二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 仮面ライダーウィザード〜終幕の先〜【完結】
- 日時: 2017/04/15 00:31
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: XGjQjN8n)
こちらでは初めて投稿させていただきます、裕と申します。
今回はこの場を借りて、平成仮面ライダーシリーズ第二期から
「仮面ライダーウィザード」の物語を積み上げてみたいと思います。
個人的解釈としましては、第二期である「ダブル」〜「鎧武」までの作品は、同じ世界観だと思って見ております。なので、今回の物語もそれに沿った流れで書いていこうと思います。それに伴い、第二期各作品(劇場版)の設定も拝借する予定です。
物語の時間軸は「ウィザード」本編の最終回後、さらに言えば冬の映画「戦国MOVIE大合戦」の後の話だと思っていただけると幸いです。
ではでは。
〜登場人物〜
・魔法使いとその関係者
操真晴人=仮面ライダーウィザード
仁藤攻介=仮面ライダービースト
稲森真由=仮面ライダーメイジ
奈良瞬平
大門凛子(国安ゼロ課・刑事)
木崎政範(国安ゼロ課・警視)
ドーナツ屋はんぐり〜・店長
ドーナツ屋はんぐり〜・店員
・財団X
シオリ・カナ(栞 可奈)=仮面ライダーサクセサー
ヤマト=メモリー・ドーパント
ネオン・ウルスランド(局長)
・宇宙仮面ライダー部
野座間友子
ジェイク(神宮海蔵)
仮面ライダーフォーゼ
・鳴海探偵事務所
左 翔太郎=仮面ライダーダブル(左サイド)
フィリップ=仮面ライダーダブル(右サイド)
・怪人
サザル=ファントム・グレンデル
ファントム・ラミアー
ファントム・ヘルハウンド(ログ)
ファントム・シルフィ(ログ)
ファントム・バハムート(ログ)
ファントム・メデューサ(ログ)
グール
クロウ・ゾディアーツ
ペルセウス・ゾディアーツ
黒ネコヤミー
オールド・ドーパント
マスカレイド・ドーパント(白服)
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
- 三十八. 記憶の怪人 ( No.45 )
- 日時: 2014/04/07 08:25
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
緑の芝生がビッシリと敷き詰められたサッカー場のフィールド。
そこらじゅうにサッカーボールが幾つも転がっていることから、さっきまでこの場所に複数の人間がいたの
は間違いないようだった。
しかし今、攻介と真由の眼前にいるのは、人間とはかけ離れた容姿をしている不気味な怪人ただ独り。
その怪人の姿は、全身黄緑色で、頭部の半分以上が露出した脳みその形をしていた。
さらに、その脳みその頭からは無数のプラグコードのような触手がまるで髪の毛のように肩まで
伸びていた。
「ファントム・・・か?」
「多分違いますね。またファントムじゃない、別の何か」
攻介と真由が怪人の姿を捉えたまま動かずにいる中、怪人の方は二人に気づいた様子も無く、背を向け
て何かをしているようだった。
頭部から伸びた無数の触手のうちの何本かを芝生のフィールドに突き刺し、ジッとそのまま動かないで
いる。
「何してんだ? アイツ・・・」
周囲を気にせずに黙々と作業に集中しているように見える怪人の姿に、攻介は思わず首を傾げた。
その光景は隙だらけとしか言いようがない。
攻撃してくださいと言っているようなものである。
「頭から伸びたケーブルを地面に刺してるみたいですけど・・・」
真由は確認も兼ねて見たまんまの様子を口にしてみた。
「まあどうせ、ろくでもないことに決まってんだろうけどな!」
そう言いながら、攻介は左中指に魔法の指輪をはめ込んだ。
戦う気満々だった。
「おい化け物! いい加減こっちに気づけ!」
