二次創作小説(紙ほか)
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- ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【完結】
- 日時: 2018/05/18 22:52
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
- プロフ: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=910.jpg
ストーリー
大陸ポケタリア・・・
人の代わりにポケモンが暮らす大陸。
その大陸は4つの国に分かれ、ポケモンたちは静かに安らかに暮らしていた。
竜国と呼ばれし国、レヴィア王国。
平和と安寧を求める、ディーテ共和国。
己と他者を信じる、ルフト・ド・ドレール連合王国。
欲望と野心が支配する国、ディクシィ帝国。
それら4つの国は、互いを認め、平和を保っていた。
しかし・・・その平和は音を立てて崩れ去る・・・
はじめまして!テールと申します!
こちらの小説は、擬人化したポケモンたちの軍事・戦記ジャンルの物語です。
王道を目指して描きますので、温かい目で見ていただけると嬉しいです。
某サーガ風(SRPGのサーガ)の作風となっておりますので、原作ポケモンを知らない方でも
きっと読めるはず(投げ槍)です。多分きっと。
基本戦争なので、人がバンバン死にます。
若干の流血表現やポケモンとは思えないドシリアスな雰囲気にご注意ください。
現在、別名で動画やゲーム版も制作中です。
参考資料
登場人物 >>1
サブキャラクター >>7
オリキャラ シャドー♯ЧШЮ様 >>5>>42
ルルミー様 >>22>>30>>58
パーセンター様 >>64
専門用語 >>2
武器種・専用武器・神器 >>16
クラス解説 >>3
種族解説>>102
目次
序章 竜国陥落 >>8>>14
断章 聖戦の伝承 >>15
第一章 テオドールの出撃 >>17-20
第二章 海賊の島 >>21>>24>>27-29
第三章 鉱山の制圧 >>32-35>>39
第四章 難攻不落の都 >>41>>45>>47-49>>55>>62-63>>70>>72>>75-76
第五章 きょうだいの絆 >>77-78>>83-85>>88>>92-96>>99-101
間章 進むべき道 >>103
第六章 少女の歌声 >>107-108>>114-115>>118-119
第七章 雪を纏う椿 >>121>>126>>129>>134-135>>138
第八章 光を照らす者 >>139-140>>143-148
第九章 復讐の剣 >>149-152
第十章 残酷な騎士二人 >>153-155>>158-159
第十一章 砂塵の司祭 >>160-162>>165-168
第十二章 騎士の誇り >>169-172
第十三章 魔女と黒狼 >>173-177
第十四章 姉と弟 >>181-185
第十五章 戦いの終わり >>186-187
断章 叙勲式 >>190
第十六章 闇の胎動 >>191-195
第十七章 真実 >>196-198
第十八章 邪竜の覚醒 >>199-203
第十九章 我が剣は明日のために >>206-207
終章 ポケタリア伝承詩 >>208
あとがき >>209
キャラエピ
「テオドールの過去」 >>106
「アルト、ラーマ、エルドゥの出会い」 >>120
「憎しみの代償」 >>180
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.74 )
- 日時: 2018/02/24 19:51
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
>>73 ルルミー様
修正確認しました!ありがとうございます!
