ダーク・ファンタジー小説

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リアルゲーム
日時: 2017/06/21 00:50
名前: 電波 (ID: iruYO3tg)

皆さん初めまして、電波と申します!
ここで投稿するのは初めてなので少し緊張しているのですが、よろしくお願いします。
また、文才ないのでうまく書けないかもしれませんがご了承ください!
それとそれと!
この作品には過度な暴力表現とグロテスクな描写が(たまに性的描写も)あります。それがダメな人は回れ右してください!

・注意事項

暴言や荒らしなどの行為はやめてください。


以上です。

・ゲームのルール

1.『全校生徒で殺し合いをする』

2.『期間は7日間。それまでに校内の生存者は2人にしておくこと。また、期間内に規定の人数に到達しなかった場合、全員失格。死刑になる』

3.『ゲーム途中に校外へと出た者は罪(ペナルティ)となり、失格となる』

4.『全校生徒にはそれぞれ戦うための異能(スキル)が配布される』

5.『殺し方や戦い方に縛りはない』

6.『校舎内に『鈴木さん』が徘徊する』

7.『クリア条件は2種類。1つ目は7日間以内に生存者を2人にすること。2つ目は校舎を徘徊する『鈴木さん』を殺すこと。その場合は、生存者の数に関係なくゲームがクリアとなる』


Re: リアルゲーム ( No.125 )
日時: 2016/07/26 00:55
名前: 電波 (ID: JIRis42C)


 堂本 励が勝平達と合流し、数分が経過した。彼らは何とか校舎の非常階段辺りに侵入に成功し、本来の目的である屋上を目指し、階段を上っていた。堂本の言う恋人の捜索は屋上に一旦上った後に、帰りの方でするということで彼に伝えてある。

 堂本もこれに同意の上、彼らと行動を共にする。やはり一人より複数いた方が時間の短縮にもなるし、見つかる可能性も高くなる。協力してくれるなら乗らない手はない。それほどまでに、どうにかして彼女の安否を確認したかった。いや、訂正しよう。何としてでも無事でいてほしかった。静寂に包まれた階段を上りながら、堂本はそう願っていた。

「それにしても、やっぱり長いな」

 服部がふぅ……と軽く息を吐いて、呟いた。

「当たり前でしょう? 一階から屋上なんていったらそりゃあ長いわよ」
「分かってるって。でもさ、こうやって物音立てずに階段上がっていくのって余計にきついんだが……」


 現在、彼らが到達している階は二階辺り。非常扉で外とは隔離され、向こうからは中へと入れない仕組みとなっている。唯一開ける手段があるとするならば、扉の下の隙間にレバーがあり、それを引っ張れば、扉のロックが外れるという仕組みだ。聞かされなければ誰も分からない開け方故に、この非常階段は安全。だが、いくら隔離されているとはいえ、非常階段に誰かがいることを察知されてはいけない。

——そう、たとえ誰であろうとも。


 訝し気な表情を浮かべる堂本を見て、何か気になったのだろう。勝平は純粋な質問を投げかけた。

「どうかしたのか?」 
「いや……彼女が無事であるか不安で仕方ないのだ」
「無理もないわよねぇ。好きな人が行方不明とあっちゃ、そりゃあ不安にもなるわよ」

 堂本はコクリ、と同意の意思を表す。

「聞いてなかったが、彼女さんの名前は?」

 そう言えば堂本の恋人の名前を知らないことを勝平は気づき、質問をする。

「名は三蕪木 楓(みつぶき かえで)と言う。身長は百六十五センチの痩せ形で髪形は黒髪の長髪。前髪は切り揃えられていている」
「へぇ、聞くだけでも清楚な感じがしてしっかりしてそうな奴だな」
「ああ、楓は本当に純朴で可憐だ。特に曲がったことが嫌いでな、竹刀を持っては不埒物を正していた」

 すげぇ、と感心しつつそれだけの度胸があるならどこかで生きてるかもしれないと率直に思う勝平と柏崎だった。

「その三蕪木さんは剣道部か何か?」
「その通りだ。腕前で行ったら全国に充分食い込める程のな」

 一同は、その三蕪木という生徒は普通に生きてそうだなと考えながらも敢えて言葉にしなかった。その代りに柏崎があることを質問をする。

「じゃあ、アンタも充分に強い剣道の人?」
「恥ずかしながら自分、柔道部に所属している身だ。それ故に剣の腕前は素人にも劣る」

 頭をポリポリと掻きながら、気恥ずかしそうに頬を染めて堂本は答えた。それでも、彼が柔道をやっているという言葉には誰もが頷くような説得力があった。はち切れんばかりの分厚い胸板に腕は丸太のように太い。軽く体を当てただけでこちらの体をいとも簡単に吹っ飛ばしそうである。