このまま相手が気づかないうちに変身して不意打ちを仕掛けることもできたのだが、それだと卑怯者みたい
で気が引ける。やっぱり男は正々堂々、正面からぶつかるもんだろうと、攻介は己の戦いの美学に則るべく、
あえて油断している怪人の背中に声をかけて、自分達に気づかせた。
攻介の声に怪人はビクリと肩を震わせ、慌てて背後を振り向いた。
その際、咄嗟に体全体を動かしたことにより、フィールドに刺していた触手が全て抜けてしまっていた。
「お前達は! 確かビーストとメイジ・・・」
それが怪人=メモリー・ドーパントが攻介と真由の前で口にした最初の言葉だった。
その声はメモリー・ドーパントの醜い容姿からは想像できないほどの若々しい男性の声だった。
声変わりする前の高校生のような若干子供っぽさを感じさせるほどの美声であった。
しかし、攻介と真由が気になったのは怪人のミスマッチな声よりも、その声で発した言葉の方だった。
変身する前にも拘らず、自分達のことを“ビースト”と“メイジ”と呼んだのだ。
初対面したばかりだというのに、何故自分達の正体を知っているのか。
「てめぇ、なんで俺達のことを・・・。何か知っているなら、じっくり聞かせてもらおうか!」
攻介のメモリー・ドーパントを捉える視線が鋭くなる。
「あの怪物が昨日の連中と関係あるのなら、情報を得るチャンスですね!」
真由も遣る気だ。
『ドライバーオン!』
『ドライバーオン・ナウ』
二人は右中指の指輪を簡略化した腰のバックルにかざし、変身ベルトを実体化させた。
「変〜身!!」
攻介は頭上に上げた左手をゆっくりと下ろし、腰を低くした直後に左中指の指輪をベルトのスロットに差
し込んだ。
『シャバドゥビタッチヘンシーン シャバドゥビタッチヘンシーン』
「変身!!」
呪文のような待機音声が鳴る中で、真由はその場で体をクルッと回転させてから左中指の指輪をベルトの
掌の紋章にゆっくりとかざした。
『セット!オープン!L・I・O・Nライオーン!』
『チェンジ・ナウ』
二人は同時に出現したそれぞれの魔法陣を潜り抜け、攻介はビーストに、真由はメイジへと姿を変えた。
「さあ、ランチタイムだ!」
「終わりの時よ!」
ビーストとメイジは、決め台詞と共にメモリー・ドーパント目掛けて駆け出していく。
「ちっ! あと少しで終わるんだ。余計な邪魔はやめてくれ!」
そう言い放つメモリー・ドーパントは、二つの黄緑色の光を両手に作り出し、ビーストとメイジの前
に解き放った。
二つの黄緑色の光は、一瞬のうちに人型に変化すると、直後に二体のファントムに実体化し、ビーストと
メイジに襲い掛かってきた。
「なにっ!?」
「あの怪人、ファントムを生み出した!?」
突如出現した二体のファントムに、ビーストもメイジも戸惑いを隠せなかった。
メモリー・ドーパントが放った光から生まれた二体のファントム、それはいずれも過去にウィザードや
ビーストと戦って倒されているはずの奴らだった。
一体は一年以上前、そしてつい昨日、ウィザードが二度も倒したはずのファントム・ヘルハウンド。
そしてもう一体は、ビースト=攻介にとっては因縁の相手ともいえるファントム、風使いシルフィである。
「なんでコイツが出てくるんだよ!?」
戸惑い続けるビーストだが、薄い水色ボディのシルフィがそんなことはお構い無しに飛び掛ってきた。
かつて、攻介と友達になった少年、飯島譲がこのシルフィに襲われたことがあった。
シルフィに大切な人を傷つけられ、一時は絶望しかけたが、譲は心の強さでそれを乗り切った。
しかしその結果、譲は真由と同じく魔法使いメイジとしての運命を背負うことになってしまった。
攻介にとって譲は弟のような存在だった。
だからこそ、彼には普通の人間として平穏に生きていてほしかった。
できればファントムとの戦いに関わってほしくなかった。
シルフィは譲が魔法使いになるきっかけを作ったファントムとして、攻介の中では憎まずにはいられない
存在になっていた。
ウィザードと協力して倒したはずなのに、何故また目の前に存在しているんだ?
