複雑・ファジー小説

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しりとりシリーズの『その後』
日時: 2016/05/07 17:13
名前: 彩都 (ID: YohzdPX5)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18457

始めましての方も知っている方も始めまして。

彩都(サイト)と申します、七作目です。

この作品は『しりとりシリーズ』の続編となっております。

URLは前作『しりとりシリーズ』となっております。

感想等は、この作品の終了後か、前作『しりとりシリーズ』のスレッドにて、お書き下さい。

それではどうぞ。

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Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.64 )
日時: 2016/12/11 21:36
名前: 彩都 (ID: 393aRbky)  

 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 4 『ゾーン』

「…………」
 不生は座禅をしながら考える、もしも数日前に来た忍者が自分の刀を奪おうとしてきたら……自分の力、不萌の糸の力じゃなくて、自分の、己の力で解決しなきゃいけない、だから、もっと、もっと強くならなきゃ! 不生は座禅の場所を滝の下に移動して、座禅を組み直す、こんなのはただの精神力を手に入れる為の修行に過ぎない、もっと、もっと他の修行を手に入れないと──

「えっと……これは?」
 不生はそう言うと、不萌が少し笑いながら言う。
「んーとねぇ、簡単に言えば、避ける修行かな? 単純に言えば、『滝の上から落ちてくる障害物を避ける』修行ね、ただ避けるだけじゃない、横から私やアンタの親父さんの攻撃もあるから、その攻撃も避ける事、まぁ、動体視力の修行にもなるわね」
「成程、って父上も修行の手伝いを!?」
 不生がそう言うと、不生の父、不消(きえず)が不生の前に現れる。
「ふむ、新たな修行か、不生」
「あっ、父上……そうです、新しい修行です」
「ふむ、不萌から聞いている、お前も不運だったな……父親として、手助け出来なかった事が恥ずかしい、末代迄の恥になりそうだ……」
「末代って……今の自分が末代なんですけど……」
「まぁ、そうだよな」
「はい」
「あのさぁ、早く修行しない? 私だって課題をしなきゃいけないし……」
 不生と不消との会話に割って入る不萌、不萌に対し、父子は謝る。
「う、うむ、すまんな、我が息子の力になってくれて」
「ご、ゴメン、自分勝手な修行に付き合わせて……」
「全く、何気にそこの所だけ、親子なんだから……さぁ、始めましょうか、少しでも強くならないとね!」
 不萌がそう言うと、不生は大きく唸る。
「おう! 絶対強くなって、『村雨』を自分で守れる様になる!」
「その調子だ、不生!」
 不生親子の会話を聞いて、不萌は呆れる。
「はぁ……熱血な親子ね──案外面倒なタイプよね──」

