二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 仮面ライダーウィザード〜終幕の先〜【完結】
- 日時: 2017/04/15 00:31
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: XGjQjN8n)
こちらでは初めて投稿させていただきます、裕と申します。
今回はこの場を借りて、平成仮面ライダーシリーズ第二期から
「仮面ライダーウィザード」の物語を積み上げてみたいと思います。
個人的解釈としましては、第二期である「ダブル」〜「鎧武」までの作品は、同じ世界観だと思って見ております。なので、今回の物語もそれに沿った流れで書いていこうと思います。それに伴い、第二期各作品(劇場版)の設定も拝借する予定です。
物語の時間軸は「ウィザード」本編の最終回後、さらに言えば冬の映画「戦国MOVIE大合戦」の後の話だと思っていただけると幸いです。
ではでは。
〜登場人物〜
・魔法使いとその関係者
操真晴人=仮面ライダーウィザード
仁藤攻介=仮面ライダービースト
稲森真由=仮面ライダーメイジ
奈良瞬平
大門凛子(国安ゼロ課・刑事)
木崎政範(国安ゼロ課・警視)
ドーナツ屋はんぐり〜・店長
ドーナツ屋はんぐり〜・店員
・財団X
シオリ・カナ(栞 可奈)=仮面ライダーサクセサー
ヤマト=メモリー・ドーパント
ネオン・ウルスランド(局長)
・宇宙仮面ライダー部
野座間友子
ジェイク(神宮海蔵)
仮面ライダーフォーゼ
・鳴海探偵事務所
左 翔太郎=仮面ライダーダブル(左サイド)
フィリップ=仮面ライダーダブル(右サイド)
・怪人
サザル=ファントム・グレンデル
ファントム・ラミアー
ファントム・ヘルハウンド(ログ)
ファントム・シルフィ(ログ)
ファントム・バハムート(ログ)
ファントム・メデューサ(ログ)
グール
クロウ・ゾディアーツ
ペルセウス・ゾディアーツ
黒ネコヤミー
オールド・ドーパント
マスカレイド・ドーパント(白服)
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- 四十三. 接触 ( No.50 )
- 日時: 2014/05/27 20:02
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
徐々に視界が回復してきたメイジは、ふらつきながらも周りを見回し、メモリー・ドーパントの姿を探
した。
まだ目がチカチカするものの、なんとか周囲の風景は捉えることができた。
しかし、残念ながら肝心の敵の姿を見つけることは叶わなかった。
「しまった・・・。逃げられた・・・」
落胆するメイジだったが、そこへ、
「あの・・・、魔法使いさん・・・」と、背後から少女のオドオドした声が聞こえてきた。
変身を解除し、元の姿に戻った真由が黒髪を靡かせながら振り返ると、視界に入ってきたのはゴス衣装の
少女とチャラ男風の少年の佇む姿だった。
「おっらぁ! 飛んでけ!」
サッカーのフィールド上では、魔力を補給して絶好調のビーストハイパーがファントム・バハムートを
追いつめていた。
右手のダイスサーベルを思いっきり振り上げて、バハムートの赤い身体を空中に舞い上がらせ、同時に
左手のミラージュマグナムから撃ち出される光弾の連射で追い討ちをかける。
数発の光の弾を浴び、全身から火花を散らせながらバハムートは地面に落下した。
「ウッ・・・ウウゥ・・・」
悲痛な声を上げながら、バハムートはなんとか再び立ち上がる。
「へっ! しぶとい奴だなぁ。だが、これで終わりにしてやるぜ!さっさとテメェを片付けて、真由ちゃん
の手伝いに行かなくちゃいけないからなっ!」
威勢よく言うと、ビーストハイパーはダイスサーベルのハンドルを掌で回転させた。
ドラム音のようなメロディが鳴り響き、サイコロの目が表示されたルーレットがグルグルと回りだす。
バハムートが攻撃を仕掛けようと足を一歩踏み出した瞬間、ビーストハイパーは右中指の指輪をサーベル
