二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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仮面ライダーウィザード〜終幕の先〜【完結】
日時: 2017/04/15 00:31
名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: XGjQjN8n)

こちらでは初めて投稿させていただきます、裕と申します。
今回はこの場を借りて、平成仮面ライダーシリーズ第二期から
「仮面ライダーウィザード」の物語を積み上げてみたいと思います。

個人的解釈としましては、第二期である「ダブル」〜「鎧武」までの作品は、同じ世界観だと思って見ております。なので、今回の物語もそれに沿った流れで書いていこうと思います。それに伴い、第二期各作品(劇場版)の設定も拝借する予定です。

物語の時間軸は「ウィザード」本編の最終回後、さらに言えば冬の映画「戦国MOVIE大合戦」の後の話だと思っていただけると幸いです。

ではでは。


〜登場人物〜


・魔法使いとその関係者

操真晴人=仮面ライダーウィザード

仁藤攻介=仮面ライダービースト

稲森真由=仮面ライダーメイジ

奈良瞬平

大門凛子(国安ゼロ課・刑事)

木崎政範(国安ゼロ課・警視)

ドーナツ屋はんぐり〜・店長

ドーナツ屋はんぐり〜・店員


・財団X

シオリ・カナ(栞 可奈)=仮面ライダーサクセサー

ヤマト=メモリー・ドーパント

ネオン・ウルスランド(局長)


・宇宙仮面ライダー部

野座間友子

ジェイク(神宮海蔵)

仮面ライダーフォーゼ


・鳴海探偵事務所

左 翔太郎=仮面ライダーダブル(左サイド)

フィリップ=仮面ライダーダブル(右サイド)


・怪人

サザル=ファントム・グレンデル

ファントム・ラミアー

ファントム・ヘルハウンド(ログ)

ファントム・シルフィ(ログ)

ファントム・バハムート(ログ)

ファントム・メデューサ(ログ)

グール

クロウ・ゾディアーツ

ペルセウス・ゾディアーツ

黒ネコヤミー

オールド・ドーパント

マスカレイド・ドーパント(白服)

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二十三. 警官隊の行方 ( No.30 )
日時: 2014/03/21 07:12
名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)


「警視庁鳥井坂署国安ゼロ課、大門凛子です。木崎警視の命令でここへ来ました」
 凛子は一箇所に集まった警官隊の下に駆け寄り、内ポケットから取り出した警察手帳を提示した。
 警官隊の人数は八人ほど。長時間石になっていた影響なのか、まだ意識がハッキリしていない者も何人かいたが、何とかまともに会話ができる者も三人程いたため、襲撃時の状況を聞く事ができた。
 回復していない者達は木陰で暫く休ませることにした。そばには瞬平がついている。
 停車したスポーツカーのそばで、三人の警官隊から変身を解除した晴人と凛子が事情を聞く。
 

 まず、最初の襲撃を受けたのが昼の一時を過ぎた頃だった。
 顔を不気味なマスクで覆った怪人の集団に襲われ、軽傷だが四人ほど傷を負った。
 その後、敵側に何者かの連絡が入ったようで、襲撃は一旦中止された。
 三十分後、新たに現れた女性の指揮の下で、再び敵の襲撃が開始された。
 研究所の警官隊の数は、敷地が広いせいもあって屋敷の警備の数よりも多かった。
 そのおかげで多少持ちこたえる事ができたが、今度は敵側から二体の別の怪人が現れた。
 特殊な能力を持った奴らだった。
 その能力により、隊の半分が老人に変えられてしまった。
 老人化した仲間達は、怯えながら森の中へ逃げ出して姿を消してしまった。
 幸い、逃げた彼らを、敵が深追いすることは無かったが。
 しかし今度は残ったメンバーが敵が放った光を浴びてしまい、その後から今の今まで記憶が無かったという。


