ダーク・ファンタジー小説
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- 君の為に
- 日時: 2021/01/03 09:55
- 名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)
『君の為に』
この物語は昭和から平成に変って間もなくの頃、北陸は金沢で大学生が空手の稽古中に誤って親友を死なせてしまい、一九才の少年(堀内健)は苦しみ大学を中退し岩手県にある名勝、浄土ヶ浜近くのお寺へ精神修行する所から始まる。その寺の住職は合気道の達人で大勢の門下生に教えていた。その一人娘(小夜子)女子大学生も幼い頃から合気道を学び有段者であった。堀内健は修行して住職から色んな事を学んだ。精神面も強くなりまた合気道も教わるが、その小夜子の父である両親が何者かに殺された。堀内健にとっても大事な師匠である。小夜子はその犯人を追って、青年となった堀内健の力を借り犯人を追って岩手-東京-シンガポール-岩手へと修行から合わせて八年間にも及ぶ過酷な戦いと共に芽生えた愛と復讐の物語である。
『前回投稿した、宝くじに当たった男に続く長編ものです』
前回同様宜しくお願い致します。
- Re: 君の為に ( No.43 )
- 日時: 2021/04/11 19:49
- 名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)
君の為に 42
乗客達は二人の男女が急に通路に飛び出したので、驚きの声よりも唖然として見ていた。
キャビンアテンダントや乗務員達の前に居る二人のハイジャック犯は、健が飛び出して来て驚いたのか、咄嗟の判断に遅れてしまった。慌てたハイジャック犯は、健に向かってナイフを振り回しながら向かって来たが、健にはそれがスローモーションのようにしか写らなかった。
リャアー 奇声と共に健の右足がナイフを持った男のナイフを蹴り上げていた。
ナイフを蹴られ、体制を崩した男のナイフが宙に舞う。
そのナイフが落ちてくる前に、健は二人目の男への正拳突きが胸元をえぐっていた。
だがナイフを蹴り上げられた男が背後から襲う。しかし無駄だった。健は振り向くこともなく前屈みの状態からの後ろ蹴りが決まる。男は吹っ飛んだ。間を置かずに健は倒れている男の後頭部を蹴るとグッタリとなった。その時間は数秒の出来事であった。
一方の小夜子は気配に気付いた犯人が、小夜子にナイフを振り回した。
小夜子の脇腹をすり抜ける。いや小夜子が咄嗟にかわしたのである。
次の瞬間、小夜子の手刀が相手の首筋にヒットした。犯人はひと呼吸おいて、床に崩れ落ちる。その光景を、固唾を飲んで見ていた乗客から歓声があがった。
小夜子は倒れた男からナイフを奪い取ると健の方を振り向いた。
健も小夜子を見て、ホットした表情を見せてニヤリとした。
健はキャビンアテンダントや乗務員に右手をあげてVサインを送った。
それは事件が終わったことの、Vサインであった。
時間にして、何秒の出来事だったのだろうか、瞬きをしている内に終わってしまった。
乗務員達は逆に三人の犯人を縛り上げて犯人を監視した。キャビンアテンダント達も、恐怖の世界から開放されたが、未だに余韻が残っていて正常な状態に戻れないでいるようだ。
まだ体を震わせている者も居た。それでも健と小夜子に、お礼を言って業務に戻ろうと必死に乗客達へのサービスと、その責務に動きだした。
「乗客の皆様、お怪我はございませんか? ご安心ください。ハイジャック事件は勇気ある。お二方の力により解決致しました」
キャビンアテンダントが乗客を安心させる為に、アナウンスが機内に流れた。
乗客も安堵したのか沢山の拍手が沸き起り、立ち上がって二人に手を振る者もいた。
がっ! その時、操縦席の方からパイロットを人質に、拳銃をもった男が突然に現れたのだ。健も小夜子も乗客たちまでが、まさか四人目の男が居たとは思いもしなかった。
やっと終わったと思ったのに、乗客たちは再び恐怖の世界へ呼び戻された。
それも拳銃を握ってパイロットに突きつけているとは、さすがの健と小夜子も、そこまでは計算出来なかった。その拳銃を持った男も想定外のことが起こったのだ。
仲間三人がヘマをやって捕らえられたことだ。
つづく
- Re: 君の為に ( No.44 )
- 日時: 2021/04/17 17:05
- 名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)
