ダーク・ファンタジー小説
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- リアルゲーム
- 日時: 2017/06/21 00:50
- 名前: 電波 (ID: iruYO3tg)
皆さん初めまして、電波と申します!
ここで投稿するのは初めてなので少し緊張しているのですが、よろしくお願いします。
また、文才ないのでうまく書けないかもしれませんがご了承ください!
それとそれと!
この作品には過度な暴力表現とグロテスクな描写が(たまに性的描写も)あります。それがダメな人は回れ右してください!
・注意事項
暴言や荒らしなどの行為はやめてください。
以上です。
・ゲームのルール
1.『全校生徒で殺し合いをする』
2.『期間は7日間。それまでに校内の生存者は2人にしておくこと。また、期間内に規定の人数に到達しなかった場合、全員失格。死刑になる』
3.『ゲーム途中に校外へと出た者は罪(ペナルティ)となり、失格となる』
4.『全校生徒にはそれぞれ戦うための異能(スキル)が配布される』
5.『殺し方や戦い方に縛りはない』
6.『校舎内に『鈴木さん』が徘徊する』
7.『クリア条件は2種類。1つ目は7日間以内に生存者を2人にすること。2つ目は校舎を徘徊する『鈴木さん』を殺すこと。その場合は、生存者の数に関係なくゲームがクリアとなる』
- Re: リアルゲーム ( No.120 )
- 日時: 2016/04/11 00:31
- 名前: 黒砂糖 (ID: 7XxjGZ78)
いや〜、ついったの方に集中してまして…w
キャラそれぞれの個性が出てていいと思うよ!
とりあえずは三毛門&神居ペア推しってことで!w
鈴木さんが死神さんになってたね…?気になる…
返信ゆくっりでいいよ!更新頑張れ〜
- Re: リアルゲーム ( No.121 )
- 日時: 2016/04/11 21:18
- 名前: 電波 (ID: JIRis42C)
黒砂糖さんへ
コメントありがとう!
キャラに特徴が出ていて良かったw
黒砂糖さんは三毛門と神居のペア推しかw
なるほど……二人の活躍をもっと出していけるよう頑張るね!w
それと、まぁ鈴木さんを死神と表記したのはただの表現で死神のように怖いよぉということを言いたかっただけで深い意味はないよw
これからも見てくれると嬉しいなw
- Re: リアルゲーム ( No.122 )
- 日時: 2016/04/23 18:04
- 名前: 電波 (ID: JIRis42C)
視点は変わり、唯腹 勝平は体育館にて次の行動目標を模索していた。彼の主な希望は取りあえず外の様子の確認だった。校外ではどんな状況になっているかまだ把握できていない以上、のんびりとしていられないのが勝平たちに突きつけられた現状だ。
体育館の一角で勝平はそのことを服部に相談していた。
「で、どういうことだってばよ」
「殴るぞ」
さっき起きたとは思えない程に、彼は勝平の相談を冗談交じりに答えた。当然、そんな反応をされては勝平の拳に力が入る。
「わりぃわりぃ!」
「ったく!」
苦笑いで言いながら彼は両手を軽く上げ、勝平をなだめる。
「要するにカッペは学校の外の様子が知りたいんだな?」
「ああ、昨日お前と一緒にここへ来るために外へ出たがそん時は周りを見ている余裕なんてなかったしな」
「そうかぁ……」
服部は考えるように上を見上げ、爪を噛んだ。この光景を見慣れたように勝平は話を進める。
「大人は助けに来ない。警察も来ている様子もない。かと言ってネットでの記事を誰かに見せてもらってもこの事件の内容を取り扱ってはいなかった」
「…………」
ガジガジと爪を噛んでいた彼は何か思いついたかのように口を爪から離した。
「じゃあネットが使えるなら電話も使えるんじゃないか? 詳しいことは分からないけど」
そして、再び爪を噛み始める。勝平は軽い溜め息を吐くと、気だるそうに彼に言った。
「それだったら苦労はしないんだよ」
「繋がらないのか?」
「そうだよ、ネットに繋がらるのは学校に取り付けられたWi-Fiのお陰だ。携帯のアンテナ見てみろ。圏外って表示されるぞ」