・・・・が、歌の歌詞に全く触れずに物語が終了するか、
外伝で触れる可能性がありますので、その辺はご了承ください・・・
(歌姫と呼ばれるルーネも吟遊詩人のニナも、歌に関するイベントもシナリオも用意されていないので)
ゲームでは容姿がはっきりしているキャラ、
クラスが再現可能であれば、
敵か第三勢力、または仲間として登場させるかもしれません。
(使う場合は、クレジットにも記入させていただきます)
確定ではありません!(確定ではありません)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.75 )
- 日時: 2018/02/24 21:25
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
テオドールが目を閉じた時、クラルはなおも必死にテオドールの名を呼び続けた。
「王子様!ねえしっかりしてよ!!」
「くっ・・・手遅れだったのか・・・!」
アタールも首を振り、うなだれる。
と、次の瞬間、テオドールの胸元が鈍く光った。
その光は温かく、やがて紫色に染まる。
「こ、これは!?」
クラルがその光を見て驚いていると
パキッという砕ける音と共に光が消え去った。
そして、テオドールが目を開けたのだ。
「王子様!」
「テオ!」
テオドールは二人の顔を見て、驚く。
先ほど、冥府の使者がテオドールを迎えに来たと思えば、
急に先ほどまでの寒気や苦痛が霧が晴れたかのようになくなっていたのだ。
「クラル、叔父上、叔母上・・・」
テオドールは上半身を起こし、3人を呼んだ。
3人は心底安心したという顔でテオドールを見た。
・・・と、テオドールは胸元に違和感を感じて、胸元に手を入れる。
「あっ・・・」
テオドールは何かを取り出して声を漏らす。
その理由は、ルーネがテオドールに渡したお守りが、紫色に変色し砕けていたからだ。
「それ、兄ちゃんの作ったアクセサリーの、「みがわりペンダント」だよ」
クラルはお守りを指さしながら呟いた。
テオドールは首をかしげる。
クラルはその様子を見て説明した。
「銀はね、昔から厄除けの効果があるんだよ
その銀に自分の魔力を込めて作ったのが、それ。
一度だけ持ち主の身代わりになって持ち主が辿るはずだった厄災を受け止めてくれるお守りなんだ。」
テオドールはクラルの説明を聞いてもう一度お守りを見る。
そのお守りは毒々しい紫色に染まり、砕けていた。
もしこのお守りがなければ、テオドールはこのお守りのように・・・
考えただけでも恐ろしい、そうテオドールは目を閉じた。
「叔父上と叔母上はここでお待ちください。
全てを終わらせて参ります。」
テオドールとクラルは、アタールとリノンに牢獄へ残るように言った。
リノンはテオドールの頬に手を当てる。
その表情は、涙にぬれていた。
「テオ、あなたにばかり苦労を掛けて申し訳ありません、
無事に帰ってきてくださいね」
「はい、叔母上・・・。いこう、クラル!」
「ほいほーい!」
テオドールはアタールとリノンを背に、クラルと共に仲間たちがいる
議事堂前へと走り出した。
「リノン、テオは大丈夫ですよ。」
アタールは、少しも心配していない様子で、テオドールの背を見つめた。
議事堂前では、ベラーディが姿を露わにし、
騎士団たちと戦闘していた。
「我が槍、キラースピアをとくと味わうがいい、ひよっこ共!」
騎士団の兵士を薙ぎ払い、圧倒的な力量差を見せつけるベラーディ。
たった一人の大男相手に、騎士団はなす術がない。
「ぐ、軍師!全く歯が立ちません!」
「くっ・・・・やはり将軍・・・敵ながらあっぱれです。」
アルトは何か策がないかと、白紙の紙切れを取り出して、
自分の傷口から血をすくいとり、紙切れに策を記していた。
「だったら二人同時に!ウィングルス!」
とゼウラが叫び、魔導書から白い鳥の群れが現れ、ベラーディを襲う。
と、同時に、メルシアは水色の剣を持ってベラーディの懐へもぐりこんだ。
「舐めるなよ小僧に小娘!」
ベラーディはメルシアの胸ぐらをつかみ、槍で白い鳥を薙ぎ飛ばす。
そしてメルシアをゼウラに投げつけた。
「きゃあっ!!」「うわあっ!!」
ゼウラを下敷きにメルシアは倒れる。
しかし、全力疾走でこちらに向かってくる騎兵がいた。
