ダーク・ファンタジー小説

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君の為に
日時: 2021/01/03 09:55
名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)

『君の為に』


この物語は昭和から平成に変って間もなくの頃、北陸は金沢で大学生が空手の稽古中に誤って親友を死なせてしまい、一九才の少年(堀内健)は苦しみ大学を中退し岩手県にある名勝、浄土ヶ浜近くのお寺へ精神修行する所から始まる。その寺の住職は合気道の達人で大勢の門下生に教えていた。その一人娘(小夜子)女子大学生も幼い頃から合気道を学び有段者であった。堀内健は修行して住職から色んな事を学んだ。精神面も強くなりまた合気道も教わるが、その小夜子の父である両親が何者かに殺された。堀内健にとっても大事な師匠である。小夜子はその犯人を追って、青年となった堀内健の力を借り犯人を追って岩手-東京-シンガポール-岩手へと修行から合わせて八年間にも及ぶ過酷な戦いと共に芽生えた愛と復讐の物語である。

『前回投稿した、宝くじに当たった男に続く長編ものです』

前回同様宜しくお願い致します。

Re: 君の為に ( No.85 )
日時: 2021/11/17 18:09
名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)

君の為に 84

最終章 君の為に 
最三節 最後の戦い
 
 今日も盛田の事務所を見張った。盛田は今日も来て居ないが見慣れない人物が三人現れた。健はピンとくるものがあった。地元の人間ではなさそうだからだ。
もしかしたら、あの中に沖田が居るのではないかと感じた。
 健は強攻策に出るしかないと、このままでは一向に進展ない事にイライラしていた。
 健も随分長く見張っていて苛立ち始めていた。見張りと言う忍耐が、こんなにも辛いのかと思った。ましてや憎むべき相手だからか。あの三人は何処から来たのだろう?
健は沖田の顔は知らない。用心棒は沖田だけじゃないかも知れない。こうなったら強引に三人の前に立ちはだかって戦うしかない。小夜子が側に居たらきっと止めるだろうが、健にはそんな心の余裕は、もう残っていなのか。
 シンガポールで小夜子と新しい生活が待っているからなのか。
 それとも長く待たされからか。健はそんな自分を呪った。まだまだ修行が足りないと。要山和尚に叱られそうだ。
 その見慣れぬ男達は、再び車に乗って動き出した。

 健は喫茶店の近くに停めてあった自分の車で、その車の尾行を開始した。
 まずは盛田の枝〔手下〕から情報を聞き出し考えだ。車は小一時間程して着いた。
 その先はゴルフ場だった。三人ともサングラスを掛けていたが、その風体はいかにも普通の人間とは違っていた。三人はゴルフ場のクラブハウスに入って行った。
 こんな遅い時間に何をすると云うのか、今からプレーするには遅すぎる。
 やはり何かあると健は感じた。暫くするとクラブハウスの中から用心棒を従えて盛田一政が現れた。
 それを守るように三人の男が囲んだ。(やはり奴のボディーガードか)健は呟いた。
 盛田の顔を健は遠く離れたロビーから用意していた双眼鏡で見ていて思った。
 あの脂ぎった顔で小夜子の両親殺しを支持したのか。そう思うと腹が煮えくり返って来る。人の不幸を肥やしに、のし上がった奴を健は許せなかった。

つづく

Re: 君の為に ( No.86 )
日時: 2021/11/21 09:13
名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)

君の為に 85

 今飛び出して行って袋叩きにして、土下座でもさせてやりたい衝動に駆られた。
 健は、その怒りを制御するのに必死に身体を震わせて耐えたのだった。
この場所は、健が心の修行と小夜子との、交流が始まった場所でもある近くだった。
 その車が別荘らしき場所で止まった。〔そうか、此処が盛田の別荘か〕
 健は浄土ヶ浜でこの別荘は見たことがある。まさか盛田の別荘とは知らなかった。
盛田の新しい居場所を見つけて、また一歩、追い詰めた気がした。
 健は別荘を一気に奇襲しようかと考えたが、しかし其れでは只の押し込みだ。
 それならば一人でも誘い出す方法が得策と思ったが、今は、その術がない。
 健は車で別荘から五十メートルほど離れた森で待機する事にした。
 しかし、こんな時間に用心棒まで従えて何をしようとしているのか、商売か議員の仕事をするとしたら、自分の事務所で出来るのだが。

