複雑・ファジー小説
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- しりとりシリーズの『その後』
- 日時: 2016/05/07 17:13
- 名前: 彩都 (ID: YohzdPX5)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18457
始めましての方も知っている方も始めまして。
彩都(サイト)と申します、七作目です。
この作品は『しりとりシリーズ』の続編となっております。
URLは前作『しりとりシリーズ』となっております。
感想等は、この作品の終了後か、前作『しりとりシリーズ』のスレッドにて、お書き下さい。
それではどうぞ。
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- Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.74 )
- 日時: 2017/01/15 20:38
- 名前: 彩都 (ID: ???)
しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 4 殺人事件と万屋 後編
そして自分は領主様こと、ご主人様の部屋の前に立っていた、流石に領主様の部屋を知らなかったから、他のメイドさんに案内してもらったが……何と言うか、豪華なドアだった、自分でも数万円で補っているというのにこっちのドアは軽く百万円はしそうだった、自分は大きく息を吸って、三回ノックする。
「すいません、蘭ですけど、犯人が分かったんで、いち早く貴方にお知らせしたくて……」
自分がそう言うと、領主様は『そうか!? 早く入ってくれ、入ってくれ!』と言って、自分を部屋の中へ入れる為にドアを開ける、そして自分は領主様の部屋の中へ入る。
「うっわぁ……何ていう豪華な部屋なんですか、軽くこの宝石も二百万はしそうだ……」
自分はそう言って、部屋の中を探る、すると領主様は自分に対し、犯人開示を言う。
「お、おい! 蘭さん、早く犯人を言って下さい!」
「えぇ……犯人ですかぁ? 本当に言って良いんですかぁ?」
自分はそう言って、念には念を押して、領主様に言う、すると領主様は『いいから早く言え! こっちは困っているんだ!』と叫ぶ、自分は溜息を吐いて、領主様を指差す。
「犯人は貴方です、領主様?」
「はっ? 何を言って──」
自分は領主様の言葉を遮って、ストレートに言う。
「簡単ですよ、貴方が殺害したんですよ、メイドを!」
自分がそう言うと、後退りする領主様、そして自分に反論する領主様。
「ふっ、巫山戯るな! 私は『犯人を捜せ』と言ったのだ、私を指せ、とは言っていない!」
「うん、そうだねぇ、『犯人を捜せ』、と言った、つまり私は『領主様本人を犯人と判断した』だけに過ぎないのです、では、自白して下さい、もう犯人は分かっています、そしてメイドにも聞きましたよ、『私達はちゃんと領主様に『あのメイドを辞めさせて下さい』と言いました』とね? そして私は『領主様は知らなかった』、と聞きました、これはどういう事ですか? 口裏合わせにももう少し努力して欲しかったですねぇ、で早く自白して下さい、今なら罪は軽くなるんです、だから急いで下さい……!」
自分がそう言うと、言い逃れが出来ない領主様はその場で膝をついて言葉を発した。
「うぅっ……! 仕方なかったんだ、皆には『とろい、とろい』と蔑まされ、自分は『とろくても大丈夫』と言い続けたのに……! 彼女は自殺だったんだ! だから仕方なく、他人が殺した様に、自分で遺体を弄って……!」
そう自白する領主様、それでも遺体を弄る事は犯罪だ、少し冷たい地面で反省するんだな、そう思いながら自分は携帯で警察を呼んだ──
「何とか終わったな、ていうか今回はあっさりした事件だった」
そう呟きながら館を出る、するとあの時の幼女──梨花ちゃんだ──がウサギのぬいぐるみを持ちながら泣いている、それは仕方無い、君の父親は犯罪を犯したのだ、刑務所で刑を償わないといけない、だが、母親が居ない、それはどうしてだろう?
