ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【完結】音符的スタッカート!【しました】
- 日時: 2012/02/02 19:27
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: bvgtbsWW)
- 参照: http://sasachiki.blog.fc2.com/
そして「わたし」と「私」と「僕」は。
望んだハッピーエンドへと、飛び込む。
*
>>188■完結しましたのでお話でも。
原点回帰っていうより、原点退化っていうか
というわけで久しいささめです
■お客様でせう
*メモ帳(95)様 *かしお様 *真飛様 *朱音様 *今日様 *ハナビ様 *遮犬様 *蟻様
*nanashi様 *とろわ様 *匿名の流星様 *ソルト様
■本編
・起・
>>01>>02>>4>>10>>12>>17 — 小説家(仮)なわたし
>>21>>31 — 陸上部な私
>>33>>39>>40>>49 — 小説家な僕
・承・
>>54>>59>>60>>61 — 思想中(微)なわたし
>>63-64>>66>>68 — 試走中(殆)な私
>>70>>80>>81 — 死相中(終)な僕
・転・
>>85>>88-90 — KENKA☆なわたし
>>92-93>>98-100>>102-104— KANKA*な私
>>105-106>>110-114 — KEIKA★な僕
・結・
>>116-121>>124-126>>129-131— 最後まで夢見がちなわたし 終了
>>134-136>>139-140>>144-147 — 最後まで手を伸ばす私 終了
>>151-160>>162>>165-168 — 最後まで大好きな僕 終了
・エピローグ・
>>172-173 — そして、歩き始めた僕 終了
>>174-176 — きっと、駆け出し始めた私 終了
>>180-184 — だけど、書き始めたわたし 終了
■おまけ?
登場人物の名前の読み仮名 >>11
キャラに贈りたい曲
☆主人公その一、私へ >>107
☆主人公その二、衣食りりるへ >>108
☆主人公その三、笹宮因幡へ >>109
転の前に少しお礼をば。 >>115
謝礼 >>150
*2010/09/08 21:40に執筆始めました。
やっぱこのスレタイすっきりして落ち着きます。
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- KANKA*な私3 ( No.98 )
- 日時: 2011/08/04 22:41
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 一族滅亡☆キック
八千代坂 涼という人物は、派手なグループに所属しているにも関わらず(これは私の偏見だろうけど)、あっさりきっぱりしっかり……という感じの子だった。擬音語ばかりで分かりづらいけど、要は人間関係に固執せずに、言いたいことはきっぱり言う。そして、クラスのリーダーに選出されるほどのしっかり者だった——ということである。周囲から見れば、おとなしいタイプである衣食りりると明るいはきはきした彼女の組み合わせは意外だったらしい。彼女の友達との話の中では、私と涼ちゃんが友達になんて珍しいという言葉を良く聞いた。
(確かに、私と涼ちゃんは一緒にいるのは、少し変なのかもなぁ……)
私と涼ちゃんが一緒にいるのはおかしい——それでも私は涼ちゃんが好きだった。無論、友愛として。
入学当時に比べ、友人関係はすごく広くなっていた。これも全て彼女のおかげだ。クラブでは明るい涼ちゃんが私と居てくれるようになったからか、彼女の友人達も私と喋ってくれるようになったし、クラスでも私は一人になることはなくなっていた。クラスの子たちは、私が普通に会話出来ると知ったようで(どうやら人といるのが嫌いだと思われていたらしい。ひっでー)、夏休みの前には、男女両方共気兼ねなく話せるようになっていた。今まで散々隠れていた明るい性格が表に出てきたようで、大爆笑したりツッコミを交わしたり——今まで縁のなかったことが、苦痛ではなくなっていた。
「……自分を飾らないことが大切だって、そこで私はようやく分かった。……涼ちゃんのおかげ——だった」