のシリンダーにはめ込み、ルーレットをストップさせた。
『THREE! ハイパー! セイバーストライク!』
ダイスサーベルから音声が鳴り、直後にビーストハイパーの正面に大きな魔法陣が展開した。
「これで、メインディッシュだぁ!!」
ビーストハイパーは渾身の力を込めてダイスサーベルを振り下ろし、魔法陣から動物の幻影を出現させた。
ビーストの力を司る四体の動物。
ファルコン、バッファロー、カメレオン、イルカ。
魔法陣からそれぞれの動物の幻影が各三体ずつ飛び出し、バハムートにぶつかっていく。
上空からファルコンの幻影が奇襲を仕掛け、真正面からバッファローの幻影が突進する。
ピョンピョンと跳ねながらカメレオンの幻影が足元を攻撃し、空中を泳ぐように滑空しながらイルカの幻影
が顔面に体当たりする。
「ウゥ・・・アアアァァ・・・・」
次の瞬間、計12発の技の嵐をその全身で受けたバハムートは力尽きるように両膝を付いて地面に倒れた。
崩壊した肉体が爆発し、残った魔力がビーストハイパーのバックルに吸引される。
「ごっつぁん!」
両手を合わせ、ごちそうさまのポーズをとるビーストハイパー。
連戦を終え、「ふぅー・・・」と、深い息を吐きながら一息ついたのもつかの間、すぐにメモリー・ドーパ
ントを追いかけるメイジの姿が頭をよぎる。
「あ、やっべぇ! 早く真由ちゃんのところに・・・」
観客席の方へ移動したメイジの下へ向かおうと、ビーストハイパーは慌てて背後を振り返った。が、
その刹那に視界に飛び込んできたのは、メイジ本人であるロングヘアの黒髪の少女、真由の姿だった。
一足先に戦いを終えた真由がいつの間にかビーストハイパーの背後に立っていたのだ。
「うおぉぉっ!? ビックリしたぁ!」
大袈裟に両肩をビクつかせながら、ビーストハイパーは跳ねるように二歩三歩後退した。
頭上の魔法陣を潜り抜け、ビーストハイパーから仁藤攻介の姿に変身を解除すると、両目がギョッと見開か
れた驚きの表情が露になった。
「真由ちゃん、いつの間に・・・」
「ゴメンなさい仁藤さん! 急に驚かせちゃって・・・」
攻介の予想外の驚きっぷりに、困惑しながらも真由は謝罪する。
「いやいやいや・・・、俺が勝手に驚いただけだから・・・」
攻介はみっともなく取り乱した自分の姿を隠すように、慌てて冷静さを装った。
パーカー付きのジャケットを両手でパタパタと扇ぎながら、視線を逸らして誤魔化している。と、
そんなことをしながら、ふと、真由の背後から別の気配を感じた。
本当の冷静さを取り戻してよく見ると、真由の後ろには高校生らしき二人の少年少女が立っていた。
どちらも初めて見る顔だが、二人とも物珍しそうな眼でジッと攻介の姿を見ている。
とくに少女の瞳は尊敬と感動の気持ちで尋常ではないくらいキラキラと輝いていた。
攻介は真由に視線を向けて尋ねる。
「真由ちゃん、この子達、誰?」
サッカー場を跳び去ったメモリー・ドーパントは、一般人の目を掻い潜るように建物と建物の隙間を跳びぬ
けていた。
時には一軒家の屋根を、時にはビルの外壁を足場としながら、凄まじいジャンプ力で跳躍を続けていく。
その姿はさながら、ゲームや漫画などのフィクションものに出てくる忍者のようだった。
サッカー場から数キロほど離れた海沿いの埠頭に入ったところでメモリー・ドーパントは跳躍を止めた。
最初からこの場所を目指していたわけではない。人気のない場所を探していたらたまたまここへ行き着いた
だけだった。
積み重ねられたコンテナの影に着地し、周囲に人がいないことを確認すると、メモリー・ドーパントは
左腕から黄緑色のT2ガイアメモリ、メモリー・メモリを抜き取った。
途端にメモリー・ドーパントの身体は小柄な男の姿に変化した。
詰襟の白いスーツを身に纏った中性的な顔つきの青年、財団X魔力応用型兵器開発部主任・シオリ・カナの
部下の一人、ヤマトである。
吹き付ける潮風を感じながら、ヤマトはメモリー・メモリをスーツのポケットに仕舞うと、懐から通信端末