ビーストの心の中に、かつての憎しみの炎が沸々と再燃する。
バックルの中心から専用武器ダイスサーベルを抜き取り、向かって来るシルフィを弾き飛ばす。
「真由ちゃん、コイツは俺に食わせてくれ!」と、既にヘルハウンドと交戦中のメイジに告げると、
「どういう理由で蘇ったか知らねぇが、今度こそ確実に倒す!」
ビーストはサーベルの先端をシルフィに向けて意気込みを見せるのだった。
- 三十九. 非常食 ( No.46 )
- 日時: 2014/04/09 07:07
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
サッカー場の正面入り口前。
新・天ノ川学園高校の生徒、野座間友子とジェイクは人の気配が無い駐車場の中にいた。
駅前で感じた友子の絶対的な直感を頼りにここまで歩いてきたのだ。
「なぁんか妙っスねぇ。サッカー場なのに誰もいないなんて・・・」
チャラ男風の男子生徒、ジェイクは誰一人いないこの場の状況を不思議に思いながら周囲を見渡していた。
駐車スペースには何台もの自動車が停まっている。周りのアスファルトの上にはポイ捨てされたゴミや
落し物らしきバッグや財布なんかも転がっていた。
少なくとも自分達が到着する以前に、この場に人がいたのは間違い無さそうだった。
「どうする友子ちゃん?」
さっきから立ち止まったまま動かないでいる友子にジェイクは声をかけた。
サッカー場に着いてすぐ、友子は再び何かを感じ取ろうと神経を集中させていた。
ジェイクの言葉に反応することも無く、目を閉じてジッと立ち尽くしている。
どうしていいのかわからないジェイクは、友子の隣でポリポリと頭を掻いた。
と、その時、友子の両目がカッと見開かれた。
駅前でやってた動作と同じだった。
「感じた・・・。あそこ、スタジアムの中。あの中に複数の強い力を感じる・・・」
と、友子は正面入り口のゲートを指差した。
「スタジアムの中? 誰かサッカーでもしてんのかなぁ〜。とりあえず入ってみよっか!」
ジェイクは冗談交じりに言うと、先導するように歩き始めた。
友子もジェイクの後を追うように歩を進めだした。
スタジアム内に入り、奥のフィールドに向かって薄暗い通路をゆっくりと歩いていると、視線の先から
複数の声が聞こえてきた。
喋り声のようなものも混じっているが、そのほとんどは、例えば格闘家なんかが技を繰り出す際に発する
ような、気合を込めたえい声だった。
「奥で誰かが戦ってる・・・?」
隣を歩くジェイクと顔を見合わせながら、友子は首を傾げた。
友子もジェイクもこういうえい声は部活動で聞き慣れていた。
友達の如月弦太郎=仮面ライダーフォーゼや朔田流星=仮面ライダーメテオの戦いぶりを今まで何度も
目で見て耳で聴いて、その身で体感してきたのだ。
戦場慣れしている二人は、この先で戦闘が繰り広げられていることを経験からくる直感ですぐに理解した。
友子とジェイクは足早に進み、フィールドを取り囲む観客席に出た。
日差しの眩しさに、二人は思わず日の光を手で遮った。
清清しい青空が視界に飛び込んでくる中、友子とジェイクは眼下に広がる緑色のフィールドに視線を向
けた。
すると、その目に映ったのは五人の人影。三体の怪人と二人の戦士の姿だった。
二人の戦士がそれぞれ一体ずつ怪人と戦っており、その様子をもう一体の怪人が観覧するように立ち尽く
している。
「何だあれ!? どの怪人もゾディアーツじゃないような・・・。それに、怪人と戦ってる人達って・・・」
フィールド上で繰り広げられている状況に驚くジェイクを尻目に、友子は静かに呟いた。
「・・・・・仮面ライダー?」
友子とジェイクが見守る中、ビーストとメイジは復活した二大ファントムとの戦いを続けていた。
ビーストは憎きファントム・シルフィを相手に苦戦を強いられていた。
魔力の消耗が限界を迎えていたのだ。
ただでさえ、グレムリンの消滅とオーガの出現を皮切りに、ファントムが減少しビーストキマイラに魔力を
与える機会が減っていたにもかかわらず、前日のクロウ・ゾディアーツとの戦闘で相当の魔力を消費してしま
っていた。
そんな中、さらにここへきての戦い。