——まるで、小説みたいな綺麗な台詞だ。
苦笑いをして、私は画面を見やすいように座席の腕置きを利用して頬杖をついた。ぶにゅりと頬が歪む。夢の中なのに、変な感じである。
私がたくさんの友人を得たことで、中学時代の友人は安心したそうだ。よっぽど友達がいない私を心配していたらしい。友達いないってわかってたんならクラスの垣根飛び越えてでも俺を助けに来いよ相棒、といきり立ちたいところだったけど、温厚な性格と称して苦笑しておいた。折角の居場所を、キレるという行為の末に壊したくない。そう考えたからだ。
——ここまでは、良かったんだけどなぁ。
ぶつり。画面が一旦黒に染まった。また別の映像が流れるのに、時間はたいしてかからない。
次の映像は、雨で彩られていた。体育館の近くのアジサイが綺麗に咲いていることから、六月だと予想できた。梅雨に入っているのか、体育館の解放されたドアからは、空が厚い灰色の雲に覆われていることがわかる。しとしとと降る雨は地面を濡らすばかりで、植物に恵みを……なーんて考えちゃいないようだ。どろどろの土が玄関に足跡の形を象っている。
「ここからが、トラウマな訳でありまして」
わざと平気なフリをしてみると、心の生傷がぐちゃりと生臭い音を起てて疼いた。痛いと顔をしかめる前に理解する。こっからは、この六月の“とある会話”から、私のトラウマ生活はスタートするからだ。この会話さえなかったら、今現在の衣食りりるはもっと別の性格——考えを持って、楽しい高校生ライフを送っていたんだろうに。後悔ばかり滲んできた。
『ばいばーい、りりる』
『お疲れー。後片付けの当番、がんばれー!』
『いえっさー! 二人ともばいばーい、お疲れ様ー!』
中腰のまま、ぱたぱたと両手を振る。走りまわって乳酸が溜まった体は些細な動きだけでぎしりと音をたてた。
平日の放課後、クラブ後の片付けの当番、生ぬるい六月の湿った空気、梅雨。見覚えのある光景は——友人である“彼女”と私でクラブの後片付け中のものだ。私の方はクラブの子とさよならの挨拶を交わしてご満悦そうで、“彼女”の方はなぜかさえない様子だ。友達と良好な関係を築いている私は彼女の普段とは違う様子に気付かないようで、バスケットボールがたくさん乗った台車を押している。
『……ねぇ、最近さ……りりる、八千代坂さんと仲良しだよね?』
『えっ、そ、そう……か、な?』
ちょうど台車を部室に運び込んで一息ついた時、彼女は部室から出ていこうとする私の肩を掴んだ。
非力な彼女にしては珍しく手にこもる力はいつもと違い、少し強めで驚いた。今まで私の話に乗ってこなかったのが嘘のように、彼女は言葉を連ねる。声の含有成分は、不満、悲しみ、疑問、最後に——怒り。まるで罪人を裁く断罪者のように、彼女は冷たい瞳をしていた。
『そうだよ。りりる、私と友達になってくれるって言ったじゃない。それなのに、最近は八千代坂さんとばっかり喋ってる』
『……でも、クラブではえみちゃんとも喋ってるよ』
おとなしい彼女こと桐島 笑香(きりじま えみか)——えみちゃんの顔は怖かった。肩を掴まれているし、私に何かしらの答えを求めてるみたいだから、怖そうな雰囲気からは逃れられない。曖昧な私の答えにえみちゃんは不満気に目をつりあげた。
『口ではそう言ってるけど、喋ってて楽しそうなのも、すぐについていくのも八千代坂さんじゃない。……何か、りりる変わったよね。四月の頃は、一人でも平気な顔して過ごしてたのに、今じゃ八千代坂さんとばっか。金魚のフンって、そういうことじゃないの?』
『別に……べ、別にいつもくっついてる訳じゃないよ。一緒にいるのは、涼ちゃんも私のこと嫌がらないし、楽しいし。……そ、それに……』
『それに、何?』
『…………いや、何でもない』
——えみちゃんみたいに、私を下に見ないし。
本音を言いそうになるほど焦っていたことを自覚し、えみちゃんの言葉から逃げるように床を向いた。えみちゃんは依然、私の理由に納得していないみたいで、気まずい雰囲気が二人の間に漂っている。
えみちゃんは、私と友達になりたいと申告してきてから、私にべったりだった。また、同じ境遇のせいで仲間意識が強いのか、妙に私には気を許してきた。悪く言えば、私がえみちゃんに頭が上がらないことを知ってか、自分の方が優位に立っているような発言をする。たとえば、りりるさっさと来なよとか、ふざけてるのかとか。傍からみれば何だその程度かと思われそうだけど、思春期の女子の間ではそういう小さなことでもちくちくと心を刺す。えみちゃんと一緒に過ごす度に、私は心に小さな傷を負い続けていたのだ。