を取り出し、上司であるシオリ・カナに連絡を取るべく端末の画面をタッチ操作した。
経過報告である。
シオリ・カナが持つ同機種の通信端末に接続し、応答を待つヤマト。
しかし、通信が繋がり、端末に彼女の顔が表示され、彼女の声が聞こえてくることはなかった。
「・・・繋がらない。カナさん、一体どうしたんだろう・・・」
端末の接続を切り、不安に駆り立てられながらヤマトは呟く。
チームの主任であり、プロジェクトのリーダーであり、今回の計画に誰よりも積極的である彼女が連絡に出
ないことなんて今まで一度も無かった。あるとすれば・・・。
「まさか、何かアクシデントが・・・」
通信端末を握り締めるヤマトの手に無意識に力が入る。
- 四十四. ヤマトとサザル ( No.51 )
- 日時: 2014/07/16 06:51
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
考えた末、ヤマトは一旦、カナがいるはずの研究ラボに戻ることにした。
まだ回収しなければならない最後の魔力が残っているものの、彼女の安否を確認せずにはいられなかった。
通信端末を仕舞い、再びメモリー・メモリをその手に取る。
人間の姿で移動するより、さっきのようにドーパントの跳躍力で跳んでいったほうが確実に早く辿り着く
はずだ。
『メモリー』
ヤマトは起動スイッチを押し、メモリー・メモリを挿入するべく左腕の袖をたくし上げた。と、そこへ、
「おい、ヤマト!」と、突然何処からか男の野太い声が聞こえてきた。
その声に反応したヤマトは思わずメモリを持つ右手をピタリと止めると、警戒するように辺りをキョロキョ
ロと見回して声の主の姿を探しだした。
「こっちだよ!」
そんなヤマトの背後の物陰から、男は姿を見せる。
「お前は・・・」
二度目の呼び声が聞こえた後方を振り向き、ようやくその姿を捉えたヤマトは声の主の思わぬ正体に少し
驚いた。
男の正体、それはヤマトと同じ詰襟の白いスーツを着たポニーテールの巨漢。
シオリ・カナの部下として共に働く仲間、サザルだった。
「よお、ヤマト」
サザルはまるで友人に接するかのように気さくに挨拶しながらヤマトの前に歩み寄る。
対するヤマトは呆然とした表情のまま。
なんでサザルがこんなところに? という疑問で頭がいっぱいだった。
「サザル! お前、ここでなにをしている!? 笛木の資料集めはどうなった!?」
頭の中に浮かんだ当然の疑問をそのまま言葉にして口に出す。
音信不通のカナの件が気掛かりなこともあり、思わず感情的になって口調も荒くなる。
「まあ落ち着けって。全部説明するからよ」
そんなヤマトの態度を尻目に、サザルは落ち着いた様子でマイペースに語りだす。
「俺がここにいるのは、街中をピョンピョン跳ねるドーパント姿のお前をたまたま目撃したからだ。この場所
に降りる瞬間が見えたから、俺も後を追ってやって来た。お前には話したいこともあったからな」
「話したいこと?」
「ああ。恐らく、お前が今一番気にしているはずのことについてだ」
「僕が気にしていること・・・。それってまさか・・・」
「主任の行方だ」
サザルがそう言った途端、ヤマトはハッと眼を見開き、顔色を変えた。
「サザルお前、カナさんに何があったのか知っているのか!?」
一旦落ち着きを取り戻したように見えたヤマトの態度がまた急変する。
サザルは「だから落ち着けよ」と、ヤマトを治め、話を続ける。
「単刀直入に言えば、主任は今行方不明だ。何処にいるのか俺にもわからん」
「行方不明!?」
「俺が俺の仕事をしているところに、主任が首を突っ込んでな。そこで例の指輪の魔法使いと鉢合わせして
バトル。未完成のサクセサーを引っ張り出した挙句、相手の攻撃に巻き込まれて爆炎の中。そのまま行方知ら
ずってわけだ」
顔色一つ変えず、腕組しながら冷静に語るサザルの姿に、ヤマトは苛立ちを覚えた。
自分達の上司が戦いに巻き込まれた上に行方不明。生きているのか死んでいるのかさえわからない状況だと
いうのに、何故この男はこんなにも落ち着いていられるのか?
