二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 仮面ライダーウィザード〜終幕の先〜【完結】
- 日時: 2017/04/15 00:31
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: XGjQjN8n)
こちらでは初めて投稿させていただきます、裕と申します。
今回はこの場を借りて、平成仮面ライダーシリーズ第二期から
「仮面ライダーウィザード」の物語を積み上げてみたいと思います。
個人的解釈としましては、第二期である「ダブル」〜「鎧武」までの作品は、同じ世界観だと思って見ております。なので、今回の物語もそれに沿った流れで書いていこうと思います。それに伴い、第二期各作品(劇場版)の設定も拝借する予定です。
物語の時間軸は「ウィザード」本編の最終回後、さらに言えば冬の映画「戦国MOVIE大合戦」の後の話だと思っていただけると幸いです。
ではでは。
〜登場人物〜
・魔法使いとその関係者
操真晴人=仮面ライダーウィザード
仁藤攻介=仮面ライダービースト
稲森真由=仮面ライダーメイジ
奈良瞬平
大門凛子(国安ゼロ課・刑事)
木崎政範(国安ゼロ課・警視)
ドーナツ屋はんぐり〜・店長
ドーナツ屋はんぐり〜・店員
・財団X
シオリ・カナ(栞 可奈)=仮面ライダーサクセサー
ヤマト=メモリー・ドーパント
ネオン・ウルスランド(局長)
・宇宙仮面ライダー部
野座間友子
ジェイク(神宮海蔵)
仮面ライダーフォーゼ
・鳴海探偵事務所
左 翔太郎=仮面ライダーダブル(左サイド)
フィリップ=仮面ライダーダブル(右サイド)
・怪人
サザル=ファントム・グレンデル
ファントム・ラミアー
ファントム・ヘルハウンド(ログ)
ファントム・シルフィ(ログ)
ファントム・バハムート(ログ)
ファントム・メデューサ(ログ)
グール
クロウ・ゾディアーツ
ペルセウス・ゾディアーツ
黒ネコヤミー
オールド・ドーパント
マスカレイド・ドーパント(白服)
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- 十八. カナとサザル ( No.25 )
- 日時: 2014/03/16 03:17
- 名前: 裕 ◆sLvfk4XA1Q (ID: HKLnqVHP)
人気の無い、森の奥深くに建てられた研究所。
笛木奏は、かつてこの場所で人工的にファントムを作り出す研究をしていた。
人間が魔法使いの力を得るには、体内にファントムを宿す必要がある。
愛する娘、暦を蘇らせるために、己自身にも魔法使いの力が必要だと考えた笛木は、人造ファントムを作り出し、それを己が体内に埋め込むことで魔法使いになろうと考えた。
そのために、この地を買収し、研究所を建設し、物理学者としての知識を活かして作り上げた。
人造ファントム、カーバンクルを。
そして、カーバンクルを己が体内に埋め込み、笛木は白い魔法使いとしての力を得たのだった。
笛木の死後、この研究所には、人造ファントムの製造法や同化方法を記した資料や、使用されずに残ったカーバンクルの別個体が複数、放置されたままになっていた。
しかし半年前、他のファントムを捕食し、強化していくファントム・オーガが出現したことで、複数のカーバンクルは全て消失。
残った研究資料も他者の利用を恐れた国安ゼロ課の手により、何処かへ極秘管理されることになったのだった。
財団Xのメンバー、サザルが研究所に辿り着いたのは、笛木の屋敷でのメイジやビーストとの戦いから二時間後のことだった。
研究所の門の前まで来たサザルは、その周辺の景色に違和感を覚えた。
本来ならば、屋敷と同じように、数人の国安ゼロ課の警官隊達が、研究所の周りを警備しているはずなのだ。
もし、先にここへ来ているはずの別チームの連中が、警官隊達を襲ったのであれば、死体がそこらじゅうに転がっている筈だ。
しかし、周りを見回すと、死体は一つも見当たらず、それどころか外には人の気配がまったく無かった。
「奴ら、全員建物の中か?」
とりあえず、サザルは門を潜り、敷地内へ入ることにした。
見ると、やはり敷地内にも人の気配は無かった。