「それはもう死去されているからですよ」
そう言って、自分は振り向いた、そこには浅井さんが存在していた、えっ? どうやって自分の心の声を……? いや、何で分かったんだ? そう思いながら話を聞く。
「死去した? それって領主様の妻が……?」
「はい、そうです、そして私達メイドとご主人様で育てていましたが、まずご主人様が居なくなるので、この家に居れません、つまり解雇ですね、なので、私はお嬢様を見る事が出来ません、なので、失礼は承知です、梨花お嬢様を引き取ってはくれませんか? この家のお金を全て梨花様が手に入れます、ですがお嬢様はまだ幼いのです、なので管理人になって欲しいのです蘭様には……どうか引き取ってはくれませんか?」
「…………」
自分は溜息を吐いて、梨花ちゃんに近付いて、声を掛ける。
「梨花ちゃん……」
「あっ……おじさん……私のお父さんがぁ……」
「うん、そうだよね、お父さんでも悪い事をしたら刑務所に行かなきゃだよね……それでさ、梨花ちゃん、おじさんと一緒に住まないかい? おじさんの家は少し小さいかもしれない、だけど楽しい事は一杯だぜ?」
自分がそう言うと、泣いていた顔が急に笑顔になり、自分に抱き付いてきた。
「うん! 楽しいのなら着いていく! お父さんは悪い事をしたから、それを償う迄おじさんと一緒に遊んであげる!」
「アハハ……それは嬉しいなぁ」
自分がそう言うと、自分は浅井さんの方を向き、浅井さんに言う。
「浅井さん、彼女は私が引き取ります、貴方のして欲しい事はしました、だから私のして欲しい事もして下さい、出来ればですが」
「? どういう事ですか蘭さん……?」
「そんなの簡単ですよ、私の店の雑務や家事をして下さい、単純に言っちゃえば、自分のお店で働いて下さいって事ですね、自分だけじゃあ梨花ちゃんのお世話は難しいですし、梨花ちゃんは女の子です、男の自分には分からない事もあるかもしれません、他にも給料はあまり出ないかもしれないけれど……出来るなら自分の所で働きませんか?」
自分は頭を下げて浅井さんに言った、そして浅井さんはこう言った。
「お嬢様のそばに居れる事なら何処でもついて行きますよ、貴方はお嬢様の恩人ですので……給料は無くても大丈夫です、此処の仕事は給料が良いんです、軽く自分が生きる位にはお金はあります」
「そ、そうなんですか……それは凄いですね」
自分はそう言って、驚く、本当に金持ちだったんだ、この領主様、すると一つの疑問が現れる。
「えっ? と言う事は自分のお店で働いてくれるんですか?」
自分がそう言うと、浅井さんはコクリ、と頷く。
「そう言っているではないですか?」
「えっ? あぁ、そうですよね……」
自分は失敗したと思っていたが、成功していたのか、これでお母さん役を手に入れたな、そう思いながら自分は綺麗な青空を見ながら呟いた。
「さぁ、自分のお店に戻るかぁ!」
自分がそう言うと、浅井さんが『はいそうですね』、梨花ちゃんは『うん!』と言う、これから三人であの店で過ごすのか、そう思うと少し楽しくなるのでは無いかな? と思う、明日から、賑やかになるなぁ、そう思いながら青空を見続ける──
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- Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.75 )
- 日時: 2017/01/21 21:08
- 名前: 彩都 (ID: ???)
しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 5 新たな物語
「…………」
「…………」
「…………」
無言のまま、自分の家である、蘭万屋の室内に居る自分達三人は個人個人で手を動かしていた、一人の青年である自分こと蘭は手元の資料を確認して、紙の音だけを鳴らす、一人の女性である浅井さんは自分の周りの花瓶や床を掃除している、そんな中、自分の目の前に存在しているお金持ちの幼女である梨花ちゃんは呑気に白紙の紙に落書きをしている──いや、この年代の少年少女の落書き等、落書きなのではなく、『お絵描き』だ、しかも真剣な『お絵描き』なのだ、しかもこの年代の『お絵描き』は本気なので『落書き頑張ったねぇ〜』とか気軽に言えないのである。
「…………」
いや、可笑しいだろ、可笑し過ぎるぞこの状況、そう思いながら自分は梨花ちゃんに声を掛ける。
「あのさぁ、梨花ちゃん?」
「何? おじさん?」
