コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 【完結】おいでませ、助太刀部!!【しました!!】
- 日時: 2012/09/15 21:46
- 名前: 野宮詩織 (ID: rc1iwi.s)
はじめましての方も初めましてじゃない方もこんにちは!! 野宮詩織です。
重要なお知らせ→>>267
今回書くお話はラブコメ(ラブ2割、コメ8割)です!!
番外編の「怪奇大戦争!!」の方も同時進行で進めていきますので、そちらの方も読んでみてください!
※注意※
その1 ラブコメムリ、カオスムリ、野宮詩織ムリな方は即Uターンを推奨します。
その2 荒らし、喧嘩、誹謗中傷は禁止です
その3 チェンメ、宣伝(カキコ内の小説等も含む)も禁止させていただきます。
その4 作者の好きな漫画やゲームのネタが大量に入っていますが大丈夫ですか?
以上を読んで大丈夫と仰る方は楽しんでいってくださいね!
☆参照2000突破記念アンケート用紙 >>191
☆依頼人キャラ応募用紙 >>39←終了いたしました。
☆参照500突破記念企画参加用紙 ←終了いたしました。
☆お客様☆
山下愁様、Neon様、だいこん大魔法様、偽者様、友桃様、月読愛様、レキ様、メデューサ様、黎様、風(元:秋空様、凡様、七星 空様、涼儀様、柚◇銀魂113134様、夜兎_〆様、涼太様、由羽様、葉月様、夕詠様、黒き太陽様、ミルクチョコレート様、王翔様、とろわ様、些爾様
☆キャラ提供をして下くださった方☆
山下愁様・Neon様・春華様・メデューサ様
☆イラストやCV等でお世話になった方☆
朔様…イラストを描いてくださいました。
山下愁様…宣伝文を描いてくださいました。
トレモロ様…かなりの数のCVをやってくださいました。
凡様…イラストを描いてくださいました^^
☆登場人物紹介 >>90
☆目次☆
第1章 「助太刀部? なにそれ、食べられるの?」
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8
第2章 「え!? 本当に依頼とか来るのか!?」
>>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24
第3章 「もこ○はけい○の嫁なのよ!!」
>>26 >>27 >>28 >>29
第4章 「男の娘ですけど何か?」
>>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36
第5章 「大気圏突破も出来るのか?」 ※山下愁様のキャラ登場回
>>38 >>40 >>43 >>45 >>47 >>48 >>49 >>50
第6章 「タネが分かったらつまらないじゃないか」※Neon様のキャラ登場回
>>52 >>53 >>59 >>64 >>65 >>66 >>67 >>68
第7章 「高校生には見えないんですけど!?」
>>73 >>74 >>75 >>76 >>77 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>85 >>86 >>87 >>88
第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」
>>91 >>92 >>93 >>94 >>97 >>98 >>113 >>114 >>115 >>116 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129 >>132 >>138 >>140 >>141
第9章 「嘘を紡いだ唇を」
>>143 >>144 >>149 >>151 >>159 >>160 >>165 >>171 >>174 >>175 >>180 >>181 >>183 >>190 >>200 >>201 >>206 >>263 >>268 >>269 >>270
最終章 「おいでませ、助太刀部!!」
>>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277
あとがき
>>278
*-*-*-*-*-
第9.5章 「ドキッ☆ 三次元だらけの学園祭」
>>208 >>212 >>245 >>248 >>249 >>250 >>251 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>262 >>264 >>265(更新凍結)
☆番外編&おまけ☆
キャラの裏設定 >>142
参照1000突破記念ラジオ >>152
参照2000突破記念ラジオ >>199
小説大賞受賞記念ダイジェスト&ラジオ >>236
小説大会受賞記念スペシャルサンクスラジオ >>244
息抜きラジオ← >>263
☆イラスト&CV&宣伝文etc.☆
朔様に描いていただいた深間秋牙のキャラ絵 >>139
山下愁様に作っていただいたあらすじ兼宣伝文 >>150
作者が書いた轟稔のキャラ絵 >>182
凡様に描いていただいた岡崎光のキャラ絵 >>184
朔様に描いていただいた翔、忍、相斗、佑香のキャラ絵>>211
☆ちょっとしたお知らせの類☆
・更新されていないのに、スレが上がっている時はどこかしら過去のレスに修正が入っているか、作者が忙しくてなかなか更新できない時です((ぇ
* * * * * *
2011年、夏の小説大会コメディ板、大賞受賞、ありがとうございます!!