代わりに、人間の大人と同じぐらいの大きさの人型の石像が無作為に転がっていた。
その数七か八。形状は一つ一つがバラバラで、研究所に背を向けて、その場から逃げ出そうとしている様に見えるモノ、何かに怖気づき、腰を抜かしている様なモノ、銃を構え、必死に抵抗しようとしている様なモノ等、様々だった。
「なるほどな・・・」
サザルはその意味を理解したように笑みを浮かべた。
建物のそばには、チームの連中が乗ってきた大型ワゴンが二台止まっている。
「・・・・ん?」
少し歩くと、もう一台、黒い乗用車が停まっているのが見えた。
「あの車はたしか・・・」
サザルが黒い乗用車の持ち主を思い出しかけた、その時、
「サザル、遅かったわね」
見覚えのある女性が一人、建物から出てきた。
サザルが思い出しかけた人物その人だった。
「主任、なんでアンタがここに・・・?」
突如現れた人物にサザルは問いかけた。
「貴方の動向が心配だっただけよ」
前髪に紫の花のヘアピンをつけたショートヘアの女性。
ヤマトとサザルの上司。
財団X・魔力応用型兵器開発部主任。
プロジェクトのリーダー、シオリ・カナは答えた。
「動向が心配って、信用されてねぇのかよ。俺」
「信用はしてるわよ。ヤマトと同様に。ただ、貴方は命を粗末にしすぎるから」
「そんなことねぇさ!俺も命は大事だぜ。自分の命は」
「・・・・・。まあいいわ。話の続きは中でしましょう」
そう言うと、カナは一足先に研究所の中へ戻って行った。
サザルも無言で後を追う。
研究所の三階。
大人の人間一人がスッポリ入れそうなガラス製のカプセルが何台も並べられた部屋。
恐らく、かつてはカーバンクルの培養室だったであろう一室に、カナとサザルは向き合っていた。
「それで、屋敷の方はどうだったの?」
先に口を開いたのはカナだった。
「どうもこうも、計画に使えそうな物は何一つ見当たらなかったぜ。国安が何処かへ隠したんだろうな」
「そう・・・。やはりね。ここも同じだわ。今も部下が捜索を続けているけど、望みは薄そうね」
「あ〜あ、結局、俺達は無駄足だったってことか。今日一日無駄にしたな・・・」
サザルは深いため息をつきながら、窓から森の景色を眺めだした。
完全にやる気が失せたような態度だった。
「仕方ないわ。こうなるとは思っていたけど、やっぱり自分達の目で確認するまでは決め付けられないから。せめて個体が一つでも残ってれば、まだ研究の仕方もあったのだけれど」
そう言いながら、カナは端末を取り出し、何やら入力を始めた。
計画の進行を計算し直しているようだった。
「まっ、こうなると、後はヤマトの手際の良さに期待するしかねぇな」
「ええ。笛木の技術が分からず仕舞いになった今、試作プランの方法で計画を進めるしかないわ」
「そうだな・・・」
「ところで・・・」と、カナは唐突に話題を変えた。
「さっきから気になってるんだけど、貴方と一緒だった部下達はどうしたの?」
作業の手を止め、サザルを真っ直ぐ見つめる。
「私がずっと心配していることだけど、屋敷にも警備がいたでしょ?それに対しての対応を聞きたいのだけれど」
カナは問い詰める。
サザルの行動のあり方を。
それを確認するために足を運んだのだから。
- 十九. ファントム以外の怪人 ( No.26 )
- 日時: 2014/03/18 05:24
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
サザルは口を開く。
「ああ、警備の連中なら、適当に追い払ったぜ。スイッチの力でな」
そう答えながら、メイジやビーストとの戦闘の際に使用したゾディアーツスイッチを見せびらかした。
「ゾディアーツの力、使ったのね」
カナは少し残念そうに呟いた。
サザルの戦闘力は強い。あらゆるものを傷つけるほどに。できれば、彼にはその力を使ってほしくなかった。
「大丈夫だぜ、主任。誰も殺してねぇから!」
「本当に?」
「ああ。ただ・・・、俺の部下は、邪魔しに来た魔法使いに消されちまったがな」
「魔法使い?ウィザードはヤマトの方に現れた筈だけど・・・」
「ビーストだ。あと、メイジ・・・だっけか。あの女子高生が変身した」
「そう。ビーストとメイジ・・・。なんで魔法使い二人に嗅ぎ付けられたのかしら?」