 もう時刻は夜の八時頃になろうとしていた。その時、別荘から一人の男が出て来て車に乗った。使いか何かに出されたのだろう。健はチャンスと見て、その車の後を追った。
その車は海岸通りに出た。健はこの辺りの地理は知り尽くしている。
 この先に道は二股に別れて、右が海岸へと続き左が国道へと続く道だ。
 国道に出られては車が多く人目につきやすい。海岸方面なら松林が続き、この時間帯なら殆んど車は通らないが。健は賭けた。国道なら奇襲は止めようと。
しかし幸か不幸かその車は、海岸方面へと向かった。
 健には一気に、そのチャンスが訪れた。健の身体からアドレナリンが噴出した。

 その松林に近づいた健は一気に車の速度をあげて、その前の車を追い越し斜め前に進み、急ブレーキを賭けた。相手の車は咄嗟のことで慌ててハンドルを左に切って避けたが、道路の側面にある溝に前輪が落ちて急停車した。どこか打ったのか、なかなか出て来ない。
 やがて運転席から降りて来た男が、ドアを勢いよく開けて飛び出して来た。相当に興奮しているようだ。やはり一般人とは違う風貌をして苛立っているようだ。
「なんて運転しやがる!この野郎出て来い。ただじゃあ済まないぞ」
 言われなくても健は最初かそのつもりだ。健は車から降りて、わざと頭に手を上げて、誤るような振りをした。だがその男は怒りが収まらないのか、いきなり右パンチを繰り出して来た。健にはそれが止まっているように遅く感じた。なんなくその腕を抱え込むように軽く捻って体を沈めた。男は駒の用に一回転して路面に叩きつけられた。次の瞬間、健はその右腕を伸ばして膝に当てて強く引いた。鈍い音がゴキッと鳴った。
 それは右肩の間接が外れた音だった。これは想像以上に痛い、大の男でも悲鳴を上げて脂汗が滲み出る。当然その男も、大きな悲鳴を上げて目が散り上がってわめいた。 

つづく

Re: 君の為に ( No.87 )
日時: 2021/11/23 22:24
名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)

君の為に 86

 ほんの数分の間に自分に何が起きたか分からないまま叩き伏されて、健が鬼のように見えた。その男は始めて悟ったのだ。自分が、この男に襲われた事を。
「ちょっと、聞きたい事があるのですがね」
 その鬼のような健が、おだやかな調子で尋ねた。やる事と丁寧な言葉は余りにも対照的だった。男は思った。聞きたい事があるなら最初から丁寧に聞いてくれと。
「なっなんだ。お前は。俺が何をしたって言うのだ。俺が」
 と男は震え上がった。しかし丁重な言葉とは裏腹に健の表情は険しかった。

 「別に……あんたには恨みがないのだが、こうでもしないと協力してくれないと思ってね。沖田があの別荘にいるだろう」
「なに、沖田さんがどうかしたのか」
「その沖田は、あの盛田と一緒に別荘に今、居るだろう。答えてもらおうか」
「知らん、知って居ても言える訳がないじゃないか」
 そう言いながらも、白状しているのと同じような事を言って喚いた。混乱している。
「そうか、なら言わなくても良いが、次は左の方を外してあげようか。但し痛いぞ」