もはや、変身を維持するだけの魔力しかビーストには残されていなかった。
一方的にシルフィの攻撃を受け、体力までも削ぎ落とされていく。
「ちくしょ・・・。 身体が思うように動かねぇ・・・」
芝生に倒れ伏し、立ち上がることもままならない状態だった。
「くっ・・・。仁藤さん!」
ヘルハウンドと攻撃を交えながら、メイジはビーストの安否を気にかけていた。
剣を握り締めたヘルハウンドの斬撃を左腕のスクラッチネイルで受け止めながら、ビーストに視線を送る。
その様子を、メモリー・ドーパントは立ち尽くしながらジッと見ていた。
いや、正確には頭部から伸ばしたプラグコードのような触手を、フィールドに突き刺しながら見ていた。
ビーストとメイジの相手を生み出した二体のファントムに任せ、メモリー・ドーパント自身は目的を
果たすための作業を再開していたのだ。
「・・・仕方ねぇ。取って置いた最後の非常食、使うしかねぇか・・・」
ビーストは膝を付きながらもなんとか体を起こすと、懐から不思議な形の果実を一つ取り出した。
それは以前、オーガが倒された直後に現れた武神鎧武の配下、ウツボカズラ怪人に攫われた際に迷い込んだ
ヘルヘイムの森で狩り取った謎の果実だった。
攻介はヘルヘイムの森に迷い込んだ際、「キマイラがこの果実を気に入った」という理由で大量に採集し、
魔力に困った時の非常食にしていたのだ。
「最後の一つだ・・・。味わって食えよ!」
ビーストが手に取ったヘルヘイムの果実を空中に放り投げると、次の瞬間、果実は光の粒となり、さらに
魔法陣へと形を変えてベルトのバックルに吸引されていった。
ゴックン、と飲み込む音が聞こえたかと思うと、直後に全身に魔力がみなぎっていくのをビーストは感じ
ていた。
「おっしゃあああ!! キタキタキター! 魔力が戻ってきたぜぇ!」
ビーストの完全復活だった。
- 四十. VS再生ファントム ( No.47 )
- 日時: 2014/04/10 07:19
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
魔力を取り戻したビーストは反撃に出た。
ダイスサーベルを片手に、眼前のファントム・シルフィ目掛けて駆け出していく。
ビーストの動きに警戒したシルフィは、長い斧状の武器を手にしてそれを迎え撃つ。
「へっ! 今なら一度倒したてめぇなんかに負ける気はしねぇ!」
ビーストは勢いよく振り下ろしてきたシルフィの斧をダイスサーベルの刀身で受け止めると、隙ができた
敵の腹部をすかさず蹴り込んだ。
「ブフッ・・・」
体勢を崩したシルフィはその場でよろめく。
ビーストは追い討ちをかけるようにシルフィの身体に二度三度斬撃を加え、さらに強力なハイキックを
お見舞いしてやった。
派手に蹴り飛ばされたシルフィは芝生の上を転がり、ゴールネットの前で倒れ伏した。
「このまま一気にキマイラの餌にしてやるぜ!」
再び立ち上がろうとするシルフィを前に、ビーストは得意げな態度を見せていた。
その傍らでは、メイジがファントム・ヘルハウンドを相手に善戦していた。
華麗なフットワークでヘルハウンドの剣撃を回避し、隙あらば飛び蹴りや回し蹴り、さらにはスクラッチ
ネイルによる切り裂き攻撃で確実にダメージを与えていた。
ドラゴンの力を解放したウィザードの上位形態並みの戦闘力を持つメイジにとって、ヘルハウンドは敵では
なかった。
ヘルハウンドはよろめきながらも掌から火炎弾を連射し、苦し紛れの抵抗を見せる。
メイジは右中指の指輪を付け替え、余裕で対応する。
『バリアー・ナウ』
前面に展開した光の障壁が、火炎弾を全て防御する。
障壁を張りながら、メイジはあることに気づいた。
ふとヘルハウンドから視線を逸らしてみると、いつの間にか作業を再開しているメモリー・ドーパントの
姿が目に映った。
「あの怪人、またケーブルを地面に刺してる・・・。仁藤さん!」
メイジはシルフィを相手に戦いを続けるビーストを呼び、阿吽の呼吸でメモリー・ドーパントの行動を
気づかせた。
「アイツ! いつの間に・・・。こりゃあモタモタしてる場合じゃないな!」
シルフィに攻撃しながら、ビーストもメモリー・ドーパントの行動を理解した。