カナは考え込む。
ヤマトにはあえて騒ぎを起こして、メディアの目を引き付けてもらう役目を請け負ってもらったが、屋敷と研究所の捜索は、できるだけ穏便に済ませる手筈だったはず。
特別大きな騒ぎにならない限り、魔法使いに見つかるとは思えないのだが・・・。
「ねぇ、サザル。貴方、本当に・・・」
もう一度確認しようと、サザルに聞き込もうとしたカナだったが、言いかけたその時、
「主任、お客が来たみたいだぜ」
サザルが窓の下を見ながら突然言葉を被らせてきた。
「客?なにを・・・」
カナも窓の外に視線を移し、研究所の門の方を見る。
そこには、ちょうど門を潜りぬけ、研究所の前で停車した赤いスポーツカーがあった。
中から出てくる三人組。
操真晴人、
大門凛子、
奈良瞬平の三人だった。
「あれは・・・!」
カナは思わず目を疑った。
「おっ!今度はウィザードか。一日で魔法使い三人に会えるとはなぁ」
一方のサザルは嬉しそうな表情だった。
「皆!捜索は終了よ。戦闘の準備をして」
カナは研究所内を捜索していた部下達に指示を出す。
スポーツカーから降りた三人は、研究所の前で肩を並べていた。
「ここが例の研究所よ」
凛子は建物を見つめながら呟いた。
「道中の森の中も不気味でしたけど、研究所も独特の雰囲気で気味が悪いですね・・・。変な石像なんか並んでますし」
瞬平は体をブルブルと震わせながら、周囲を見回していた。
「石像?あら、本当。前に来た時にこんなものあったかしら?」
不自然に並ぶ石像を前に、首を傾げる凛子。
「そんなことより、ここに生存者がいるなら早く探そう。そろそろ日も暮れそうだ」
と、そんな二人のやり取りをよそに、晴人が足を一歩踏み出した。その時、
突然、研究所の扉から六人ほどの白スーツの男達が飛び出してきた。
「うわぁ!なんかいっぱい出てきたぁ!」
さらにビビリ出す瞬平。
「白服の集団、屋敷を襲ったのもお前達か?」
晴人は眼前の白服の男達に尋ねる。しかし、
「貴様らに話すことなど何も無い!」
当然、質問に答える男達ではなかった。
「ああ、そう。だったら、ここにいたはずの警官隊の行方も、聞くだけ無駄だな」
そう言った晴人を前に、白服の男達は戦闘態勢に入る。
それぞれの手に謎の道具を取り出し、男達は姿を変える。
『マスカレイド』
六人のうちの四人が、首筋にガイアメモリを突き刺し、不気味なマスクの戦闘員へと変身した。
そして残った二人。一人は同じ様にガイアメモリを起動させる。
『オールド』
メモリを掌に突き刺すと、体の表と裏両方に顔がついたリバーシブル仕様の怪人に変貌した。
頭部に異様に長い装飾品をつけた不気味なシルエット。
オールド・ドーパント。
残った最後の一人はゾディアーツスイッチをオンにし、一瞬体を暗闇で覆い隠す。
そして暗闇が晴れ、現れる不気味な姿。
黒いマントと巨大な剣に左腕についた女性の顔、全身にペルセウス座を刻んだ怪人。
ペルセウス・ゾディアーツ。
二体の怪人と四人の戦闘員が晴人達三人を取り囲む。
「こいつら、皆ファントムじゃないですよ、晴人さん!」
晴人の背後に身を隠しながら瞬平が叫んでいる。
「晴人君、奴ら一体・・・」
「ゾディアーツにドーパント・・・」
周りを警戒しながら、晴人は怪人の正体を言い当てた。
「晴人君、こいつらの事知ってるの?」
当然それを疑問に思う凛子と瞬平。
「何度か戦った事があってね。名前だけ知ってる・・・。凛子ちゃんと瞬平も見たことあるだろ?一年ぐらい前にさ」
そう言った晴人の脳裏にかつての記憶が蘇る。
基本、ファントム退治を専門とする晴人だが、ファントム以外の怪人と戦った経験も何度かあった。
一年と半年ぐらい前、宇宙鉄人と呼ばれるロボット兵器が暗躍する事件に、天ノ川学園高校の仮面ライダー=フォーゼとメテオが苦戦を強いられていた時、彼らを手助けしたことがあった。その時に、ホロスコープスと呼ばれるゾディアーツ軍団と戦ったのだ。その頃は、晴人自身も魔法使いになってまだ間もなかったが、その割にあれだけの数をよく倒せたなと、自分自身を褒めた事もあった。そういえば、あの時がフォーゼやメテオとのファーストコンタクトだった。
その半年後、今度はアクマイザーが開発した無限モンスタープラントというマシンから生み出された無数の怪人軍団と戦闘を繰り広げた。