「いや、君からの年齢として、学校とか、幼稚園に行っていないといけないよね? どうして行っていないんだい?」
自分がそう言うと、浅井さんが簡単に答える。
「蘭さん、実は『ちゃんとした家に住んでいない人は幼稚園にも小学校にも行けないんです』、なので、この万屋の部屋はちゃんとした家では無い、と……」
「その現実を叩くのは辞めてもらえます……?」
自分はそう言って、大きな溜息を吐く、そうだ、こんな所で自由にお絵描きなんてさせているべきではないのだ、そう思いながら手元にあったコーヒーを飲もうとする、すると急に万屋の扉を開ける者が居た、あまりの大きな衝撃の開閉音に自分はコーヒーを零してしまう。
「蘭万屋さん、私を助けて下さい!」
そう言って女子高生の見た目の女性は浅井さんに向かって頭を下げていた──いや、こっちこっち、そっちは家事手伝いのメイドさんなんだけど。
「失礼しました、私の名前は御手洗尊(みたらい みこと)と申します、高校二年生です、実は蘭さんに話があるんです」
「まぁ、仕方無いよ、失礼なのは毎回承知しているからね……で、どうしたんだい? 高校生がこんな胡散臭い場所に立ち寄って? 自分が君の事を食べるかもしれないのに……」
「その発言はどうかと思いますよ?近くに小さい子が居るのに……」
そう言って、御手洗さんは自分の後ろに縮こまっている梨花ちゃんを見つめる、自分は少し溜息を吐いてから、用件を聞く事にした。
「ま、まぁ、それは置いといて……で、何で万屋に来たのかなぁ? 何か学校で問題でも?」
そう言うと御手洗さんは少し驚いていた、それもその筈だろう、『図星』なのだから。
「なっ、何で分かるんですか?」
「そんなのは簡単だよ、実際この万屋に来た時、汗を掻いていた、更に息も切らしていた、何だか焦りながら此処に着たみたいに感じれてさぁ? さぁ、何が用件何だい?」
自分がそう言うと、彼女は急に泣き出してしまった、えっ? 自分が泣かせる様な真似をしたかなぁ? いや、していない筈だけど……
「す、すいません、図星過ぎて驚いてしまいました、流石万屋、見る目だけはありますね」
「それは前からだけどね、軽く数百年も生きていたらそうなるよ」
「えっ? 数百年?」
「違うよ、数十年の聞き間違いだよ」
「は、はぁ、そうですか……そうじゃなくて、話は続いているんです」
「そうなのかい? 一体何なの、話って? いや、用件か」
自分はそう言って、少し考える、すると御手洗さんが静かな声でゆっくりと語る──
「実は……密室殺人事件なんですが……」
「!?」
自分は驚いてしまった、まさか二件連続で殺害系か、と思うと少し身震いがする、まぁ、仕方無いよね、うん……そう思いながら彼女の話を聞く事にする。
「それは数時間前の事です……私が女子更衣室に入った時です、顧問の尾長先生が首を縄で絞められて死んでいたんです、おまけに先生の口からは一筋の涎が……だから相当苦しんだと思います、私は更衣室で叫びました、すると部活メンバーが集まって皆で叫びました、尾長先生は何時も部活に熱心な先生でした、妻も居て、最近息子が生まれた、と言っていましたし……」
「成程ねぇ、つまり自分が更衣室のドアを開けた時にはもう死んでいた、と?」
「はい、そうです、そして実は更衣室のドアは鍵が掛かっていまして、私が部活メンバーから鍵を借りて開けたんです、ですがもうその時には先生が……!」
自分でそう言って泣き出してしまう御手洗さん、うーむ、この事件、案外難解だなぁ、と思いながら自分は溜息を吐く。
「はぁーあ……仕方無い、それじゃあ行きますか、二人はどうする? お留守番?」
自分がそう言うと、梨花ちゃんは『伯父さんについていく!』と言う、浅井さんは『蘭さんに着いて行きます』と発言する、それじゃあこの万屋、今日は閉店だ、今から御手洗さんの学校に向かおう、そう思い、彼女に発言する。
「それじゃあ君の学校へ向かおうか、とりあえず、迅速に行動してみるね、何処の学校だろう?」
「……えん、……くえん」
そう言って、自分は不思議がる、くえん? 一体何処だろう? そう思っていると、彼女は聞こえる声で学校名を言った。
「安芸学園です」
NEXT しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 6
- Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.76 )
- 日時: 2017/01/22 21:44
- 名前: 彩都 (ID: ???)
しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 6 安国芸術学園
蘭万屋から少し進んで、タクシーに乗って二十分の所に安芸学園がある、正式名称は安国芸術学園(やすくにげいじゅつがくえん)だ、『安』国『芸』術『学園』を略して、『安芸学園』と呼ばれる事が多い学校だが、そんな学校で事件が起きたのだ、自分こと蘭はその現場へと向かっていた──
「本当に大丈夫なんですか? 安芸学園は女子高ですよ?」
「大丈夫だよ、安芸学園には知り合いが幾らか居るんだ、話はつけてくれるだろう」
「ほ、本当ですか……?」
女子高と言って少し焦る浅井さん、それもその筈、自分は男だからだ、だが安心して欲しい、そんな情欲、起きないから、と心の中で呟く自分に対し、梨花ちゃんは久し振りの来るまでおおはしゃぎしていた。
まぁ、仕方無いよな、車での移動は珍しいから、と考える自分、安芸学園迄後少しだった──
「やぁ、蘭、元気だったか?」
そう言って、安芸学園の人間である、稲田悟(いなだ さとる)が出迎える、自分は差し出された手を掴んで握手する、自分と稲田の姿を見て、浅井さんは驚いている。
「まさかそんな大物とお友達だったとは……!?」
「友達では無いですよ、腐れ縁ですよ」
浅井さんの言葉に対し、稲田が返答する、まぁ、腐れ縁とは言っても、切っても切れない関係だからなぁ、と考える自分、自分は入場許可証を発行してもらい、安芸学園の内部へと侵入する──
安芸学園はとても広い学校で、たまに迷子の人が現れると言う噂も存在している、そんな学校で何で殺人事件が起きるのだろうか? と考えてしまうが、人の考えは他人には知れないからなぁ、とばっさり切っておく。
自分は稲田に案内されて、体育館へと侵入する、そして近くの女子更衣室に立ち止まった。
「此処だよ、蘭」
「ふむ、女子高にしては小さい更衣室だなぁ、精々十五人集まって満杯って所かな?」
「まぁ、他にも女子更衣室はあるけど、御手洗君の部活の更衣室はたまたま小さいのなんだよね」
「へぇ、それは可哀想に、少しは改造して大きくしろよ」
「アハハ、そんな金は無いからなぁ……」
自分は稲田と少し会話して、更衣室をノックする、まぁ、誰もいないよね、そう思いながら更衣室のドアを開ける、すると目の前に遺体が見付かった、確か御手洗さんの話によると尾長先生だっけ? 可哀想に……自分はそう思いながら尾長先生に触れる、冷たい、まぁ、死んでいるから、そりゃそうなんだけど……自分は緒形先生の首を見て少し不思議に思う。
「あれっ? 何か可笑しくないか?」
「可笑しい? 何がだよ、蘭?」
「いやさ、普通首を締め付けられた痕って『締め付けた物の形になる』よな? この痕はどうだ? 明らかに『首に巻かれてある縄より細い痕』なんだよ、だって縄で首を絞めたら首に縄の痕が付くよな? なのに首にはついていないんだよ、可笑しいよなぁ」
「ふむ、そう言われると可笑しい……一体どういう事なんだろうなぁ、さぁ答えろ蘭」
「答えられる訳ねぇだろ、バカかお前は、自分はそこ迄頭が良い訳じゃないんだから……」
稲田の言葉に対し、自分はツッコむ、コイツは何を考えているのか……? そう思いながら、周りを確認する、そして稲田に自分は声を掛ける。
「なぁ、稲田、何か最近起きた事件って無いか? 例えば学校の備品が無くなった、とか、備品が壊れた、とかさぁ?」
自分がそう言うと、稲田は少し考えて、ぽんっと手を打って自分に言う。
「そういえばこの更衣室の鍵が無くなったんだよ、今使用しているのはマスターキーとサブキーなんだけどさ、一週間かなぁ? 一ヶ月だったか忘れたが、相当前から無いんだよね、それ位かな?」
鍵が無い? それはどうでもいいと思うけどな、だってサブの鍵があるならその鍵を使用すれば良いし、サブのサブキーを作ってしまえばそれで済むのだから──そう思い、自分は尾長先生から離れて考える。
まず、特筆すべき点はただ一つ、『縄で首を絞めたのではなく、先に何か細い物で首を絞めて、絶命させた可能性が高い、その後に縄で首を絞めた』、と言う事だ、この点がどういう点なのか、自分にはまだ思い付かない──そう思っていると浅井さんが急に喋り出した。
「すいません、蘭さん、お嬢様が目を擦ってます、なので、寝かせたいのですが……保健室のベッドとか貸してくれませんかねぇ?」
「保健室のベッドかぁ、貸してくれるか? 稲田?」
自分がそう言うと稲田は『あぁ、良いよ、自由に使ってくれ』と言う、自分は浅井さんに言う。
「それじゃあ、保健室で少し梨花ちゃんを寝かしておいて下さい、次に起きる前にこの密室事件は解決させるから」
「そうですか、分かりました、それでは頑張って下さい」
浅井さんはそう言って梨花ちゃんをお嬢様抱っこして運んでいく、まぁ、浅井さんなら案内役が無くても無意識に着いてそうだなぁ、と思い、案内役をつけなかった。
自分は大きく深呼吸して考える、さぁ、一体どんな密室事件なんだろう? そう思いながら女子更衣室で大きな溜息を吐く──一体誰が犯人なんだろう? 内部犯? もしくは外部犯? それは自分には分からない──
NEXT しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 7
- Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.77 )
- 日時: 2017/01/28 21:03
- 名前: 彩都 (ID: ???)
しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 7 メインキーは何処にある?
そういえばメインキーって何処に有るんだろう? だって少し前に無くなって今はサブキーを使用しているって事だろ? だったらメインキーがどっかにあるかもしれない、もしかして犯人が持っているかもしれないじゃないか、蘭はそう考えて、メインキーの話をする。
「なぁ、稲田ぁ? メインキーって何処にあると思う?」
「め、メインキー? 突然どうしたんだ蘭……? メインキーなんか捜しても無駄だって、メインキーがまず無いんだ、無いのにどうやってこの更衣室に入るんだ……あっ」
自分で言っていて、今更気付くとは……少し遅いぞ、稲田よ、そう思いながら稲田は頑張って自分の記憶を思い出す。
「あっ、思い出した、確かメインキーは御手洗さん、君がなくした、と言っていたね? 何処でなくしたんだい?」
「えっ? あぁ……確か何処で落としたかは忘れました、すいません……」
御手洗さんはそう言って頭を下げる、まさか、まさかな? 自分はそう思いながら御手洗さんの鞄を持って、脅迫する。
「ゴメンね、少し気になって……御手洗さん、もしもこの鞄の中にメインキーが入っていたらどうする? 有り得ないよねぇ、毎日弄る鞄だもの、『ある筈がない』よなぁ? ではもしも『この鞄の中にメインキーが入っていた』らどうする? もしもあった場合、この鍵は稲田に返すけど?」
自分は何度も同じ事を言って、脅迫する、すると御手洗さんは静かに頷いた。
「そうか、分かった」
自分はそう言って鞄を持ち上げて、反対方向にして、中身を全て落とした、すると中から、スマホ、教科書三冊、ノート四冊、筆箱、クッキー、財布、リボンケース、レオタード、ん? レオタード? 何でこんなのが……? そう思いながら後回しにする。
そして鞄の奥にキラリと光る物を見つけた、それを取り出すと稲田は驚いていた。
「蘭! それだ、それがこの更衣室のメインキーだ!」
稲田の言葉に対し、本当に見つかるとは、と思う、まさかカマかけしただけなのに本当に当たるとは……自分は不運だな、と考える。
「さて、このレオタード、何処から盗んだ?」
自分がそう言うと御手洗さんは怒鳴った。
「これは私のです! ちゃんと名前も書いています!」
そう言ってレオタードを手に取り、広げる、確かに『御手洗』という名前が入っている。
「本当だ、これは君のか……でも何でレオタードなんか?」
自分がそう言うと御手洗さんは自分の部活の事を説明する。
「実は私、『新体操部』の部員なんです、リボンを使ってクルクルしたりするんです、分かりますかね?」
そう言って御手洗さんはリボンケースからリボンを取り出し、リボンを自分の頭の上に上げて、華麗に回す、これ、どっかで見た事があるなぁ、そう思いながら自分は拍手する。
「おお、上手い上手い」
「そりゃそうですよ、部活で行うので、上手くないといけないですよ」
「そりゃそっか」
御手洗さんの言葉に自分は頷く、それにしても新体操部でリボンを扱うのか、何気に素晴らしいな、と思った、その瞬間だった、頭の中で電流が走る、確か新体操で使われるリボンって結構丈夫だったよな? そしてメインキーがある、と言う事は……?