自分達の戦いを余所に、メモリー・ドーパントは触手をフィールドに刺して黙々と作業をしていた。
ビーストはサッサとファントムとの戦いに決着をつけて、メモリー・ドーパントの妨害をすることにした。
右中指に獅子の顔が描かれた指輪、ハイパーウィザードリングをはめ込み、ベルトの右サイドのシリンダー
にそれを差し込んだ。すると、
『ハイパー!GO!ハイッハイッ・ハイ・ハイパー!』と、相変わらずのハイテンションな音声と共に、魔法陣
からビーストキマイラの幻影が出現し、ビーストと重なるように一つになった。
次の瞬間、ビーストの姿は金色とコバルトブルーを基調とした強化形態、ビーストハイパーへと進化した。
ビーストハイパーは右手に握られた銃型の専用武器、ミラージュマグナムの銃口をシルフィに向けると、
トリガーを引いて光弾に変換された魔力の塊を何発も連射した。
「ショッ!? ショォアアアアア!」
シルフィは不気味な唸り声を上げながら全身に風を纏うと、逃げるように上空へ飛び上がった。
「逃がすかよ! 大人しく餌になりやがれぇ!」
ビーストハイパーは右中指のハイパーウィザードリングの獅子の顔を口を開けた状態にスライドさせると、
ミラージュマグナムのリングスロットにそれを差し込んだ。
『ハイパー!マグナムストライク!』
その瞬間、ミラージュマグナムに備え付けられた魔法の鏡にビーストキマイラの顔が浮かび上がり、ビースト
ハイパーはその状態で、上空にいるシルフィに再び銃口を向けて狙いを定めた。
トリガーを引いた瞬間、銃口から巨大なビーストキマイラの幻影が発射された。
幻影そのものが銃弾として撃ち出されたのだ。
シルフィは慌てて風に乗って逃走を試みる。
しかし、ビーストキマイラの幻影は素早く、さらにしつこくそれを追いかけた。
まるで空を走るかのように飛びながら吠え続け、そして追いついた瞬間、シルフィは獣に噛み付かれるよう
に幻影に飲み込まれた。
「ショォアアアアア・・・・・」
悲鳴と同時に爆発四散。シルフィの魔力が魔法陣となってビーストハイパーのバックルに吸引された。
「よっしゃっ! ごっつあん!」
ビーストハイパーはごちそうさまの要領で両手を合わせるのだった。
ビーストハイパーがシルフィを撃破した頃、メイジとヘルハウンドの戦いもクライマックスを迎えていた。
『エクスプロージョン・ナウ』
メイジが放った魔法陣から爆発が発生し、ヘルハウンドを吹き飛ばす。
「ギエエエエエ・・・」
芝生の上を転がるヘルハウンドに、メイジは容赦なく追い討ちをかける。
『コネクト・ナウ』
魔法陣から取り出したウィザーソードガン・ガンモードを構え、何発もの銀色の弾丸をヘルハウンドに
浴びせていく。
戦いの流れはもはや一方的。ヘルハウンド程度では、真由が変身したメイジとは力の差が歴然だった。
メイジは白い鎖で相手を拘束する『チェイン』の魔法を発動させ、ヘルハウンドの動きを封じると、
「これで終わりよ!」と、宣告すると同時に右中指の指輪を付け替えた。
ベルトのサイドレバーを上下させ、掌の紋章に指輪をかざす。
『イエス!キックストライク!アンダースタンド?』
ベルトから音声が流れ、メイジの右足に魔力が蓄積される。
メイジは体勢を低くして構えを取った直後に、地面を蹴って跳躍した。
そして、身動きが取れないヘルハウンド目掛けて魔力が宿った渾身の飛び蹴りをお見舞いした。
足先が触れた刹那、ヘルハウンドの肉体は崩壊し、弾け飛ぶように爆発した。
爆炎をバックに、メイジは芝生の上に静かに着地した。
- 四十一. 三体目のファントム ( No.48 )
- 日時: 2014/04/12 07:33
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
二体のファントム、シルフィとヘルハウンドを撃破したビーストハイパーとメイジの戦闘力に、メモリー・
ドーパントは驚愕していた。
「まさか・・・、再現したファントムが、こうもあっさりと倒されるとは・・・」
頭部から伸ばした触手をフィールドに刺して、目的のための作業を続けながらも、魔法使い達の戦いぶり