 そして修行が開始された、不生は『村雨』を持ちながらの修行となった、滝から落ちてくる障害物を『村雨』で斬っていき、横から来た不萌の攻撃、父の攻撃を上手い事斬って、体に当てない様にする。
 そして一気に滝の流れるスピードが上がる、不生は『一気に早さに慣れれる!』と思い、一回斬って、そのまま流した障害物を、一つに対し、二回、三回と斬っていき、不萌、父を驚かせる。
「ほう、中々重い『村雨』をあぁも器用に操れるとは……流石自分の息子だな!」
「自画自賛せず、丸太を不生に投げて下さい! 褒めるのはその後!」
「すっ、すまん不萌君……」
 不消は不萌に謝って、丸太を不生に投げ続ける、だが、不生に対して、投げ過ぎてしまい、少し焦る。
「おっ、おい、不生、丸太を投げ過ぎた! 何とか避けろ! もしくは斬れ!」
「はっ!?」
 その時にはもう遅い、目の前には、丸太が三本、不消の丸太が三本、不萌の丸太が二本、不生に向かって来ていた──不消、不萌、目の前の滝、二本ずつ、合計六本ならまだ対処出来るが、八本なんて対処した事が無い、それに『村雨』は『鞘に納まっている!』 、これでは抜く時間もあるので、もっと対処出来ない──えっ? 死ぬの、自分?
「不生! くっ、角さんでは間に合わない!」
「うぅっ! 自分の失敗で息子を死なせてしまうとは! すまん!」
 二人の声が鮮明に聞こえる、すると目の前がゆっくりと移動し始めた──水の流れが遅くなった……? そんな筈は無い、何故なら相当早い動きな筈だ、水の流れは、 ではこれは何だ? 周りの丸太の移動もまるでスローモーションがかかっている感じだ、一体何なんだ、この感覚は……待てよ? 今の自分はどう動いている? スローモーションではない、完全に『周りの時が遅くなって、自分だけ、何時もの動きが出来る』!! これなら『村雨』を抜いて、丸太を全て斬る事が出来る!
 不生は急いで、『村雨』を鞘から抜き取って、八本の丸太に対して、二回、三回、と斬っていく、そして『村雨』を鞘に直した、鍔と鞘がぶつかった、その瞬間、何時もの世界に戻った、水の流れも丸太の動きも元の早さに戻っている、一体……何だったんだ、今の動きと、時間は──? そう思った時、不消と不萌が不生に近付いてきた。
「ちょっと! 大丈夫!?」
「だっ、大丈夫か!? 不生!?」
 二人が何を言っているのかが分からない、まるで、『自分が死にそうだった』みたいな言い方だったからだ。
「……な、何を言っているんだ? 自分は丸太を斬れたけど……?」
 不生がそう言うと不消が驚いていた、そして不生に伝える。
「お前、まさか……『ゾーン』に入っていた、と言うのか? まるで周りの動きが遅かった、とか何か視野が開けた、とか、何か無かったか?」
「それかどうかは分からないけど、周りの動きは遅かったかな? そして『村雨』抜いて、サッサッと斬ったけど……?」
 不生がそう言うと、不消は驚いていた。
「まさか……そのステージに立つとは──いいか、よく聞け、今お前が起こしたのは『ゾーン』と言う物、この『ゾーン』を器用に操って、『村雨』で技を放つ、それが出来たら真の『村雨』所有者になれる──お前が起こした技、八本の丸太を斬った、と言う事から、『八咲(やつざき)』と名付けよう、頑張って『ゾーン』を手に入れて、『八咲』を使用出来る様に修行しろ!」
「は、はぁ……」
 今何が起こったか分からないが、単純に聞けば、相当強い『何か』を身につけた、と言うのが分かった、つまり特訓して、その『何か』を掴めって言っているのか……自分は『村雨』を見つめて言う。
「案外凄い事が起こった気がするんだよなぁ? まさかお前が見せてくれた力なのかな?」
 不生はそう言って、フッと意識が途絶えて、その場で倒れてしまう、不萌は不生に驚いて、叩き起こそうとしたが、起きなかった、不萌は仕方なく、不生を運ぶ事にした──
 不生が手に入れた『ゾーン』と『八咲』、その二つがとても強力な技とは不生はまだ知らない──

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Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.65 )
日時: 2016/12/17 20:45
名前: 彩都 (ID: ???)  