「やっぱり、警官隊を襲ったのは、晴人君が倒してくれたさっきの怪人達だったのね」
 警官隊から聞く事ができた話の内容を、凛子はしっかりとメモに取っていた。
「ああ。奴らを倒したから、みんな元に戻れたんだ」
 晴人は改めて周りを見回し、警官隊の無事を再確認した。
「あっ!でもちょっと待って。さっきの話だと、老人化した人達も何人かいるんでしょ。彼らは今・・・」
「はい。六人ほど。多分、まだ森の中だと思います。老人化は解けたと思いますけど、この森はかなり深い。しかも日が暮れてきてこの薄暗さだ。もしかしたら道に迷って戻って来れなくなっているかもしれません」
 凛子の疑問に警官隊の一人が答えた。
 既に夕方の四時を過ぎており、季節が冬ということもあって辺りは随分と薄暗くなっていた。
「まずいわね。森に隠れた人達を探さないと」
「我々も捜索します。大事な仲間達ですから」
「いや、貴方達は先に森を出た方がいい。体調も直ってないですし」
 意気込む警官隊の男達を、晴人が静止させる。
「そうですよ。捜索は私達で何とかしますから」
「しかし・・・」
「大丈夫です。こっちには優秀な魔法使いがついてますから!」
 そう言って、凛子は晴人の袖をグイッと引っ張った。
「・・・・・分かりました。仲間達を宜しくお願いします」
 三人の警官隊は已む無く承知し、晴人と凛子に頭を下げた。


 その後、凛子が木崎に連絡し、警視庁の方で警官隊が全員乗れる大型ワゴン車を二台用意してもらった。
 それを晴人が“コネクト”と“ビッグ”の魔法を併用して取り寄せることにした。
 空間を繋げる“コネクト”で警視庁の駐車場に接続し、そこに用意されたワゴン車を、“ビッグ”で巨大化させた晴人の手で摘み上げて研究所前に用意したのだ。
 できることなら、空間を繋げた時点でそこを通って警官隊を帰せれば一番いいのだが、残念ながら魔法にも色々と複雑な制限があり、それを実現させることは不可能だった。
 結果、二台のワゴン車のうちの一台に、石化から開放された警官隊メンバーを乗せ、彼らを一足先に警視庁へ帰還させた。
 戦いに敗れて気絶したままのオールド・ドーパントとペルセウス・ゾディアーツだった男達二人も、ロープで拘束して一緒に乗せた。
 もう一台のワゴン車は、森に身を隠している老人化されていた残りの警官隊メンバーのために、この場に残しておいた。

「じゃあ、そろそろ捜索を始めましょうか?」
 スポーツカーの中から懐中電灯を三つ取り出し、準備完了の凛子と瞬平。ところが、
「いや、ちょっと待って凛子ちゃん」
 と、晴人が二人を止めた。
「どうしたの?」
「何かあったんですか?晴人さん」
 凛子と瞬平は不思議そうに晴人の顔を見つめる。
「さっきから気になってたんだ。あの研究所の中にまだ人がいる」
「えっ!?まさか、奴らの仲間がまだ・・・」
「ああ。どうやら、そいつが顔を見せたみたいだ」
 そう言う晴人の視線は、既に研究所から姿を見せていた筋肉質の男を捉えていた。
 凛子と瞬平もその方向へ視線を向ける。
 研究所の扉の前に、その男は佇んでいた。
 詰襟の白いスーツを身に纏ったロン毛の男。
 財団Xのサザルが。

「なあ、ウィザード。今度はその力、俺に見せてくれよ!」
 サザルはそう言い放つと、ポケットから取り出したゾディアーツスイッチをオンにした。
 暗闇に包まれ、そこから漆黒のカラスの怪人が姿を現した。
「スイッチで変身した巨漢・・・。木崎が言っていた真由ちゃんと仁藤を苦戦させた男っていうのは、お前のことか?」
 現れた新たな敵を前に、晴人は身構えた。

