ダーク・ファンタジー小説
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- リアルゲーム
- 日時: 2017/06/21 00:50
- 名前: 電波 (ID: iruYO3tg)
皆さん初めまして、電波と申します!
ここで投稿するのは初めてなので少し緊張しているのですが、よろしくお願いします。
また、文才ないのでうまく書けないかもしれませんがご了承ください!
それとそれと!
この作品には過度な暴力表現とグロテスクな描写が(たまに性的描写も)あります。それがダメな人は回れ右してください!
・注意事項
暴言や荒らしなどの行為はやめてください。
以上です。
・ゲームのルール
1.『全校生徒で殺し合いをする』
2.『期間は7日間。それまでに校内の生存者は2人にしておくこと。また、期間内に規定の人数に到達しなかった場合、全員失格。死刑になる』
3.『ゲーム途中に校外へと出た者は罪(ペナルティ)となり、失格となる』
4.『全校生徒にはそれぞれ戦うための異能(スキル)が配布される』
5.『殺し方や戦い方に縛りはない』
6.『校舎内に『鈴木さん』が徘徊する』
7.『クリア条件は2種類。1つ目は7日間以内に生存者を2人にすること。2つ目は校舎を徘徊する『鈴木さん』を殺すこと。その場合は、生存者の数に関係なくゲームがクリアとなる』
- Re: リアルゲーム ( No.70 )
- 日時: 2015/05/04 11:43
- 名前: 電波 (ID: dFTsrC3s)
神居は最後の腕で滝沢を引っ張って廊下を歩いていた。行き先はまだ決まっていないがとりあえずどこか隠れる場所を探しているのが現状だった。
そんな時、安心したような表情をして滝沢が神居に声を掛けた。
「本当に助かります。桐ヶ谷さんが来なかったらどうなっていたことか……」
まるで自分が頼れる人又は良い人という解釈をされているのが癪(しゃく)に障る。
「ただの気まぐれだよ。礼を言うことでもないし言われる筋合いもない」
なぜこの女を連れてきたのか、再び自分への疑問が湧き上がる神居。本当なら先ほどの教室で殺しているはずなのだが妙な気まぐれを起こしてここまで連れてきてしまった。
(本当……どうかしてる)
神居がそう思った時だった。
「それにしても怪我の方は大丈夫なんですか?」
滝沢がふと気になった様子で言い始めた。
彼女には自分の怪我の状態については伝えていない。もし左腕が消えたと彼女が知ったらどんな反応を示すだろうか。
きっと正気ではいられない。
廊下中に甲高い声を響かせるかもしれないし、その場で卒倒されるかもしれない。神居は慎重に言葉を選び、普段通りに話す。
「ああ、別に大したことないさ。たかが動物に戯(じゃ)れられただけだよ」
「ど、動物!?飼育小屋までわざわざ歩いて行かれたんですか!?」
「……まぁね」
相変わらずの反応ぶりだ…そう思いながら神居は適当に返事をする。
こんなやり取りをすること数分、神居はふとこんな疑問が浮かんだ。
「そういえば、滝沢さんって携帯持ってないの?」
なぜこんな質問をするかと言うとさっきの教室でのことだった。
そろそろ教室から出ようとする時、滝沢が荷物の準備をしている最中ある物を見つけた。
それは手紙。
滝沢の机の中にそっと置かれており、彼女はその手紙に身に覚えがないとのことだ。
神居が片手で器用に手紙を開け、中身を確認すると興味深い内容が書かれていた。その下には内容が分かるようにと点字で記されている。
『おめでとうございます。あなたのスキルは『観察者(ボーダー)』でこざいます。そのスキルはあらゆる場所に潜む敵の場所が特定でき、どのような状況下でも対応が可能です。使用方法は目を閉じることで、滝沢様を中心にマップが表示されます。また、人の健康状態も把握することができ、相手が普通の状態であるならば緑、相手が怪我をしているならば赤という形になっております』