彼は何も言わず反対の手で、ズボンのポケットから携帯を取り出し、画面を確認する。
「あ、本当だ……」
残る手段としてはここからの脱出になるが、ルール三にも記されているとおり校外に出た者は罰が下る。その罰が一体どういうものかはわかりはしない。最悪、命が関わる可能性だってあり得る。出来るならそんな賭けはしたくない。
「助けが欲しいんならどこか高台に登って大声で叫ぶと良い。誰か気づいてくれるかもな」
ふと二人の声とは違う声が横に入った。勝平はハァ……と重い溜め息を吐いて目を伏せる。服部は迷わず声のした方へと視線を投げた。
服部の座ってる壁際から少し離れた地点に伊吹 和麻はいた。壁にもたれ、楽な体勢でまっすぐこちらを見つめている。服部は一旦息吹を見た後、すぐに視線を勝平に向け、問いかける。
「誰だ? カッペの知り合いか?」
「まぁ、知合いたくはなかったがな……」
苦い表情を浮かべながら、服部とは視線を合わせず話す。すると、追い打ちをかけるように彼は勝平の元へと踏み寄ってきた。
「よっ、俺は三年の伊吹 和麻だ。コイツとはお前らが眠らされてる時に一時的に協定を組んだ仲だ」
「そうなのか?」
「…………」
気軽に声を掛けてきた伊吹の発言に、服部はしきりに自分から目を逸らす勝平へと顔を向けた。しかし、反応がどうも薄い。服部はおーい、と声を掛けながら肩を叩いてみたり、彼の顔の前に手を持ってきて振ってみたりと意識を確認する。
「あいつの言った通りだよ。お前らが生徒会に眠らせられたのは知ってるだろ? その時たまたまいたこの先輩と成り行きで手を組むことになった」
「へぇ……」
勝平は渋々といった感じで状況を説明した。なぜ服部達が全員眠っていたかの説明はあらかじめ勝平自身が本人に直接説明してあるため、事態を飲み込むのにそう時間はかからなかった。
「で、どうすんだ? 高台に登って助けを呼ぶってのは」
大体服部が話を理解したタイミングを見計らって、伊吹は話を戻した。
「…………」
「確かに携帯が繋がんないじゃあ、大声だして外に訴えるしかないよなぁ。それに外の様子も見れるし」
服部は伊吹の提案に乗っかるようだった。その横で、勝平は少し考える。別に助けを呼ぶのは構わない。むしろ乗っても良かった。ただ、問題があるとするなら道中に敵と接触すること。それと、大声で呼ぶことで敵が集まること。この二つが懸念材料だった。
だがしかし、
「分かった、行こう」
何をしようにもリスクは必ずついてくる。なら何もしないよりは良い。彼は全ての懸念を振り払い、行くことを決意する。その代り、
「ただし、お前は付いてくんなよ」
はっきりと、伊吹の方を見て吐き捨てた。ちょっと間の抜けたような表情を浮かべる伊吹だったが、思い出したようにプッと吹き出す。
「そういえばそうだったな。安心しろ、お前とはもう組まないよ」
「…………」
伊吹とは一時的な同盟を組む代わり、これ以降は行動を共にしないことを契約した。年上に対してあまり良い印象を持っていない勝平にとって、これ以上彼と組むのは苦行だった。
「ま、頑張ってくれよ。ここの見張りはやっとくからさ」
それだけを言い残し、伊吹はどこかへと行ってしまった。消えていく背中をジーと眺めながら、服部は呟くように彼に語り掛ける。
「なんで先輩と組みたがらねぇんだよ」
「別に……」
純粋に見知らぬ誰かと関わりを持ちたくない、勝平の気持ちも少なからずあった。それに、集団行動での危険性も知っている。だから、あまり大人数での行動を避けるという意味合いでの判断だ。建前上は……。
「まだ引きずってんのか?」
「お前には……関係ないだろ」
勝平の本心を知っていたのか、服部は核心を突く言葉を言い放った。一瞬言い澱(よど)む彼だったが、何とか言葉を口にする。
「ああ、そうだな。確かにそうだ」
服部はそう言いながら、立ち上がった。
「だけどな、問題は後回しにすればするほど深刻になる。少しでも良いから、積極的に動いたらどうだ?」
「はっ、それは経験論ってやつですかい?」
皮肉気にそう言いながら、勝平も立ち上がった。
「まぁな」
辛辣な言葉だが、彼はニッと笑って返す。こんなやり取りをしながらだが、とりあえず彼ら二人の目標は見定まった。
「屋上だ。今日の目標は屋上に行って助けを呼ぶこと、良いな?」
