複雑・ファジー小説

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アカシアな二人
日時: 2022/04/16 22:27
名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)

理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。

Re: アカシアな二人 ( No.31 )
日時: 2022/09/26 12:38
名前: 梶原明生 (ID: UMqw536o)

・・・「え、狭間先生って方が青川学園にいたんですか。」春香が驚く。「そうよ。まさに才色兼備な先生でね。それでいて生徒に情が熱い先生だった。男子の憧れでもあったのよ。」「へー、そんな先生が。」一瞬紺野先生を思い出した。今どうしているだろう。「着いたよ。」毅が言うとそこには立派なペンションが建っていた。名古屋市内近郊の丘の上にそれはあった。幸先町は市内と山間の中間に位置し、便利さと癒しの空間がテーマの町だ。狭間葉子先生は高校教師定年退職後、主人の実家である名古屋市幸先町に越してきた。元々洋館宿泊所を代々経営していたが、息子夫婦がそれを叔父から受け継いだため、居抜き改装を経てペンションを開いた。言わばそこに入って、今では息子夫婦を手伝っている状態。五人は車を降りてペンションに入った。「いらっしゃいませ。お泊まりで・・・瀬西さん、中山君まで。」初老過ぎの老婦人に紅潮が差した。「わかるんですか先生。」「わかりますとも。私の大事な教え子ですもの。」「よかった。今日ここに泊まっても。」「ええ、見ての通りのガラ空きだし、大歓迎よ。アレ、お子さん。二人結婚してたかしらね。」「その事なんですが。」志乃の不安気な表情に何かを悟る狭間。「母さん、お客さん。」そこへ年の頃30代半ばの精悍な男性が仕入れ食材を抱えて奥から現れた。その傍らには瀬西と変わらない年齢の女性と子供二人。「ああ、紹介するね。この子は息子の拓司。それからお嫁さんと孫達よ。」「こんにちは。」軽く挨拶を交わして、青川学園卒業生の教え子だということも話した後、部屋に通された。怪しまれないよう、三部屋借りて、毅、志乃の部屋。優也、春香の部屋、そして藤堂のシングル部屋という形にした。折を見て志乃と春香が入れ替わる算段だ。「お部屋の具合はいかがです・・・瀬西さん、ちょっと。」部屋の様子を尋ねるフリで志乃を呼び出す狭間。空き部屋を相談所代わりにして入った。「瀬西さん。もしかして何か深刻な事抱えてないかしら。失礼だけど、二人のお子さん二人のどちらにも似ていないものだから。」もう隠していられないと腹を括った志乃は、狭間先生だからこそ真実を全て打ち明けた。「そう、そんな事があったの。因果かもね。」「え、・・・」「いやね、うちの息子も年の差婚でね。しかもお相手さんは子連れで再婚だったのよ。それはそれはお父さんが生きてた頃は大反対で。半ば駆け落ち同然で結婚。ああ、今のおチビちゃん二人はその連れ子さんじゃなくて、後で生まれた子供。連れ子さんはもう独立して働いてるんだけど。でもね。不思議なものね。孫が産まれて見せられたら何も言えなくて。幸せそうな二人を見て思ったの。世間体や体裁よりも、息子が誰といて幸せなのかってね。おかしいでしょ、教師のくせにそんな事も忘れてたのよ。それで許したのよ。・・・四人共二人でいて幸せなの。」「はい。それはだれが何を言おうとも変わりません。」「それを聞いて安心した。アカシアの花言葉知ってるかしら。」

Re: アカシアな二人 ( No.32 )
日時: 2022/09/27 11:59
名前: 梶原明生 (ID: hamvuQpq)