そこで手紙は終了した。スキルに関する運営側からの手紙。その時は特に何も思わなかったが、今考えてみると違和感を感じる。
周りの生徒も同じかどうかは分からないが神居の場合は携帯でスキルの情報を得ていた。
しかし、彼女の場合は点字の手紙。つまり何が言いたいかと言うと彼女が目が見えないということを向こう側の人間は知っていたというわけだ。
すると、答え合わせをするかの如くあははと苦笑いを浮かべる滝沢。
「すみません、目が見えないなら携帯があっても意味ないかなぁって思いまして…携帯は持ってないんです」
「そう……」
やはり彼女は携帯を持っていなかった。
可能性として考えられるのが運営側は自分達を徹底的に調べていること。
彼女が盲目であることを知らなかったらこんな丁寧な報告はしないはずだ。
「これは厄介だね……」
「やっぱりですよね……携帯ないと色々不便ですよね…」
そういうことじゃない、と言葉が喉まで出かかるが気分的な問題でそれを抑え込んだ。
しばらく歩くこと五分、神居はある場所へとたどり着く。
そこは以前、勝平と服部が非常食を隠しに来た場所、用務員室こと通称『無駄部屋』である。
神居はここへ転入してきたばかりで詳しいことは分からないが、とりあえずここの部屋を持て余していることぐらいは知っていた。
神居は周りを確認する。そこに人がいないことを再確認すると彼は無駄部屋へと視線を向けた。
この人通りの少ない道なら襲われる可能性も少ない。それに、この部屋なら滝沢を残していてもなんら問題もなさそうだ。
神居はそう考えると彼女を連れて中へと入っていく。
部屋の中は案外綺麗にされており、キチンと整頓されているようだった。
神居はすぐそこの椅子に彼女を座らせた。
「ここで待ってて。僕はもう少し他に誰かいないか探してくるから」
「はい、分かりました。気をつけてください」
「うん」
神居はそう言うと部屋から出て行った。
部屋から出た時の神居の表情は笑みを浮かべていた。他に誰かいないか探してくると言いはしたが別に生かせるとは言っていない。
彼は誰かを殺すためにわざわざ外へと出かけていくのだ。もっと食べるためにもっと強くなるために、神居は歩みを進めていくのだった。
数十分後。
用務員室にて。滝沢は軽い溜め息を吐いて俯いた。両手には完成した編み物があり、それを手で触って感触を確かめている。
つい先ほど完成したこの編み物は滝沢自身かなりの出来栄えだった。片手ですっぽり入ってしまうほどに小ぶりだが、綺麗な色をした編み物だった。
彼女は一通り触っていき、出来に納得したのか笑みを浮かべた。
こんな時に何をしているのかと第三者は言うだろうが、彼女だって本当ならこの場から離れて一刻でも早く怪我をしている人の手当てはしたかった。
しかし、目が見えないこの少女が外に出て行って何になる。暴徒化した生徒に殺されるか生き恥を晒されるかのどちらかしかないだろう。
誰も助けられないし、自分には何もできない。
滝沢は表情を曇らせた。
あんなに色々な人の前では良い人でいたのに肝心な時には何もできない。
教室の時に限ってもそうだ。誰かが教室に入り込んでクラスメイトが逃げまどう中、自分は声を上げることもなく教室の隅で隠れていたのだ。
胸の中に吹き抜けていく虚しさがただだ残る。
「これではまるで……」
そう言いかけた時だった。
ガシャン!
扉が勢いよく開け放たれた音が部屋内に木霊した。
「ッ!?」
滝沢はそれに反応し、見えもしないのに扉へと顔を向けた。一瞬、神居かと思ったがよくよく考えれば意味もなく扉を蹴破るような真似は彼はしないだろう。
では、入ってきたのは誰だ?