「ま、彼女が剣道部だからって彼氏も剣道部ってわけでもないだろ」
「そうであるのだが……」
「気にしてたのか?」
「してないと言えば嘘になるが、それほどではない」

 少し苦々しい表情を浮かべて堂本は答えた。何か理由があるように見えたが、特に追及はしなかった。これ以上理由を探った所で、別にどうということはないし、本人があまり乗り気ではないなら聞かない方が良い。

「…………」
「…………」


 そのまま話に間ができ、黙々と階段を上る。言葉を交わさないだけでも雰囲気はガラリと変わるものだ。さっきまでは声があるだけで和やかな空気だったにも関わらず、静けさが出た瞬間からじわじわと暗い何かが自分に迫ってくるような感覚に襲われた。落ち着かず、負の感情だけが心と言う器からあふれ出てくる。

 それは言うなれば『恐怖』。もし敵と相対したのなら、もしどこからか奇襲にあったのなら、もし見られていたら。際限もない不安が自分の心を蝕んでいくのだ。

 この四人のメンバー全員も程度によるがそれを感じていた。さっきの服部の最初の発言も然り、それに乗っかった柏崎も同様だ。恐怖を紛らわせるため無意識にとっていた行動。決して音を出してはいけないのに声は出してしまう。言っていることとやっていることの、この矛盾こそが恐怖を感じている証拠である。

———

 ちょっとの衝撃で爆発しそうな恐怖を身に孕みながら、上ること十分。柏崎の言った通りの時間帯で屋上の扉前に着いた。

「案外簡単に着いたわね」
「油断するなよ。屋上にも敵がいるかもしれないからな」
「まぁ、そんときは何とかなれば良いと思うぜ?」
「うぅむ……」

 その時、堂本が険しい表情で後ろを頻りに気にしていた。

「どうかしたのか?」
「気のせいかは知らんが……いや、すまない。何でもない」
「はぁ!? ちょっと、めちゃくちゃ気に———」

 彼女が反射的に声を上げようとした瞬間、勝平は慌ててその口を手で押さえた。

「バカかお前、ここで大声出したら気づかれるだろうが」
「……ッ」

 涙目な柏崎は首を縦に勢いよく何往復も振り、自分が理解したことを勝平に知らせる。そんな光景を他所に服部は堂本に問いかける。

「取りあえずは気のせいだって受け取れば良いんだな。堂本」
「ああ、不安を煽ってしまってすまない。俺の気のせいのようだ」

 そう言うと同時に彼女の口は解放された。ぷはぁ、と肩で息を吸い膝に手を着く。涙目になりながら、必死に呼吸をする様は自分が海水プールで溺れた出来事を思い出すようだった。

「とにかくここでもたもたしない方が良いのは確かだ。早いとこ屋上に行こう」
「ああ」
「うむ」
「……分かったわよ」

 先陣を切ってドアノブに手を掛けたのは勝平だった。もしも向こうに何かいたらと想像すると、全身に恐怖が駆け巡る。だが、それを乗り越えない限り先に進めない。ならやるしかない。次に進むために。


 握る手に力を込め、屋上への扉を開けた。
 


  

Re: リアルゲーム ( No.126 )
日時: 2016/08/07 21:51
名前: 電波 (ID: JIRis42C)


 屋上に到着した彼らを待っていたのは燦々(さんさん)と照り付ける太陽の光と、肌を擦るような心地よい風だった。先頭に立っていた勝平は辺りを冷静に分析する。

 アスファルトの床は特に荒れている様子もなく、左右を阻むように設置された鉄柵も壊れているというわけでもなかった。以上のことを踏まえて考えられたのが、他よりはまだ安全なエリアであることだった。

「ここは比較的何もないようだな」

 勝平がそう言ってちらりと前方を見たのは、別のルートで上ることができる階段の扉だった。一般的な生徒の利用も多く、昼休みになるとその階段は多くの生徒で賑わっている。だが、そんな扉も今では寂しげに閉じており、誰かが使ってくれるのを待っているかのように思えた。

「で、外の様子だけどよ。パッと見、特に俺達で騒いでる様子はないみたいだな」

 鉄柵に凭れるような姿勢で遠くを見渡す服部の元へ近づき、勝平も同じように視線を飛ばす。確かに、服部の言うように街の人々は自分たちをまるで存在していないかのように騒ぎもせず、平穏な生活の流れを送っていた。