苛立ちのあまり、ヤマトはサザルの胸ぐらを両手で乱暴に掴んだ。
小柄なヤマトの力では、巨漢のサザルの身体はビクともしなかったが、それでも掴まずにはいられなかった。
「お前、その場にいたなら何故しっかりカナさんを守らなかった!? お前の力なら守れたはずだろ!?」
埠頭に立ち並ぶ無数のコンテナの陰の中で、ヤマトはこみ上げてくる感情に任せて言い叫んだ。
声に気づいて誰かが来るかもしれない。そんな考えは既に脳裏から消え去っていた。
「おい、足を引っ張られたのは俺の方だぜ? 屋敷も研究所も巡って収穫ゼロ。愛用のゾディアーツスイッチ
まで紛失したっていうのに主任の余計なワガママに付き合わされたんだ。これ以上はこっちの身がもたねぇよ」
胸ぐらを掴むヤマトの手を振り払い、サザルも強気で言い返す。
「貴様ぁ!」
さらに声を高ぶらせるヤマト。
「・・・・・」
「・・・・・」
ヤマトはサザルを睨み、サザルもヤマトを睨みつける。
眼に見えない火花がバチバチと二人の間で飛び散る。
睨み合いが暫く続いた後、ため息と共に先に沈黙を破ったのはサザルだった。
「・・・心配するな」
「えっ?」
「主任は俺が必ず見つけだす。この状況の責任の一端が俺にあることぐらいわかっているんだ。だからお前は
お前の仕事をサッサと果たせ」
「サザル・・・」
サザルの意外な言葉に、ヤマトは思わず呆気に取られた。
「このままだと、お前は自分の仕事を放り出してでも主任を探しに行きそうだからな。これ以上サクセサー
の完成が遅れるのは、組織的にもマズイだろ?」
「そうだな。カナさんが帰ってきた時に笑顔でいてもらうためにも、プロジェクトは必ず成功させないとな」
「だから主任の件は俺に任せて、お前は一刻も早く残りの魔力を回収して来い」
「わかった。カナさんのこと、絶対に見つけろよ!」
ヤマトはサザルにそう念を押すと、再びメモリー・メモリでドーパントに姿を変え、凄まじい跳躍力で
この場を後にした。
目指すは最後の魔力、メデューサの魔力が眠る場所。
飛び去るヤマト=メモリー・ドーパントの後姿を見つめながら、サザルは呟く。
「頼むぜヤマト。俺の悲願のためにもな・・・」
- 四十五. 合流 ( No.52 )
- 日時: 2014/07/24 07:22
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
人造ファントム研究所で繰り広げられたドーパントやゾディアーツとの戦いを終え、消息不明だった警官隊
達を全員無事に救出した晴人と凛子は、一夜明けてからここ、警視庁鳥井坂署に帰還していた。
帰還後早々に国安ゼロ課の警視、木崎政範に呼び出された晴人と凛子は、一息入れる間もなく木崎の待つ
書斎へ向かうのだった。
「遅かったな・・・」
扉を開き、室内に入った直後、二人に浴びせられたのは労いや敬う言葉などではない、冷徹に呟いたたった
一言だけであった。
バタンと扉が閉まり、部屋の奥に目を向けると、そこにいたのは巨大な机に両肘をつきながら、背もたれ
付の黒い椅子に静かに座っている眼鏡の男だった。
男は机に置かれた湯のみ茶碗を手に取り、熱いお茶を一口飲むと、茶碗をそっと静かに元の場所に置き
ながら、扉の前に立つ晴人と凛子に眼鏡越しの鋭い視線を向けた。
眼鏡がキラッと光ったように見えて、怒りの眼差しで睨まれている様な気がした凛子は、思わず背筋を
ピンと伸ばした。
また怒鳴られるのかも・・・。そんな予感が脳裏をよぎる。
しかし一方の晴人は、そんな木崎の視線も一人緊張する凛子の様子も一切気にすることなく軽い口調で
言葉を返した。
「おいおい、やっとの思いで帰ってきたのに、お疲れ様の一言もなしかよ」
すると木崎はフッと笑みを浮かべ、
「・・・冗談だ」と、背もたれによしかかりながら不似合いに笑って見せた。
ギシっと椅子が軋む音がした。
「ご苦労だったな。操真晴人、大門凛子。お前達のおかげで研究所の警官隊はなんとか全員無事だ」
ようやく告げられた労いの言葉を受けながら、晴人は机の前に歩み寄る。が、
何故か凛子は背筋を伸ばして立ったままだった。
「凛子ちゃん?」
「どうした? 大門凛子」
晴人と木崎が直立状態の凛子を不思議そうな目で見ている。
「えっ!? あ、いや・・・、木崎さんが怖い顔してこっちを見てたので、また怒られちゃうのかな・・・と」