コツン……コツン……
誰かが中に入ってきたようだ。足音から察して一人。
滝沢の体は今までになく凍りついた。目が見えないこともあり、どんな事になっているのか情報が得られない。
それに隠れようにもどこに隠れたら良いのかも分からない。
(どうしよう……)
今滝沢の目に映る光景はこの部屋内のマップだった。部屋はリビングを中心に多種多様な部屋が繋がっている。
滝沢はその部屋の中心に位置し、侵入者は入り口からここへ入るまでの通路を移動中だった。
どうしよう…どうしよう…頭の中がパニックになる中滝沢はあることを思いついた。
(そうだ……あれなら……)
- Re: リアルゲーム ( No.71 )
- 日時: 2015/05/04 11:44
- 名前: 電波 (ID: dFTsrC3s)
三毛門はよろよろとフラつきながらではあるが廊下を歩いていた。先ほど男子生徒に犯されかけ、命からがら逃げられたはしたがダメージは思ったより大きかったようだ。
最初は特に痛みを感じなかった彼女だが、落ち着きを取り戻す度に体の異常が浮き彫りになってきて辛くなっていた。
「マズイなぁ……どこか休める場所……と言ってもそんな簡単に見つからないよねぇ……」
そんな独り言を呟いてるとある所に視線が止まった。
「お、無駄部屋……ここなら多少は休めるかな……」
部屋の前で足を止め扉を開けようとする。
しかし、
「……?……開かない」
三毛門は少し考えると、ハァと溜め息を吐いた。ダルそうに周囲へと目を配らせ、誰もいないことを願う。
扉の取っ手に手を掛けた瞬間、
パンッ!
まるで空気が破裂したかのような音と共に取っ手が鍵と一緒に砕け散った。
これは少し予想外だったのか慌てて周囲を見る三毛門。
しかし誰も出てこないことを確認すると、安堵の溜め息が溢れた。
気を取り直して扉を開けようと押してみるがなかなか開かない。今度は取っ手があったと思われる穴に指を入れ、引っ張ってみるがこれも開かない。
先ほどの爆発の影響で扉が開かなくなったのかもしれない。
そう考えた三毛門は扉から一旦距離をとった。
「仕方ない……」
幅の狭い廊下で軽く助走をつけ、体全体を使って扉にタックルした。
瞬間、扉はガシャン!と音を立てて開き、その勢いで三毛門は床へと倒れる。
「いてて……」
床に倒れた三毛門は表情を歪ませた。これだけの手負いで扉を破壊するのだから体に相当の負担がかかったのだろう。
起き上がる時もすぐに立ち上がれず、ゆっくりでしかできなかった。
三毛門は壁を伝いながら、何とか前を歩いていた。とにかく体を休ませたい、その一心で部屋へと目指す。
そして、ようやくたどり着いた。
だが、三毛門の表情は晴れやかなものではなかった。と言うより、軽いショックのような物を受けた。
「僕って……とことんついてないね」
三毛門の目の前にあったのはテレビの前に置かれている椅子。そこに座るのは、青ざめた手をだらりと投げだし口から血を流す滝沢の姿だった。
- Re: リアルゲーム ( No.72 )
- 日時: 2015/05/04 12:40
- 名前: 桃猫 (ID: hU7A6qqd)
電波おつか!
滝沢どうなった〜!?