「どういうことだ?」
「どうもこうも見た通りだろ。みんな俺達がどういう目にあっているか知らないんだよ」
「むぅ、困ったことになったものだ」

 奇妙な出来事に、勝平は少し、気色の悪いものを感じた。いくら知らないにしても、この状況は明らかにおかしいのだ。以前、SNSを使っての救助申請を他の生徒がやっているのを遠目で見ていたが、助けが来ることはなかった。悪戯として処理されたのか、それともあえて何もしなかったのか。どちらにしろ、外で何か変化があってもいいはずなのだ。

「ちょっとぉ!! 気づきなさいよぉ!! 私たちを助けなさぁぁい!!」

 今にも身を乗り出しそうな勢いで柏崎が必死に声を上げるが、住民はそれに気づくこともなく生活を続けていく。決して聞こえない距離ではない。叫べば誰だって振り向く距離なのに、住人は見向きもしなかった。

「声も聞こえないとなるといよいよ救助は絶望的だな」

 勝平は涼しい顔で目の前に広がる向こうの世界を眺めて言った。それが柏崎の癪に障ったのか、キッと鋭い目つきで彼に矛先を向ける。

「あんたもそんな悠長なこと言ってないで一緒に叫びなさいよ! これじゃあ聞こえないわよ!」
「落ち着けよ、今ここで叫んだところでなんの得もない。むしろ時間だけが無駄に消費されるだけだ」
「だからといって何もしないつもり!? 私は嫌よ! こうなったら門の外に無理やりにでも———」

 階段へと向かおうとした彼女の肩を、待てよと言って服部は掴んだ。

「何よ、離して! 今こうしている間にも皆死んじゃうかもしれないんだよ!?」
「お前の気持ちは分かる! だけど、今は我慢してくれ。カッペも言った通り、ここで叫んでもなんの得もない。ただ時間が過ぎていくだけだ!」

 それでも、と彼女はまだ自分の信念を曲げないつもりでいた。そんな彼女を見て、勝平はため息交じりにこう言った。

「じゃあ行けばいい。人の人生だからなぁ、無理強いはしないし好きにすればいい」
「カッペ!?」

 服部が驚愕を露わにしている最中でも勝平は冷静に、ある一言を付け加えた。



「ただし、お前にああなる覚悟があるのかの話だがな」

 そうやって勝平は自分の親指を立て、後ろの鉄柵の下を差す。彼女は眉を顰め、恐る恐る彼の指さす方へと近づき、『それ』を見て愕然とする。

 学校のフェンスの外側、そこに『何か』が倒れていた。いや、落ちていたのが正しいかもしれない。まるで規則性もなく、乱雑に置かれている様はそれにふさわしいだろう。それも一つではない。無数に散らばって地面に転がっている。そして、その『何か』を中心に赤い模様が様々な形で広がっていた。

 一瞬こそは何が落ちているのか分からなかった彼女だったが、『それ』が何かであることを理解すると、その場に膝から崩れ落ちた。口に手を添え、ガタガタと体を震わせる。

「嘘でしょ……あんなの、人のすることじゃ! 人を、バラバラにするなんて……!」

 そう、彼女が見た『それ』は死体だった。しかも、手足をバラバラに切り裂かれ、ほぼ原形を留めていない。恐らくこの学校から逃げ出した生徒の末路だろう。まるで人形の四肢のパーツを散りばめたかのように捨て置かれていた。

「そう、これはいかれたゲーム。だから人の命なんて安いし、ああやって弄ばれるのが関の山だ」

 勝平は続けて言う。

「それでも行きたいと思うか?」
「…………」

 彼女は少し考えた素振りを見せたが、結果的にアレを見てしまった以上外に出ると言う決意は失くしてしまった。何も言うこともなく、彼女は首を横に振って見せる。

「ああ、それが身のためだ」

 彼女は涙を流す。色々な感情が入り乱れ、何に対して悲しんでいるのか、恐れているのか分からなくなっていたが、この時だけはただ泣きたかったのだ。


———

 屋上に到着して十五分ぐらい経過した。相変わらず厳しい日光を当てる太陽を鬱陶しく感じながらも、先ほどより多少落ち着いた空気が流れていた。先ほどシクシク泣いていた柏崎も冷静になり、涙は治まっている。幾分か空気が和やかになったことを確認すると、服部は口を開いた。

「で、だ。外の様子も確認できたことだし、今度は堂本の彼女を探すが異論のあるものはいるか?」
「「…………」」

 誰も否定はしなかった。腰に両手を当て、いつもの能天気な笑顔を浮かべると、よし! と力強く頷いた。

「すまない、協力感謝する」

 堂本が頭を下げて感謝の言葉を述べる。それを、服部が気にすんな、と笑顔で対応する。いつもの彼らしい一面を覗かせながら、一同は元来た階段へと向かう。





 三階から二階へと階段を下りてる最中、先陣を切っていた服部はなるべく抑えめな声で後ろを歩いていた堂本に質問する。

「ところで、その三蕪木さんの行く場所に思い当たる所はあるか?」
「うむ、武道館にいる可能性はあるな。剣道部と柔道部は共用で使っていたこともある故に、色々と思い出深い場所でもある」
「なるほど」