 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 5 新技と『ゾーン』

 新技、『八咲』を開花させた不生は森の中で目隠しをしながら深呼吸をしていた、座禅をしながらの深呼吸、とても落ち着いてはいるが、心の中では色々な考えが張り巡らされていた。
 何処から攻撃が来るか、もしくは来ないのか? 果たして今回は来るか、来ないか? そんな事を考えていた。
「…………」
 不萌は静かな呼吸をしながら紐で縛った丸太を投げた、風を切る音、その音に気付いて、不生は膝の上に置いた『村雨』を使用して、『八咲』を放った、だが、『八咲』は八回斬って、一つの物を八つにする技、斬った回数は精々七回程度だった。
 不生は目を開けて、斬った丸太を見た、すると七回程度斬っていて、落胆する。
「あーもう! 何で七回なんだよ! 普通、そこは八回、もしくは六回だろ!? 何で中途半端な完成の七回なんだよ! くっそう……!」
 不生がそう言うと、物陰から隠れていた不萌が言う。
「何言ってんのよ、アンタ……何気に七回も出来ているんじゃない、まだまだ進化出来るって訳よ」
 不萌がそう言うと、口を尖らせて、不生が言う。
「だってぇ、あの時の『八咲』は『ゾーン』に入ってから出来た物であって、『ゾーン』に入らないと出来ないんだよ……」
「だから目に頼らず、感覚と心眼で見極める特訓なんでしょうが! アンタは完全に楽して手に入れようとしてるでしょ!?」
「んな訳ねぇ! 自分だって相当苦労しているんだ! なのに丸太投げてそうやってお説教かよ! お前は自分のおかんか!」
「おかんな訳無いでしょう! 私はアンタの為を思って……」
 不萌がそう言うと、不生が大声で言う。
「それがおかんだわ!」
 不生がそう言った後、物陰からボロボロの不消が現れる、突然の出来事に驚く不生と不萌。
「どうしたんですかおじさん!?」
「父上!?」
 二人がそう言うと、か細い声で言う。
「お、お前達に、逃げろ……『村雨』を狙う輩が……相手は相当強い、だから逃げ……」
「逃げない! 父上をこんな痛手にしたんだ、許せねぇ!」
「私も! 不生のおじさんをこんなに痛めて……許せない!」
「そうかいそうかい?」
 そう言って、蝙蝠の様に木にぶら下がる忍者が居た、謎の登場に不生と不萌は驚いてしまう。
「俺がこのおっさんを狙った張本人だよ、んで、何処に有るのかなぁ? 『村雨』ちゃんはよぉ!?」
 そう言って、謎の忍者は不消の頭を踏む、すると不生が『村雨』で斬りつけた、だが、謎の忍者は小刀で攻撃を防ぐ。
「おっと、それが『村雨』ね、うーん、綺麗だ……これが俺の手に行くのか、うーん、最高だねぇ!」
 謎の忍者は突進してきた、そして急に剣戟が始まった、一方的に攻撃する謎の忍者、不生は防ぐので精一杯だ。
「私も手伝わないと……!」
 不萌はそう言うと、口笛で角さんを呼ぶ、そして命令する。
「皆はフォーメーション『F』を展開!」
「甘いね、もしかして糸で攻撃するとか? 甘いねぇ、糸なんか、ナイフで切ればいい」