「いくわよサラマンダーちゃん!」
水色のランスを構え、全力疾走で馬に駆けるクララの姿が見えた。
猛突進するクララは、ランスでベラーディを串刺しにする。
・・・が、ベラーディは非常に小さな動きでクララのランスを避けた。
「なんてこと!?」
ベラーディはクララに向かってピラムを投げつけた。
ブン!という重い風を切る音と共に、ピラムがクララを襲う。
しかし、そのピラムを真っ二つに斬り捨てるフィー。
その表情には焦りがあった。
「クララ、こいつ・・・やはりかなりの手練れだぞ!」
「これは一筋縄ではいかないわねえ・・・」
珍しく困惑の表情を浮かべるクララ。
「でやあああっ!」
「うおりゃああああああっ!!」
巨大な斧を振るエルドゥと、上空から奇襲をかけるラーマ。
ベラーディはその両方の動きを見極め、斧と槍を腕で受け止め、
武器を持った二人を地面にたたきつけた。
「う・・・げほっ、げほっ」
「ち、畜生・・・なんなんだよこいつ・・・」
そこへ、メルはエメラルド色の魔導書を持って
ベラーディに向かって手をかざす。
「旋風マイトアトラス!」
ベラーディの足元から、空まで届くほどの巨大な竜巻が襲った。
その竜巻の風に当てられ、立っていられない者が何人かいた。
やがて風は晴れたが、その風を切りメルに向かって
ピラムが猛スピードで飛んでくる。
「ま、まさか!?」
メルは判断が遅れて避けられなかった。
「あがっ!」
メルの横腹に命中し、メルは小さく叫んで倒れた。
風が完全に晴れると、そこには不敵に笑うベラーディが姿を現した。
もちろん、無傷で。
騎士団はベラーディという男を見て、息を荒げた。
焦り、恐怖し、絶望している。
この化け物をどうやって倒せるのか・・・
否、倒せない。と悟る。
しかし、そこに緑の髪をなびかせた少年がベラーディに切り込んだ。
テオドールだ。
「はああぁぁぁっ!!」
テオドールはレイピアを刺突する。
しかし、レイピアをつかみ、へし折るベラーディ。
「・・・!!」
「小僧、やっとお出ましか・・・待ちわびたぞ!」
ベラーディは無邪気な声を上げて歓喜する。
テオドールは、一歩後ずさる。
そして折れたレイピアを投げ捨てた。
「小僧、武器なしでわしとどうやって戦うというのだ?」
「・・・・姉上、この剣を使わせていただきます。」
テオドールは瞳を閉じて、腰から下げていたもう一本の剣を鞘から抜く。
その剣は、鞘から抜き出された瞬間、星色に発光し、
見る者を魅了するほどの輝きを放った。
「あ、あれ・・・まさか・・・・!」
アルトはその剣を見て驚きを隠せなかった。
「「星剣アルスラン」!!」
テオドールは星剣アルスランを構え、ベラーディに剣を向ける。
「そんな剣を持ったところで、わしには勝てぬぞ!」
「だとしても、ここで止まるわけにはいかないんだ!!」
ベラーディの槍の突きを見極め、それを避け、
テオドールはベラーディの鎧の隙間を剣で斬る。
「なにっ!?」
「僕は僕のために戦っているわけではない!」
テオドールは、ベラーディの懐に潜り、さらに隙間を斬る。
「ぐあっ!!」
「僕は・・・いや」
テオドールは全ての力を籠め、ベラーディの急所へと
剣を深く突き刺した。
「私は・・・民のため、そして仲間のために剣を振るうのです!」
ベラーディは口から血を大量に吐いた。
しかし、苦悶の表情はなく、不敵な笑いがそこにあった。
「は・・・はは・・・なるほど・・・・それが、貴様の・・・・信念か・・・・」
そう言い残すと、ベラーディは事切れた。
テオドールは、剣を天高くに掲げる。
そして、都市全体に響き渡るような声量で、騎士団とウラノスネーバ隊に告げた。
「皆聞け!我々騎士団の勝利だ!」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.76 )
- 日時: 2018/02/24 23:14
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「姉上、この剣は?」
王城の一室・・・・そこでセリカがテオドールに、一振りの剣を手渡していた。
「これは、王国の最後の希望であり、大陸を照らす光でもある・・・
「星剣アルスラン」。」