 頭を上下に揺らして納得する服部。確かに剣道部と柔道部のカップルならば、そういった出会いの場が思い出になっている可能性もあるだろう。無意識のうちにそこへと行く可能性もある、そう考えた服部は次の目的地の候補を武道館に挙げた。

「他に思い当たる場所とかはある?」

 さらに後ろを歩いていた柏崎が質問をする。すっかりいつもの調子に戻った様子で、その表情に曇りはない。

「強いて言うなれば保健室であるか。捻挫した彼女を抱いて運んだことがある」
「展開読めたぞ。これはアレだ。意味深なやつをしてしまったなぁ? このぉ」

 服部は意地の悪い笑みを浮かべて肘を小突くように、堂本腹筋を押す。一方の堂本はカァと赤くなって慌ててジェスチャーを交えつつ、それを否定する。

「そ、それは違う。確かにベッドで押し倒してしまったが、事故なのだ。決して疾(やま)しい気持ちがあったわけではない。床にほんの段差があったのが悪いのだ。そうだ、その通りだ」

 若干、口調がおかしくなっていたがどうやら本当なのだろう。服部は笑顔でそう思いながら、ポンと彼の二の腕を掴むと、逆の手でグーサインを出す。

「そ、それはなんの意味なのだ? 何の笑みなのだ? 教えてくれ服部ぃ」


 ちょうど三階から二階への踊り場へと差し掛かった時だった。卑劣な堂本弄りが繰り広げられる中、勝平は何かに気が付いて立ち止まった。

「ん、どうしたカッペ?」

 不思議そうな顔を浮かべる服部を中心に二人が立ち止まる。各々が勝平へと視線を集める中、彼だけはある方向へと向いていた。

「なぁ柏崎。非常扉の鍵全部掛かってんだよな?」
「当たり前でしょ」
「開け方って生徒会以外他の生徒は知らないんだよな?」
「そうね……ってだからそれがどうしたのよ」

 回りくどい質問に、イライラとした口調で柏崎が答えた。

「じゃあ、なんでその扉開いてんだ?」

 ゾッと場の空気が何者かによって支配された気がした。どんよりとした何かが、先ほど軽くなった心をどんどん引きずり込んでいく。三人は勝平の視線の方向へと目を向ける。人が覗き込める程度に扉は少しだけ開いていた。


 体が膠着し、これ以上考えようとすることを拒否する。しかし、それでも思考はそれを無視した。ついさっきまでは閉まっていたはずの扉。それを彼女、柏崎は確認もしていた。しかし、実際開いている。なぜだ、なぜだなぜだなぜだ?

 ありえないのだ。ここの扉を開けられる人物と言ったら生徒会役員しかいないはずなのだ。つまりは生徒会の誰かが開けたとでも言うのか? いやそうでもないだろう。彼女たちは未だ体育館にいる。探しているにしてもネット回線がつながっているのなら連絡手段はいくらでも取れるはずなのだ。


——じゃあ、扉を開けたのは誰?


『おはようございマす』

 
 籠った声が廊下内を響き渡った。

「柏崎危ない!!」
「「!?」」


 彼女が気づいた時には遅かった。鋭利な刃物は天井から舞い、階段を鮮血に染め上げた。艶やかな血は日の光を浴びて、より一層美しさを放つ。

Re: リアルゲーム ( No.127 )
日時: 2016/08/15 17:37
名前: 電波 (ID: JIRis42C)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=237.jpg

 どうも、こんにちは、こんばんわ、電波です。
 最近如何お過ごしですか? 自分は最近、人生初のコミケに行って参りました。感想を述べるなら、戦場でしたねw
 どこもかしこも人の列、列、列。おかげで初日はほとんど何も買えずに終わりました。(二日目は買えました)
 でも、人生初だけあって新鮮な体験をさせてもらったなぁ、と思っています。あまりこういう機会はないですからね、良い社会勉強になりました!

 コミケだけでなく小説でもこう言った初の挑戦も大事かもしれないですね! 初のストーリーとか初めてのジャンルetcがあると思いますが、皆さんは色々挑戦していますか? 