 言い終わらぬうちに健は、左腕を取って強く伸ばして一気に左肩を外し体制に入った。
「待ってくれ! 言う、言うから待ってくれ」
 男は必死に哀願するような目で健に屈服くっぷくした。それ程までに関節を外されるのは強烈に痛い、また両肩を外されたら人形と同じで両手が動かない。相手の思うままだ。
しかしその前に激痛で気絶するかも知れない。抵抗のすべもない関節外しは健の常套手段だった。しかも骨が折れる訳じゃないから大事に至らない利点もある。
 男はすっかり観念して話し始めた。その話によると健が想像した通り、盛田の用心棒だった。沖田は時々、業者間のトラブルや相手次第によっては力で黙らせる脅しもやっていた根っから悪党だ。そんな連中を雇う盛田の裏社会が、やっと見えて来た。
 そして要山和尚も、その盛田の差し金によって命を落とし結果になったのだった。
 健は、その男の免許証から身元を確認した。やはり地元の人間じゃない。そして男に命じた。電話で呼び出して(事故を起こしてヤクザ風の男と揉めている)と。

 男は近くの公衆電話ボックスから沖田へ電話をかけた。その側に健が立って見張っている。健を横目に、事故を起こして地元のヤクザと揉めていると伝えた。
 盛田は地元のヤクザと関わりを持っていない。噂が広がれば地元では選挙に勝てないから、東京とか離れた所から呼び寄せる。新日本同盟などとは、裏で深く繋がっていた。
 その為に金も注ぎ込んでいる。沖田からの返事は、その男を一喝した後、舎弟の為にどうやら出向いて来るらしい。果たして何人でくるかが問題だが、仕掛けた罠はもう後戻りが効かない。健は今夜、沖田だけでもケリを付けたかった。そして盛田が命じた事を吐かせるつもりだ。その後、健は間接を外した男を縛ってトランクに押し込んだ。
 これは松本の受け売りだが、便利な使い方もあるものだと思った。まもなく十五分経過した頃、ライトを上向きにした車がフルスピードで近づいて来た。
 健は車から三メーター程離れた松の木の後ろに身を隠した。

つづく

Re: 君の為に ( No.88 )
日時: 2021/11/28 18:16
名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)

君の為に 87

やがて沖田の乗った車から二人降りて来て、溝に落ちた車の回りを探し回った。
 健は木の陰から見た男の一人は大きい。百九十センチ近くもあろうか大男だ。
健よりも五センチ大きいかも知れない長身だ。多分それが沖田だろう。
もう一人も大きいが、その男よりは少し細身の体格をしている。
 健は成る程、用心棒家業らしいと思った。しかし同時に戦うにはかなりの強敵だ。
 遠目に見ただけで分かった。武術を身に付けているだろう、そんな身のこなしを感じた。
「雅!」暗闇に沖田の太い声が響く。
 二人の男は周りを見るが誰も居ない。車の中を見ても誰も居なかった。
 「沖さん、まさか雅の奴、連れて行かれたかも知れませんぜ」
 予想通り体格の大きい方が、沖田と分って健はゆっくりと歩いて、大胆にも彼らの前に姿を現した。二人はギョッとした。
 「な、なんだ。お前は、雅はどうした」
 沖田の弟分が叫ぶ。言葉のアクセントから地元の特徴ある訛りが無い。
 「やっと会えたな、お前が沖田か」
 凄みと憎しみのこもった健の声だ。健は武者震いがした。やっと捉えた事に。

「なに、誰だ! お前は?」
沖田はまったく健に覚えはなかった。そうだろう、話は聞いているかも知れないが、初対面だった。沖田も、かなりの修羅場を潜って来た人間だ。そうとう腹が据わっている。
 知っているなら俺の怖さも知っているだろう。だが怖がらず現れた健を見て少し動揺が走った。相
当の自信がなければ、それも一人で誘い寄せるとは相当な自信があるのか。
 沖田は健を少し警戒した。誰だと言われたが、健は名前を言おうとしなかった。
「誰でもいい沖田! 覚悟を決めてもらう」
「ナニ俺を相手にか? 笑わせるぜ。偉そうな事を言ってくれるじゃないか」
 沖田も相当の自信を持っている。そしてこの体格だ。
だが目の前の相手は、沖田を前にしても、怯む気配どころか、不適な笑みで睨んでいる。
健は相手が二人居る事が気になった。その沖田の舎弟が逃げて応援を頼みに行くんじゃないかと。だが健はためらう事なく沖田との間合いを計りながら、いきなり跳躍した。
その瞬発力と高さは、人とは思えぬ程の高い跳躍だった。