二十四. カラス再び ( No.31 )
日時: 2014/03/22 07:28
名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 日がほとんど沈み、夜がこの森を支配するのも時間の問題だった。
 視界の薄暗さに、カラスの怪人の漆黒のボディは完全に溶け込んでいた。
 少しでも目を逸らせば、次に敵の姿を捉えるのは至難の業かもしれない。
 晴人は眼前の敵を見失わないように捕捉し続けていた。
「凛子ちゃん、瞬平。悪いけど、二人で先に捜索を始めててくれないかな?」
 視線は怪人を捉えたまま、背後の凛子と瞬平に指示を出す。
「晴人君は?どうするの?」
 三つの懐中電灯を手に持ったまま、凛子は問う。
「わかるだろ?アイツの足止めをする。見逃してくれるとは思えないしね」
「晴人さん・・・」
 心配そうに瞬平が視線を向けてくる。
「大丈夫。それより、完全に夜になる前に全員見つけ出した方がいい。夜の森で人を探すなんて、それこそ困難だし、二人も危険だ」
 晴人は懐から三つの指輪を取り出し、ベルトにかざした。
『ガルーダ・プリーズ』
『ユニコーン・プリーズ』
『クラーケン・プリーズ』
 三つの魔法陣からそれぞれ赤、青、黄のプラモデルのパーツの様なものが召喚され、色に合わせて小さなモンスターの形に自動的に組み立てられた。
 赤のパーツから生まれた鳥型のレッドガルーダ。
 青のパーツから生まれた馬型のブルーユニコーン。
 黄のパーツから生まれた烏賊型のイエロークラーケン。
 晴人が使役するプラモンスターと呼ばれる使い魔である。
「人探し名人のそいつらをついて行かせるから、そんなに時間は掛からないと思う。あの怪人を倒したら俺もすぐ追いかけるから、よろしく頼んだよ!」
「・・・・・」
 少し沈黙した後、覚悟を決めたように凛子は口を開く。
「分かったわ!捜索の方は任せて。晴人君も気をつけて!」
 そう言い放つと、横でオドオドしている瞬平の手を引っ張り、森の中へ走って行った。
「は、晴人さぁん頑張ってくださぁ〜い!」
 凛子に引っ張られながら叫ぶ瞬平の声が、森全体に木霊した・・・様な気がした。
 晴人に召喚された三匹のプラモンスターも二人の後を追いかけた。
 空を飛ぶレッドガルーダはビューンと。
 地面を走るブルーユニコーンはパカパカと。
 足をプロペラのように回転させて宙を浮遊するイエロークラーケンはフワフワと。


「待たせたな。お前の相手は、俺がする」
『ドライバーオン・プリーズ』
 相手を射抜くような眼差しを向けながら、晴人は銀色のベルトを実体化させる。
『シャバドゥビタッチヘンシーン シャバドゥビタッチヘンシーン』
 ベルトの待機音声が鳴る中で、左中指に赤い魔法石の指輪をはめ込み、力強く叫ぶ。
「変身!!」
 指輪のカバーを右手で下ろし、ベルトにかざす。
『フレイム・プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー』
 前面に展開した魔法陣を走りながら潜り抜け、晴人はウィザード・フレイムスタイルへ姿を変えた。
 そして、そのままスピードを落とさずに敵目掛けて突っ込んでいく。
「さあ、ショータイムだ!」
「いいぜ!掛かって来い!」
 カラスの怪人=クロウ・ゾディアーツは、背中の翼をバサッと広げると、地面を蹴って飛翔し、向かって来るウィザードに先制攻撃の体当たりを喰らわせた。
 視界の暗さとクロウ・ゾディアーツの体色が相俟って、敵の動きに反応が遅れたウィザードは、いきなり正面からそれを受けてしまった。
 体から火花を散らせながら、背後に倒れるウィザード。
「くっ・・・。これだけ暗いと戦い辛いな」
 すぐに体勢を立て直すと、素早く右手の指輪を付け替えた。
『ライト・プリーズ』
 上空に展開された魔法陣が、研究所の敷地内を明るく照らし出す。
 昼間のヘルハウンド戦でも使用したこの魔法だが、今回は敵の視界を封じるというより、自身の視界の確保のための使用だった。
 そのため、明るさは抑え気味だが、魔法効果は長時間持続するように発動させていた。
「よしっ!これで見える!」
 相手の姿をすぐに捉えたウィザードは、すかさずウィザーソードガン・ガンモードを手にし、クロウ・ゾディアーツ目掛けて連射した。
 しかし、クロウ・ゾディアーツは翼を前面でクロスさせ、それを防御する。
「だったら・・・」
 と、ウィザードはソードガンをソードモードに変形させ、接近戦に持ち込む。
 銀色の剣と邪悪な鋭い鉤爪が激しくぶつかり合う。
 その状況が暫く続いた後、クロウ・ゾディアーツは唐突に戦法を変えてきた。
 背後に大きくジャンプして、ウィザードから距離を取ると、両翼を広げて無数の羽手裏剣を発射した。
『ディフェンド・プリーズ』
 ウィザードは慌てて炎の壁を展開してそれを防ぐ。
「今度はこっちの番だ!」
 炎の壁に守られながら、左手の指輪を付け替える。
『ウォーター・プリーズ スイースイースイースイー』
 魔法陣を潜り抜け、ウィザード・フレイムスタイルは水属性のウォータースタイルへと姿を変えた。
 ひし形状のサファイアの様な青いマスクがキラリと光る。
 ウィザード・ウォータースタイルは右手の指輪を付け替えた。
『タワー・プリーズ』
 瞬平から渡された指輪の出番だ。
 クロウ・ゾディアーツの足元に魔法陣が展開し、そこから激しい勢いの水柱、水流が噴出したのだ。
「なにっ!?ぐわあ・・・」
 協力な水圧にその体を持ち上げられたクロウ・ゾディアーツは、打ち上がった花火のように空へ放り出された。
 ウィザードはさらに追い討ちをかける。
『ビッグ・プリーズ』
 魔法陣で右腕を巨大化させると、落下するクロウ・ゾディアーツを絶妙なタイミングで叩き飛ばした。
 まるで巨大なビンタでも喰らったような光景だった。
 叩かれた勢いで豪快に吹っ飛んだクロウ・ゾディアーツは、研究所の扉を突き破り、建物内に姿を消した。