 していなかったら、挑戦してみてください。何分初めてのことは躊躇いがちで中々前に出れませんが、それを乗り越えることによって自分を成長させる大きなきっかけになるかもしれません。

 というわけで、自分も挑戦しました。

 知ってる方は知ってると思いますが、以前リク依頼でこの小説の挿絵を募集しました。しかし、全然反応もなく、ただスレが埋もれて行っただけだったので、せっかくだから自分が描こうと思い至ったわけです。

 まぁ、ちょっと描いてみたいなぁと思ったのもありますがw
 URLは上に貼っておきますので、見たい方はどうぞ。ただし、過度な期待はしない方が良いです。
 反対に、自分の中のこの小説のイメージを壊したくないと思った方は見ないことをお勧めします。


 では、夏休みが残り僅かとなりましたが、お互い充実した毎日を過ごしましょう!
 

Re: リアルゲーム ( No.128 )
日時: 2016/08/21 23:27
名前: 電波 (ID: JIRis42C)


 ポタッ、ポタッと滴り落ちる血の音が一瞬の間の静けさによく響く。目をぎゅっと閉じていた柏崎は未だに訪れない自分の死に疑問を抱き、ゆっくりと目を開けた。そこには、彼女を庇うように前に出た堂本がその剛腕を盾にジッと上を見据えていた。

「堂本……!」
「どうやら無事のようだな、柏崎」

 いやぁ、良かった良かったと安堵の声を漏らす彼の姿を見て、彼女は声を荒らげた。

「バカじゃないのアンタ! あんたの方がよっぽど無事じゃないじゃない!」

 堂本の腕は刃物により貫通し、致命傷ではないとはいえその出血量は少なくはなかった。そのまま放置すれば、失血死してしまう。それだというのに、彼の表情はこれといって切羽詰まってるというわけでもなかった。というよりは、彼と相対している『何か』に意識を集中させているようにも見える。

「ま、細かいことは気にするんじゃない。それよりも」

 負傷した腕に力を込め、おもいっきり横に振る。瞬間、天井から奇襲してきた『何か』も刺さったナイフを握っていたためそのまま横へと引っ張られた。ドン、と横へと振り回された『ソレ』は壁へと叩きつけられる。大概の相手はそこで死ぬ死なない関わらず、そこで動けなくなるのだが、『ソレ』は叩きつけられた後、一瞬も怯む間もなく反撃を行使しようとする。

「おらぁ!!」

 ナイフを支えに使い、身を前に出そうとした時、『ソレ』の背中に追加で衝撃が加わった。一つの拳が正確に確実に、自分の内臓にダメージを与えてくる。少なくとも、攻撃したのは堂本ではないということは確かだった。可能だとするならば、一番先頭を歩いていた人物、つまり服部だと言うことが理解できる。

 服部は、さらにもう一発、とスキルで硬化させた拳を振り上げ、対象への攻撃を開始する。ドォン、と今度はさらに強い一撃が『ソレ』へと叩きこまれた。敵は小刻みに痙攣すると、すぐにぐったりと力なく手足をぶら下げる。服部は敵の背中から手を離し、床に転がる『ソレ』から視線を外さない。

「助かった服部」
「ああ、お互い様だろ。ところでお前、怪我は?」

 ふとそんなことを聞かれた堂本は、息をするように腕に突き刺さったナイフを引き抜いた。当然、今までせき止められていた血が一気に流れ出す。

「ちょっと、なに引き抜いてんの! 死んじゃうわよ!?」
「心配するな」

 取り乱す柏崎に堂本が落ち着いた声色でそれを制した。彼が軽く息を吸うと、みるみるうちに腕の傷口が塞がっていく。

「え、え!? どういうこと!?」
「治癒能力か」

 勝平が放った言葉に頷く堂本。

「『肉体改造(ライフ・ゲイン)』というスキルらしい。ありとあらゆる怪我を回復させる、これが自分の唯一の勇気の源だ」
「なるほど、確かにそれなら多少の無茶はできるな」
「だが、やはり痛みは感じるのでな。なるべく使わないようにしているのだ」

 会話の区切りも着いたところで三人は、仰向けに倒れた『ソレ』へと視線を移す。黒いフードを被り、黒いトレンチコートを身に纏っている。顔には赤褐色の面をしており、その表情は今にも動き出しそうなほど不気味に笑っていた。倒れているのに、一同の警戒は一向に解かれない。本能がそうさせているのか、動くこともない相手に対してこれほどまでに敵意を向きだすことは、この場にいる全員、誰も感じたことがなかった。