気になる・・・頑張れ〜^^
- Re: リアルゲーム ( No.73 )
- 日時: 2015/05/06 19:08
- 名前: 電波 (ID: dFTsrC3s)
若干ホコリっぽさが残る用務員室で、彼女、三毛門 心愛は困惑していた。
人形のように無表情に椅子に座り、口から血を流す少女をどうしたものかと考える。
しかし、考えたところで良い案は出ずに時間だけが過ぎていく。仕方ない、そう呟きながら三毛門は行動を移す。
「演技してるところ悪いけど、バレッバレだよ……君」
「………………………………」
しかし滝沢に反応はない。が、強いて言うなら彼女の額から大量の汗が滲み出ていた。
これを見てほぼ彼女が生きてることを確信する三毛門。
「あくまで死んだふりをするのかい?」
「……………………………………」
だが反応はない。
「そっちがその気なら僕だって考えがあるよ……」
三毛門は彼女に近づくと彼女の脇にそっと手を差し込んだ。
「あっ!そこはッ………!ちょッ、ダメです!あは…………あははははッ!!」
モゾモゾと彼女の脇に忍び込ませた手を動かし、何かを取り出す。
三毛門が両手に持っていたのは片手に収まる程のゴムボールだった。
「やっぱりね。ゴムボールを脇に挟んで血流の流れを止めて死んだように見せかける。その口の血も唇を噛み切ったものだよね?」
推理が的中したのか戸惑いを隠しきれない滝沢。
彼女なりに自信があった演技だったのだが簡単にそれを看破されてショックが大きかったようだ。
「なんで分かったんですか!?」
自分の胸の前で小さな拳を作りながら必死に問う滝沢。
「君の手と顔、明らかに肌の色が違ってたよ。腕は青白くなってたのに、君の顔はピンク色で生気を感じた。たぶん生きてるんだろうなぁって思ったわけ」
「そ、そんなぁ……」
カクンと肩を落とす滝沢。話している途中、三毛門は滝沢を見てあることに気がついた。
「君……目が見えないの?」
「は、はい……生まれつき目が不自由なもので……」
へぇ、と珍しそうに彼女を見定める。特筆して嘘を吐いてる様子もなさそうだ。
三毛門は辺りを見渡し他に誰かいないか視線を配る。しかし、人の気配がないところを見ると外出中のようだった。
「一人で来た…て言うわけでもなさそうだね」
目が不自由な少女ではここまで来るのは困難を極める。三毛門はこの少女の他に仲間がいると考えた訳なのだが本人自身こんな質問で相手があっさり答えてくれるとは思いもしなかった。
「はい、私の他にもう一人ここまで運んでくれた人がいましてーー」
「ちょっとストップ!」
え?と不思議そうに首を傾げる滝沢。
この少女は自分が何を言おうとしたのか理解できていないようだった。自分が持っている情報をそんなやすやすと相手に喋って良いわけがない。
情報によっては自分や周りの味方にまで危害が加わるのかもしれない。ましてや味方の情報など愚の骨頂。
「なに?君は天然なのかい?そんなあっさり僕に情報を渡したら君を殺してその人も殺しちゃうかもしれないんだよ?」
すると、クスッと滝沢は笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。あなたは私を殺しません」
「なんでそんなことが言えるんだい?」
三毛門は目を細めて彼女に問う。彼女がそこまで言いきれる自信が知りたかった。
「だって……あなたは優しい人だから……」
「………」
三毛門の口があんぐりと開いた。
「あれ?何かおかしな事言いました?」
「そりゃあおかしいよ。だってそれだけの理由で僕を信じるんでしょ?」
そう言うと、滝沢はますます分からないと言わんばかりに表情を変える。
「それの何がいけないんですか?」
「優しいだけで信用するって………裏で何考えてるか分からないんだよ?」
すると、滝沢は微笑んでこう言った。
「大丈夫ですよ。その時はちゃんと受け止めます。それにもしあなたが裏で何か考えてるなら私が言おうとしたこと必死になって止めませんよね?」
「………」
言葉が出なくなる三毛門。
本当にこんな人が世の中にいるのか?と疑いたくなる三毛門だったが彼女の様子から見て本当に違いないだろう。
三毛門は大きな溜め息を吐いて、体の向きを変えた。
「もういいや。ごめんね、邪魔したよ」
この少女に付き合ってられない、その思いもあり彼女はこの部屋から離れていく。
つもりだった。