二十五. 4人のウィザード ( No.32 )
日時: 2014/03/23 05:06
名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 研究所内部まで吹き飛んだクロウ・ゾディアーツは、ガラガラと瓦礫や壊れた研究機材を振り払いながら、再びウィザードの前に姿を見せた。
「・・・ってぇなぁ。昼間戦った金獅子の・・・いや、ビーストもなかなか楽しませてくれたが、やっぱ噂通り、指輪の魔法使いはレベルが違うなぁ」
 クロウ・ゾディアーツの言葉は、ウィザードの力に感心しているような言い草だった。
「真由ちゃんや仁藤と互角以上に戦ったんだろ。これぐらいで倒せるとは思ってないさ」
 ウィザード・ウォータースタイルは、敵の動きにいつでも反応できる様に構えを取り続けている。
「まあな。じゃあ、こっちも本気を出そうか!」
 そう言った瞬間、クロウ・ゾディアーツは翼を広げてミサイルのような勢いで研究所内から飛び出してきた。
 戦闘開始直後に放った体当たりのように、再びウィザードの眼前に飛び込んでくる。
「おっと!」
 ウィザードはギリギリ横に飛んでそれを回避した。
 クロウ・ゾディアーツはそのままスピードを落とすことなく空に上昇する。
「逃がすか!」
 ウィザードは左手の指輪を付け替えて姿をチェンジさせる。
『ランド・ドラゴン ダンデンドンズドゴーン!ダンデンドゴーン!』
 魔法陣から出現した黄色い砂の竜を纏い、ウィザードはランドスタイルの上位形態、ランドドラゴンへと進化した。
 黄色いローブが風に靡く。
 ウィザード・ランドドラゴンは右手の指輪を付け替え、魔法を発動、
『チョーイイネ!グラビティ サイコー!』
 上空のクロウ・ゾディアーツに手をかざした。
 すると、クロウ・ゾディアーツの頭上に魔法陣が現れ、そこから強力な重力が発生した。
「ぐおっ!これは・・・」
 凄まじい重みが全身に圧し掛かり、クロウ・ゾディアーツの体は頭から押し戻されるように地面に叩きつけられた。
 ズシン!
 地に体が付いた瞬間、足場が大きくめり込んだ。
「次はコレだ!」
 ウィザードはさらに追い討ちをかける。
『チョーイイネ!スペシャル サイコー!』
 今度はウィザードラゴンの力の一部を解放させる指輪を使って、その両腕に竜の爪ドラゴヘルクローを具現化させた。
 三本の鉤爪が生えた両腕のクローを構え、再び接近戦に挑む。
 基本、蹴り技を主体とするウィザードだが、この竜の爪を装着することで、初めて両腕をメインにしたバトルが可能になるのだ。
 左右から交互に繰り出される爪の攻撃が、クロウ・ゾディアーツに迫る。
 だが、対するクロウ・ゾディアーツも、重力攻撃を受けた後とは思えないほど俊敏な動きを披露し、繰り出される爪に対応して見せた。
 ウィザードの爪を自らの鉤爪で弾き返し、逆に拳と蹴りで反撃してきた。
 数発のパンチと急所を正確に狙ったキックを叩き込まれ、背後に後退するウィザード。
 もしかしたら、純粋な格闘戦では奴の方がレベルが上かもしれない。真正面からの接近は避けるべきか・・・。
 そう判断したウィザードは、両腕のドラゴヘルクローを解除し、バックステップで距離を取った。
 そして、
『フレイム・ドラゴン ボォー、ボォー、ボォーボォーボォー!』
 炎の竜を身に纏い、今度は赤いローブが特徴の上位形態、フレイムドラゴンへと姿を変えた。
 さらに、
『コネクト・プリーズ』
『ドラゴタイム!』
 空間接続の魔法陣から、竜の胸像のような装飾がついたブレスレット型のアイテムを取り出し、右腕に装着した。