を熟視せずにはいられなかったのだ。
「ファントムは倒した。次はてめぇだぜ、脳みそ野郎!」
「何をしているのかわからないけど、あなたの行い、阻止させてもらうわ!」
邪魔者を消し去り、次はお前の番だと言わんばかりに、ビーストハイパーとメイジはメモリー・ドーパント
の前に立ちはだかる。
強圧的な態度でジリジリと詰め寄る二人だったが、思いの外、メモリー・ドーパントは余裕の表情を浮かべ
ていた。
いや、実際は顔の上半分、人間で言えば頭のてっぺんから鼻の辺りまでが露出した脳みそに飲み込まれてい
るので正確な表情を読み取ることは不可能に近いのだが、唯一人間と同じ形状をしている口元がニヤリと微笑
んでいたのだ。
追い詰められたつもりは無い。そう言いたげな表情だった。
その態度が気に障ったのか、「あ? なに笑ってんだてめぇ!」と、まるでヤンキーのような口ぶりでビー
ストハイパーはミラージュマグナムの銃口をメモリー・ドーパントに向けた。
隣では、メイジが右手の指輪を付け替えて、いつでも敵の動きに対処できるようにとスタンバイしていた。
そんな二人に、メモリー・ドーパントは笑みの理由を語る。
「悪いけど、ギリギリ間に合ったようだ。この場に残留した魔力の記憶は、しっかりと回収させてもらったよ」
「は? なんのことだ?」
「魔力の記憶?」
メモリー・ドーパントの意味深な言葉に、ビーストハイパーとメイジは首を傾げる。
と、その瞬間、油断した二人に一瞬の隙が生まれた。
その間にメモリー・ドーパントはフィールドに刺さった触手を全て抜いて戻し、ミラージュマグナムの照準
から逃れようと右方に横転した。
すぐさまビーストハイパーはトリガーを引いて光弾を連射するが、メモリー・ドーパントは何度も横転を
繰り返してそれを避けてしまう。
敵の動きは速く、光弾は全て命中することなくフィールド上に着弾するだけであった。
「クソッ! 身軽な奴!」
「仁藤さん、ここは私が!」
と、ビーストハイパーの銃撃を中止させ、今度はメイジが一歩前に出る。
『エクスプロージョン・ナウ』
メイジはメモリー・ドーパントの眼前に魔法陣を出現させ、爆発を発生させる。が、
今度はそれを、メモリー・ドーパントは大きくバック転することで回避して見せた。
素早い連続横転からの大ジャンプのバック転。その動きは一見すると、さながらプロの体操選手のよう
だったが、実際は極端な動きはプロ以上、人間の行動限界を超越していた。
ガイアメモリの力で強化した超人ならではの動きだろう。
着地したメモリー・ドーパントは右手に黄緑色の光を発生させた。
先ほどシルフィやヘルハウンドを生み出す際に作り出した光と同様のものである。
「回収したばかりの記憶の力、見せてあげるよ!」
そう言ってビーストハイパーとメイジに向かって光を放出する。
放たれた光はやはり人型に変化すると、一体のファントムとなって二人の前に出現した。
ファントム・バハムート。
その姿は、全身を赤いウロコに覆われた竜人のようなファントムだった。
「またファントムが生まれた!?」
驚愕するメイジ。
そしてその傍らでは、ビーストハイパーが何やら思い詰めるように、眼前のバハムートの姿を凝視していた。
そんな二人に、バハムートは容赦なく攻撃を仕掛ける。
「ウゥゥ・・・ウアッ! ウアッ!」
まるで真空を切るように両腕に生えた角を振るい、鋭い光の刃を飛ばしてきたのだ。
その数二発。
「仁藤さん、来ますよ!」
ビーストハイパーに呼声を送り、メイジは一足先に光刃の狙いから外れるように横に飛んでそれを回避した。
メイジの声で我に返ったビーストハイパーも、光刃の接近にワンテンポ遅れたものの、何とか地面を転がる
ようにアクションすることで避けることができた。
的を外れた二発の光刃は、地面を抉るように直進した後、二人の背後で爆発し消滅した。
横になった身体を起こし、体勢を立て直そうとするビーストハイパーだったが、その時、彼の脳裏にある
記憶が蘇った。
来た覚えがあるこの場所、このサッカー場、そしてあの赤いファントム。そうだ・・・。
「あ! 思い出したぁ!」
片膝を付いた姿勢で突然大きな声を出すビーストハイパーに、「な、何をですかぁ!?」と、少々ビックリ