「おう、まぁなんとかなるだろ!」
いつも通りの勢いのある声が響きながら、出入り口へと向かっていく。
- Re: リアルゲーム ( No.123 )
- 日時: 2016/06/25 23:36
- 名前: 電波 (ID: JIRis42C)
大勢の生徒で賑わう体育館の中、勝平と服部は出口に向かっていた。今回の目的は、校舎の屋上から助けを呼ぶこと。ネットが生きてるということは、外はいつも通りの日常が送られていることになる。なら少なからずは人がいる。何とか助けを呼ぶことさえできれば、ここから脱出もできるし、警察も動きだすだろう。そんなことを考えながら、勝平は出口の方へと歩む。
「ちょっと待ちなさい」
ふとそんな呼びかけが彼らの真後ろから聞こえてきた。条件反射のように振り向く服部に反して、勝平の反応はただ立ち止まるだけだった。
「ん、誰だお前?」
服部が眉を寄せ、その相手を見る。相手の容姿を挙げるなら、まず性別は女。髪はピンク色のツインテール。小柄な身長の割に、威勢の良さそうな雰囲気を醸し出している。つい数時間前まで勝平と敵対していた『生徒会』のメンバー、庶務の柏崎 利也だった。
「生徒会役員の柏崎だけど、ちょっと聞きたいことがあるの」
「生徒会って……確か……」
そう言いながら、服部は沈黙して前をひたすら見る彼に視線を投げる。それだけで服部が何を言いたいのか、勝平自身察したし、彼女の声を聞いた時点で彼は嫌な予感を感じていた。数秒の沈黙が続いた後、彼はハァ……と観念したように深い溜め息を吐いた。
「そうだよ。俺らを眠らせた張本人だよ」
「ああ、やっぱり……」
「…………」
納得する服部の横で彼は彼女の方へと体を向ける。彼女に向けるその目には未だに彼女らの印象がこびり付き、正気に戻ったにせよ疑心はまだ微かに残っていた。
「で、その生徒会が何の用だよ。操られていたとはいえ、一度は敵同士だったんだぞ?」
皮肉気に言葉を吐きながら、勝平は彼女に訴える。お互いに少しばかり怪しい雰囲気が漂ったが、その空気はすぐに解消された。
「あんた、見かけの割に案外ねちっこいのね」
「…………!?」
不意に放たれた言葉の右ストレートが見事彼の心の顔面を捉えた。驚きで言葉も出せない勝平に畳み込むように彼女は腕を組み、話の本筋に入る。
「あんた達学校の屋上に行くんでしょ?なら、私も連れて行きなさい!」
思ってもいない言動に勝平と服部は一旦顔を見合わせた後、自信に満ち溢れたような表情を浮かべる相手へと目線を送る。
「「は?」」
二人の息の合った疑問は柏崎へと向けられたが、当の本人はハッと吐き捨てた。
「だから連れて行けって言ってんのよ! いつまでもこんな息の詰まりそうな場所にいたら気が狂いそうなのよ!」
「いやぁ……でも、お前の都合で勝手に出て行ったらまずいんじゃないか? 仮にも生徒会なんだし」
なぁ、カッペと確認を取るように勝平へと声を掛ける。
「ああ、勝手に役員が消えたとなっちゃ結構な騒ぎになるはずだ。それに、お前らの会長の性格を考えてみろ。いないってバレた瞬間、血祭りにあげられるぞ」
すると、抜かりはないと言いたげに彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「それなら大丈夫よ。その辺のことはあの子がやってくれるから」
一方その頃。柏崎の言っていた『あの子』は布団の中にこもりガタガタと震えながら言い知れぬ恐怖と戦っていた。身勝手な後輩に自分そっくりの人形を作らされ、それをベッドの中に押し込んでまるで寝ている風を装う。バレたら協力した自分がどうなるのか分からない。会長の普段の所業は間近で見ているため、恐怖は誰よりも大きい。だから金谷 優奈は必死で祈る。柏崎が出て行っていることを知られないよう。
(利也ちゃん早く帰ってきてぇ……私、隠し通せる自信がないよぉ……)
お人好しな彼女は、柏崎に対して怒りを持つことなく、ただ帰ってくるのを待っていた。
そして、柏崎は堂々とした表情で彼ら二人に宣言する。
「さぁ、これで不安要素は消えたでしょう? はやく連れて行きなさいよ」