「うっ、確かに……」
 謎の忍者に弱点が気付かれてしまう、確かに超極細の糸であれど、切られてしまっては意味が無い。
「さぁ、最終決戦と行こうか!」
 謎の忍者はそう言って、何本ものクナイを投げた、その数、合計八本。
「あ、避けられない、終わった」
 不生はそう言って、目の前の状況に絶望した、死ぬのかぁ、案外短い人生だったなぁ、そう思いながら溜息を心の中でしてしまう、すると不萌が不生に向かって叫ぶ。
「諦めんな! 今迄修行してきたじゃない! もう諦めるつもり!?」
 …………確かに、まだ自分は『八咲』も『ゾーン』も完成していない、流石に完成してから、の方がいい、そう思うと、手に力が篭る。
「ああああああああああ!!」
 大声で叫びながらクナイを見る、そして一気に叩き落す為に集中する、大丈夫、イケる、自分なら! そう思いながら息を飲み込んだ、その瞬間、不思議な事が起きた、少しだけだがクナイの移動が遅くなっているのだ、この不思議な事は分かっている、『ゾーン』だ、今正に『ゾーン』を使用している!! 不生は右から、クナイを『村雨』で叩き落していき、全てのクナイを落とす、すると通常の感覚に戻る。
「おいおい、おいおいおいおい、聞いてないぞ、そんな力!」
「煩い、お前は自分の父を傷つけた! だからお前には拷問をする!!」
 不生はそう言って、もう一度集中する、すると『ゾーン』の様な感覚を覚えた、最初に丸太を斬って、『八咲』を発動した時と同じ感覚、まさか『ゾーン』にも、強い感覚と弱い感覚があるのだろうか? そう思いながら不生は『村雨』を上に上げて、謎の忍者に当てようとした──すると目の前に謎の忍者では無い小刀が現れて、急に『ゾーン』を解除する。
「うわっと!? 誰だ!? って父上……?」
 何故か傷だらけの不消が動いている事に不思議さを感じる不生、すると不消が言う。
「すまん、すまん、これにて演技は終了」
 不消はそう言って、不生に対し、クナイを投げつけた、だが不生はクナイを見続けながら集中し、『ゾーン』に入って、『村雨』でクナイを叩き落した。
「これにて、『ゾーン』の特訓は終了、どうじゃ? 中々の演技じゃろう?」
 不消はそう言って、大声で笑う、不生と不萌は不思議そうに二人を見続ける。
「これはお前の『ゾーン』を引き出す為の訓練じゃ、後、この忍者は私の友達の不倫(ふりん)さんじゃ」
「初めまして、不倫です、悪者役です、何気に悪役って疲れるんですよぉ?」
 あまりにもテンションが違う悪役に対し、不生は『ゾーン』に入って、不消、不倫を攻撃する。
「ふっざけんなぁ!!」
『八咲』、『八咲』と、二回繰り返す、すると二人の服が八裂きになる、すると不消が言う。
「何だ、何気に『ゾーン』を使用出来ているじゃないか……これにて、『ゾーン』、取得完了だな」
「……遂に『ゾーン』が出来たか、やったぁ!」
 不生はジャンプして喜んだ、不萌は呆れながら不消と不倫を見る……何気に仕組まれた演技って訳か、そう思うと、一気に力が抜ける、何か気を張り巡らせて損した気分……そう思いながら不萌は大きな溜息を吐いた──

