!」
「本当?ありがとう」

こんな会話をかれこれ続けて2時間…。

「…できた!目標達成!」

美樹が最後の問題を解き終えると、皆からの拍手があった。
実はと言うと、美紀以外の3人は美樹が問題を解き終える1時間前に既に解き終わっていたのだ。
なので、1人の生徒に3人の教師、というような体制で1時間、美香に数学を叩きこんでいたのであった。

「もう皆スパルタだからどうしようかと思ったよ!特に、真奈が怖かった」
「え?何で?」
「だって、1問その問題解き間違えたら、真奈が新しい問題作って出してきたじゃん?あれ、プレッシャーだったわ」
「ごめんね」
「ううん、大丈夫。あれくらいの方が、自分の力になっていいと思う。本当、皆ありがとね」

そう言って、美樹が座りながら頭を下げた。
私もそれに倣って、頭を下げてみる。
すると、連鎖していくように、凜と逢坂くんまでもが頭を下げた。
その様子が本当に怪奇で、だんだん面白くなっていき、最終的には皆で笑い合った。
そして、勉強会終了後は、皆で外でバトミントンをしたりテレビを見たりして遊んだ。

「…もう6時だ」
「そろそろ暗くなってきたね」
「帰ろうか」
「そうだね、帰ろ」

口々にそう言うと、帰る用意をし始めた。
そして準備が整うのと同時に、凜の部屋を出た。

「忘れ物はないか?」
「うん、ないよ」
「枝下と徹はどうだ?」
「俺も」
「あたしもないよー」
「よし、そんじゃあ、気を付けて帰れよ?」
「はーい」

私が最後に凜に返事すると、それを合図とするかのように、皆が凜の家から出始めた。
そして、最後に出ることになった私は去り際に

「また月曜日ね」

とそれだけ言って、皆を追いかけた。





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