しながらメイジは言葉を返す。
「思い出したんだよ! さっきこの場所に見覚えがあるって言ってただろ、俺。ずぅっと頭の中に引っ掛かって
たんだけど、あのファントムを見たらバッチリ思い出したぜぇ!」
ビーストハイパーはまるで悩みが解消されてスッキリしたように軽快な口調で公言すると、
「まあ、詳しい話は奴ら全員を倒した後でな!」と、付け加えて戦闘体勢をとり直した。
近距離と遠距離、両方に対応できるように右手にダイスサーベル、左手にミラージュマグナムを構える。
「たしかに・・・。まずは目の前の敵の対処が最優先ですね」
メイジもビーストハイパーの意見に同意すると、
「仁藤さん、ファントムの方をお願いしていいですか? もう一体の怪人は、私が拘束してみます」と、
プランを提案した。
「OK! じゃあ、サッサと片付けますか!」
「はいっ! 行きましょう!」
その言葉を合図に、ビーストハイパーとメイジは同時に行動を開始した。
ビーストハイパーはミラージュマグナムを射撃しながらバハムートに突っ込んでいき、メイジはバハムート
の背後に立っているメモリー・ドーパント目掛けて走り出した。
- 四十二. 魔法使いと高校生 ( No.49 )
- 日時: 2014/04/23 09:18
- 名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
観客席に身を潜めるジェイクと友子は、眼下のバトルを文字通り観客目線で見ていた。
「なんか・・・、凄いっスね」
ジェイクは目の前で繰り広げられる戦い、いつも見ていたフォーゼやメテオの戦いとはまた一味違った攻防
戦に、ただひたすら言葉を失い呆気に取られていた。
「これが噂の・・・、魔法を使う仮面ライダーの戦い・・・」
片や、一方の友子はジェイクと違い、初めて見る本物の魔法に興奮を抑えることができなかった。
オカルト趣味の彼女にとって、魔女や魔法使いの存在は永遠の憧れなのだ。
ずっと信じて疑わなかった魔法使いに遂に会えた。
これが興奮せずにいられるものかと言わんばかりに、ビーストハイパーとメイジの幻想的な姿に釘付けにな
っていた。
二人の間に流れるなんという温度差。
そんな中、何かに気づいたジェイクが突然声を上げた。
「そうだ・・・。あの人達に聞けばザ・ホールの件、何かわかるんじゃね?」
戦いに見惚れてすっかり忘れていたが、自分達は調査に来たのだった。
歌星賢吾に依頼された件、果たさぬことには帰れないのだ。
二手に分かれたビーストハイパーとメイジ。
ビーストハイパーは赤い竜人のファントム、バハムートに勝負を挑み、メイジはその背後にいるメモリー
・ドーパントを拘束するべく立ち向かっていく。
メイジは走りながらウィザーソードガン・ガンモードを連射。何発もの銀色の弾丸を撃ち出しながら、
接近を試みる。
しかし、ファントムには有効な銀色の弾丸も、ファントムではない怪人、メモリー・ドーパントには
大したダメージを与えることはできなかった。
せいぜい敵の動きを鈍らせるのが精一杯だった。
「くっ・・・」
ならばと、右手のウィザーソードガンを投げ捨てたメイジは、直接格闘戦を挑むべく地面を蹴って跳躍し、
左腕の巨大な爪、スクラッチネイルを落下の速度と共に力を込めて振り下ろした。が、
メモリー・ドーパントは紙一重でそれを回避し、メイジを上回る跳躍力で背後の観客席までジャンプ
した。
「待ちなさい!」
メイジも後を追うように跳躍して、フィールドを取り囲む観客席に着地した。
途端に構えを取り直し、一足先に着地していたメモリー・ドーパントに向かって再び攻撃を仕掛ける。
先ほどまでの平地での戦いと違い、段差状になっている観客席での接近戦は足元が悪く、さらには
足場の幅が狭いので立ち回り方にも制限が起きていた。
メイジとメモリー・ドーパントが降り立った階と同じ観客席にいたジェイクと友子は、慌ててここへ来る際
に通ってきた通路の死角に身を隠した。
戦いの邪魔になるのも巻き込まれるのもゴメンである。
「ひえぇ〜・・・。こっちまで上ってきたよぉ」
「大丈夫・・・。通路の影に隠れていれば見つからないし、邪魔にならないと思う」