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Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.66 )
日時: 2016/12/18 20:37
名前: 彩都 (ID: ???)  

 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 6 強敵と不生

「さぁ、今日も任務を終わったし、帰るか」
 不生はそう言って、任務から自宅の『不の里』に帰ろうとした時だった、急に殺気を感じ、振り向いた、すると頬に一線の痛みを感じる、左目で確認すると、頬は切れていた、まるで鋭利な刃物で切られた様に──これは知っている、何度怪我した事か……この切り傷はクナイだった。
「……何者だ!?」
 暗闇に不生は叫ぶ、すると月明かりに照らされて、黒い格好の忍者が現れる、そして口に巻いている布を取り外し、言葉を発す。
「私は貴様の持つ『村雨』を奪いにきた、たったそれだけ、お前が『村雨』を渡せばお前は死なない」
「渡す訳無いだろ、『村雨』は自分の相棒! だから渡す理由も渡す意味も無い!」
 不生がそう言うと、黒い格好の忍者はゆらぁり、と体を揺らしながら近付いていく、そして不生の前に来て、顔と顔を近付かせて叫ぶ。
「黙れ! ガキには分からんだけだ! その刀の真の威力をな!」
「し、真の威力……? 何なんだよ、それは!?」
 黒い格好の忍者に対し、大声で叫んで不思議がる不生、すると黒い格好の忍者が自分の刀を抜いて、説明する。
「なぁに簡単だ……普通の刀は物や人を斬ったら、切っ先や刃の部分、及び刀身が血で錆びたり、骨を切ってしまい、切れ味が悪くなる、それは分かるな、ガキ?」
「あぁ、そりゃ分かるよ、自分だってクナイやナイフを扱うんだ、修行で使ったら毎回毎回研いで、切れ味をよくしている」
 不生がそう言うと、黒い格好の忍者はコクリ、と頷いてから、剣を見ながら言う。
「そう、『大体の刃物は研がないと切れ味が落ちる』のだ、ではガキに質問しよう、お前は『『村雨』を一度でも研いだ事はある』か?」
 確かに言われてみればそうだ、『そもそも『村雨』は研いだ事が無いのだ』、研ごうとすると、父が『自分でやっておく、若いもんは良く寝ないといけない』と言って、先に自分を寝かせている──そしてもしも『父も研いでいなかったら、どうやって切れ味を維持しているのか』? と不思議に思ってしまう。
「研いだ事は、確かに無いな……だがそれがどうした? 研がなくても切れ味が落ちないのは良い事──」
 不生がそう言うと、黒い格好の忍者は首を横に振って、不生に言う。
「間違っている、間違っているんだよ、ガキが……『村雨』はなぁ、『切れ味が落ちず、逆に切れ味が増す』不思議な刀なんだよ……」
「!? それは本当か!?」
「本当も本当、お前が修行と言って、物を斬ったりするだけで、少しずつ切れ味が良くなっているんだよ! 知らなかったのか!」
「……」
 唖然、というより、驚き、驚愕の方が感情的には勝っていた、どういう事だ? どういう原理で切れ味が良くなっているんだよ!? そう思いながら黒い格好の忍者に叫ぶ。
「おい、何でそんな事を知っているんだよ! 可笑しいじゃないか、自分より何でそんな事を知っている!? 『村雨』は家宝なんだよ……なのに何でそんな事を知っているんだ! 答えろ!」
「何故知っているか? って? 簡単だよ、その刀は相当昔からあるんだ、そう──江戸時代からな──今時の忍者は大体が伝説である、と信じているな……他にも世界を手に入れたい年寄り共が欲しがったりな……と言う事だ、俺はそんな年寄り共から任務を受けてお前の『村雨』を奪いにきた、たったそれだけだ、さぁ、早く『村雨』を渡すんだな!」
「いや、渡さないよ!? 何で渡さないといけないんだよ! これは家宝なんだから渡せないって!」
「煩い! いいから渡せ!」
 そう言って、黒い格好の忍者は近付いていく、不生は大きな溜息をして、黒い格好の忍者を見ながら集中する、そして『ゾーン』に突入する、段々と『ゾーン』が使えてきているなぁ、と肌で感じながら『村雨』を鞘から抜き取り、一気に斬っていく、不生は斬った後、『村雨』を鞘に直して、鍔を鳴らす、そして呟いた。
「……『八咲』!」
 鍔で鳴らした後、『ゾーン』は終了した、そして黒い格好の忍者の服は八裂きになった、すると黒い格好の忍者は悲鳴を上げながら走って消えた……
「……奪いに来たのに逃げちゃったよ」

「……と言う事が起きましてぇ」
「成程な、どこからかお前に渡した事がバレて、ガキだから簡単に倒せる、と思っている輩が増えたって事か……中々大変だな」
「成程ねぇ、アンタも不幸ねぇ」
 不消と不萌にその出来事を話すと、不生は渋々言った。
「そうなんです……だから自分は『村雨』を手放そうと思いますが……だけど、『村雨』は自分の相棒、相棒を簡単に手放すなんて出来ない……」
「まぁ、そりゃそうだろな」
 不消がそう言うと、不生は渋々頷く、すると不萌が言った。
「ねぇ、それって逆に『『村雨』を欲しがる奴全員を叩けば良い』じゃない、全員を先に……そして不生、次に戦う奴を捕まえて、ちゃんと話を聞きなさい、『村雨』を欲しがる年寄り共も全て、全部先に叩けば良いじゃない!」
「……どれだけの労力だと思って──」
 不生はそう言いながら大きく溜息を吐く、結構大掛かりになってしまう戦いだな、と不生は思いながら頭を垂れる。
 だが不生はもう一つ思ってしまう、本当に全員の名前を言うのか? と──

 NEXT  しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 7

Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.67 )
日時: 2016/12/24 21:08
名前: 彩都 (ID: ???)  