「・・・大門凛子、今この状況で、一体何を理由に私はお前を叱ればいいんだ? 逆にこっちが聞きたいぞ?」
瞳をウルウルさせながら緊張しっぱなしの凛子を見て、木崎は呆れ顔で言う。
「えー・・・あ〜・・・」
困惑の表情を見せる凛子。
その様子を、晴人は一人楽しそうに見ていた。
困った挙句、凛子は、
「わ、私、汗かいたんでシャワー浴びてきますね!」と、報告やその他諸々をほったらかしにして書斎を飛び
出し、女性用のシャワー室へ直行した。
「叱る理由があるとすれば・・・、今だな・・・」
勢い良く開けられた扉が再び静かに閉まる光景を眺めながら、木崎はため息交じりで呟くのだった。
「ところでさ・・・」
凛子が去った後、晴人が唐突に話を切り出した。
「仁藤と真由ちゃんは今何処に? 二人にも話を聞いてもらいたいんだけど?」
「あの二人なら、朝食を食べに街に出かけているはずだが・・・。少し遅いな・・・」
木崎は高級そうな腕時計で時刻をチェックしながら晴人の疑問に答える。
時計の針は昼時を示していた。
二人が飛び出していったのが朝8時ごろ。朝食にしては時間が掛かりすぎている。
「もしや、何処かで道草でも食っているんじゃないだろうな」
「まさか。仁藤一人ならともかく、真由ちゃんが一緒なんだ。ありえないよ」
度度呆れ顔を見せる木崎に、晴人は苦笑しながら言った。
「・・・だといいがな」
聞こえるか聞こえないか、微妙な声量で不機嫌そうに呟きながら、木崎はまた湯のみ茶碗のお茶を静かに
啜った。
仁藤攻介と稲森真由が帰ってきたのは、それから数十分後のことだった。
コンコンとノックする音が聞こえ、開いた書斎の扉から二人が姿を現した。
「すみません。遅くなりました」
最初に部屋に入ってきた真由は、ペコペコと申し訳無さそうに頭を下げてきた。
「わりぃな、遅れちまって! 色々と野暮用ができちゃってよぉ〜」
続けて入ってきた攻介は、相変わらずの態度で詫びる様子もなく鼻の辺りをポリポリ掻きながらニコニコと
笑っていた。
「やっと帰ってきた。おかえり〜」
そんな二人を、晴人は笑顔で迎える。が、
「随分長い朝食だったな。何処まで行ってたんだ?」
一方の木崎は、先ほど晴人と凛子に見せた射抜くような鋭い視線を眼鏡越しに二人に向けていた。
しかも今度は冗談ではなく、本気の睨みつけ。
「ゴメンなさい。本当にいろいろあったんです! じつは・・・」
真由が木崎の視線に怯えながらあたふたと事情を説明しようとしていた。と、その時、
「あれ? 後ろのその子達は?」
何かに気づいた晴人が真由の背後を指差した。
よく見ると、真由と攻介の後ろにもう二人、黒いゴス衣装の少女とチャラ男風の少年が肩身狭しと立って
いた。
「おいっ! 遅れてきた上に無関係者を署内に入れるとはどういうつもりだ?」
木崎の怒りのボルテージが沸沸と上昇していく。
晴人は「まあまあ」と、机から身を乗り出さんばかりの木崎を治めながら、
「真由ちゃん、説明してくれるよね?」と、真由に笑顔を向けて言及を求めた。
「は、はい! もちろん!」
真由はコクコクと大きく首を縦に振りながら返事をした。
その様子を、攻介は隣で若干申し訳無さそうに見ていた。
なんだか真由ちゃん一人に面倒ごとを押し付けてしまう流れになってしまった・・・。
俺が朝食に連れ出したばっかりに・・・。
そんな自責の念を誤魔化すように、攻介は少し俯きながら頭を掻くのであった。
- 四十六. 書斎にて ( No.53 )
- 日時: 2015/02/05 15:16
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
真由は眼前で机に寄り掛かるような姿勢で椅子に座っている木崎と、その隣で腕組しながら立っている晴人
に真っ直ぐな瞳を向けると、軽く深呼吸して心を落ち着かせてから口を開いた。
「えっと、この二人は野座間 友子ちゃんと神宮・・・」
「ジェイク!! ・・・です!」
「・・・えと、ジェ、ジェイク君。二人は新・天ノ川学園高校に通う高校生です」
今まで沈黙していたジェイクが突然大声を上げたことで、開始早々出鼻を挫かれたが、真由は改めて説明を
続けた。
「実は私と仁藤さんは、先ほどまで複数のファントムを操る謎の怪人と戦っていました。彼らとはその