(でも、私は臆病だから、そんなこと言えなくて)
えみちゃんには、もう一つ問題があった。
世の中の派手な子を毛嫌いしているという問題である。もっと詳しく言えば、派手な子明るい子イコール頭が悪い——という、固執したイメージを抱いていた。しかも運の悪いことに、皆の頼れるリーダーである涼ちゃんもそのイメージの例外では無かったのだ。むしろ、数少ない友人をとられると勘違いしていたのか、私のせいで余計に悪印象を持っていた。
- KANKA*な私4 ( No.99 )
- 日時: 2011/08/05 00:21
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 一族滅亡☆キック
『ねぇりりる。あんな子といたらりりるまで馬鹿になるよ? りりる頭良いのに、同類に思われるよ?』
『あー……私、学力とか気に、しないから……。ていうか、涼ちゃんは文武両道だよ? 頭も良いんだよ。この前のテストなんてね、』
『違うの。ねぇ、りりる。私が言いたいことは、そうじゃないんやって』
『え?』
不思議そうに目を丸くする私に、えみちゃんは辛そうに告げた。
……これが私の運命をぶち切る一言になろうなんて、運命の主である私自身は全く知らずに。
『八千代坂さんと私、どっちが良いのかちゃんとはっきりしてよ。……私、今のりりる信用出来ん……』
『え、ちょ、え、えぇ? えみ、えみちゃん、ちょっと、ちょっと待っ』
『あのさぁ、りりる』
私の言葉を遮って、彼女ははっきりとした声色で言った。
『私と八千代坂さん、どっちと友達なの?』
——ぼぉん。
台車から転げ落ちたボールの音が、二人きりの部室に反響して、固まった状態の私の耳に届く。
(…………友達って、何なんだろう。愛って、何のためにあったんだろう)
優しいえみちゃんと、明るい涼ちゃんはどちらも友達としてはふさわしい人物だ。友愛を捧げることに、私は努力を惜しまないだろう。だけど、どっちがどれだけ大事かだなんて。どっちの方が良いか、だなんて。両方にそれぞれ良いところがある、悪いところがあると理解していた私には決めようがないのだ。私のように、平和主義で全て平等が基本、物事は素直に受け入れるタイプ——友人関係に波風を立てたくない性格だと、特に。
転がったボールを拾い上げて、また台車に乗せて。小さくばいばいと挨拶して、えみちゃんは部室から出て行った。外では雨が勢いを増し、体育館の奥にあるこの部室までざーざーと音が聞こえる。体育館のドアからは、きっと空が深いグレーに染まっているところを見られるだろう。
『決めれるわけ、ないでしょーがぁーよぉー』
私の妙に間延びした声は、さっきボールの転がった音のようには響いてくれなかった。
……一週間後。
誰が告げ口したのか、えみちゃんが派手な女バスメンバーやクラブの先輩の悪口を言ったということが本人たちの耳に入り————私の友達であるはずの彼女は、本当に一人ぼっちになった。先輩たちから完全無視、あるいはきつい対処を受ける処遇となった彼女は、今まで以上に同級生である涼ちゃんたちから敬遠されるようになった。えみちゃんは頼る人が私しかいなくなったのか、自分の傍から離れさせようとしなかった。
えみちゃんが私と居ることにより、何となく、彼女と私が友達でいることを善く思わない子がいることを私は知っていた。
(冷たい視線が私と彼女に向けられてたことも……私は気付いていたんだ。なのに……)
でもその視線は、えみちゃんのものではない。
だって彼女はあの時、私しか道連れにする者がいなかったのだから。
『あれ、涼ちゃんどーしたの? クラブ、もう終わったでしょ?』
『……あのさ、りりる。話あるんだけどいい?』
涼ちゃんが私に話しかけてきたのは——いつか見たような、薄暗い雨の日だった。
- KANKA*な私5 ( No.100 )
- 日時: 2011/08/07 18:40
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 一族滅亡☆キック