セリカは剣をテオドールの手に渡すと、
机の傍らにあるティーカップに入った紅茶を口にする。
テオドールは首をかしげてセリカに尋ねる。
「これは一体?」
「星獣さまをご存じありますか?」
セリカは質問で質問を返すようにテオドールに尋ねる。
テオドールは少し考えたが、すぐに首を横に振る。
「遥か空の上に住んでおられる、獣のことよ。
太陽の星獣「ミスラ」様と月の星獣「ルナリス」様。
その星獣さまが英雄ティル・ソティスに授け、
戦いを捨てた彼女は、レヴィア王国建国者である英雄レイ・レグルスに譲渡し、
その剣はレヴィア王国王族に代々紡がれてきたの。
そういう伝承があるのがこの「星剣アルスラン」。」
セリカの説明を聞いていたテオドールはさらに尋ねた。
「なぜ僕にこの剣を?」
「・・・時が来るからよ」
セリカは顔に影を落とした。
テオドールはよくわからないでいた。
「テオ、覚えておいて。
その剣は誰かを傷つけるためのものではないわ。
民や仲間を救うためにあるものなの。」
セリカは、真剣な眼差しでテオドールに強くはっきりと伝えた。
首都レーベンの騒動は鎮圧し、驚くべき事実が明らかになった。
まずは、オルダン卿は実は帝国が雇った盗賊が成り代わっていて、
本物のオルダンは、すでに黒い魔道士によって殺害されていたことが分かった。
成り代わっていた盗賊は、ゾロアーク族の「アッシュ・ヨーク」であり、
報酬を前金で受け取り、共和国を内部から崩壊させようとオルダンに化けていたと自白した。
現在、黒い魔道士の居場所までは知らないという。
アッシュやアッシュに協力していた帝国軍は、捕虜という扱いで監獄へ入れられている。
ディーノは、騎士団に雇われているというので、
騎士団に活躍を貢献するという条件で不問となった。
大陸歴983年1月20日
共和国は落ち着きを取り戻したが、まだまだ復興ができていない状態であった。
そして、帝国の神官による暗黒魔法で操られていた王国軍は、
今だに昏睡状態に陥っている。
レーベンの教会にいたファータ教国の神官たちが治療を施している最中であった。
そして、教国の使者がアタールの下へ現れ、
シアンを成人を迎えるまで教国で守ると告げ、アタールはそれをのんだ。
再び先の騒動が起きてしまえば、
シアンの安全を保障できないからである。
リノンもすぐには割り切れなかったが、シアンを守るためと了承した。
この騒動は、騎士団、傭兵、首都、共和国が大きな爪跡を残して終息したのであった。
「殿下、お話が。」
あの騒動が起こって1週間がたったある日の事、
ファラがテオドールの下へ部下を何人か連れて訪ねてきた。
「ファラ隊長?」
「殿下、我が部下数名を騎士団に加えてほしいのです。」
ファラの後ろにいる、リラ、サラ、その他ウラノスネーバ隊隊員達が
テオドールに向かって一礼する。
「なぜ我が騎士団に?」
「悔しながら、我らウラノスネーバ隊は知識不足です。
騎士団に加え、殿下をお守りしながら世界を教えてやってほしいのです。」
それを聞くと、テオドールは微笑んだ。
「そういうことでしたら、もちろん喜んで。」
「ありがとうございます、殿下。」
ファラは頭を下げた。
そうして、レーベンにて、騎士団は束の間の休息をとったのであった。
しかし、まだ共和国には蛇の眼差しを持つ魔女が潜んでいたのだ・・・。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.77 )
- 日時: 2018/02/25 13:56
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
第五章 きょうだいの絆
大陸歴983年1月22日
アタールはテオドール、ルーネ、アルトを自室へ呼び出していた。
「閣下、お話とは?」
テオドールが尋ねる。
アタールは、何か複雑な者を抱えているような、そんな顔でテオドールたちを見ていた。
「ええ、少し・・・あなた方に依頼を頼みたくってね。」
「依頼、ですか?」
アタールはこくりと頷く。
そして共和国の地図を取り出し、目の前のテーブルに広げた。
「まず、ここに「ファクトライズ公国」があるんだが・・・」
アタールは首都から遥か北西・・・共和国の中央部分を指さす。
そこには「ファクトライズ公国」という文字があった。