 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 7 叩けば埃が出てくる出てくる

「……いや、あのさぁ」
「ん? どうしたの不生?」
 不生が独りでに言うと、不萌が反応した、それもその筈、目の前には三人の青色の忍者が縄で縛られていた、一人は悔しがっている、もう一人は太った忍者だ、最後の一人は縛られて涎を垂らしている。
「何でこんな三人が自分の刀を奪う輩を知っている、と思うんだ? 流石に証拠が無いと思うんだけどなぁ」
 不生がそう言うと、悔しがっている忍者が言う。
「俺は『村雨』が欲しいって偉い人から依頼されただけ、だから殺さないでくれ!」
「……こう言う事」
 不萌が親指を立てて、不生に見せる、本当に見付かったのか、そう思いながら『村雨』を悔しがっている忍者の首筋に当てながら、不生は問う。
「それはいいんだけどさぁ、一体誰がアンタに依頼したんだ?」
「それは言えない、簡単には言えないね、だって言ったら信用無くすじゃないか」
 悔しがっている忍者がそう言うと、無言で『村雨』を引く不生、綺麗に切られていき、血が溢れ出る。
「わ、分かったから、その動きを止めろ、分かったから──えーと、大まかに言えば総理大臣、『不動律(ふどう りつ)』だよ、あの人が俺等に命令したんだ、『『村雨』を奪ってこい、もしも入手したら、欲しい分だけの金を渡そう』って……」
「総理、大臣? マジで?」
 不生がそう言うと、忍者は渋々頷く。
「成程ねぇ、それじゃあ、総理大臣を叩けば、『村雨』は奪われない、と言う事かな?」
 不生がそう言って、大きく深呼吸する、そして空を見上げる、見上げると綺麗な星が見えていた──

「よし、活動するか」
 不生はそう言って、動き出す、すると不萌が唐突に言う。
「ねぇ、あの忍者は放っておくの?」
「うん、全部解決する迄縛っておく、とりあえず、総理大臣を叩いて、奪われない様に征しておく、さぁ、一人で行くけど……不萌はどうするの? 自分についていくか、忍者の相手をするか?」
「そんなの決まっているわ、私はアンタの年上、保護者って訳じゃないけど、一応は年上としての役割を果たさせてもらうわ」
「そうか、つまり一緒に戦うって事だな!」
 不生はそう言って、ガッツポーズをする、そして不生達二人は総理大臣の居る場所迄向かった──
 不動邸──
「ふむ、後少しで戦争を起こす、そして我が国の最高峰、『村雨』の威力を見せ付ける! アハハハハハ! どうだ、外国よ、これが私の最終計画!」
「あら、あなた……とってもかっこいい計画ですねぇ、ですがちゃんと埃は掃わないといけませんわ」
「そんなもの知っている、どうせ『村雨』は手に入れられる、その時迄待つのみ……」
 そう言った瞬間、窓ガラスが割れる音がする、何だ? と思いながら向かうとそこには不生と不萌が居た、そして不動が叫ぶ。