現場で出会いました」
「ファントムを操る怪人?」
晴人が真由の発言に首を傾げる中、傍では木崎が真由の説明を聞き逃さぬよう黙々とメモを取っていた。
「その怪人というのが、不思議な力を使う初めて見る奴で、多分、ファントムとは別の存在だと思いますが、
そいつが市内のサッカー場で何かをしているところに、私と仁藤さんは遭遇しました」
「不思議な力、とは一体なんだ?」
ペンを走らせていた手を止め、木崎が顔を上げて尋ねる。
「私が見た限りだと、まず、ファントムを生み出す力。しかも複数体。あとは私達と同種の魔法を使用する力」
「ファントムを生んで魔法を使う怪人・・・。心当たりがないな・・・」
口元に手を当て、考え事をするような仕草を見せる晴人。と、そこへ、
「すいませぇん、お待たせしちゃってぇ〜。・・・あれっ? もう皆揃って、ひょっとして会議も始まっちゃ
ってます?」
熱いシャワーを浴びて綺麗サッパリ気分爽快の大門凛子が、恐る恐る扉を開けて戻ってきた。
書斎にいるメンバー達の視線がほぼ一斉に凛子に集中する。
首に真っ白なバスタオルを巻いて、ちゃっかり服装も新しく清潔なものに着替えられている。
昨晩、森の中を駆け回って泥だらけになった服を着続けるのがよほど嫌だったのだろう。
「あの、見慣れない子達がいますけど、彼らは?」
友子とジェイクの存在に気づいた凛子は、木崎や晴人、真由や攻介の顔をキョロキョロと何度も往復する
ように見ながら、「誰か教えて?」と、言わんばかりに回答を求めた。
そのリアクションの意味に気づいた真由が返答しようと言いかけたが、
「教えなくていい! 同じ説明を繰り返すのは時間の無駄だ!」
と、その直後に木崎の一喝が言葉を遮った。
「話が始まったタイミングにその場にいなかったお前が悪いんだ、大門凛子。その子達については会議の後
で誰かに聞くんだな」
そう言うと木崎は、「怪人の話を続けろ」と、真由に説明の再開を求めた。
「はい。私が確認した範囲で詳細を語らせてもらいますと、ファントムを生み出す力については、黄緑色の
光を発すること。それから、生み出されたファントムはどの個体も過去に一度確認され、既に倒されているはず
の顔触れでした」
「生み出されたファントムは、どれも過去に一度事件を起こしているということか・・・。稲森真由、その
ファントムをリストに上げられるか?」
「私が過去に遭遇しなかったファントムもいましたが、国安がまとめたファイルには目を通してありますので
、問題ありません」
「よし。なら言ってみろ」
「はい。まず、昔、瞬平君を絶望させようとしていたヘルハウンドという名のファントム」
「ん?」
ヘルハウンドの名を聞いた途端、思い当たる節があるように晴人の表情が変わった。
そして、凛子もまた、何かを考えるように真剣な顔つきを見せていた。
真由は話を続ける。
「あとは譲君と、彼の知り合いの朱里さんを襲った風使いのシルフィと、晴人さんのご友人の篠崎和也さんを
狙ったバハムート。今回、私達が遭遇したファントムはこの三体でした」
真由の説明を聞きながら、木崎はファントムの名前と詳細をしっかりとメモ帳に書き記していく。
そんな中で、何かを思った晴人が言及する。
「真由ちゃん、今、ヘルハウンドって言ったよね?」
「はい」
「俺、そいつとは昨日戦ってるんだよね・・・」
「本当ですか?」
「ああ。しかも、瞬平を絶望させようとした時と同じテレビ局で」
と、真由と晴人が会話をしていると、今度は凛子が晴人に視線を向けて「ねえ、晴人君」と、尋ねてきた。
「話が途中からだから理解し切れてないんだけど、今話してるのって昨日テレビ局に現れたファントムの
ことよね?」
「そうだけど?」
「もしかして、昨日話したそのファントムとは別に目撃されたもう一体の怪物とも関係あったりするの
かしら?」
「別の? あ〜、そういえばそんなこと言ってたね」
晴人が昨日の凛子との会話を思い出しながら頷いていると、
「ひょっとして・・・」
と、真由が声を上げた。
「真由ちゃん?」
「どしたの?」
同時に視線を向けてくる晴人と凛子に対し、真由は言葉を続ける。
「凛子さんの言うその怪物って、もしかして私と仁藤さんが出会った怪人のことでは?」
「たしかに、テレビ局で聞いた目撃者の話でも、怪物がファントムを生み出した・・・みたいなことを言って