・・・狭間は花瓶に刺したままのアカシアの花を見てそう言った。「ええ。覚えてますとも。うちのクラスのシンボルマーク。友情の証。そして・・・花言葉は秘密の恋。」「その通り。でもね、秘密と言うと何やら後ろめたい恋と書いてるみたいに聞こえる。でもね瀬西さん、私は違う意味を込められているんじゃないかなって思うの。秘密とは、『己に素直な真実の恋』を意味してるんじゃないかしら。」切実な眼差しに変わる志乃。黄色いアカシアを見つめる。「本来なら、あの子達が未成年者である以上、諦めなさいと言うところね。教師としては。」「えっ・・・」恐れる志乃。「でもね、私は元教師。しかも年寄りよ。最近・・記憶にボヤがかかってるから、さ〜て、あなたが教え子だったか違ったか。皆目見当がつきません。・・・ウフ、ハハハッ」思わぬ笑いにつられて志乃まで笑ってしまう。「うちの息子家族なら心配ないわ。あの子達は狭間家の一員よ。私と一連托生。まぁ宿泊した事実は消せないけど、貴方達が何者であるかは、伺い知れないこと。だってここはペンションですもの。」「すみません。ご迷惑をおかけします。」「迷惑なんて言葉は使っちゃダメ。私は迷惑なんてこれっぽっちも思ったことはない。あなたの担任になってから。」「先生・・・」泣き出す志乃を優しく肩を掴む狭間だった。その後事情を皆に話す志乃。毅が口を開く。「そうか。そう先生は言ってくれたのか。でも、明日の朝には出よう。九州方面なら何とかなるかも知れないから。」春香が何かを思いつく。「九州とくれば、私宛があるよ。以前お世話になった美沙おばちゃんがいるし。あ、藤堂さん。また追跡されるとか言うんでしょ。大丈夫。美沙おばちゃんは九州中を行ったり来たりしてる人だから。」顔を見合わせる毅と藤堂。「藤堂さん。ここは春香ちゃんに賭けよう。」「そうですね。わかりました。」夜の会合は終わり、皆それぞれの部屋に帰っていく。春香は毅に身を委ねる覚悟はできていた。経験はないものの、愛する人の求めに応じないわけにはいかない。しかし、前日のビジネスホテルでもそうだが、傍らに抱いて寝ることはあっても、男女の営みに移そうとはしない。今日もそうだ。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.33 )
日時: 2022/09/29 21:04
名前: 梶原明生 (ID: 344/XKJR)

・・・「一つ聞いていい。」「何。」「私、女として魅力ない。まだ子供にしか見えないの。」「そんなことないよ。もしそうならこんなことは・・」「ならどうして。私覚悟はできてるよ。」その言葉に反応しないわけではなかった。ただ、彼の中にある罪悪感と彼女を大事にしたいと言う気持ち。そして、信子への思いもあった。しかし、志乃と優也側は違っていた。思わず優也は志乃をベッドに押し倒していた。「私でいいの。」「何を今更。志乃さん、俺はあなたを愛しています。」唇を交わす二人。そこに少しも不自然さはなく、また時に見せる若者の力強い激しさが尚更志乃を媚薬の世界に誘った。心置きなく二人の初夜はこのペンションにて貫徹した。・・・・・翌朝、眠れなかった春香は朝早くから朝食の支度で忙しい狭間家の厨房をよそに、待合室の壁を見上げていた。そこには十字架が掲げられていた。思わず手を組み祈りを捧げる春香、「おや、春香ちゃん、だったかしら。祈っているの。」「お早う御座います。はい、この旅が幸せの楽園に辿り着く旅になりますようにって。でも、先生はキリシタンだったんですか。」「フフフッ違うわよ。昔キリシタンの神父さんが泊まっていった時に記念に貰ったものなの。おかげでクリスチャンが泊まる時、重宝してるわ。そう言えば思い出したけど、よく欧米の人は日本人を猿真似しかできない民族だ、なんて散々なこと言うけど、私は違うと思うの。神道ではあらゆる土地神様を祀ることはあっても、特定の神を祀るわけではないの。つまり、猿真似ではなく、あらゆる文化あらゆるイデオロギーをも受け入れる懐の広い民族。それが日本人なんだと。貴方達の愛も、受け入れられる世の中ならいいのにね。」両肩を優しく掴む狭間。「先生。」春香は心安らぐ気持ちになった。やがて七時を回り、毅達も起きてきて朝食を取ったあと、準備してチェックアウトした。今生の別れ間際に家族総出で送り出す狭間家に対し、春香は思わず彼女に抱きついた。「ありがとう。先生。」「いいのよ。幸せになってね。私の教え子よ二人は。きっと貴方達を幸せにしてくれる。だからあなたも誰かを幸せにできる人になってね。」泣きながら別れを惜しむ二人。優也は拓司に歩み寄る。「僕達も拓司さんみたいになれるよう、努力します。」「君なら大丈夫。きっとなれるよ。」「ありがとうございます。」毅達はこうして狭間のペンションを後にした。日産Xトレイルで幸先町の道路をひた走るのだが。グレーのセダンとすれ違う。「ん、あの運転手。」それは男にとって見覚えのある顔。JR幸先駅で停める毅。「すみません。ちょっとこの書類を出してこないと。すぐ戻ります。」郵便局に向かう藤堂。そのタイミングで先程のグレーのセダンがすぐ後ろに停まる。ヌッと身長186センチの男が降りてきた。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.34 )
日時: 2022/10/01 16:59
名前: 梶原明生 (ID: Om7nks4C)