その時は、ファントムの一種であるグールに混ざって、色々な種類の怪人が姿を見せていた。ドーパントにゾディアーツ。他にもヤミーとかいう体がメダルで構成された怪人もいたはずだ。たしか今、目の前にいるドーパントやゾディアーツと同種の別個体もその中にいたような気がする。数え切れないほどの怪人と戦うことになったが、フォーゼやメテオ、さらにはなでしこという女性ライダーと指輪で召喚された先輩ライダー達と協力して、難を逃れた。
他にも、魔法石の世界に迷い込んだ時や、武神と呼ばれるライダー達が争い合う戦国の世界で、武神鎧武と対峙した時にも、様々な怪人と戦った。
グロンギ、アンノウン、ミラーモンスター、オルフェノク、アンデッド、魔化魍、ワーム、イマジン、ファンガイア。自分が知る以外にも、まだこんなにもの種類が存在するとは知らなかった。当時、驚きを隠せなかったことを晴人は今でも覚えている。怪人の種類の豊富さにだけではない。それと同じぐらいの数が存在していた、自分と同じ名を持つ戦士達の姿にも。
ところで、過去に戦ったドーパントやゾディアーツは、一体一体の戦闘力が大した事が無かったが、それは所詮は記憶の産物から姿だけを借りたレプリカのような存在にすぎなかったからか。
だとすれば、今この状況で眼前に対峙するドーパントとゾディアーツの強さはどれほどのものなのか。
- 二十. メモリとスイッチの力 ( No.27 )
- 日時: 2014/03/18 08:21
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
「変身!!」
『フレイム・プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー』
魔法陣を潜り抜けた晴人の姿が、指輪の魔法使いウィザードへと変わる。
その姿は、昼間にヘルハウンドと戦った時の青や緑の姿と違い、今度は赤と黒を基調とした容姿だった。
ルビーを思わせる丸みを帯びた赤いマスクに黒いローブ。
ウィザード・フレイムスタイルは炎の属性を司るウィザードの基本形態と言える姿だ。
身体能力のバランスが良く、晴人の体に掛かる負担が最も少ないため、四つの姿の中で一番使用頻度の高いスタイルである。
「二人とも、少し下がって」
ウィザード・フレイムスタイルは戦闘の巻き添えを少しでも避けるために、凛子と瞬平を数歩後退させた。
そして左手の赤い魔法石の指輪を見せ付けるように掲げて宣言する。
「さあ、ショータイムだ!」
その言葉を合図に、周囲の怪人達は一斉に襲い掛かってきた。
ウィザードから見て真正面にいるのが、オールド・ドーパントとペルセウス・ゾディアーツ。その両サイドから各二体ずつのマスカレイド・ドーパントが攻撃を仕掛けてくる。
ウィザードは構えを取る。
まず最初に対処すべきは・・・右だ。
ウィザードは右手から来る二体のマスカレイド・ドーパントの拳を両手で払い、すかさず後ろ回し蹴りで蹴散らした。
バランスを崩し、転倒する二体のマスカレイド・ドーパント。
ウィザードはすぐに左手のマスカレイド・ドーパントの対処に移る。
今度は体を捻りながら跳躍し、まず一体に上段からの蹴りをお見舞いし、着地すると同時に身を低くしてもう一体を足払いした。
ウィザードは肉弾戦の際、両手にはめた指輪の破損を避けるために、基本的に拳は使わない。
代わりに肘打ち等で攻撃する事になるが、その主となる戦法は華麗な舞から繰り出される足技なのだ。
ウィザードの素早い攻撃で左手の二体も地に体を転がした。
だが、計四体のマスカレイド・ドーパントを相手にしたことで、ウィザードには隙ができていた。
背後で守られていた凛子と瞬平ががら空きになっていた。
そして、オールド・ドーパントとペルセウス・ゾディアーツはその隙を見逃さなかった。
「後ろが隙だらけだ!」
オールド・ドーパントは地に右手を付けると、そこからドロリとした不気味な液体のような波動を発生させた。
オールドクリークと呼ばれる波動は、地を張って真っ直ぐと凛子と瞬平に向かって伸びていく。
「凛子ちゃん!瞬平!ぐあっ」
急いで二人の下へ駆けつけようとするウィザードだったが、それをペルセウス・ゾディアーツの巨大な剣が妨害する。