私のトラウマに必要不可欠な人物は二人いる。一人目は、八千代坂 涼——涼ちゃん。二人は言わずもがな、桐島 笑香——えみちゃん。この二人が織りなす物語に私は引っ張りこまれた、そう表現してもおかしくないぐらい、私は損な役を担った。
今さらだけど、彼女たちはお互いにお互いを嫌いあっていたらしい。涼ちゃんはえみちゃんを、えみちゃんは涼ちゃんを。お互いに嫌いあった理由は、実に簡単なものだった。
(私のことを、とられるかと思ってたから……か……)
デジャヴ!——そう叫ぶしか無かった、あの日。
涼ちゃんは、一人で後片付けをしようとしていた私のところに『一緒に手伝うよ』とやってきた。ボールは私一人でも運べそうだったから、勿論初めは断った。だけど、涼ちゃんが切羽詰った顔でどうしてもと言うから、私は不思議に思いながら部室へと向かったのだった。
えみちゃんと二人きりの時とは違う、少し勢いが強い雨の日。どっちが友達なの、と聞かれたあの日から私はずっと悩んでいた。えみちゃんは聞いたことすら忘れているのか、普通に話しかけてきていたから余計に自分の内にもやもやとしたものが溜まっていた。
『あのさー。桐島さんって、あたしや他の子のこと……先輩とかの悪口言ってたじゃん? そんで今さぁ、バスケ部皆からスルーされてて一人じゃん』
『……あー、うん、そだね。先輩とかから、特に……』
『それでさぁ……ちょっと、りりるに一言』
涼ちゃんの鋭い視線が私をとらえた。瞳には真剣な光が宿っているのに、口調や表情は優しそうだから、何か変な感じ。
台車のコロが音がBGMみたいだ、と薄っすら考えていると、涼ちゃんは歩くのを止めた。私と台車だけが前進したから、私は急いで台車ごと動きを止めた。ボールが台車から落ちるかと思ったけど、微妙に揺れるだけで心配はすぐに消えた。
『桐島さんと、一緒にいないで』
『………………………………………………………………え、ええー?』
馬鹿みたいに何も言えなくなった私が搾り出したのは、ただの疑問符。
目の前で桐島さんと一緒にいないでという涼ちゃんは、八千代坂さんと私どっちと友達なのと責めて来た彼女とダブった。えみちゃんの疑うような眼差しと、辛そうに言葉を紡ぐ涼ちゃんとでは、だいぶ違いがあったけど。
『一緒にいないで、って……どういう感じで?』
『そのまんまの意味だよ。桐島さんは色んな人を軽蔑してるし、悪口も言ってる。りりるは良い子だから離れにくいんだろうけど、それならあたしの方からはっきり言っておくから。だから、あたしと一緒にいてよ。あたしはりりるといたいの』
『……涼ちゃんは、もしも私がえみちゃんと離れたら——ずっと一緒に?』
『うん、ずっと居る。友達だもん』
——とも、だち。
反復したその言葉は、真っ直ぐな涼ちゃんの前ではきらきらと光を放つ。
私は、勝手気ままなえみちゃんに少し疲れ始めていた。ついでに言うと、涼ちゃんのところへも行けないことも、友達にえみちゃんといることに同情されるのもうんざりしていた。全ての点から言うと、私はえみちゃんより涼ちゃんの方が好きだったのだ。涼ちゃんは私以外の友達がたくさん居るのに、友達になろうと言ってくれた時からずっと、私だけを親友と認めてくれていた。皆のようにあだ名やちゃん付けでは無く、涼と呼んでとも言われるぐらい、気を許してくれていた。
——私、涼ちゃんと居たいな。
『あのさ……私が涼ちゃんと一緒にいるとしたら、えみちゃんはどうするの? はっきり言うって、どう言うのかな』
『あぁ、桐島さんのこと? 桐島さんのことはね、大丈夫。皆でちゃんと話し合ったからさ』
『話し合ったって、何を?』
『あぁ、実はね。りりるも大体感じてると思うけどさぁ————』
私と一緒に居てくれる————その言葉が、どれだけ私にとって甘美な響きを含んでいただろうか。出来るものなら私は涼ちゃんと仲良くしていたかった。涼ちゃんと一緒にいると、空気が楽だった。私の間の抜けた発言に、彼女がツッコミを入れて、彼女の言葉に私が笑って。えみちゃんと一緒にいると味わえない心地よさ。
もう少しで、私が誘惑に負けそうになった時。涼ちゃんは衝撃の一言を笑顔で呟いた。
『————クラブの皆で、桐島さんを無視しようってことになったんだよね』
『っ…………え、涼ちゃん、それっ、て?』
『うーんとね、だからね』