「で、こいつはなんだ?」

 開口一番に、堂本がこの黒装束の人物の正体を問う。

「人間ではないことは確かだな」
「そうだな、自分と服部の攻撃を受けても尚辛うじて動けていたようだから、まともな人間であるはずがない」

 にしても、と柏崎が顔を顰(しか)める。

「コイツ、どうやって天井から攻撃してきたの? 天井に足を引っかける場所なんてどこにもないのに」
「ないなら作れば良い。ほら、上見てみろ」

 服部が頭上に向けて人差し指を立てる。彼女は彼の言う通り、見上げる。すると、天井に黒い何かが一定の間隔で二カ所刺さっていた。目を凝らしてみてみると、その物体はナイフであることがなんとなく分かった。

「なんで天井にナイフなんか刺さってんの?」
「そいつ、ナイフに付いてる剣道でいう鍔(つば)の部分につま先を引っかけてぶら下がってやがった」
「嘘でしょ!? こんな短い段差につま先を引っかけて!? しかも、体重で支えられる大きさでもないのに!」

 柏崎の反応も無理はない。聞いてるだけで無茶苦茶な行動を相手はとっており、理解の範囲を超えている。誰だって混乱するだろう。一昨日の勝平だったら、彼女と似たような反応を取っていたかもしれない。勝平は困惑する彼女の肩に手を置く。

「落ち着け、混乱するのは分かるが今は落ち着くんだ」
「分かってるわよ、お説教はさっきので懲りたわ」

 毒づきながらも、彼女はなんとか深呼吸をして気を紛らわせた。

「で、結局のところそいつ何者なのよ?」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。もしこいつが私たちのターゲットであるやつならこの時点でゲームは終了のはずよ? なのに終わってないということは、生きてるか偽物か」

 確かに、彼女の言い分にも一理はある。このゲームには敵対する存在、『鈴木さん』が存在している。このゲームの終了条件は七日間以内に生存者を二人にするか『鈴木さん』を殺すかだ。だが、今現在終了したというアナウンスは流れていない。ここで立てられる仮説が彼女の言葉通りだ。

「確かにそうだな」

 堂本は腕を組んで、頷く。

「簡単な話、確認してみれば良いんだろ?」

 服部が視線を『ソレ』に向けて言い放った。他の三人はすぐに言葉を返さなかった。彼の言う通り確認すれば、簡単に答えは出る。しかし、確かめる最中に急に動き出し、不意打ちでもされるとマズイ。少し、考える素振りを見せると堂本が覚悟を決めたように言う。

「そうであるな、では自分が確認しよう。致命傷を与えられようがすぐに完治するからな」
「いや、俺がやるよ。堂本はこいつの体を抑えててくれ」
「ああ、なるほど。そういうことか」

 堂本は服部の頼みを了承すると、早速『ソレ』の上にまたがり、両肩を押さえつけた。階段にてこの行為が行われているため、安定はしていないがわざわざ運んでまでやるリスクを負うよりはマシだろう。服部は『ソレ』の頭部付近にまで回り込み、邪悪な笑みを浮かべている仮面へと手を伸ばす。

 指が仮面に触れた時だった。

 ズルッ


「ぬっ!?」


 まるで何かに引きずり込まれるかのように『ソレ』の体は下へと下っていく。しっかり捕まえていたつもりの堂本も、段差がある場所で相手を完璧に押さえつけるのは不可能だったようだ。慌てて振り向くも、『ソレ』は手も使わず、反り返るように立ち上がっていた。そして、どこから出したのか、両手には鉤爪のように指と指の間に挟まれた八本のナイフが握られている。

 そして、『ソレ』はヌルッと首を真後ろに曲げ、堂本たちを見つめる。ぞわっ、と相手から気色の悪い雰囲気が放たれた。最初の不意打ちは咄嗟のことで気が付かなかったが、この敵は明らかにおかしい。皆が純粋に思った。怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


 策がどうのこうという問題ではなく、この人物に関わったらマズイということ。どんなに作戦を練ろうが無力。どんなに人を連れてこようがゴミのように処理される。一目で、雰囲気で、空気で全てが相手の全てを物語っていた。相手に思いやりはない。同情もしない。ただあるのは、『死』そのものだった。


『どうも初めまして、転校生の『鈴木さん』デぇす。仲良くしてね?』
 

Re: リアルゲーム ( No.129 )
日時: 2016/12/02 00:54
名前: 電波 (ID: JIRis42C)

 鈴木さんは、奇怪な眼差しで彼ら四人を見つめていた。どのような感情を孕んでいるのかは不明だが、まるで品定めでもするかのように視線をあちらこちらと細かに動かしている。

——気持ち悪い奴だ。

 鈴木さんの様子を眺めながら、勝平は落ち着いた様子で毒づく。若干の恐怖心があるものの、先日の生徒会長との件を思い起こせばなんてことはない。恐怖で足がすくむ、と言う事態は起こる事は無いだろう。しかし、恐怖心はないものの、今置かれている状況があまり良くないのもまた事実。相手の行動がまったく読めない上に、しかも案外タフだ。