いたわ」
「ふむ、まだ決定的とは言えないが、昨日のテレビ局の事件の裏で暗躍している怪物とサッカー場に現れた
怪人は、ほぼ同一と見て間違いないかもしれんな。・・・しかし、ならばその怪人の目的はなんだ? ただ
死んだファントムを復活させるだけが目的とは思えんが・・・」
交錯する会話の中で、木崎は情報を整理させるが、事件の根底が見えないまま、話は行き詰る。
晴人や凛子、真由や木崎が考え込み、沈黙する中、
「あの白服・・・」
ふと、攻介が呟きだす。
「ん? どうした、仁藤」
「いや、俺達が笛木の屋敷で出会った白服の男、あいつもこの件に噛んでんのかなぁって思ってさ」
「白服・・・。昨日、研究所で会った奴らか。なんか変なメモリやスイッチでドーパントやゾディアーツに
変身していたけど、あいつ等も一体何なんだろうな?」
「その白服の集団については少し調べた」
晴人と攻介がさらに深刻になって考えていると、二人の会話を聞いていた木崎が口を開いた。
「とは言っても、大した情報は得られなかったがな。・・・あの白服の集団、奴らは財団Xと呼ばれる組織
の連中だ。詳しくは分からないが、世界中で暗躍している大規模な組織のようだ」
「財団X・・・ねえ。なんだか話がどんどん大きくなっていく気がするなぁ」
ため息交じりで晴人が言う。
「でも、このまま敵の目的も正体もわからないと、私達、手も足も出ないわよ?」
凛子も不安そうな表情を浮かべながら、言葉を漏らす。
再び書斎内に沈黙が流れる。
暫くの間、誰もが口を閉じ、顔を俯かせていると、意外な二人が沈黙を破った。
「あの、ちょっといいですか?」
「俺達、ひょっとしたら皆さんのお役に立てるかも・・・。なんて思っちゃったりなんかして」
友子とジェイク。
今まで完全に蚊帳の外だった二人。
明らかに部外者だった二人が口を開く。
- 四十七. 突破口を持つ二人 ( No.54 )
- 日時: 2014/09/01 18:47
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
周りの視線が集中する中、友子とジェイクは恐る恐る木崎の机の前に立つ。
「あなた達!?」
二人の思わぬ行動に、真由は戸惑いを覚える。
晴人や凛子、攻介すらも予想外の展開に困惑の表情を隠せないでいた。
今回の事件、魔法や怪物が絡む事件に、まったく無関係な一学生二人が、一体何を言おうというのか。
「なんだ? 今大事な話をしているんだが?」
眼鏡をキラリと光らせ、木崎の冷徹な一言が炸裂する。が、
「いやぁ、実は俺達、学園では仮面ライダー部っていう部活動をしてるんスよぉ」
ジェイクはそんな木崎の醸し出す威圧感には物ともせずに、いつもの軽い調子で口を開く。
その傍らでは、友子がオドオドした様子で晴人の前に立っていた。
「えと、俺に何か用かな・・・?」
友子が放つ独特の黒いオーラに、晴人は思わずたじろいでしまう。
「あの、仮面ライダー・・・ウィザードさん、ですよね?」
「えっ!? そうだけど、どうしてそれを?」
友子の口から飛び出た思わぬ発言に、驚きの表情を見せる晴人。
「弦太郎さんから聞きました。宇宙鉄人の事件の時、ウィザードという仮面ライダーとダチになったって。
あの時助けてくれたお礼を、ずっと言いたいと思っていたんです」
「そんな、気遣わなくていいのに。そっか、君達、フォーゼの知り合いか」
「はい。魔法を使う仮面ライダーに会えて、私感激です」
そう言った友子の瞳は、普段の暗い印象とは見違えるほどにキラキラと輝いていた。
その姿を見た晴人は、何かを確信したようにコクッと頷くと、
「大丈夫。この子達は信用できるよ。話を聞こう」
と、疑念の眼差しを向ける仲間たちに言い放った。
「いいのかよ? 晴人」
「ああ。どうやらこの二人も、俺達と同じような立場にいるらしい」
「晴人君がそう言うなら・・・」
こうして、晴人の説得もあり、他のメンバーも友子とジェイクの話に耳を傾けることにした。
「それじゃあ、話を聞かせてもらおうか? 君達仮面ライダー部の二人が、一体どのようにして我々の役に
立ってくれるというのだ?」
相変わらずトゲのある木崎の言い方だが、言葉のとおり、確かにこの場にいる誰もが友子とジェイクの話が
気になっていた。