アルトは補足する。
「とても治安が良い、平和な国だと聞き及んでおります。
なんでも、公爵は珍しく女性の方で、慈悲のある心で民を愛する」
「表はね。」
アルトの説明を遮るようにアタールは重く鋭く口にした。
「しかし、ふたを開けてみれば、公爵は民たちを虐げ、
自分を支持する貴族のみ匿い、逆らう者は拷問にかけた挙句死刑に処す・・・
という噂があるんだよ。」
「それは本当ですか!?」
ルーネは珍しく怒りのこもった声で目の前のテーブルをたたいた。
「落ち着きなさいルーネ、確証はない。
そもそもあそこにはオルダン卿の息がかかっていた。
調査しようにも、オルダン卿及びオルダン卿の腰巾着の議員たちが
それを許さなかったのです。」
「それで、我々は一体何をすれば?」
アタールはテオドールの質問に目つきを変える。
「君たちには、ファクトライズ公国の調査を行い、
もし噂通りの国であれば、公爵を拘束し首都に送ってほしい。」
「テオ、どうします?」
ルーネの問いにテオドールは頷いて答えた。
「その依頼、お引き受けいたします。」
「ありがとう、オルダンの息がかかってない今、
公国の真実を暴くチャンスなのです、頼みましたよ。」
「はっ!」
テオドールたちは短く返事をすると、アタールの自室を出た。
テオドールは騎士団を集めて、作戦会議を行った。
作戦を聞いたメルは、終始暗い顔でうつむいていた。
・・・暗い顔というよりは、何かを畏れているように冷や汗をかいていた。
「以上が閣下からの依頼です。質問がある人は?」
「はいっ!」
テオドールが言い終わる前にクラルが右腕を上げた。
「その公国に、「クランリース」って人がいるかもしれない。」
「なぜそう思う?」
「兄ちゃん、そこに行ってから消息を絶った・・・って情報屋から聞いたんだよ。
だから、その点も含めて調査に同行してもいいかな?」
クラルに続いて、クララも手を挙げた。
「わたくしも同行するわ」
「わかりました、ではクラル、クララも調査隊に加えます。」
テオドールは頷いた。
「クランリース」とは、大陸でも名を馳せる有名な細工師で、
彼の作る装飾品は老若男女問わず大人気で、
各地の出店や装飾品を取り扱う店などで流通している。
テオドールの姉セリカも彼の作った装飾品を大絶賛し、度々王城に招いていたことをよく覚えている。
しかしそんな彼が突然消息不明とは、やはり公国で何かあったに違いない。
そう思った。
「ほかに質問はないか?・・・なければ明朝に出発する。
今日は明日のためにゆっくり休むように。・・・解散!」
「殿下、ちょっと。」
ラーマはメルを引き連れテオドールを呼んだ。
ちょうどルーネと話をしていた最中であった。
「どうしたラーマ、それにメル。」
「メルの過去ってご存知ありますか?」
ラーマは真剣な表情でテオドールを見据える。
「いや、レヴィア王国のズィルバー伯爵の養子に迎えられる前の事は、
一切口にしないものだから・・・」
「メルキュリオ・ケナ・ファクトライズ・・・・それがメルの養子に入る前の名前です。」
「・・・・!?」
テオドールとルーネは驚いて声が出なかった。
「ケナ・ファクトライズ」・・・・。
まさにファクトライズ公国の公爵の姓であったからだ。
「メルはファクトライズ公爵の実の子です。
ですが、公爵はメルを「自分に似ていない」という理由で
拷問に近い虐待を行っていた・・・と。」
ラーマの話によると、
メルはある日公国を抜け出し、首都レーベンまでボロボロになりながら歩いてきたという。
それを見つけたアタールは彼を保護し、事情を聴き、ファクトライズ公国へ抗議に行った。
しかし公爵は「子供の話に振り回される愚か者」とアタールを嗤い、
議会に提出し、アタールはオルダンによってファクトライズ公国への一切の関与を禁止された。
その後、メルをなんとか救出したいと思ったアタールは、
ファクトライズ公爵に取引を申し出る。
「メルをレヴィア王国のズィルバー伯爵の下へ養子に送る代わりに、
今までの無礼を不問にしてほしい。」
公爵はメルを心底憎んでいたようなのか、その取引はすんなりと通り、
メルは「メルキュリオ・ズィルバー」としてズィルバー伯爵のもとに引き取られた。
「・・・・なるほど、でもメル、いいのか?