死角からの斬撃を受けてひるんでしまう。
波動が今まさに二人に直撃しようとした瞬間、瞬平が予想外の行動に出た。
「せめて凛子さんだけでも!」
その身で凛子を突き飛ばし、自分だけが波動を受けたのだ。
「瞬平君!!」
突き飛ばされた衝撃で地面に倒れ伏しながらも、凛子は瞬平の姿を捉え続けた。
「瞬平!くそっ、邪魔だ!」
『コネクト・プリーズ』
ウィザードは魔法陣からウィザーソードガン・ソードモードを抜き取り、その刀身でペルセウス・ゾディアーツの剣を弾き返した。
凛子の視線の中で、瞬平の姿が見る見る変化していく。
体中の肌がしわだらけになっていき、頭の黒い短髪も真っ白に変化する。腰が曲がって姿勢もどんどん低くなっていき、変化を終えた瞬平の姿は、完全に老人と化していた。
「うそっ!?瞬平君・・・お爺ちゃんに・・・」
瞬平の予想だにしない姿に、凛子は呆気にとられてしまう。
その様子を、ペルセウス・ゾディアーツが見逃さなかった。
ペルセウス・ゾディアーツは突然ウィザードへの攻撃を中止すると、左腕の女性の瞳を赤く輝かせた。
「お前!今度はなにする気だ!」
ペルセウス・ゾディアーツの謎の行動に警戒を覚えたウィザードは、それを阻止するべく剣を構えなおし、標的への接近を試みた。
だが、今度はそれを役割を終えたオールド・ドーパントと体勢を立て直した四体のマスカレイド・ドーパントが妨害してくる。
「邪魔するなって!」
ウィザードは右手の指輪を付け替えて魔法を発動させる。
『エキサイト・プリーズ』
魔法陣を潜り抜けたウィザードの肉体の筋肉が一気に膨れ上がり、二倍ほどの大きさの巨漢の姿へと変化した。
筋力が増大したその太い両腕が周囲の邪魔者を蹴散らしていく。
オールド・ドーパントは宙を舞うように吹っ飛び、四体のマスカレイド・ドーパントはその衝撃により空中で爆発四散した。
すぐさま体形を元のスリムな状態に戻し、ペルセウス・ゾディアーツの下へ駆け寄る。が、
一足遅く、ペルセウス・ゾディアーツの左腕から放たれた赤い光線が、凛子に命中した後だった。
「しまった!凛子ちゃん!」
ウィザードの叫びも空しく、凛子の体もあっという間に変化した。
全身が鉱石のように硬直していく。
凛子は石像に変えられてしまったのだった。
「おお・・・これはぁ・・・おおきな漬物石じゃのぉ〜」
石化した凛子を前に、一人老人と化した瞬平はのん気に言うのだった。
研究所の三階の窓から、シオリ・カナとサザルはウィザードの戦いを静かに観察していた。
「なあ主任、この場所にあのメモリユーザーとスイッチャーを連れて来たのはアンタだろ?」
ふと、サザルが質問を投げかけてきた。
「そうよ。それがどうかした?」
視線を窓の外へ向けたまま、カナは答える。
「いや、俺が指揮したチームのメンバーに奴らはいなかったからさ。多分、アンタがここへ来る時、一緒に連れてきたんだろうなって」
「そのとおりよ。メモリもスイッチも私が選んだ。あの力なら、むやみに人殺しする必要ないでしょ」
「石化と老人化。なるほどな・・・。で、ウィザードにくっついてきたあの二人の命はああやって保護するとして、ウィザード本体はどうする?奴もやっぱり殺さねぇのか?」
「それは・・・」
一瞬、言葉を詰まらせた後、カナは答えた。
「あの戦い次第ね。オールドとペルセウスが上手くウィザードを拘束できれば殺す必要は無いけど、そうじゃなかったら・・・」
「始末することも考えると。まあ、本来、奴はアンタの計画にとっては邪魔者でしかないからな。だが、多分負けるぜ。あいつら」
「その時は、貴方にお願いするわ」
「いいのか?」
「ええ・・・」
カナの返事を聞いたサザルはニヤリと微笑んだ。
- 二十一. ドラゴン ( No.28 )
- 日時: 2014/03/19 04:53
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
ウィザードはドーパントとゾディアーツを二体同時に相手にする中で、心中焦りを感じていた。
石像と化した凛子と老人化した瞬平。このまま放って置けば、変化した二人の体に一体どんな影響が出ることか。
石化した状態で息はあるのか?老人化した体に掛かる負担はどれほどなのか?そもそも二人は元の状態に戻れるのか?