一見事件に無関係な学生二人の口から、どんな話が飛び出すというのか。
最初に口を開いたのは友子だった。
「実は、私達も関わったことがあるんです。財団Xと・・・」
「・・・どういうことだ?」
無表情のまま、木崎は尋ねる。
「私達が通う天ノ川学園にも、かつては怪物が蔓延っていました。ゾディアーツという怪物・・・」
「ゾディアーツ。あの身体に星座を刻んだ怪人のことか。あれは君達の学校の出生か?」
晴人の脳裏に、前日戦った星座の怪人の姿が浮かび上がる。
ペルセウス・ゾディアーツとクロウ・ゾディアーツ。
「元々はそうです。でも、かつてゾディアーツを作り、学園を支配していた人間は既にこの世にはいません。
代わりに今ゾディアーツの力を悪用しているのが・・・」
「その、財団Xというわけか」
「はい」
「財団Xは・・・」と、今度はジェイクが語りだす。
「学園でゾディアーツの源となるスイッチを作っていた人間に、裏で資金援助を行っていたらしんスけど、
当時の俺らにはそれ以上のことは分からなかったんです。実際、俺達仮面ライダー部が対処していた問題は別
の所にありましたから・・・。でもある時、俺らが支援する仮面ライダーが組織に因縁のある別の仮面ライダ
ーと知り合いになって、ある程度の情報を知り得ることができたんです」
「その、別の仮面ライダーって?」
静かに話を聞いていた凛子が疑問を提示する。
「それを今、紹介しようと思ってたんスよ。財団Xに最も詳しく、普段は探偵業を営んでいるベテランの仮面
ライダー・・・」
ここで再び友子が言葉を引き継ぐ。
「風都の探偵、仮面ライダーダブル。彼らに依頼すれば、きっと皆さんのお力になってくれると思うんです」
「風都の仮面ライダー・・・か。話なら聞いたことがあるな。もう一人の赤い仮面ライダーと共に、街で起こ
る数々の怪事件を幾度も解決してきたとか・・・」
木崎は過去に閲覧した、風都署から定期的の届けられる事件ファイルのことを思い出す。
ファイルの中にある報告書には、決まって仮面ライダーと名づけられた二色の謎の戦士のことが表記されて
いた。
「実は、ある伝で入手したその仮面ライダーダブルに繋がる名刺が、ここにあったりして」
そう言ってジェイクは、二本の指で挟んだ白い名刺をカッコをつけて取り出した。
木崎は名刺を受け取り、そこに記された内容を読み上げる。
「鳴海探偵事務所、左・・・翔太郎。これが仮面ライダーダブルの正体、というわけか?」
「他言無用でお願いしますよ? 言触らされでもして、弦太郎さんの友達に迷惑かけたくないっスから」
「当たり前だ! 私は警察だ。そんなマネするわけないだろう!」
ジェイクの軽い言動に、木崎は言葉を荒らげる。
そんな二人のやり取りを、晴人や凛子、真由や攻介は微笑みながらじっと眺めていた。
さっきまで緊迫していた書斎の雰囲気が、ようやく少しほぐれる気がした。
仮面ライダーダブルという逆転の糸口も見え始め、緊張が緩んだのか、リラックスした表情を見せ始める
メンバー達。
しかしそこへ、突然誰かの携帯電話が鳴り出した。
友子の携帯電話だった。
友子は手さげカバンから携帯電話を取り出し、画面を確認する。
電話の相手は部活動の元先輩であり大切な友人の一人、今回の事件の調査を依頼してきた歌星 賢吾だった。
「賢吾さん?」
大学の研究発表が控えているから忙しいと言っていたのに、このタイミングで連絡とは何かあったのだろ
うか。
友子は首を傾げながらも電話に出ることにした。
「もしもし?」
『もしもし? 野座間か? 良かった、連絡が取れて』
「なにかあったんですか?」
『ああ。野座間お前、ツナゲットを起動させただろう? その映像がこっちに届いてるんだ』
「映像? ・・・あっ!」
友子は携帯電話を耳に当てたまま、サッカー場で行方をくらましたメモリー・ドーパントの追跡を、ツナゲ
ット達に頼んだことを思い出した。
『映像を見て驚いたぞ。ここに映っているのは、財団Xの連中じゃないか!』
「えっ!?」
『とにかく、お前のタブレットに映像を送るから、まずはそれを確認してくれ』
賢吾がそう言ってから束の間、言葉通り友子が愛用するタブレットにツナゲットが録画した映像が届く。
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