涼ちゃんの一言で、私は体中の血が凍るような恐怖を覚えた。何で彼女はこんな恐ろしいことを飄々と言えるのかと。どうして——簡単に人を孤独につなげようとするのだろう、と。
ぎり、と噛み締めた唇がひどく冷たい。私が俯いたせいで表情が窺えないのか、涼ちゃんは淡々とこれからのことを述べた。
『向こうがあたしたちに謝罪してくるまで、クラブの中では先輩も含めて皆で無視しようってことになったんだよねー。りりるはあんま知らされてないけど、先輩の中でも新藤先輩がすっごく怒っちゃってさ。あんな奴クラブの後輩とか信じられない、って』
——何で、そんなこと言えるの。
両手を握り締めると、手汗のせいでぬめった。バスケをするからと切った爪は、いくら握り締めてもするすると肌の表面をなぞるばかりで、痛みなんて全然ない。滑稽だ。
『で、先輩の怒るのも無理ないし、あたしたちもあんま桐島さんのこと好きじゃないし。だから、皆で無視しようって。んま、それで辞めたらそれはそれで嬉しいし、良いんじゃないかなって。……あぁ、皆で話し合ったんだよ? クラブの途中、りりる委員会で居なかったけど、クラブの皆で隅集まって、ちゃんと桐島さんに聞こえないように話し合ってさ。本人はクラブの中の雰囲気に気付き始めてるだろうけど、本人が悪いんだからしょーがないよねぇ————』
——私は、優しい涼ちゃんが好きです。でも、今の涼ちゃんは違うと思うのです。
涼ちゃんの同意を求める声が雑音に聞こえる。顔を上げないと、彼女の顔を見て話さないと、と思うのに首は固まったように動かない。
『————んでさぁ、りりる。いつりりるのこと、桐島さんに言おうか? あたしは明日でもいーんだけど?』
『………………んね』
『え、何?』
『…………ごめ、んね』
- Re: 音符的スタッカート!【KANKA*な私中】 ( No.101 )
- 日時: 2011/08/08 23:29
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 一族滅亡☆キック
どうしようか、本当に上手くて上手で綺麗で面白くて楽しくてどきどきしてたまらないって叫びたくなるような小説と出会ってしまった。アレで何でプロじゃないんすか何でネットで個人的にしか書いてないんすかすげぇ勿体無いみたいな
もう冷や汗びっしょりですよ。やばい、あの人やっぱ神だ。前作も真面目に読んどけば良かった。
あぁぁぁ初めっからいるってのに何であの人と関わりなかったんだ
ほんと残念だ……良いんだ、これから関わりあいに行くから。
うわぁ、ほんと余韻に浸るとはこのことっすよ。
久しぶりにサイトとかの小説で続き読みたくてでもゆっくり読まなきゃもったいないって感じのすげぇ小説に出会った気がします、興奮し過ぎておかしい。土下座して本一冊書いてください買うんでって言いたいぐらいですよ。どうしよう他の人に言いたいけどこれはアタイだけのものさと意気込みたいような気もするもぞもぞ。
とりあえず、恐ろしい文章力と面白さにレベルの違いというか、愛の差を見せ付けられて冷や汗びっしょりチキン肌ばりばりなささめですよっと。
こっちでは久しぶりな独り言でしたよっと。
ついでにようやく100レス有難う御座います。
例え8割がささめのレスだとしてもささめ泣かない、泣かないよ。
とりあえずこっからラストにかけて頑張ります。きらり。
- Re: 音符的スタッカート!【KANKA*な私中】 ( No.102 )
- 日時: 2011/08/11 10:59
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- 参照: 一族滅亡☆キック
頭を上げると、首からべきりと何かが折れるような音がした。握り締めた拳はふるふると震えた。怒鳴りたい衝動を、悲しみを必死に抑えていた。
泣きそうだと分かりながらも、私は彼女の好意を否定する言葉を吐いた。
『私、一人ぼっちとか、やだよ。だって、私が一人ぼっちだったの、すごく嫌だった、し』
涼ちゃんの驚いた顔が、今でも脳裏にこびり付いて離れない。
えみちゃんなんて嫌いだと、涼ちゃんと一緒にいたいと大声で言えばよかったのだ。私も涼ちゃんたちとえみちゃんを無視して、その様子を嘲笑っていればよかったのだ。
だけど私の中の正義感……いや、ただ“彼女たちのやろうとしていることはおかしい”という認識が、私の過去の記憶を呼び起した。