何を自信満々にそう言っているのかよく分からない服部だったが、このまま彼女を連れて行かずに行くと、後でめんどくさいことになる気がしてならない。特にこう言った強気な女というのは無駄に意地を張るので、どんなに説得したってテコでも動かないだろう。なら、と服部は隣で苦々しい表情を浮かべる勝平にそっと耳打ちをする。
「カッペ、どうする? 正直、こういうタイプの女は後々が面倒だぞ。あまり乗り気じゃないんだが、連れて行った方が良い気がするんだが……」
「ああ、それには同意だ。ここで下手に騒がれても時間が無駄に消えていくだけだし、周りも不安からか少しピリピリしてる。あまり刺激しないようにしよう」
勝平も服部の意見に異論はなかった。ここで彼女に何か変なことを口走って、騒がれるよりかは一緒に連れて行けばまだ静かだろうと判断したからだ。ここでの生活が開始してから一日が経ったが、生徒の不安も募っていくばかりだ。そんなところに柏崎の金切り声でも上げられたら、生徒のストレスはどんどん悪化していく。だが連れて行くとしても、それなりのリスクが伴う。苦渋の決断とはこのことだ。勝平は数秒程考えると、深い溜め息を吐いた後に口を開いた。
「連れて行くのは別に構わねぇよ。ただ———」
「よし決定! じゃあとっとと行くわよ! 目標は校舎の屋上!!」
自分の聞きたいところを聞くと、彼女は勝平の言葉を最後まで聞く事は無く体育館から出て行ってしまう。不安気な表情で彼女の背中を見つめる服部と呆れて物も言えない勝平。まったく、これからどうなるものかと悩みながらも、彼ら二人は彼女を追いかけて、体育館を後にするのだった。
- Re: リアルゲーム ( No.124 )
- 日時: 2016/07/02 18:11
- 名前: 電波 (ID: JIRis42C)
勝平は軽く溜息を吐いた。現在彼ら三人の現在位置は校舎の裏に位置する庭。色とりどりの花や、か細くて根強く伸びる木々がまるで自分をアピールするかのように煌びやかに存在している。平和な頃であれば、ここはカップル達にとっての絶好の憩いの場であったはずだろう。しかし、現在はここは校舎よりはマシとはいえ、危険地帯に変わりはなかった。
「で、安全で確実なルートを知っているはずの柏崎後輩に意見を申したいんだが?」
「…………」
彼ら三人の足元、いや足元に限ったことではなく複数の生徒の死体がそこらじゅうに転がっていた。不満気な表情で自分の前に立つ彼女へと視線をぶつける。当初の予定ではここの道を通って校舎の屋上に行くつもりはなかった。少し時間をかけて慎重に行こうと、勝平が違うルートの提案を出したのを彼女が、
「そんなもの却下。時間はあまりないのよ? 私に良い考えがあるわ! そっちの方が安全で確実なルートだし!」
と高らかに宣言した。が、結果はこれだった。安全と呼ばれる道に死体がゴロゴロあるのは安全と言い切れるはずもない。どんなに否定の言葉を並べようが彼ら二人にとってこの道は安全ではなくなった。安全で確実なルートの信憑性が薄れたわけだ。
「えーと……何?」
「これがお前にとっての安全なわけ?」
「ま、まぁカッペ落ち着けよ……校舎よりは人、死んでないだろ?」
人が死んでる時点で説得力の欠片もない、そう言ってやりたい気持ちもあったが、彼はそれを抑え込んだ。
「まぁ良い……で、ここから校舎に入ってけば良いのか?」
「違うわ、まだ少し歩く」
そう言って、彼女は目的地を指示した。大体百メートルぐらい進んだ先に一つだけ校舎に通ずる扉があった。勝平も服部もこの学校で生活しているが、今まであの扉を使用したことや中のことを知ることなどなかった。
「あれは?」
「あれは非常用の扉。もし災害やら事件やらがあったときは職員が一目散に逃げられるようになってる」
「それで屋上に行けるのか?」
「ええ、非常用階段とも繋がってるからそのまま上に行けるわ」
確かに理に適ったルートにあることには変わりがない。非常階段であれば、比較的にどこを移動するよりも安全だろう。基本、非常時の時にしか開けられない仕組み故に、その開け方を知っている者はほぼ皆無だ。僅かに知っているものがいるとしたらそれは生徒会役員のメンバーだけ。彼女らはいつでも他生徒や教師を誘導できるようにその開け方を知っている。その点においては勝平もさすがと言わざる負えないだろう。