 今いるメンバーで太刀打ちできるかどうか考えると、実際の所怪しい。堂本が特攻し、相手の動きを止める。そして、次に服部が攻撃という先ほどの似たような連携もできる。が、それはあまり得策ではない。既に相手に堂本のスキルが知られているはずだ。こんな作戦、簡単に通すわけがないのだ。

 なら、と勝平は近くにいる柏崎に声を掛けた。

「おい」
「な、なによ……」

 少し震えた声で柏崎が返す。

「ちょっと倒れないように体を支えてくれ」
「はぁ!? あんた何言ってんの!?」
「良いから!」

 そう言うと、彼女は渋々彼の体に手を添えた。

「堂本、アイツが自分の体を刺したら動きを止めろ。服部、堂本が動きを止めたらアイツの顔面に渾身の一撃を叩き込め」
「そ、それは一体どういう———」
「取りあえずカッペの言うこと聞こうぜ」


 意図が掴めない堂本に服部はそう言う。半場流される形で堂本は無理矢理納得した。皆の役割が決定したところで、勝平はスッと軽く息を吸う。そして、カッと目を見開き、相手と目を合わせる。瞬間、相手の体がビクッと痙攣する。一方の勝平は、意識を失い、そのまま柏崎にもたれかかる。

 結果はうまくいったようだ。鈴木さんは、両手のナイフを自分へと貫く。胸から背中へと赤が混じった鉛色の刃は確かに貫通し、致命傷を負わせた。

「今だ!」

 服部がそう宣言すると堂本はその巨体を大いに使い、串刺しになった化け物へ掴みかかり、そのまま地面へとねじ伏せた。さほど距離もなく、あっさりと相手は捕まった。そして、堂本によってガッチリと固定された奴を見て、完全に身動きできないと理解した服部は右手に渾身の力を込める。

「おらぁ!!」

 跳躍し、より威力を上げた拳が上から降ってきた。ドォン! と分厚いアスファルトが煙を上げ、全員を包み込む。一瞬の間だけ、全員の視界が利かなくなる。

「やったか……?」

 意識を取り戻した勝平が眉を顰(ひそ)めて言った。

「やってもらわないと困るわよ。はやくこんなの終わらせなくちゃ」

 体を支えていた柏崎が答える。彼女の言っている通りだ。ただでさえ、一日で何十人以上も人が死んでいるのにこれが七日間も続くとなれば相当の死人が出る。これ以上、犠牲者を増やさないためにこの化け物を早く殺さなくてはいけない。

 すると、徐々に視界が元に戻ってきた。彼は視線を服部たちへと絞る。だが、位置的に服部が彼の視線を阻むようなところにおり、結果どうなったかが分からない。

「服部、どうだ? やったか?」
「………」

 しかし、返答がない。次に堂本にも声を掛けるがそれらしい返答はなかった。生きていはいるが、なにかとんでもないものを見ていると言った様子だった。不審に思った勝平が、彼らにおい! と呼びかけた時だった。

『いっダぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 不愉快な声が廊下内に満ち満ちた。それと同時に、胸の中に沸き上がるどす黒い気持ちが徐々に彼を侵食する。言葉では言い表せない程に、不快な気分であることには間違いなかった。まるで赤ん坊の泣き声のような声は、次第にシクシクとすすり泣くような声へと変わった。

「なんで、あいつ死んでないの……?」

 絶望したかのように柏崎は呆然とその状況を見ていた。彼女の言う通り、そのまま見ていた感じだとあの化け物は死んでいた。だが、所詮はうまくいっていたらの話だ。鈴木さんは服部の拳が飛んでくる直前、意識を取り戻していた。胴体は堂本に押さえつけられ、すぐには動けない状態にあるので、動かせる部分、つまり首だけを動かしたのだ。

「大丈夫だ、今度は首を狙う。堂本、そのままの体勢で頼むぞ!」

 ようやく声を発した服部は早急にすぐ傍の堂本に声を掛ける。しかし、堂本が唖然とした表情でこう返す。

「服部、俺たちは……何を捕らえていたのだ?」
「お前、何を言って———」

 そう言って、服部が再び鈴木さんが寝ているであろうそこへと視線を移した。そして、驚愕する。そこに倒れていたはずの鈴木さんはどこにもいない。声もいつの間にか消えており、鈴木さんのいた痕跡が見当たらなかった。

