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- 崩壊少女と無心少年 完全完結
- 日時: 2010/08/18 21:06
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&
illust_id=11801579
参照の後に、上のURLの続きを合体させてください。
この小説の表紙が開きます。
さじの様にお願いしました。
注意
設定上、グロ描写があります。
そこだけはよろしくです。
お客様
使い魔の猫様 空様 月兎様 時雨様
神無月様 白兎様 風水様
スペシャル様 ミコト様 阿嘉狐様
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- Re: 崩壊少女と無心少年 ( No.156 )
- 日時: 2010/08/02 19:11
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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第8章
空から落ちる
蒼い空をバックにして、人が、飛び降りる。
地面には赤い果物みたいな、肉の残骸。
体中で空気を堪能する最期なんて、我ながら羨ましいなと思う。
そんな事より。
無事、2年生に進級した。
色々あったけどやりきったって感じだ。 光里さんは嘘だろみたいな感じで馬鹿にしてきたけど。
さめはだ君とは同じクラスで、乙羽さんとは隣のクラスになった。
クラスが少ないからか、あまり新しい顔ぶれでもないし。
「あかね、はい」
「ん、どうも」
17歳になったオレとハルキは、相も変わらず病室で幼稚じみた遊びをしていた。
長い事切ってないハルキの黒髪は腰以上にあり、痩せた体格はあまり変わっていない。
渡された飴玉を口に入れ、噛む。
昔から、飴玉を舐めるという行為に不快を感じていた。 なんでだろ。
「オレンジだね」
「オレ、桃なんですが」
「ふうん。 いろんな味があるな」
見た目可憐なお嬢さんなのに、少年口調でそんな事を言う。
「………」
不知火さんの事があって、早半年が過ぎた。
オレは、警察に何も言ってない。 不知火さんが自殺を促した犯人だと。
乙羽さんにすら。
散々問い詰められたけど、言わなかった。
言っても、あの人は理解できないだろうから。
「あかね。 どこ見てるんだ」
「オレはいつでも今を見てますよ」
嘘ばっかり。 今だって、どこか遠い過去を見てたじゃないか。 遠いようで、近い幻。
ハルキは笑って、ゆっくりとオレに抱きついてきた。
「……ハルキ」
「なーにー?」
「ハルキ、何も覚えてないんですよね」
「何を?」
不知火さんは言っていた。
ハルキが自ら、豚たちが消えればいいと言ったらしい。
記憶がないハルキにとって、過去の自分の口調を言う事なんてできないはずなのにな。
「昔の、事とか」
「猫っ」
ハルキが顔を上げ、嬉しそうに笑う。
「猫?」
「うん。 黒い猫が私のあげたエサを美味しそうに食べてるんだ。 可愛いな〜」
猫、ねぇ。
ハルキはバラバラにした父親を野良猫に食わせてたらしいけど……それじゃないよな。
「その猫、どこにいったんですか?」
「さあ。 私の知った事じゃないよ。 友達になりたかったけど、その作り方、昔は知らなかったし」
友達になろうとも、してなかったしね。
「でも、死体の作り方なら知ってたよ。 教えてあげよっか?」
腕を、伸ばしてくる。
「え?」
「死体の作り方」
そうじゃなくて。 聞こえなかったんじゃなくて。
カチリッという音が耳元でしてぐああぁぁぁぁぁッッ!!?
「ピアス♪」
「…………ッッ」
ホッチキス、耳、させられた。
やっべ……超痛い。 死ぬ。 かなり、いぎぎいぎぎぎぎぎぎいいいぎぎ。
「……はぁっ!」
思い切り、芯を引っこ抜く。
耳から垂れた血が、真っ白なシートに付着し、斑模様をつける。
「痛いの我慢してこそ、男なんだよ」
「……っ、はい……っ」
耳を押さえて、唇を噛みしめる。
当分ピアス状態だな。 光里さんに貸してもらおうか。
ホッチキスを置いて、ハルキが爪を噛む。
自分で剥いだのか、皮もぐちゃぐちゃだ。
「む……すこし……覚えてるんだよ」
「え?」
耳の痛さで、ハルキの言葉が最後だけしか聞き取れなかった。
聞き返すと、ハルキが能面顔でオレを見ている。
「昔の事、少しは覚えてるんだよ」
「………」
「だけど、少し怖いかも」
無機質な目の中。 怖い映像しか映らない。
人間がみんな恐ろしいものでしか見えなくなって。
世界全体から追い出された気持ちになる。
「もう、遅くなるね」
「……はい」
窓の外。
夕焼けを見ながら、ハルキが呟いた。
「送ってく」 「ありがとうございます」
- Re: 崩壊少女と無心少年 ( No.157 )
- 日時: 2010/08/02 20:08
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
.