君の為に 43
しかし再び主導権は自分たちにあると思ったのか、その男から強気の発言が飛び出した。
「ショーは終わりだ。我々を甘く見てもらっては困る。我々は目的が達成出来なければ、飛行機ごと諸君等と共に、自爆する覚悟ある」
ハイジャック犯は高々と宣言した。機内に再び恐怖が訪れた。そして更に話を続けた。
「ところでヒーロー気取りの二人には、制裁を与えなければならない」
犯人は健と小夜子に、側に来るように手招きしている。
名指しされた健と小夜子は顔を見合わせた。拳銃では、どうする事も出来ない。
「健……」と、心配顔で小夜子は健を見た。
「小夜ちゃん犯人が呼んでいる。悪いけど前を歩いてくれるかい。合図したら、すぐにしゃがんでくれる」
小声で囁いた。小夜子は健に、まだ何か策があるのだろうと小さく頷いた。
健と小夜子は両手を上げながら機内の前へと進む。健はその間、呼吸を整いていた。
フーと息を大きく吸い込む。全身から手にパワーを集中させていた。
拳銃を持っている男までの距離は七メートルとなった。
その目標の距離で充分だった。「ヨシ!」健の声が小夜子に送られた。
小夜子は素早くしゃがんだ。小夜子の前方に拳銃を持った男が、その動作に反応した。
男は慌てて拳銃のトリガーに力を込めようとした。しかしその前に健は胸元から両手を押し出しように気合を放った。フーと息を吐き出すと同時に、周辺の空気が圧縮され高速で犯人の方向へ流れた。
ピキーン~~ 健と犯人の空間が裂けたように、空気摩擦が起きた感じがした。
同時に、犯人が三~四メートル後方に吹き飛んだ。同時に拳銃も何処かに飛んだ。
ドカァーンと何処かの壁に、男が激突して崩れ落ちた。機内が静まり返った。
要山和尚直伝の必殺技、波動術が炸裂した瞬間であった。
恐るべし! 堀内健。要山の魂が生きていた。それが波動術の凄さだった。
今度は乗客や乗務員は声さえも出なかった。みんなが固唾を呑んで、それを見ていた。 健が魔術を使ったのか? だが健の手には何も握られては居なかった。
それはマジックか? いや、やはり魔術としか言いようがない。
一瞬、時計が止まったように誰も動かなかった。やっと我に返った乗務員達が最後のハイジャック犯を一斉に取り押さえた。すべてのハイジャック犯人が逮捕されてやっと平穏が訪れた。乗客たちは一斉に健と小夜子に再び拍手を送った。乗客達は互いに手を取って涙ぐむ人さえいた。乗務員や機長からは何度も何度も、お礼を言われた。
「アテーションプリーズ、乗客の皆様、当機はまもなくチャンギ国際空港に着陸致します。当地の気温は三十二度、晴れ当機のご利用、ありがとう御座いました」
やがて機は、シンガポールの百万ドルの夜景に向かえられた。
第3章 終 次回第4章へつづく
- Re: 君の為に ( No.45 )
- 日時: 2021/04/21 17:58
- 名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)
君の為に 44
第四章 シンガポール
第二節 探偵家業
機は三十分遅れでチャンギ国際空港に無事に着陸した。深夜にも関わらず、ハイジャックされたとあって、飛行機の周りは赤や青のランプの点滅が凄い。
警察車両に報道陣だろうか、それに装甲車など物々しい警備体制だ。到着した飛行機を武装した警官が取り囲む。乗客が降りるよりも先に警官が機内に乗り込んで来た。
ハイジャック犯達を連行して行ってから、やっと乗客達は降ろされた。到着ロビーは警察や報道陣で、ごった返しとなった。
勿論、報道陣達は、その英雄がお目当てのようだ。
乗客がハイジャック犯を、それも拳銃やナイフを持った男四人も倒したなんて前例がないことだった。しかも英雄は素手で倒したのだ。刃物ならまだしも拳銃を持った犯人を、不思議な術で吹き飛ばしたという。
健と小夜子は機長達と一緒に一般乗客達とは別の出口から空港特別室に通され、報道陣に逢う前に空港警察などから、お礼を兼ねた事情聴取が行われて空港、警察関係などから大変感謝されたのだった。
報道関係の記者会見を是非とも出て欲しいと言われたのだが、それは困ると丁重に断り、名前も写真も出さないように頼んだ。警察関係者や報道陣も「勿体無い英雄なのに」と残念がった。
特に報道陣は男女の若い乗客が四人の犯人を倒したというのだから世界的な大スクープだ。それなのに英雄は雲隠れしてしまった。
一方の二人は一歩間違えれば、いや間違いなく大変な事なっている筈だった。