考えたくない想像を色々考えてしまい、戦いに集中ができない。このままでは勝てる戦いも勝てない。
「くっ、二人を元に戻せ!」
ウィザーソードガン・ソードモードを振るいながら、思わず焦りを言葉に出してしまう。
当然、敵のオールド・ドーパントとペルセウス・ゾディアーツが、親切に二人を元に戻してくれるはずが無い。
二体の怪人は激しい猛攻でウィザードの体を痛めつけていく。
と、突然ペルセウス・ゾディアーツの巨大な剣がウィザードの懐に入った。
「ぐはぁ・・・」
ウィザードは斬撃のショックで背後に吹っ飛び、地面を転がった。
いつもの力が出せずにうまく戦えない。
仲間の危機がこれほどまでに自分から力を奪うとは。
このまま俺は、また仲間を失ってしまうのか。コヨミの時のように・・・。ウィザードの中で焦りがどんどん酷くなる。
と、その時、
(情けないな、操真晴人。このまま絶望して、我を生み出すか?)
全身に響き渡るような低い声が、いきなり心の中から聞こえてきた。
活を入れようとするかのようなその言葉は、晴人の心の中、晴人の精神世界=アンダーワールドに住み着くファントム・ウィザードラゴンのものだった。
「ドラゴン・・・なのか?」
ウィザードは自らの心に問いかける。
(操真晴人、貴様はこのまま敗北して、救える命を救わぬまま燃え尽きるつもりなのか?)
「!救えるのか!?二人を?」
(貴様次第だ!奴らの核を砕いてみろ。そうすれば答えが分かる)
「敵の核?あのメモリとスイッチのことか!」
(これでも我は、この寝床を気に入ってるのでな。できれば失いたくない。だからしっかりと我の力を使いこなせ。操真晴人)
そう言って、ウィザードラゴンは沈黙した。
それ以上の言葉を告げる事は無かった。
しかし、ウィザード=操真晴人にとっては十分過ぎるほどの励ましだった。
「まさか、ドラゴンに励まされるとはな」
ウィザードは再び立ち上がる。
「なぁ〜んじゃ〜、今日はなんかの祭りかのぉ〜?」
ウィザードと怪人の戦いが祭りにでも見えたのか、スポーツカーの陰から口走る瞬平老人。
それが可笑しかったのか、ウィザードはフッと笑うと、
「違うよ。祭りじゃない。今度こそ本当の、ショータイムだ!」
そう答え、もう一度左手の赤い指輪を掲げた。
不安な気持ちを振り切り、再びウィザードは戦いに身を投じる。
ウィザーソードガンをソードモードからガンモードに素早く変形させ、眼前の二体の怪人目掛けて銀色の弾丸を連射する。
オールド・ドーパントとペルセウス・ゾディアーツはそれぞれ回避の動作を試みるが、追尾能力のある弾丸にそれは無意味だった。
ウィザードの銃撃は全弾命中。二体の怪人をひるませた。
「瞬平が作った指輪、試してみるか」
そう言って取り出したのは、ドーナッツ屋はんぐり〜で瞬平に渡された二つの指輪のうちの一つ。
それを右中指に付け替え、ベルトにかざした。
目標は、オールド・ドーパント。
『タワー・プリーズ』
次の瞬間、オールド・ドーパントの足元に魔法陣が展開し、そこから巨大な火柱が立ち上った。
「ぐぎゃぁあああ・・・」
火柱に閉じ込められたオールド・ドーパントはその身を焼かれ、もがき苦しんだ。
その火柱に一度包まれると、簡単に脱出することができないのか、なす術無く悲鳴を上げ続けた。
その隙にペルセウス・ゾディアーツを倒す。
ウィザードは左中指の指輪を黄色い魔法石の指輪に付け替えた。
『ランド・プリーズ ドッドッドッドドドンドンドッドドン』
魔法陣を潜り抜けたウィザード・フレイムスタイルの姿が黄色いランドスタイルへと変わる。
トパーズを思わせる四角い形状の黄色いマスクのその姿は、大地の属性を持つパワーファイターである。
ペルセウス・ゾディアーツは左腕から赤い光線を発射した。
凛子を石化させたあの技だった。
『ディフェンド・プリーズ』
ウィザード・ランドスタイルは、すかさず前面に長方形状の土の壁を作り出した。