もし君の母と戦うことになってしまったら・・・」
「その時は、ぼくも覚悟を決める。」
メルはいつもののほほんとした雰囲気とは打って変わって、真剣な顔つきであった。
テオドールもそれを見て頷いた。
「それよりも、オルダンの息がかかっていたというのが気になる。
その時からすでにオルダンは入れ替わっていたと言う事か?」
「いえ、オルダンは当時は大統領でしたが、
アタール閣下の努力と信頼の勝ち取りで、大統領から降ろされたのでしょう。」
「・・・・なるほど。」
ラーマの説明に納得したテオドール。
「あとね、テオ。」
メルは口を開いた。
「もし「プラタ・ケナ・ファクトライズ」を見つけたら、
彼には一切攻撃を仕掛けないでほしい。」
テオドールは首をかしげる。
メルは続けた。
「プラタは、ぼくが拷問を受けていた時に何度も助けてくれた弟なんだ。
彼は公爵に溺愛されてたから、危ない目に合ってないしこちらの味方になってくれるなんて保証はないけど、
それでも・・・・大事な弟だから。」
テオドールは頷いた。
「わかった、プラタという人を傷つけないように、だね。」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.78 )
- 日時: 2018/02/25 13:01
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「ゼウラく〜ん!」
クラルはメルシアと会話していたゼウラに元気よく話しかける。
「ああ、クラルか、どうした?」
「君の魔導書「ウィングルス」に興味あってさ!
明日の朝までちょっと貸してくれないかな〜って。」
ゼウラは戸惑った。
「あ、いやそれは・・・・」
「お願い、悪いようにしないし、大事に扱うから!」
クラルは手を合わせてゼウラに頭を下げた。
メルシアはクラルに尋ねる。
「クラル、なぜウィングルスを貸してほしいのですか?」
「見たことない魔導書だから、興味があってさ・・・
それに他の武器や魔導書を改造するときに役に立つかもしれないんだ!」
クラルの訴えにゼウラはしばらく考えて
「しょうがないな、ちゃんと返してくれよ?」
「わーい!ありがとう、じゃあちょっと待っててね!!」
クラルはゼウラからウィングルスを受け取ると、
物凄い勢いで走り去ってしまった。
「・・・・あわただしい奴だなぁ・・・」
フィーが、調理場近くを歩いていると
「・・・・!!」
鼻を劈くようなきつい刺激臭が漂っていた。
フィーは顔をしかめ、調理場に入るとクララが鍋を回していた。
「クララ、なんだこれは」
「あらフィーちゃん、今調合してるところなの。」
フィーが鍋の中身を見ると、毒々しい色の液体が
ボゴボゴと音をたてて煮立っていた。
見ているだけでキツいが、一応聞いてみた。
「何を調合している?」
「うーん、もうちょっとまっててねえ。」
クララがそういうと、さらに鍋を回す。
すると、急にカッと鍋が光り・・・
「・・・・!?」
フィーはとっさに伏せた。
その瞬間、鍋がボンッという爆発音を上げて、爆発した。
「できたわあ〜」
爆発に巻き込まれたクララは、顔を真っ黒に染めていたが、
気の抜けた声で手に何かを持っていた。
フィーは立ち上がり、クララの手に持っているものを指さした。
「それはなんだ?」
「これは魔封じの秘薬。前にフィーちゃんを助けた
魔術の効果を消し去る秘薬よお。」
瓶に入った緑色の液体を指さす。
「なんか嫌な予感がするから調合して作ったのよ。
一応5個くらい作ってあるから、フィーちゃんにもあげるわねえ」
クララは瓶をフィーに手渡した。
フィーは瓶を受け取り、胸元に入れた。
「感謝する。」
その場所には、光が差し込まず、全てが闇に包まれていた。
空気もよどみ、腐臭が鼻をつくその場所で、
一人の神官が弱弱しく・・・ただ生きたいと望み、冷たい地面に倒れていた。
立ち上がろうにも、既に衰弱し、そのような力は残っていない。
「だ・・・・だれか・・・・」
神官は声を出した。
その声はひどくしわがれていた。
「クラル・・・・クララ・・・・ぁ・・・・」
神官の声がその場所に響くが、しんとした空気と不安になるほどの深い闇だけがそこにあり、
誰かの返事などはなかった。
「ここから・・・・だしてくれ・・・・・・」
神官はそう言い残して、再び地面に顔を突っ伏した。
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