2012年、9月15日、本編完結しました!!
長い間、読んでくださった方に感謝です(´∀`*)
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- おいでませ、助太刀部!! ( No.269 )
- 日時: 2012/06/05 21:34
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
- 参照: 怒涛の急展開(`・ω・´)
……気まずい。
尋常じゃないほどに気まずい。
「…………」
「…………」
昨日の鎖月のぶっちゃけた話を聞いた後よりも静かだぞ!?
目の前の机に置かれたお菓子がギュウギュウに詰められた箱に手を伸ばし、せんべいの詰め合わせ小袋を一つだけ手に取る。
ビニールの袋から取り出し、口に運ぶ。
思っていたより美味い。
「これから、どうするんだ?」
このまま下校のチャイムが鳴るまでお互い無言で過ごしてしまったら、わざわざ深間達と別行動をしているんだ、という話になってしまう。
やはり鎖月の依頼はだいぶプライベートということもあり、俺と伊野は助太刀部の部室の横の教室でこうして相談しているのだ。
…………いや、まだ相談はしてないが。
「結局、妹の特徴は?」
伊野がいつにも増して冷静に言った。
言われてみれば、結局のところ、情報は掴めなかったし……。
「…………」
「なんで黙るの?」
「……すまん」
情報が全く掴めていない——いや、正しくは掴もうとすらしていなかったのだが、改めてそこに触れられると謝るしかない。
「だろうと思って、少し調べておいた」
伊野がいつも通り平坦な口調でそう言った。
本当に頼りになるなぁ、という考えと一緒に申し訳ない、という気持ちが出てくる。
「鎖月薺さんは、一年A組所属で、一年では学年トップの成績。 家は鎖月財閥——日本でも有数の財閥で、親は彼女を跡取りにしたいらしくて、相当厳しく育てられたっていうことまでは調べた」
伊野がカンペやメモを見ることもなく、スラスラと自分の調べたことを言う。
依頼が来てから1日でここまで調べたこともそれを完璧に暗記していることもどちらも凄い。
「妹については?」
「そんなのはいなかった」
「え?」
鎖月の妹の存在を否定した伊野に思わず聞き返す。
すると、伊野は何故か俺の横に移動し、ちょうど間らへんの距離に紙をおく。
何だかよく分からない名前からして鎖月家の関係者だということは分かる。
「戸籍」という字が見えるのは気のせいだよな?