「なっ、どこにいった!? 今までそこにいたのに!」

 慌てふためく服部の肩に手を置く堂本。落ち着けと彼に言いつつ、冷静に状況を分析する。

「確かに捕まえていたはずなのだが、急に手ごたえが無くなった……近くにいる気配はしないが、逃げたのだろうか?」
「そうかもしれないけど、気を付けた方が良い。こっちの動向を窺っているのかもしれない」

 勝平が階段から下りながら答える。下の階が見える程に空いた床の大穴を含め、周辺を見てみる。しかし、至って変わった所はなかった。戦った痕跡以外は先ほどと同じだ。

「外に出よう。このまま校舎内にいるのは危険だ」

 勝平がそう言うと、皆がそれに同意した。

———


 勝平達は最初に来た庭の方へと戻り、これからどうするかを話し合っていた。話し合うと言っても既に内容は決定しているようなものなのだが。

「一旦体育館に戻ろう」

 勝平は何の前置きもなく、体育館に戻って態勢を立て直すことを案に出した。鈴木さんと遭遇してしまった現状で、堂本の彼女を探そうとまた各所を回るのはマズイと判断しての案だった。無論、柏崎もそれに賛成らしく、力強く頭を縦に振った。服部も仕方ないと言った感じで渋々了承するのだが、堂本だけは引き下がらなかった。

「……すまないが、自分は彼女を探す」
「堂本、お前……」
「すまない服部。自分は、どうしても三蕪木を探さなくてはいけない」

 皆に謝罪をし続ける堂本。しかし、彼女は、柏崎だけはどうしても分からなかった。

「なんでそこまでするの?」
「ん、それはどういう……」
「そのままの意味よ。なんでそこまでその三蕪木さんっていう人の為に頑張れるの? 付き合ってるからなの?」

 責め立てている訳でもなく、煽りでもなく、純粋に出てきた彼女の言葉に彼は少々困った様子ではにかんだ。

「彼女は自分の見た目を好きでいてくれた。老け顔で口調も声も、全てにおいて同年代ではない自分は、どことなく孤立感を抱いていたのだ」

 思い出すように堂本は語った。

「イジメにあっていたわけではないのだが、他の生徒と違うと思うとやはりそういう気持ちになっていた。だが、ある日、彼女はそんな俺の風貌を好きだと言ってくれた。だからだろうか」
「たったそれだけ?」
「ああ、たったそれだけだ。だが、それだけでも自分は救われたのだ。だから今度は自分が彼女を救わなくてはいけない」

 そう、と素っ気なく返す柏崎。彼女に恋愛の経験がないせいか、堂本の気持ちをこれっぽっちも理解することはできなかった。しかし、彼が一生懸命捜そうという決意は感じられた。

「いつか、柏崎にもそう思える人が現れるだろう。その時は自分の気持ちが少しは分かるはずだ」
「さぁ? 思えると良いわね」

 ふっ、とその様子を微笑ましく見ていると、勝平は表情を変えないで確認を取る。

「じゃあ、お前は校舎内や各所を回るんだな?」
「ああ、そのつもりだ」
「……さっきのような化け物がいてもか?」

 勝平がそう問いを投げるが、堂本の決断は揺るがない。

「無論だ」

 鉄の意志で断固として意見を曲げそうにない彼を見て、勝平はこれ以上何も言わなかった。彼に何を言っても、彼女を探すの一点張りだろう。そこまで覚悟があるなら、勝平は彼の意思を尊重する。

「分かった、気を付けろよ」
「お前もな。短い間であったが楽しかったぞ」

 にこやかな笑顔を勝平へと向ける堂本。それに対して勝平は、視線を横にずらし、おう……と小さく返事した。

「ど、堂本……ちゃんと彼女さんを連れて帰ってきなさいよね!」
「お、初めて俺の名前を呼んだな! これも少しは信頼された証拠であるな! だが、一応年上には先輩や、です、ますの敬語を使うんだぞ!」
「うっさいわね! 放っておきなさいよ!」

 そんな会話でアハハッと笑う堂本。そして、順番的に服部へと回ってきた。お互い無言ではあるものその表情には暗さはなかった。

「生きて帰って来いよ! 柔道部!」
「勿論だとも! 無事に帰ってこられたら、また会おう」

 そういうと堂本は服部に手を差し出してきた。服部は少し呆然としたが、頬に笑みを広げその手に応じた。がっしりと握られたその二つの手には僅かな時間と言えども確かな絆が感じられた。数秒すると、片方の手は離れていく。

「では、行ってくる」

 堂本は皆にそう告げる。他のメンバーもそれに答え、無言で頷いた。堂本も頷き、そして彼らに背を向けて彼女を捜索するためにまた走りだしたのだった。

 

 


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