仲よしこよしで手をつないで、一回の待合室まで下りる。
精神状態が悪い患者は部屋に隔離されていて、ハルキも本来なら何をしでかすか分からないから、隔離されるべき対象ではあるんだけど。
ハルキを一回部屋に隔離したら、ガラスは割るわ、手首を掻きむしるわ。
チェーンで手首を固定しても、奇声をあげる日が続いていたらしく、自由に歩き回る許可が出たらしい。
「あっ」
待合室で、年寄りばかりが座っているソファ。
そこに、一人ポツンと座っている男がいた。
ハルキは彼を見て、オレの腕を引っ張り近づいた。
「また来てるんだね」
親しげに話しかけると、彼がこちらを向いた。
どこか、オレと似ているような部分がある、死んだ目をした男だった。
光里さんよりかは年下くらいかな。
「今日はあの女の人いないの?」
「……いない。 僕もオフだ」
「ふうん。 でも、あの子いるとあなたと話せないからいけないよ」
「そうだな」
男はオレに気づいて、会釈した。
オレも頭を下げる。
「あの女の人とも友達になりたいんだけどー」
「それは、無理かも」
「なんで?」
「……あいつは、マイナスしか運ばないよ」
直感だった。
オレは、この男を知ってる。 直接関係はしてないけど。
ハルキは首を傾げて、意味が分からない顔をしている。
「蛍、なんか痩せた。 もっと食え」
「余計なお世話。 お前もな」
「私なんてデブッチョだよ」
嘘つけ。 むっちゃ軽いじゃないか。
にしても、『蛍』 ねぇ。
「今日、何しに来たの?」
「診察。 僕じゃないよ、あの女の人」
「なんであの人来てないの」
男はうーんと唸り、
「寝てるんだ」
答えた。
ハルキは納得したらしく、 「あかね、この人も私の友達なんだよ。 蛍っていうんだよ」
「そうですか」
「あかね、っていうんだ。 可愛い名前だな」
余計なお世話。 心からそう思います。
「そちらも、“蛍” なんて可愛らしい名前じゃないですか」
「………まあ、ね」
この人も、何考えてんだか。
蛍はもう、死んでるはずだっけ。 キミの、お兄さんでしたよね。
「………元気ですか?」
「誰が?」
「妹さん」
死んだ目が、
一瞬光った。
男は焦点を外し、少しゆっくり呼吸して。
「……元気かな」
「なら、よかったです。 他人ながら、心配だったんで」
「そりゃどうも」
ハルキが、妹いたんだと尋ねるのをかわし、男が立ち上がる。
「僕、診察があるんで」
アナウンスが、彼の名前を呼ぶ。
まさかこんな所で会うとは思わなかったけど。
彼は、今でも傷つけた妹の傍にいるらしい。
知ったこっちゃないけど。
- Re: 崩壊少女と無心少年 ( No.158 )
- 日時: 2010/08/02 20:18
- 名前: 月兎 (ID: QuEgfe7r)
おわぁ!!
マイナス大好きなのでなんか嬉しいです、でもなんか複雑な感じが…
同じ病院なんですね、、、これからお話がどうなっていくのかが楽しみです!
((ハルキといろはが一緒にいるとこを想像すると…でも仲いくなると私的にうれs(殴
- Re: 崩壊少女と無心少年 ( No.159 )
- 日時: 2010/08/03 07:41
- 名前: 風水 (ID: STEmBwbT)
マイナスだ…。 突然出てくるから驚く。
耳にホッチキスなんて痛いですね・
絶対されたくないです
- Re: 崩壊少女と無心少年 ( No.160 )
- 日時: 2010/08/03 13:00
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
もしかしたら、マイナスの人が少し出てくるかも
しれません(~_~;)
年代で言うと、あかねが13歳の時、夕衣は20歳でした。
ハルキといろはは絶対に仲良くなれないデス笑
ハルキはともかく、いろはは蛍以外の人間嫌いですから(-_-)
>月兎さん
突然出てきてこそのマイナスです。
ホッチキス…自分もされたくないですよ苦笑
>風水さん
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