二人は物陰からヒョコッと頭だけ出すと、10メートルほど離れた視線の先で繰り広げられるメイジとメモ
リー・ドーパントの戦いに注目した。
残念ながら下のフィールドにいるビーストハイパーとバハムートの姿が角度的に見えなくなってしまった
ので、近くのメイジとメモリー・ドーパントの戦いだけに集中することにしたのだ。
「この怪物、強い」
メイジが次々と繰り出す格闘術を、メモリー・ドーパントは軽々と弾き、受け止め、そして回避して見せた。
なかなか決定打を与えられない情況が続く。
しかし不思議なことに、対するメモリー・ドーパントは、メイジに一撃も攻撃を加えようとはしなかった。
繰り出される攻撃に対処するだけであった。
「あなた、何故攻撃しないの?」
「・・・・・」
メイジの質問に、メモリー・ドーパントが答えることはなかった。
じれったくなってきたメイジは攻撃を中断すると、バックステップで距離を取り、右手の指輪を付け替えた。
相手を弱らせてから拘束するつもりだったが、埒が明かない。
一気に動きを封じることにした。
『チェイン・ナウ』
前後左右に出現した四つの魔法陣から伸びた白い鎖が、メモリー・ドーパントの身体を縛り上げる。
「これであなたは動けない!」
勝ち誇ったように言うメイジ。
だが、メモリー・ドーパントは、
「いや、そうでもないさ」と、なおも余裕な態度だった。そして、
「メモリーログ! メイジ、エクスプロージョン!」
突然、自らの口で叫ぶと同時に、頭部のグロテスクな脳を発光させた。
すると次の瞬間、白い鎖が延びる四方向に魔法陣が出現し、小規模な爆発が発生した。
それはまさに、メイジが得意とする爆発の魔法、エクスプロージョンとまったく同じ現象だった。
四方向に発生した爆発は四本の白い鎖を破壊し、メモリー・ドーパントは身体の自由を取り戻した。
「うそ!? 怪物が魔法を!?」
予想外の状況に、メイジは驚きを隠せないでいた。
そして、そんな油断した隙に、メモリー・ドーパントはさらに行動を起こす。
「メモリーログ! ウィザード、ライト!」
再び叫び、同時に頭部の脳を発光させる。
さっきと同じ動作だった。
メモリー・ドーパントが前面に手をかざして魔法陣を展開した刹那、そこから強烈な眩しい閃光が放
たれた。
カメラのフラッシュのような一瞬の光だった。
「くっ!? これは・・・」
唐突な光の発生に、メイジは対処する間もなく視界を奪われた。
「できれば僕は、君達とは無駄な戦いをしたくない。あの人の気持ちのためにも・・・」
メモリー・ドーパントはそう言い残すと、先ほど見せた凄まじい跳躍で観客席から飛び出し、そのまま
スタジアムから姿を消した。
「あっ! 怪物が・・・」
スタジアムから飛び去るメモリー・ドーパントの後姿を目撃する友子とジェイク。
二人はメモリー・ドーパントが魔法陣を展開し、光が放たれる直前、予感を感知した友子の判断で目を塞ぐ
ことにより、視覚を失わずに済んでいた。
「そうだ、ツナゲット!」
友子が思い出したように手さげカバンからチキンナゲットの容器のようなものを取り出した。
かつて、歌星賢吾が仲間の城島ユウキの発案の元で開発したファーストフード型のロボット、フードロイド
シリーズの一つ、チキンナゲットの容器型ロイド“ナゲジャイロイカ”である。
友子はアストロスイッチ・ナンバー37、ジャイロスイッチを装填してナゲジャイロイカを起動させた。
烏賊のような形状に変形し、中から三機のチキンナゲット型の偵察機が飛び出てきた。
ツナゲットと呼ばれるそれぞれ表情が違う三機の偵察機。
ご丁寧に一機一機にナゲイオ、ナゲメデ、ナゲストという名前までついている。
以前はナゲロパという四機目も存在したが、これはヴァルゴ・ゾディアーツという幹部怪人に破壊され、
既に廃棄処分されている。
ナゲジャイロイカから飛び出した三機のツナゲットは、友子の「あの怪物を追いかけて!」という指示に
従い、メモリー・ドーパントの追跡を開始した。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
この掲示板は過去ログ化されています。