土の壁が盾となり、石化光線を防御する。
効果を失った土の壁が崩れ落ちると同時に、ウィザードは素早く前進し、ペルセウス・ゾディアーツの腹部に蹴りを叩き込んだ。
腹を押さえ苦しみながら後退するペルセウス・ゾディアーツ。
「まずはお前からフィナーレだ!」
ウィザードは右中指にキックストライクの指輪をはめ込み、それをベルトにかざした。
『チョーイイネ!キックストライク サイコー!』
ハイテンションなベルトの音声と共に、ウィザードの右足に魔力が注ぎ込まれる。
体を捻りながら跳躍し、
「はぁぁあああ・・・。はあぁっ!!」
空中から大地の力を纏った強力なキックが放たれた。
ウィザードの必殺技、ストライクウィザードがペルセウス・ゾディアーツに直撃した。
「ぐわぁあああああ!!」
爆炎の中で変身が解除され、ペルセウス・ゾディアーツだった白服の男が地面に倒れ伏す。
その手からゾディアーツスイッチが転がり落ちた。
「次はお前だ!」
残る相手は後一体。オールド・ドーパントのみ。
ウィザードは効果が切れて火柱から開放されたオールド・ドーパントと対峙する。
- 二十二. 撃破 ( No.29 )
- 日時: 2014/03/20 06:31
- 名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)
ウィザードが放った火柱に焼かれた影響で、オールド・ドーパントの体は真っ黒に焦げていた。
元々リバーシブル仕様のオールド・ドーパントの姿は、前が赤茶色、後ろが水色のフォルムなのだが、こうなってはもう、どっちが前でどっちが後ろなのか分からない状態だった。
「やってくれたな魔法使い!」
怒り心頭のオールド・ドーパントが怒り任せに拳を振るってきた。
半分ヤケクソの様にも思えるその動作は、冷静さを取り戻したウィザードにとっては簡単に見切れるものだった。
ウィザード・ランドスタイルは、敵の攻撃をかわし、時に受け流し、すれ違いざまにカウンター気味にエルボーを打ち込んだ。
衝撃でバランスを崩すオールド・ドーパント。
まるで弄ばれている気分だ。彼の怒りのボルテージが限界を振り切った。
オールド・ドーパントは右手を地面に付けて、ドロリとした液状の波動、オールドクリークを発生させた。
瞬平を老人化させた厄介な波動だ。
オールドクリークは地を張ってウィザード目掛けて伸びていく。
「悪いな。そんな攻撃、当たらなきゃ意味無いぜ!」
ウィザードは左手の指輪を素早く付け替えた。
『ハリケーン・プリーズ フーフー、フーフーフーフー』
魔法陣を潜り抜けたウィザードの姿が、今度は緑色のハリケーンスタイルへと変わる。
その姿は、ジャンプ力や瞬発力に優れたスピードタイプのフォームであり、逆三角形状のエメラルドを思わせるマスクが特徴的だ。
風を使った空中浮遊が得意なウィザード・ハリケーンスタイルは、早速体に風を纏い、空高く舞い上がった。
恐らく敵の波動の発生範囲は地面のみ。立体的に動けば回避は容易いとウィザードは考えた。
そしてそれは正解だった。
標的を見失った波動は、ただ地面を走るだけ。
「なにっ!?」
「やっぱりな。空なら当たらないと思った!」
地上のオールド・ドーパントを見下ろしながら、予想通りと確信を得るウィザード。
一気に止めを刺そうと、次の行動を取ろうとした、その時、
「ん?あれは・・・」
ふと、空中から研究所の内部が窓から見えた。
人影が見える。
人数は二人。
こっちを見ているようだった。
研究所内の人影を気にしながらも、まずは目の前の敵を倒すことに専念しようと、すぐに視線を地上に戻す。
『コネクト・プリーズ』
戦いの中で、いつの間にか手放していたウィザーソードガンを再び手元に戻す。
ソードモードに変形させると、ウィザードはソードガンのハンドオーサーを展開させた。
ウィザードの専用武器、ウィザーソードガンには、魔力を注入する手形状のスキャナーの様なものが搭載されている。