・・・「運転手さん、ちょっといいですか。」「はい。」男は毅側の窓を中指の背で突いた。「マフラーに何か引っかかってますよ。危ないので取り除いた方がいいですよ。」男はニコリと作り笑いをして接してきた。「そうですか。すぐ降ります。」毅は車を降り、早速後部マフラーを調べるのだが。「あのー、どこにも何もありませんが。」「俺にはあるんだよ。」いきなり両肩を掴んだ男が、膝蹴りを毅の肋骨に叩き込む。「キャーッ」春香は悲鳴をあげながら車を出た。優也もだ。「何するんだあんた。」「あん、オメーには関係ない。ガキはすっこんでな。」更に暴行を加える男。「やめろっ。」「やめて。」優也と春香は止めに入るが、敵う相手ではない。互いにアスファルトに投げ出されて両手をついた。「ああ、中山毅だよな。一ノ瀬静香の同僚の。」「何故彼女を・・・」「俺はあいつの夫だ。よくも寝盗った上に娘にまで手出しやがって、この変態イカれ野郎が。」「ち、違う。私はそんな事していない。」「はぁ、ああ、そうそう誰でもそう言うんだよ。不良債権出した顧客みたいにな。」更に殴り付ける男。しかし、見知らぬメンズポーチが飛んできた。「いてっ、何だよ。」「何だよじゃねー。今すぐにその人を離せ。」「ああ、オッサン。またどぶネズミが湧いてきたのか。」「一応警告はした。」「はぁ、何だそりゃ。」言っている間にローキックが浩二の右脹脛にはいる。何だこの感触は・・・彼はそう感じていた。大学時代まで茨城の街では喧嘩無敗の名で知られていた浩二。就職活動を機に足を洗っていたのだが、飲み屋街でたまにその片鱗を見せる時があった。その彼が178センチ程度のサラリーマン風情の男のローキックで宙を浮いている。アスファルトへの直撃は免れたものの、言い知れぬ恐怖を感じた。野性動物が感じる「戦ってはいけない相手」とはまさにこの男だ。浩二は喧嘩自慢の勘として藤堂にそれを感じていた。しかしそれでも・・・「何だテメーっ。」殴りかかるも結局かわされて横裏拳を顔面に喰らい、回し蹴りが腹部に叩き込まれる。「中山さん、大丈夫ですか。」「肋骨が・・・」多分ヒビが入っている可能性がある。「すみません、俺が少し手を開けたばっかりに。」「ち、違います。そんなことは。」優也と共に後部座席に毅を乗せる藤堂。「待てこらっ。」意識を吹き返した浩二が藤堂の腕を掴むが、親指を捻り上げられ、引っ張る浩二に合わせてその方向に突き飛ばした。運転席に座る藤堂。「しまった。運転できないんだった。」自身が運転恐怖症なのを忘れていた。春香が懇願する。「藤堂さん、お願い。今あなたしか運転できる人いないの。」「柚子・・・」一瞬春香が一人娘にみえた瞬間、藤堂の恐怖症がなりを潜めた。「シートベルトに捕まって。」全員が目一杯ベルトを引っ張りだして手に絡めた。ゾンビ映画みたいに血だらけの浩二が運転席側のドアにへばりつく。また裏拳で叩き出す藤堂。サイドブレーキをおろし、ギアを入れてアクセルを踏み込んで急発進した。空挺団譲りのドライビングテクニックで浩二を振り切る。「まさかな。体が運転を覚えていたなんて。10年も運転してなかったのに。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.35 )
日時: 2022/10/02 22:58
名前: 梶原明生 (ID: Om7nks4C)

・・・「ありがとう藤堂さん。おかげで助かった。」「いや、俺のせいかも知れない。」「ううん。あんなの誰も予測できないよ。」少し大人に近づいた春香が、娘の柚子にまた重なって見えた。藤堂が運転しながら毅に聞く「中山さん、さっきのやつは誰かわかりますか。見たところ銀行マンに見えましたが。」「以前話した、病院勤務の同僚の一ノ瀬静香さんの元夫です。私は彼女とは交際なんかしてませんし、まして娘さんを手にかけるなんてしてません。たしかに、彼女が私に好意を抱いていることは知ってました。でも私には・・・そう言えば、確か一ノ瀬さんは暴力を振るう夫から逃げて東京に来たとか言ってた。まさか彼が・・・」一抹の不安が過ぎる毅。「藤堂さん、また東京に戻ってくれませんか。彼女が心配です。」「何を言うんですか中山さん、今舞い戻ったらそれこそ網に自ら引っ掛かりに行くようなもの。いくら雇い主の意向でも、そんな無謀な命令は聞けません。」「命令だなんて。・・・」「とにかく、怪我の治療が先決です。ここから50キロ先の名古屋郊外に知り合いの整形外科医がいます。先ずはそこへ。」藤堂はハンドルを右に切って加速した。それから数時間して、名古屋市内のあいりん地区かと見まごう町にたどり着いた。クリニックの看板もない貸しビルらしき建物の駐車場に入る藤堂。「え、ここがクリニック。」春香が不可思議そうにビルを見る。「ちょいとワケアリでね。」


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