「この人は鎖月さんのお父さん。娘——というか子供の欄には薺以外の名前は無い」
確かに子供の欄に記載されているのは「薺」、ただ一つだ。
つまり、鎖月の記憶が無いほど小さい頃に事故死したり誘拐されてしまった、という線は無くなった。
「じゃあ、養子に出され」
「養子に出した場合は、子供の欄に養子に出したみたいなことが書かれるの。 でも、そんなことは一言も書いてない」
俺の言葉を途中まで聞いた段階で、伊野が否定する。
そして、そのまま、結論を告げる。
「お母さんの方も調べたけど、やっぱり薺以外の名前は無かった。 つまり、彼女に妹はいないの」
- おいでませ、助太刀部!! ( No.270 )
- 日時: 2012/06/24 15:46
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
翌日、鎖月を呼び出して、事の顛末を伝えた。
伊野が横にいると、傷心中の鎖月にトドメを刺してしまう可能性があるため、一番フォローが上手い深間を横に置いといたのが功を成したようで、とりあえず納得してくれた。
案の定、戸籍の出どころについて聞かれたが、伊野がいないから分からない、とだけ答えておいた。
実際、俺もあれをどういう手を使って持ってきたのかはさっぱり分からない。
「解決したねっ」
鎖月が帰った後、深間が嬉しそうにそう言った。
解決したにはしたが、妹は存在しているという考えでいた鎖月にとっても俺にとっても釈然としない結果となってしまった。
恐らく、伊野は最初からいないことを前提に考えていたから、あそこまで早く結論に至ったのだろう。
伊野は見た目も可愛いし、文武両道だしで、完璧なように見えるが明らかにコミュニケーション能力に欠けている。
異常に少ない表情のバリエーションや平坦な口調は失礼だとは思うが、機械のように思える。
相斗もいつもヘラヘラとした作り笑いを浮かべているが、相斗の場合は兄貴に襲われた時や優や有とゲームをしている時にはちゃんと素の表情を浮かべている。
つまり、外に対しては人見知りなど諸々の理由で素直に感情を出すことができないが、身内相手なら素直に感情を出すことが出来る。
しかし、伊野と一番仲が良さそうな深間曰く、伊野は数少ないの肉親である祖父母にさえも、あんな感じの態度で接しているらしい。
「んー……」
「どうしたのっ?」
少しばかり引っ掛かる伊野のことについて考えていると、深間が心配気に覗きこんできた。
やはり伊野のことは気になるが、深間に尋ねて心配させてもしょうがないし、それにあんまり長く考えていると今度はどこからともなく現れた兄貴が心配してくるから、今はあんまり深く考えないようにしよう。
「どうしたの? 誰に虐められたの? またお前か、このガキ!!」
「違ぇよ!! っていうか、兄貴いつも現れるタイミングよすぎるだろ」
「ありがとう!」
心の中を読んだのでは無いかというくらい綺麗なタイミングに本当に兄貴が現れた。
大学の授業は終わっているのだろうが、晩ご飯の準備諸々の家事は一体どうしたのだろうか。
色々な疑問を頭の片隅に追いやり、「別に誉めてねぇーよ」と適当にあしらい、兄貴を放置して深間と相斗達が待つ部室へと戻る。
「おかえり」
「相斗、モフモフするー」
「くっつかないでください」
今日は主なカオス材料である中子や松、それから生徒会組が来ていないというのに、見事なカオス空間が出来上がっていた。
兄貴の存在は、材料どころかカオスそのものということか……。
「翔もおいで!!」
ソファーに座っている兄貴が自分の左側をポンポンと叩き、俺を呼ぶ。
反対側の席には、この数秒間の間に何かが起こったらしく、魂が口から出かけている相斗が座っている。
……兄貴がいると、真剣な悩みさえもどこかへ行ってしまう気がする。
もちろん、悪い意味で。
- おいでませ、助太刀部!! ( No.271 )
- 日時: 2012/06/28 06:10
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
- 参照: 翔「ため息の数まで数えてるのか……:(;゛゜'ω゜'):」
第10章「僕は一人になりたくないんだ」
「おはよう」