 魔道具ドラゴタイマー。
 ウィザードがウィザードラゴンの力を限界まで解放した事で、具現化した強化アイテムである。
 見かけは腕に装着されたアナログ式のタイマーの様だが、強力な力が秘められたこの道具を使うことによって、ウィザードの戦術バリエーションは格段にアップする。
 備え付けられた回転盤にはウィザードの四色のスタイルと同様の色が表示されており、指針がそれぞれの色を指した時、その色の上位形態を分身として召喚する事ができる。
 青、緑、黄。最大三人の独立した分身体を生み出すことによって、四人のウィザードによる多彩な連係攻撃を可能にさせるのだ。

『セットアップ!』
『スタート!』
 ウィザードはドラゴタイマーの回転盤をスタート位置に固定し、レバーを押してそれを作動させた。
 タイマーの指針が回りだす
 同時にウィザーソードガン・ソードモードを手にし、攻撃を再開する。
「おいおい、接近戦は不利だと感じたんじゃねぇのかよ!」
 クロウ・ゾディアーツは鉤爪を光らせてそれを迎え撃つ。
 ソードガンによる斬撃を繰り返すウィザード。
 二撃、三撃・・・。四撃目の直後、タイマーの指針は青色を指した。
 すかさずレバーを弾く。
『ウォータードラゴン』
 青い魔法陣からウォータースタイルの上位形態、ウォータードラゴンが現れる。
 今度はフレイムドラゴンとウォータードラゴンが交互に剣撃を繰り出す。
 だが、
「分身か?面白いことやるな!」
 クロウ・ゾディアーツはそれさえも余裕で対応して見せた。
「だったらこれでどうだ!」
 その言葉を合図に、二人のウィザードは同時に攻撃の手を止め、左右に転がって距離を取った。
 ウィザード・フレイムドラゴンは転がりながら再びレバーを弾いた。
 指針は緑色を指していた。
『ハリケーンドラゴン』
 刹那に上空に開いた緑の魔法陣から、ハリケーンドラゴンが飛び出してきた。
 その手にはウィザーソードガン・ガンモードが。
 頭上から降り注ぐ銃弾の雨が、左右に分かれた二人のウィザードの対処に一瞬迷ったクロウ・ゾディアーツを撃ちぬいた。
 動きが鈍った敵に、すかさずフレイムドラゴンとウォータードラゴンが左右から同時に斬撃を浴びせた。
 クロウ・ゾディアーツはこれ以上攻撃を受けまいと、両翼を前面にクロスして防御に転じた。
「まだまだいくぜ!」
 ウィザードの快進撃は続く。
 ウォータードラゴンとハリケーンドラゴンは、右手の指輪を付け替え、それぞれ魔法を発動させた。
『チョーイイネ!ブリザード サイコー!』
『チョーイイネ!サンダー サイコー!』
 同時に放たれた凄まじい冷気と雷撃が、クロウ・ゾディアーツの翼に直撃する。
 二つの魔法に押されながらも、クロウ・ゾディアーツは踏ん張りを見せていた。
「さすがにタフだな。でも後ろががら空きだ!」
 フレイムドラゴンは指針が黄色を指したドラゴタイマーのレバーを押した。
『ランドドラゴン』
 すると、前面の魔法攻撃に耐え続けるクロウ・ゾディアーツの背後に、ランドドラゴンが出現。
『ランド・スラッシュストライク』
 ランドドラゴンは、地面に展開された黄色い魔法陣から現れると同時に、回転斬りでクロウ・ゾディアーツの背面を切り裂いた。
「ぐふっ!?しまった・・・。ぐわぁあぁあ!」
 背中を斬られた瞬間、防御を崩してしまったクロウ・ゾディアーツは、結局冷気と雷撃の魔法も正面から受ける結果になってしまった。
 さすがのクロウ・ゾディアーツも地面に膝を付き、息を荒くしていた。