それだけに本当に感謝だけでは申し訳なく、 健と小夜子にシンガポールで困った事があったら、 どんな相談でも言って欲しいと。有難い言葉を貰ったのだが照れくさかった。
このハイジャク事件の総責任者である。ジョイ・ハミルトン警視がそう言った。
報道関係者には機長達と警察とで、記者会見が行われたが、会見場に、その英雄の姿が見当たらず、警察関係者に記者達が詰め寄ったが、報道陣達は納得出来なかった。
その男女二人の英雄を出してくれと大騒ぎになったが、二人からの意向でそれは出来ないと断ったのだが警察の責任者は大汗をかいて対応に苦労した。
〔男女二人の日本人に依って、犯人を取り押さえる事が出来た〕
とシンガポール警察から発表されるに留まった。 報道陣は何とかして、その二人に合わせてくれと、そうでないと記事にならないと警察関係者を非難する始末だ。
健と小夜子は警察や空港関係者に、感謝の拍手に送られてチャンギ空港を後にした。
二人は予約して置いたホテルへパトカーに先導されてと向かった。
結局、翌日にTVや新聞は次のように発表された。
(謎の男女日本人の英雄、シンガポールの街に消える。あの英雄を探せ)
そんな洒落た見出しで報道された。だが 健と小夜子は、英雄になりたくなかった。
有名になって顔を世間に覚えられるのを恐れたからだ。
これから小夜子の両親殺しを探さなくてはならない、顔が知られては何も出来なくなるから英雄よりも孤独な戦いを選んだ二人だった。
つづく
- Re: 君の為に ( No.46 )
- 日時: 2021/04/24 21:17
- 名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)
君の為に 45
ここでこの小説『君の為に』の舞台となるシンガポールを覚えていて貰いたい。
成田から飛行機でチャンギ国際空港まで六時間三十分。
気流の関係で七時間など多少の時間の差はあるが。
面積 東京都の二十三区、又は淡路島と同等
人種と人口 中国人 マレーシア系 インド系 570万人 2019年 現在
時差 △一時間 通貨 シンガポールドル 1S$約87.64¥
治安 世界最高レベルで良い,「日本よりも良い」とされている。
気温 23℃~32℃ 四季はなく雨季のみ地震も台風もない国。
土地 国土が狭い為に外国人、及び外国企業は土地を持ち事は出来ない。
水事情 シンガポールは山らしい山がない為。水の半分以上は隣の国マレーシアから輸入してい。国内分は大きな貯水池を用意、雨水等をろ過で使う。
コンテナ貨物取り扱い 世界2位。面白いのではメイド税がある主に外国人で一人雇用するには1万7千―2万5千。軽自動車400万、スクータ・バイク150万。土地が狭いため凄く高い。
つづく
- Re: 君の為に ( No.47 )
- 日時: 2021/04/27 10:50
- 名前: ドリーム (ID: JbG8aaI6)
君の為に 46
翌日、健と小夜子はシンガポール一の繁華街オーチャード・ロード伊勢丹デパートの近くにあるケニー佐田の経営するT.T探偵事務所を訊ねた。
事務所は思ったよりも広かったが閑散としていた。健が想像していた日本の探偵社とは随分感じが違っている。
所長のケニー佐田が出迎えて、笑顔で握手を求めて来た。二人は応接室に通され、健は東京で勤めていたKG探偵事務所々長、岸田五郎の紹介状を渡した。
「オー五郎、なつかしいね、彼は元気ですか」
簡単な挨拶を交わして、ケニーは日本の友人、五郎を本当に懐かしがっていた。
その岸田とケニー佐田は昔の仕事仲間だと言う。警視庁に研修に来た時に知り合ったらしい。
そのケニーが隣に居る小夜子と健を見て、何か思い当たるような顔をしている。
その後ケニーは、何を思ったのかニヤッと笑って言った。
「君達じゃないの? 昨日の英雄はTVや新聞で見た限り総べてが、そう思えるんだよ。ハイジャクのあった飛行機に乗っていただろう。二人とも長身で武術にも長けているらしいが」
健と小夜子は、互いに顔を見合わせ答に困った表情を浮かべ。健は話をそらした。
「ケニーさん。岸田さんから聞いていると思いますが、僕達の目的は」
今度は小夜子が代わってケニー佐田に詳しい目的を説明した。
「うん。それは聞いている。出来るだけ協力してあげるよ」
ケニーはそれには同情的だった。しかし疑問を続けた。
つづく
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