つづく

Re: 君の為に ( No.89 )
日時: 2021/11/30 19:51
名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)

君の為に 88

あっと云う間に沖田の斜め後方に居た男の右肩を蹴り、更に後方に着地した。蹴られた男は、もんどり打って健の前に仰向けに転がった。と、次の瞬間に、健の右の正拳が男の腹に叩き込まれて男は(く)の字に身体を折り曲げて転げ廻った。
その間一~二秒。沖田が振り返った時には、舎弟は転げ回り戦力外になっていた。
 沖田は表情が暗くて顔は見えないが青ざめているだろう。空手を使うのかと思った。
「おのれっ!」
 しかし、それ以上の叫びは無かった。呼吸ひとつの仕方でも乱したら、やられると思ったのだろうか、沖田は健と間合いを取りながら上着を素早く脱いだ。いよいよ本腰を入れる相手と悟ったたようだ。
その距離三メートル、間合いの取り方も互いに熟知していた。沖田もボクサー崩れなのか、足をリズミカルに動かした。だがリングと違って足場が安定しない。
また間合い計るそれ以上近づいても、それ以上離れても攻撃と防御が難しいのだ。
 今度は足場が悪いのか、沖田は摺り足で間合いを計っている。そして一歩前に踏み込んだ途端に跳躍した。身体を斜めにして右足が飛んで来た。

次の瞬間には、沖田が着地する寸前にバックフックが再び健の後頭部に飛ぶ。
健は思わず、しゃがんでかわすがバランスが少し崩れた。ただのボクサーじゃない。
 チャンスとみたか、すかさず続けざまに右キックが、健の太腿の辺りに炸裂した。
 「うっ」さすがの健も少し堪えた。
 (なんだ? 奴はキックボクサーか)
 健に考える間もなく矢次に繰り出してくる。今度は左キックが飛んでくる。
 健は身体を後転し二回転した。その反動で三メーター先に着地して体制を立直す。
沖田はこの好機を逃すものかと、すかさず詰め寄ると。右ストレート、左フック、身体を低くして下からのアッパートと繰り出す。だが森林の木が邪魔をする。
健も必死でかわすが防戦一方の状況だ。かわされても、かわされても、沖田は攻撃の手を緩めない。ボクサーで云うラッシュ攻撃だ。
そして次の右ストレートが健の顔面を狙って飛ぶ、健の左手が垂直に立てて肘で交わすと思った瞬間。その左手が沖田の腕に絡みつくように押さえ込むと同時に沖田の右肩を引き寄せて、健の前膝蹴りが沖田の顔面に炸裂した。流れるような連動した技だ。
                
 右腕を引き寄せての、その膝蹴りは受身の取りようがない。沖田の鼻から血が飛び散った。それでも沖田は反撃して来た。普通の人間なら鼻を押さえて、うずくまる処だが沖田は違った。体制を立て直すと、今度は足の攻撃に切替えて足蹴りが飛んでくる。
だが先ほどよりスピードが落ちた感じがする。沖田が息をつく暇もなく仕掛けてから三分程経っている。ボクシングで云えば、ランド終了(3分)のゴングが鳴る頃だ。ボクサーなら三分戦いは一分間のインターバルがある。体は三分戦い、一分の休み、それが体に刻み込まれている。インターバルが取れいとリズムが狂ってくる。
 しかしこれは、試合ではないルール無用の死闘だ。負ければ只では済まない。五分経過した沖田には未知の時間だ。呼吸が乱れて来たハァハァと息が荒い。だが健は呼吸一つ乱れてはいなかった普段の訓練の賜物だ。合気道は本来、攻撃型の柔術ではない。
 相手の攻撃に応じて対処する。相手の力を吸収して逆に技を仕掛ける。だから思った程に体力は消耗しない。健は合気道だけじゃなく、空手も有段者であり両方を兼ね備えている、受身と攻撃の両方が出来る。沖田にとって長引けば長引くほど不利になる。

つづく


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