「んー……?」
鎖月さんの依頼があった一週間前以来、ずっと何か考え事をしているらしい翔から布団を剥ぎ取って起こす。
翔は基本的に完璧だが、ところどころ抜けていたり、寝起きが異常に悪かったりと細かい点が惜しい。
忍さん曰く、「そこに萌えを感じるんだよ!」とのことだが、気持ちは分からないでもない。
翔がそんな完璧な人だったら、今みたいに幅広い交友関係は作れていなかっただろう。
「やだ、まだ寝る」
案の定不機嫌そうな翔がそう言って、僕が手に持っている肌掛けを力いっぱい引っ張り、もう一度暖かい布団の中へ帰ろうと試みる。
こういうところを除けばだが、完璧な翔がモテないはずがなく、かなりの女子が僕に「相斗って、岡崎くんと一緒に住んでるんでしょ? 今度、遊びに行ってもいい?」とかふざけたことを抜かしてくる。
そもそも、僕は居候させてもらっているだけなのに——。
「やだじゃないよ。 早くしないと遅刻するよ!」
そんなモヤモヤした気持ちを抱えつつも、翔が掴んでいる布団を引っ張り返す。
こういう時だけは、翔の馬鹿力を恨む。
—*—*—*—*—*—
「…岡崎先輩がおかしい?」
「いつものことだろ?」
僕が部室に向かうと、花薇さんと桜さんと秋牙さんが何やら翔についての話をしているらしかった。
「岡崎は比較的まともな人だと思うよっ。 それなのに最近、ずっと考え事してるみたいで、おかしいのっ」
秋牙さんのいうまともの概念が世間一般と一致しているのか少し疑問だが、翔がここ最近悩み事を抱えているというのは、間違いないだろう。
翔は優しいから割と些細なことでも、他人のために悩んだりもする。
僕のことで悩んでいるところもたまに見かけるが、そういうところを見ると****なる。
—*—*—*—*—*—
「へ? 出て行ってほしい?」
キョトンとした可愛らしい表情でメイド服を着た男の娘がそう言った。
やはり翔が悩んでいるのは間違っていないらしいから、彼が帰って来る前に、一つ悩みの種をつまみ出しておこう。
最初は面白いかも、と思っておいておいてあげたが、つけあがり始めたからそろそろ潮時だ。
「うん。 君が来てから、翔がやつれてきちゃってて……」
嘘は言っていない。
現に、こいつが来てから翔の溜め息が増えたし。
具体的にいうと、前は多くても、一日五回くらいだったのに、最近は一日に十回近くになってしまった。
昨日に至っては、たった一日で十三回も溜め息をついていたのだ。
- おいでませ、助太刀部!! ( No.272 )
- 日時: 2012/07/15 20:36
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
- 参照: そしてこの鬱展開であるw
「最近、翔クンの元気がないのよねぇん……」
「そうなんだよね……。 昨日なんて、十三回も溜め息をついてたんだよ?」
「数学の授業中に三回も溜め息をついてたから、数学関係じゃないかしらぁん?」
「うーん……。 数学教師にセクハラでもされたとか?」
何故、僕達の部屋にこの二人がいるのだろうか。
でも、「甘え下手な翔でも向こうから甘やかしにかかってくる忍さんや中子さんには甘えやすいかもしれない」という考えが湧いてきたから、ひとまず放置することにした。
「おかえり、相斗! 今日は部活無いのー?」
「ッ!?」
「どうしたの?」
忍さんから目を離した二秒程度の間に、部屋の隅にいたはずの彼が僕に抱きついていた。
この人はワープでも出来るのだろうか。
「い、いえ……。 部活は休んできました」
余計なことをされて、翔に手間をかけさせるのは嫌だから、部活は無断で欠席してしまった。
まぁ、毎日出なくちゃいけないとかいう決まりは無いんだけどね。
—*—*—*—*—*—
「で、悩んでるのはよく分かったんだが、何故、私のところに?」
「え、別にななななな悩み相談に来たわけじゃねぇーよ?」
「少しは動揺を隠せ」
そう言うと同時に、俺の前にキレイな白い指が冷たい水が入ったグラスをおく。
白衣を脱いで、艶めかしい足を組んで椅子に座る。
相手が中子辺りであれば手放しで喜べたのだが、自分の母親の生足に興奮しろ、というのにはいささか無理がある。