だが、今のこの事態では彼女の予想の範疇から大きく外れる可能性もあることを忘れてはいけない。
『鈴木さん』、例外中の例外。開始数分で一クラス丸ごと皆殺しにしたその存在は既に記憶に新しい。同時に生徒会長の桐ケ谷を洗脳した疑いもあるため油断もできない。今は外にいて大丈夫だが、校舎内を徘徊するということは彼(女)が非常階段にまで現れる可能性も示唆する必要がある。
「あまりないとは思うけど油断はするなよ。特に『鈴木さん』とかいう奴は聞く限りでも力量が全然分からない」
「なにあんた、まさかビビッてんじゃないのぉ?」
ニタァ、と意地の悪い笑みを浮かべて口に手を添える柏崎。
「すまない、今の言葉は訂正しよう。柏崎だけは全力で行って良いぞ、雑兵としてな」
「ちょっ、それどういう意味ぃ!?」
そんな二人の喧嘩をあはは、と服部は楽しんでいるとふとガサッと物音が聞こえた。
「誰だ!?」
「「ッ!?」」
服部の言葉にハッと我に返った両者は彼が向いている方向へと視線を投げた。そこにいたのは一人の男子生徒だった。
「えっ、おっさん?」
服部がつい漏らした疑問は妥当だった。身長は百八十はあろうかという巨体に腕、胸、脚、どれもガッチリ締まっている。肌は浅黒く、髪形もスポーツ刈りでとても短い。ここまではまだ普通の運動部男子なのは分かるが話はここからだ。その男の目尻にしわがほっそりとあり、他にも頬にも微かなしわがあった。パッと見、威厳のある三十代のアウトドア系の男性に見えなくもない。
そんな男が彼ら三人を見定めるかのように目配りをする。まるで信用に足る人物なのか確認しているかのようだった。勝平たちも同様でこの男に対して、警戒心を放つ。互いが互いを見据えて、先に口を開いたのは男の方だった。
「驚かせてしまって申し訳ない。自分、二年A組、堂本 励(どうもと はげむ)と言う」
見た目通りの口調や声色に謎のしっくり感を皆が感じながら、服部は笑顔で応対した。
「俺は二年E組の服部 駿河。後ろにいるコイツは同級生の唯腹 勝平。で、そこの女子は知ってると思うが生徒会庶務の柏崎 利也だ。いやぁこっちこそ失礼な事言って悪かったな!」
「気にするな、よく言われる」
首を左右に振る堂本を見ながら、柏崎はふとこんなことを呟いた。
(失礼って言うより、そりゃああんな顔してたら誰でもおっさんだと思うわよ)
(お前は黙ってろ)
「いだっ!?」
冷静に、ペシンッと軽く彼女の後頭部を叩く勝平。大げさにむぅ〜と不機嫌に勝平を睨みながら、後頭部をさする。
「で、その堂本がこんな所に何の用なんだ? ここは見ての通り危険地帯だが」
「うむ……それはそうなのだが……」
何か言いずらそうに堂本は言葉を濁らせた。ここで言うべきかどうかまた悩んでいるようだ。
「別に言いたくなければ言わなくて良いぜ。別に強要してるんじゃねぇからな」
服部が彼の様子を見て、あまり彼にとって触れられたくないことだと察した。しかし、堂本は意を決したのか、いいやと言い、語り始める。
「実は自分に恋人……いや、彼女というのか……その相手がどこにも見当たらないのだ。クラスも違っていて、隠れているのか逃げているのかも皆目見当がつかない」
「体育館には行ったのか?」
勝平の問いかけに無論、と答えた。
「昨日は一日中体育館を捜索したのだが見当たらなかった。一日中と言っても、途中で急に眠くなってしまって全部は見回ることはできなかったがそれらしい女性は見つからなかった」
堂本のあるワードを聞くと、勝平はある人物へと視線を移す。
(お前ら……)
(ちょっ、それだけは私は無関係! 薬の精製とか配布は私の担当外よ!)
必死に弁明を図る柏崎を他所に服部は少し考えるように顎に手を置いた。考えるといっても本当にほんの一瞬だったが。
「なぁカッペ、少し寄り道するけど良いか?」
「どうせ止まらないくせに」
「ははっ、わりぃな!」
「え? なに? どういうこと!?」
呆れる勝平。戸惑う柏崎。そんな二人に服部は無邪気に笑うと、堂本にこう言った。
「ということで俺達もあんたの彼女さんを探すことにした。だから心配すんなよ」
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