「おおっ! 逆に持ち主が舞い込んできた! いいねぇ、私が手に入れるのが容易になった、と言う事は、この家がバレた、か……忍者は裏切りがあるからあまり信じられん」
 不動がそう言うと、不生は不動の目の前で『村雨』を地面に突き刺す、そして大声で怒鳴る。
「おい、総理大臣さんよぉ……アンタの権力だけでこの剣は手に入れられねぇ、分かってんのか? だからアンタには渡さないし、自分は自分の子孫以外に渡す気も無い、だからこの剣の件から離れてくれねぇか?」
「……でぇ?」
 いきなり素っ頓狂な声が聞こえて不生は驚く、すると床に刺さった『村雨』を奪って不動が持つ。
「これだよ、これ! これが欲しかったんだ! 無限の切れ味を持つ幻の刀、『村雨』!! 有難う、私の目の前で披露してくれて……」
 不動はそう言って、不生の体を切った、綺麗に切られて、大量に出血してしまう。
「あっ……っ、やられた、まさか奪うとか考えてねぇから……!」
「不生! アンタ、最低ね、総理大臣の癖に……!」
 不萌がそう言うと、不動は笑う。
「そうか? 私は目の前の人間を使用するのみ、目の前に刀があっただけだ、それを利用した所で何が悪い?」
 アハハハハハ! と笑う不動に対し、あまりの痛みで動けない不生──そんな不生に対し、不萌が近付く。
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫、じゃないね……あぁ、案外短い人生だった、案外楽しかった、案外……案外生きたかったなぁ、もっともっと長く……」
 不生はそう言って目を閉じる、そんな不生に対し、不萌は泣いた、あっさり泣いてしまった、そして不動が不萌に近付いていく、不萌は不生の切られた部分を叩いて、不動に突進する、突進して、二人はぶつかって転んでしまう、だが不動は『村雨』を離さなかった。
「クソッ! 離さないだなんて……!」
「生憎私は掴んだら話さない性質なんでなぁ! お前も刀の錆となれ!」
 そう言って、不動は『村雨』で、不萌の体を斬った、だが手ごたえが無い、不思議だ、そう思っていると目の前に死んだ筈の不生がクナイを持って立っていた、不思議だ、何故生きている、ゼェゼェと息を切らしながらクナイで『村雨』の攻撃を防いだ不生、不生の持っているクナイには『不萌』と彫られている。
「お前、まさか……生き返った!?」
「んな訳無いだろ、斬られた部分に不萌のクナイがなかったら自分はもう不萌を守れなかっただろうな、有難うよ、傷口にバレない様にクナイを置いてくれて……!」
 不生はそう言って、不萌に感謝する、そして不生はネタバラしをする。
「忍者って死ぬ振りもしなきゃいけないんだよなぁ、だからお前が斬ったのは自分の血糊なんだよ、生憎自分は死なない!」
 そう言って不生は不萌のクナイを持ちながら『村雨』VSただのクナイの戦いを開始しようとする──クナイと『村雨』、勝つのは『村雨』に決まっているのに、不動はそう思いながら両手で『村雨』を握り、不生の出を伺う──