「待ってください!部屋の前に人が!」
滝沢の声が聞こえる前に彼女の視界にそいつはいた。
土ぼこりと血で汚れた制服に、目に宿るのはケダモノのような荒々しさ。
1人の男子生徒が壊れた扉に立っていた。
「君は……さっきの……!!」
先ほどの爆発の影響で死んだと思われていた男子生徒がそこにいた。
「よぉ、犯しに来たぜ。このクソビッチが!」
- Re: リアルゲーム ( No.74 )
- 日時: 2015/05/06 19:12
- 名前: 電波 (ID: dFTsrC3s)
用務員室で2人の生徒の睨み合いが続いた。
三毛門はこれからどうするべきかを考えていた。
三毛門 心愛のスキルは『連鎖爆弾(リアクト・バーン)』。手で触れた対象を爆発させるスキルである。触れた箇所が例えコンクリートや人でも爆発させ形さえも残させない。また、爆発は触った箇所が多いほどに強さを増し、与えるダメージが大きくなる。
しかし、それゆえに弱点もあった。爆発させるには必ず相手に近づいて触れる必要があるのだ。
三毛門も万一のカウンターとしてそのスキルを持ってるだけにしているのだが、攻撃にはあまり使えない代物なのだ。
もし攻撃するために真正面から使えばそこを狙われて逆に攻撃されて彼女にとって一巻の終わり。死を意味した。
「さっきの借りは返させてもらうからなクソ女ァ!!」
「あまり下品な言葉を使わない方が良い。バカに見えるぜ?」
「上等だァァァァァァ!!!」
男はそう叫びながら突っ込んでいく。頭に血が上りやすいタイプは大体自分に対してのプライドが高い。
そこをうまく突くことによって三毛門は攻撃を誘ったのだ。この男がこちらに突っ込んでくるように。
しかし、誤算だったのが相手もスキルを使うということ。
「ッ!?」
彼の体がまるで水の中にでも入るかのように床の中へと沈んでいった。
(沈んだ!?まさかスキル!?)
ここで完全に彼女の計画が破綻した。相手がどこに行ったか分からなければ触れようもないし、爆発のさせようもない。
周囲を警戒する三毛門だったが、それも無駄だった。
「おい!」
「ッ!?」
声のした方へと振り返った瞬間、重い一撃が彼女の右頬を打ち抜いた。飛ばされる直前、彼女が見たのはニタニタと君の悪い笑みを浮かべる男の姿だった。
(そうか、あの時パソコン室に入ってこれたのは……このスキルのせいか……)
少女の体は宙を舞いながら、用務員室から廊下へと落下する。
打ち付ける体の衝撃に意識が飛びそうになった。それと同時に押し寄せる右頬の痛みと腫れ。口の中を切ったのか口内に鉄の味が広がる。
(ああ、もうダメなのかな……僕って……)
そう思いながらも彼女は立ち上がった。
「お?そうこなくっちゃいけねぇよなぁ!」
男子生徒は乗り気で拳を鳴らす。
彼女はなぜ自分が立ち上がったのか疑問に思った。こんなにも痛いのに、なぜ立ち上がり、腕力に勝てない相手へ挑むのか……分からないでいた。
三毛門は走り出し男の元へと攻撃を仕掛ける。しかし、男はヒョイと石ころを避けるがごとく簡単に壁へと入り込んで彼女の攻撃を避けた。
彼女は男が入っていた壁に手を置き、爆発させる。粉塵やコンクリートの破片が体に当たるのを感じながら爆破し続ける。
しかし、
「ぐッ!?」
横腹にとんでもないほどの衝撃を受けると、その手を止め横腹へと移す。つい膝を床につける程に苦悶に表情を歪ませる三毛門。
「バーカ。こっちなんだようすのろが」
いつの間にか後ろへと立ち回っていた男。男は三毛門を見下しながら、前髪をかきあげた。
「俺のスキルは『同調(カワード)』。どんな所でもすり抜けれるスキルだ。壁とかも床とかもすり抜けることもできる」
「……そんな大事なこと……僕に教えちゃっても良いの?」
「はっ、どうせ死ぬだろ?なら最後ぐらい種明かししても変わんないだろ」
三毛門はその場から攻撃へと転じた。手を伸ばし相手に当てようと必死に…。
しかし、体を少しずらす程度で簡単に避けられてしまう。
「くっ!!」
ボロボロの体で、尚且つちっぽけな拳で彼女は男を殴ろうとする。しかし、拳を何度も打っても何度も相手の攻撃をかわしても当たることはなかった。
そして、何度も相手へ攻撃を繰り返すうちに変化が現れた。それは三毛門の拳を難なく男がかわす時だった。
「…しまった!」
避ける瞬間、男の足がもつれバランスを崩したのだ。
(………今だ!)