わざわざ学校内でお袋に相談なんてした暁にはマザコン扱いされそうだが、他に秘密厳守が出来て、事情を呑み込めそうな人がいなかったのだ。
たしか、心理士の資格も持っているし、なんだかんだで一番適任だと思う。
「それで、相斗がどうした? 『また』傷害事件?」
「いや、違ぇよ」
お袋が自分の分のグラスを回す度に、保健室の独特な消毒液の匂いと不思議と静かな空間にカランという氷とグラスの透き通っていて涼やかな音が響き渡る。
相斗は昔——小学生の高学年と呼ばれる学年になってすぐに、クラスメイトの男子数名を刃物で切りつける、という凶行に走ったことがある。
もちろん、先生達に尋問されたのだが、相斗は何もしゃべらなかった。
————そして、先生達だけでなく、俺やお袋にも話してくれることはなかった。
「なんというか、相斗との距離がおかしいというか……」
そうして上手くまとまっていない言葉を継ぎ接ぎに繋いで、お袋に長々と説明をする。
お袋は俺の話を途中で止めたりすることなく、相槌だけ打って話を聞いてくれている。
「つまり、相斗が飲んだくれたり、突然怒ったりして困ってると」
……間違ってはいないが、そんな身も蓋も無い言い方をされるとは思わなかった。
- おいでませ、助太刀部!! ( No.273 )
- 日時: 2012/07/27 17:10
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
「ただいま」
お袋がくれたアドバイスを活かすべく、早歩きで家に帰り、寮の自室の扉を開ける。
「おかえりー」
案の定、先に帰ってきていた相斗が出迎えてくれた。
どうやら、買い物に行ってきてくれていたようで、キッチンに置いてある白い袋からチラチラとオレンジや緑色が見え隠れしている。
出来れば、野菜は野菜室に入れておいて欲しかった。
牛乳とかを買ってきていた場合、放置というのはシャレにならない非常事態なのだが、どうやら野菜とちょっとしたお菓子しか買ってきていないらしい。
ギリギリだが、セーフライン上に乗っかっている。
「翔、今日の晩ご飯はポトフが食べたいなぁ」
相斗が珍しくリクエストをしてきた。
スーパーの袋の中をよく見ると、確かにポトフの材料が見事に揃っている。
まさか、ポトフ食べたさに、買い物に行ったのだろうか。
「分かった。 今日の晩ご飯はポトフとなんか適当に肉と野菜炒めたやつでいいか?」
相斗が布団の上でゴロゴロと寝転がりながら、コクコクと頷く。
もう作り始めようかとも思ったが、時計はまだ17時ちょうど程度を示している。
作り始めるのには、まだ少し早い。
「どーんっ! 2人とも今日休んでたから、出張しにきたよっ!」
もうこれ以上ないくらいに綺麗なタイミングで、扉からストレートのショートヘアの茶髪をなびかせながら、助太刀部の部長——深間秋牙が勢いよく飛び込んできた。
俺はもちろんだが、相斗も驚いているようで、目をぱちくりさせている。
「それと、最近、二人とも悩んでるみたいだったから、チーズケーキ買ってきたよっ!」
「なんで?」
寮の部屋への訪問もどうやって許可を取ったのか不思議だが、悩んでいる人にはチーズケーキという発想の方が不思議だ。
不思議そうな表情をしている俺と相斗を傍目に、深間がまるで我が家のように小皿やフォークを取り出し、チーズケーキを食べる準備を始める。
もしかして、自分が食べたかっただけなのではないだろうか。
「じゃあ、ありがたく戴くよ。 ところで、どうやって男子寮に入ってきたんだ?」
「翔が食べるなら僕ももらうよ」
深間の好意に甘えてチーズケーキを食べ始めると、今まで様子をうかがっていた相斗も食べ始めた。
深間が買ってきてくれたチーズケーキは濃厚で舌触りもよく、とても美味い。
「朱里さんに言ったら、通してくれたよっ。 美味しいでしょっ?」
さりげなく相斗の隣に座って、俺たちと同じチーズケーキをむしゃむしゃと頬張っている深間がそう言った。
ケーキは美味しいが、やっぱり朱里さんが獣盛りの男達の巣窟に何もなしに女子を通してくれるというのは、にわかには信じがたいと思ってしまう。
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