 NEXT しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 8

Re: しりとりシリーズの『その後』 ( No.68 )
日時: 2016/12/25 20:41
名前: 彩都 (ID: ???)  

 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 8 『八咲』のその先へ

「フフフ……斬られる覚悟があるようじゃのう……」
「あぁ、あるさ、だけど、『やり返す』って言うのも忘れんなよ?」
 不生はそう言って、不動を挑発する、だが、不動はそんな挑発には乗らない。
「さっさと殺してしまおう、さようなら、忍者、そしてその後ろのくの一も後を追わせてやる」
 不動はそう言って、『村雨』を上に上げて、一気に下に降ろした──だが、気付いた時には目の前に不生は無く、『トンッ』と後ろで、足踏みをした不生の足音が聞こえる。
「えっ?」
 不動は自分の胴体を見る、すると九回胴体が切られていた、『一体何が起きた』? 『いや、一体何をした』!? 不動はそう思いながら、胴体の切り傷の痛みに苦しむ。
「で、出来た……まだだ……まだ、自分の憎しみは消えないんだ! 不萌を攻撃した事、自分の『村雨』を奪った事! まだまだやり返さないといけないんだ!」
 不生はそう言いながら鼻血を少し垂らしながら言う、不萌は不思議がっていた、何をしたの、不生は……? そう思いながら一気に深呼吸して、後ろに下がる、やった事は分かる、不生が行ったのは『ゾーン』での、『八咲』、だけど、八回切っていない、切ったのは九回なのだ、可笑しい、どうやってそこ迄進化したのだろうか? そう考えて、不生を見つめる。
「さぁ、返してもらおうか、自分の『村雨』を……?」
 不生がそう言うと、不動は笑って、言い返す。
「誰が返すか! この刀は私の物だ! 私の所有物にするのだ!」
 不動はそう言って、『村雨』を振り回す、だが『ゾーン』を持っている不生には意味が無い。
「甘いんだよ、『ゾーン』で、大体は見切れるし、避けれるんだぞ? もう渡した方が早いんだ……」
 不生がそう言うと、不動と不萌がぶつかる、すると不動は『村雨』を不萌の首に当てて叫ぶ。
「フハハハハハ! どうだ!? 人質だ! もしも今からその場を離れ、『村雨』を渡すというのなら、この小娘くの一は助けてやる、もしも私に『村雨』を返せ、とまだ言うのなら、この子娘くの一の命は無い!」
「えっ……? ちょっ、ちょっとぉ!?」
 不敵な笑みを浮かべる不動に対し、完全に堪忍袋の尾が切れる不生、不生は不動を見ながら集中する、そしてクナイを持つ手の力を強める。
「いい加減にしろ、てめぇはどれだけの人間を傷つけたら気が済むんだ!?」
 そう言って、不生は不動に近付く、そして『ゾーン』発動、不生は不動に対して、胴体に、十回、切り傷を作った、十回、無意識に不生は切っていた、八回切った、と思ったら、追加で二回も切っていた、これはどういう事だろうか? 今はそんな事はどうでもいい、とりあえずは不萌を不動の手から離さないと、そう思いながら不動から不萌を離す、そして少し移動して、『ゾーン』解除。
「はぁはぁ……『八咲』だから十分咲、十分咲だから、満開、ってか……よし、この技の名前は『満開』にしよう」
 不生がそう言うと、不萌は不思議がっている。
「えっ? 何を言っているの不生は?」
「えーと、大まかに言えば、新技、『ゾーン』発動中に、『八咲』の更に二回切った技、『満開』って技を作った、つまり十回切り刻む技!」
 不生がそう言うと、不萌は驚いていた、どこ迄成長するの、不生は!? そう思いながら不動を見る。
「ぐっ、ぐふっ……まだだ、まだなんだ……」
「もう、返してもらいますよ、貴方はもうじきくたばる」
「知っている、私は何としても、この刀が欲しかった、だから総理大臣になって、権力を使用して欲しかったのだ……なのにそれでも無理とは……お前の『村雨』の思いが良く分かった」
「そうかい、それじゃあ、返してもらう」
 不生はそう言って、不動の手の中の『村雨』を返してもらう、そして『村雨』を鞘の中に収める。
「とりあえず、不萌の言う通り、一番上を叩いたけど、まだまだ『村雨』を欲しがる人はいそうだなぁ……この刀を守るのに、まだまだ大変そうだなぁ……」
 はぁ、と大きく溜息を吐いてから、不生は頭を掻いた──不萌は『アンタも大変ねぇ』と思いながら、腕を組んで、不生を見続けた──

「行くよ? 行くよ? 行っちゃうよ? それじゃあ親父、不萌、丸太宜しく! 不生、一気に行かせてもらいます、『村雨』を奪われた時に手に入れた新技、『満開』です! 来いやぁ!」
 不生はそう言って、二人に十本の丸太を投げてもらうよう、支持する、今から見せるのは不生の新技、『満開』だ、さぁ、行くぞ! そう思って『ゾーン』を発動し、『村雨』で丸太を斬っていく、だが八本目を斬った後、急に『ゾーン』が解けてしまい、残った二本の丸太が不生の体に当たってしまう。
「ぐっはぁ!?」
「だ、大丈夫!?」
 不萌がそう言って、不生に近付く、不生は完全に気絶していた。
「あーあ、信じた私がバカだったのかな?」
 不生がそう言うと、不消が笑いながら、不萌に言った。
「まぁまぁ、もしも使えたとしても、本当に焦っていたり、集中していた時だろう、それ程君を守り、そして助けたかったのだろう……」
 不消がそう言うと、不萌は少し微笑んだ。
「有難う、不生……」
 そう言って、不萌は不生の頭を撫でた──不萌が不生の頭を撫でた事は不生は知らない──

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