涼ちゃんと、全く関係が無かった頃の——一人ぼっちでボールを片付けていた、あの時の自分を。
『だから……ごめん、ね』
一人ぼっちは嫌だ。たとえ孤独に慣れている人間でも、ちっとも嫌だと思わないなんてことはないと思う。実際に一人だった私はその苦しみを味わっている。いじめられた経験こそ無くても、無視されるという行為がどれだけ嫌か、どれだけ学校に来にくくなるかを私は知っている。
でも、加害者である彼らは知らない。平気で人を傷つけて、平気で自分の日常を堪能する。他人を犠牲にしてまで優先する欲に、体をまみれさせながら。
『本当に、ごめんなさい……』
これが最悪の道だと、八千代坂涼を傷つけてしまう選択だと知りつつも。
でも、私は選択した。
『私、涼ちゃんと一緒にいられないよ……』
そうして私は、彼女を突き放した。
*
「…………ぷあ?」
寝起きで焦点の定まらない瞳は、高い天井をうつした。天井の染みが人の顔のように見える。日常ではまじまじと見ることのなかったそれが、薄暗い部屋の中では際立って見えた。にたり、と笑っているような染みは私の背筋を冷たくさせた。怖い。一人きりの部屋は薄暗いから、普段よりも怖さがアップしている。
「ふぁー……変な夢、みたかも……しれない」
寝起きのせいか、かなり間抜けな声をあげて起きたような気がする。だるい体を起こすと、嫌でも机の上に広げた数学が目に入ってきて——そこで、やっと夢の世界から現実へ戻ってきたんだと実感した。
さっきまでリアル過ぎる夢を見ていたせいで、現実との境が曖昧になっているのかもしれない。
(首、ぐきぐきするわー)
疲れたから仮眠をとっているのは正解だったっぽい。片手を蛍光灯の光をかざしてみると、鉛筆の粉が手の側面にべっとりと。シャーペン使ったのに鉛筆の粉付くなんて何かおかしいような気がする。いや、当たり前なんだけど。
エアコンが効き過ぎているのか、妙に室内が暑い。温かい空気のせいで脳みそまで浸食されてる。頭が熱を持っていて、少し頭痛がした。
後、乾いた空気の中寝ていたので喉がかさかさする。唾液だけ分泌されてるのが気持ち悪い。
「……コンビニ、行こう」
思い立ったが吉日。ベッドに寝転がったまま、財布と携帯を手探りで探す。すぐに見つけたからラッキーだった。一応、近くにあるコートを羽織っておく。
ずるずるとトラウマを抱えて、私はびゅうびゅうと冬風の吹く外へと飛び出していった。
*
外は思いのほか寒かった。午前中にクラブがあったので服装は制服、上にチョコレート色のコート。冬用の制服だから防寒スキルは高いんだろうけど、この烈風の中じゃまだ寒い。マフラーも追加すれば良かったと後悔して、びゅうびゅうと吹きすざむ風の中重い足を引きずるように歩いた。風が前から後ろへ吹くたびにコートがはためいて、むき出しの太ももが裂かれたように痛む。
「さっむ……」
——呟いてもどうにもならないのに何言ってんですか。
自分で自分に厳しく告げてみる。コンビニと私の家の距離はたいしたものじゃないから、ちょっと我慢すれば良いだけなんだろうけど。地球温暖化と政府が謳っている割には、冬の寒さは毎年ひどくなっている。ぐずぐずと鼻水をすすると、喉の奥がつんとした。乾いた冷気にさらされた唇を噛むと、ぴきりと音がして、たらりと口の端に何かが垂れる。唇を切ったっぽい。舐めると鉄の味がした。
リップも塗れば良かった。マフラーも巻けば良かった。過去の自分を振り返ってみても、後悔しか見当たんない。さっきのトラウマだってそうだ。
「結局、涼ちゃんとは気まずくて話せなくなったしー。えみちゃんは私の居場所堂々とかすめとって涼ちゃんと和解して仲良くなっちゃったしー。私はバスケ部から転部をせざるを得なくなりましたしー。あぁぁぁぁあああーほんっと——」
——損なこと、ばっかりじゃないか。
道路には、風が荒れているせいか人一人いない。私はいるけど。だから、思い切り不満を口に出してみる。まるで、どこかの小説みたいなストーリーだった。呆れたように笑うと、掲示版に貼っている色褪せたポスターのキャラクターと目があった。隣に生えている木は、ぐつぐつ煮詰めた煮物みたいな色をしていて、もうちょっと風が強ければ枯れそうな印象を受ける。
「…………ほんっと、後悔だな」
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