普段は指を折り曲げて隠す様に閉じられているそれを、親指にあたる部分のレバーを引くことで展開し、起動することでそこから魔力を注ぎ込んで強力な技を発動させることができるのだ。
『キャモナスラッシュシェイクハンズ キャモナスラッシュシェイクハンズ』
ベルト同様、ウィザーソードガンからも歌のような呪文のような待機音声が流れてくる。
ウィザードは左手の緑色の魔法石が埋め込まれた指輪を、ソードガンの手形のハンドオーサーにかざして魔力を注ぎ込んだ。
『ハリケーン・スラッシュストライク』
次の瞬間、逆手に持ったウィザーソードガン・ソードモードの刀身が緑の風に覆われる。
「フィナーレだ!はあっ!!」
それを渾身の力で振り下ろし、竜巻状の衝撃波を放った。
風の刃となったそれは、物凄いスピードで真っ直ぐと地上のオールド・ドーパントに向かって飛んでいき、避ける余裕も防ぐ余裕も与えないままその胴体を切り裂いた。
「ぐぎゃあああぁぁぁ・・・」
瞬間、オールド・ドーパントは爆発四散。ペルセウス・ゾディアーツの男と同じ様に変身が解除され、元の姿で地面に倒れた。
同時に体から吐き出されたガイアメモリが粉々に砕けながらショートした。
すると、ずっとスポーツカーの陰で戦いの様子を見ていた瞬平の体が、見る見るうちに若返っていった。
メモリの機能が停止すると同時に、オールドクリークの効力も消えたようだった。
「あれ?あれ?僕・・・、今までどうして・・・」
自分の身に起きた変化を、瞬平はまだ理解し切れていないようだ。
「良かったな瞬平。元に戻れて」
空から着地したウィザードが瞬平に駆け寄った。
「晴人さん、僕どうしたんでしたっけ?」
「ん〜、知らない方がいいかもな。とにかく無事で良かった。凛子ちゃんも戻してあげよう」
ドラゴンの言うとおりだった。メモリが壊れて瞬平が戻ったんだ。ならきっと、スイッチを破壊すれば凛子ちゃんの石化も解けるだろう。
ウィザードは緑色のマスクの下で笑みを浮かべながらそう確信した。
気絶している男の手元からゾディアーツスイッチを拾い上げる。そして力を込めたその手で握り潰した。
変身している今の状態なら、片手で簡単に壊すことが出来る。
ギチギチとスイッチを砕き、破片が手から零れ落ちる。
メモリと同様、スイッチを壊すことで石化が解けたようで、凛子の姿も元の状態に戻っていた。
放心状態の凛子が、石化の直前と同じポーズでずっと硬直している。
「凛子ちゃん。もう動けるだろ?」
「えっ・・・あっ!私・・・あれ?」
凛子も瞬平と同じ様に自分の身の変化を理解できていないようだった。
「凛子さぁああん!!良かったぁ!」
歓喜のあまり、瞬平が凛子に抱きついた。
「キャッ!何すんのよ瞬平君!」
パン!
次の瞬間、強力な平手打ちが瞬平の頬に打ち込まれた。
「良かった二人とも。本当に良かった」
二人のやり取りを見て、ウィザードはようやく安堵した。
自分は二人を守れた。これ以上仲間を失わずに済んだ、と。
一安心の三人だったが、そこへ、
突然周りから、ざわめく様な複数の男の声が聞こえてきた。
声に気づいた三人は辺りを見回した。
すると、そこにいたのはさっきまでその場にいなかったはずの警官隊達の姿だった。
研究所の敷地内に無作為に並んでいた石像が消え、代わりに警官隊達が現れたのだ。
「晴人君、これって・・・」
「ああ、多分、彼らも石にされてたってことだろうな」
「研究所のオブジェだと思ってたら、まさか全部人だったなんて」
そう言った瞬平は、まるで同じ動作を繰り返す玩具の様に、目を丸くしながら辺りをきょろきょろと見回し続けていた。
「凛子ちゃんと同じで、ゾディアーツの力が消えたから戻れたんだ」
ウィザード達三人は、石化から開放された警官隊達に話を聞くことにした。
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