「まさか『御手洗さんが犯人な訳無い』よねぇ」
と少し冗談交じりに言ったが、彼女、御手洗さんは小さな声で言った。
「やっぱり……蘭さんには分かりますか? この事件の犯人が私だって……!」
そう言ってその場に座り、急に泣き出す御手洗さん、あっれぇ? 何でこうなるんだぁ? 自分はそう思いながら頭を掻く。
「お前、まさか事件の犯人が御手洗さんと言いたいのか!?」
「いや、話を聞いていたら、自分で暴露したんだけど? 自分は冗談交じりに言ったんですけどぉ!?」
自分は稲田にツッコみながら冷や汗を掻く、本当、自分は事件の内容を理解していない、殺害方法は分かってもトリックとか分からないのだ、全く、どうしたものか、と考えながら自分は更衣室のベンチに座る。
「はぁ……実際言うけど、自分は殺害方法しか分からないんだ、もしもその殺害方法が合っていたら、自分でトリックを言ってくれるか? 自分は探偵では無いからね」
自分がそう言うと、御手洗さんは渋々頷いた、とりあえず、自分の中で思い付いた殺害方法だけど、これが合っているかはわからなかった……
「単純に言えば、御手洗さんはこの更衣室に尾長先生を呼んでいた、そしてその時間は『もう部活が始まっている』時間だったんだ、何時も集合する時間より少し遅れて御手洗さんは来た、そして尾長先生をその手に持っているリボンで首を絞めて尾長先生を殺害したんだ、次に御手洗さんは殺害する為に持ってきた縄で尾長先生の首を絞めたんだ、更に御手洗さんは更衣室で殺害しているのをバレない様に移動して、少し時間が経ってからこの更衣室に向かったんだ、そして悲鳴を上げる事で自分がやった、とは思われない、と言う事、つまり君が尾長先生を……!」
自分がそう言うと、御手洗さんは頭を垂れたまま、小さく頷いた。
「正解です、蘭さん……流石万屋です──物の見事に正解です、だけどトリックが説明出来ないので、不合格ですけどね、ですがよく当てましたね、私が犯人だなんて……」
「まぁね、鍵とリボンを見た時に思い付いたけど、流石に無いな、って思ってたんだけどね……」
自分がそう言うとえっ? と言いたそうな顔をする御手洗さん。
「えっ? まさか私を犯人扱いにしたのはたまたま、と言う事ですか?」
「うん、そうだけど?」
自分がそう言うと、御手洗さんは跪いた、何で言ったんだろう? 言ったら私が犯人って分かるじゃん? と背中のオーラから感じた。
そして自分は御手洗さんからトリックを聞く──犯人は御手洗さん、だけど自分にはトリックは分からない──そして何で殺人なんかしたんだろう? と思いながら……
NEXT しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 8
- Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.78 )
- 日時: 2017/01/29 21:30
- 名前: 彩都 (ID: ???)
しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 8 不倫ゆえの苦しみ
「……数ヶ月前、私は尾長先生に惚れました、最近この学校に来た尾長先生に私は惚れたんです、そして私は尾長先生に言いました、『貴方がすきです、付き合って下さい』と……ですが尾長先生は妻子持ちで……私は強引に絡んで肉体関係を結びました──その後、私のお腹に──意味は分かりますよね?」
御手洗さんはそう言って淡々と述べた、そんなの分かる、そして自分は言葉を発す。
「あぁ、分かった、続けて?」
「そしてお腹の事を言いました、すると尾長先生は……!」
御手洗さんは泣きながら言い続ける。
「尾長先生はぁ!『な、何なんだよ? 君が好きだ、と言ったから肉体関係を結んだだけで、自分の子は妻との子のみ! だから君との子は認知しないぞ! 早く堕胎しろ! 堕胎しないと君を退学処分にするぞ!』と言ってきたんです! そう言われて私は腹が立ちました、全て私が悪いです、だけど私は子を認知して欲しかったのです! 先生と私の繋がりを壊されたくなくって!」
「…………」
成程なぁ、痴情の縺れ、ってかぁ? 自分はそう思いながら話を切り出した。
「成程ね、君も大変だった訳だ、まだまだ成長中の精神に対し、恋愛、そして捨てられるって事──君の心の痛みは十分に分かった、それでは本題に入ろうか、どうやって尾長先生を殺害した?」
「それは……」
彼女はそう言って尾長先生殺害法の説明を始めた──大まかに言うとこうだ、新体操の部活が始まっている時間に更衣室に尾長先生を呼んで、御手洗さんが更衣室に向かう、そして尾長先生を新体操のリボンで絞殺、そしてリボンを回収した後、首に縄を巻いて、リボンでの絞殺を偽装、そして御手洗さんは奪っておいた更衣室のメインキーを使用して、施錠、大体女子更衣室は盗難被害もあったので、最後に更衣室に出た人は必ず施錠する事になっている、先生が更衣室の前に居ると安心して鍵を施錠せずに部活に行ったかも知れない。
そしてトイレに篭って時間を潰す、その時間潰しの間に新体操で使うリボンをリボンケースに直す、次にメインキーを鞄の奥深くに隠す、次にトイレから出て、部活メンバーからサブキーを借りて、更衣室に向かい、開錠する、そして殺害した尾長先生に向かって悲鳴を上げる、すると悲鳴を聞いた部員メンバーが集まって、部室に向かうと言う事だ……何と言う完全犯罪だ、自分はそう思いながら御手洗さんに言葉をかける。
「成程、君のトリックは特に複雑で初めての難解なトリックだったよ、凄い……だけど君は許されない事をした、ちゃんと罪を償うんだ」
「はい……尾長先生、蘭さん……!」
御手洗さんはそう言って、稲田が用意したパトカーに乗って、警察署へと向かった──その後、御手洗さんは手首に手錠をかけられたと言う──それを知ったのは軽く48時間後だった。
「それじゃあ、梨花ちゃん、浅井さんを呼びますか」
自分はそう言って保健室へと向かった──そして保健室前、浅井さんは直立不動で目を瞑り、頭を垂れていた。
「あっ、浅井さん、終わりましたよ、残念ですが御手洗さんが犯人でした──」
自分がそう言うと浅井さんは大きな溜息をして、自分に言う。
「そうなんですか……成程、あぁ、蘭さん、少し聞きたい事が」
今日は珍しく浅井さんが話しかけてきた、自分は彼女に耳を傾ける。
「ん? 何なんですか、浅井さん?」
自分がそう言うと、浅井さんは言う。
「貴方、『何年前からこの街にいる』んですか? 教えて下さい」
「……別に? 精々十年、二十年しかこの街に存在しないで──」
「それは有り得ないです、何故なら私は『生まれてこのかたこの街に住んでいる』んです、なので、有り得ないんです、『蘭さんが引っ越した、とか元から住んでいる、とか聞いた事が無い』んです」
「……」
何だ、『気付いた』か、そう思いながら自分は言葉を発す。
「まぁまぁ、それは良いんだけどね──何が知りたいの? 自分の何が──と言ってもあまり語らないよ?」
「そうですねぇ……あまり語らない、となると情報は限られます──それでは、蘭さん、貴方は本当に万屋の人間なんですか?」
「は、はぁ? 何言っているんだ? 自分は蘭万屋の所長、蘭ですよ、あぁ、後、梨花ちゃんを起こしてくれると有難いです、もうじき帰るので」
自分はそう言ってタクシーを呼ぶべく外へ向かう、そんな中、浅井さんは一人で梨花ちゃんを起こしにいった──浅井さんの中で少し不思議な事を思う──蘭さんは一体何者何でしょう? 浅井さんはそう思いながらお姫様抱っこをする梨花ちゃん(それでも呑気に寝ている)を安芸学園の出入り口にあるタクシーに乗せて、三人で蘭万屋へと帰る──
明日から少しでも蘭さんの事を探ろうと決意する浅井さん、そんな心の中の決意を自分は物静かに聞いていた──
(明日から探られるのかぁ……明日から少し大変だな、アハハ……)
自分はそう思いながら心の中で溜息を吐く──大変だ、そう思いながら──
NEXT しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 9
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