三毛門はその拳を横へとスライドさせ、男に致命的な一撃を浴びせようとする。
が、
「えっ……?」
彼女の最後の攻撃が当たることはなかった。いや、正確には当たっているはずだった。
彼女の拳は男へと向かった。このままならあの男を爆死させることができるのだが、思わぬ事態が発生していた。
拳が男の体をすり抜けたのだ。まるで空気を触るように何も感じず、ぶつかる気配もなくすり抜けたのだ。
「だからすり抜けるって言っただろ?」
そう言って男は彼女を蹴り飛ばす。
そのまま彼女は床にあっさりと倒れこむ。幾たびの疲労と痛みが限界を迎えた。
「さぁて、そろそろ死んでもらうか」
(ああ……もう死ぬのか……)
男の言葉に死を覚悟した三毛門。もう指一本動かすことができない。逃げることもできない。
彼女は目の前の現実を理不尽だと感じながら受け止めるしかなかった。
「待ってください!」
「あァ?」
用務員室の中から滝沢が大声でそう呼びかける。男は不快そうに表情を強張らせて声のした方へと顔を向ける。
「その人は殺さないでください!お願いします!代わりに私を好きにして構いませんから!」
「まだいたのか」
(ちょっと………何のために僕が戦ったか……分からないのかな……)
男は少しの沈黙の後、再び気味の悪い笑みを浮かべた。
「良いぜ。こいつは見逃してやる」
男の考えはこうだった。三毛門を声を漏らさないよう手で押さえてから手持ちにあるサバイバルナイフで殺し、その後に用務員室にいる滝沢を陵辱するというものだった。
「本当ですね!?」
「ああ、本当だよ」
男はそう言いながら腰につけた専用のホルスターからサバイバルナイフを取り出し、ゆっくりと三毛門の上にのしかかる。
もうダメだ……三毛門自身そう思いかけた時だった。
「まったく……ヤケに騒がしいと思って帰ってみればこの有様だよ」
「「ッ!?」」
男と三毛門は同時に声のした所へと視線を向けた。そこにはつまらなそうな表情をした神居が目を細めて2人を見ていた。
「桐ヶ谷さん!!」
「ちっ、まだ仲間がいたのか!」
神居は辺りを一度見回し、顎に手を当てて何か考えるそぶりを見せる。そして数秒後、彼から笑みがこぼれた。
「ねぇ、もしこの場を収めてくれるんだったら僕と友達になって欲しい」
「はぁ?」
男が顔をしかめる。この状況で神居の言っていることが理解できないのは何も男に限ったことではなく、女子2人もだった。
(一体何を言ってるんだ?………まさか状況が状況で頭がおかしくなったんじゃないのか……?)
「こんな時に何を言ってるんですか!その人を早くやっつけてください!」
しかし、神居は笑みを崩さずこう返した。
「おいおい、こんな時だからこそだろう?僕は滝沢さんの言われたことをまっとうしようと頑張ってるんだ」
それを見た男はバカにしたように神居をこう言った。
「完璧におつむの方がぶっ飛んでるぜ!誰が止めるかよ!このクズが!」
すると、その答えを待っていたと言わんばかりに神居の表情は凶悪なものへと変わった。
その表情の変化に男だけでなく、三毛門も嫌な悪寒に襲われた。
「そっか。友達になれないなら仕方ないね」
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