二十六. alteration ( No.33 )
日時: 2014/03/24 07:37
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 研究所三階の一室で、戦いの様子を観察し続けるシオリ・カナは、ウィザードの戦闘力とサザルが押されているこの戦況に驚きを隠せなかった。
「ウィザード・・・、これまでの調査でかなりの力をつけている事は知っていたけど、まさかここまでやるなんて・・・」
 自分の目で初めて見たウィザードのその力は、カナが調べ上げて数値化した結果をはるかに凌駕するのものだった。
「このまま戦えば、サザルは負けるかもしれない。そうなる前に・・・」
 そう言ったカナの手には、自らが開発した機械仕掛けのベルトのバックルが握り締められていた。



 疲労を見せるクロウ・ゾディアーツを取り囲む様に、正面にウィザード・フレイムドラゴンと、分身体のハリケーンドラゴンとウォータードラゴンが。背後に剣を構えたランドドラゴンが立っている。
 完全に包囲された状態だった。
「さあ、話してもらおうか。お前達は一体何者なんだ?何かの組織か?ファントムと関係あるのか?」
 両脇にハリケーンドラゴンとウォータードラゴンを従えたウィザード・フレイムドラゴンが、一気に疑問を投げかけた。
 復活したファントム退治から始まり、今日一日で随分と多くの出来事が周りで起こった。
 ファントム復活の裏で暗躍する謎の怪物。笛木の屋敷やこの研究所を襲った白服集団の目的と正体。
 数々の疑問が晴人の中で渦巻いていた。
 晴人だけではない。凛子や瞬平、真由や攻介、国安ゼロ課の木崎も。今日一日で起きた各所の出来事に関与した全ての者が、きっとその答えを知りたがっている。
「フン・・・。俺達は、魔力を求める者。強力な魔力を集めて、最強の魔法使いを作り出そうとしている組織だよ」
 そう答えたクロウ・ゾディアーツは、ガクガクと足を震わせながら立ち上がった。
 分身の三人のウィザードが武器を構え、警戒を強める。
「魔力を集める?魔法使いを作り出すって・・・、一体どういうことだ?」
 笛木奏=白い魔法使いがかつて行った行為を、ウィザードはその脳裏に思い出していた。
 

 自分の娘、暦を蘇らせようと企んでいた笛木は、その目的のために、絶望を乗り越えたゲートを使って魔法使いを育て上げていた。
 晴人自身もその一人だった。
 あの行為も言ってしまえば“魔法使いを作り出す”という事になるのかもしれない。
 だとしたら、コイツらも同じ事を実行しようとしているのか?
 ゲートをわざと絶望させて、耐え抜いた者を魔法使いに変える。
 もしそうなら、絶対に好き勝手はさせない。
 あんな辛い思いを、これ以上誰かに味わわせる訳にはいかない。

 ウィザードの質問に、クロウ・ゾディアーツは口を開く。
「さあな。俺は所詮、部下の一員に過ぎないからな。好き勝手話す訳にはいかない。そんなに知りたきゃ、あそこで俺達を見ている上司に聞いてみるんだな」
 肩を竦めながら言い放ち、鋭い鉤爪でカナが潜む研究所三階の窓を指差した。
「上司だと?」
 ウィザードは指差しされた研究所にチラリと視線を移した。
 その瞬間、隙をついたクロウ・ゾディアーツは両翼をバサッと広げて、猛スピードで空に上昇した。
 唐突だったため、見張っていた分身体の反応が遅れてしまった。
「しまった!?」
 慌てて空を見上げるウィザード。
「隙アリだぜ魔法使い!」
 クロウ・ゾディアーツは、すかさず両翼から羽手裏剣を連射した。
 今度は四人のウィザードが逃げられない様に広範囲に射出する。
「うわぁあああ!!」
 豪雨の様に降り注ぐ羽手裏剣を浴びて、思わずたじろいでしまう四人のウィザード達。
 攻撃範囲が広すぎる。このままでは、せっかく用意したワゴン車も巻き添えだ。
 ウィザード・フレイムドラゴンは、敵の攻撃を阻止するべく、行動を起こす。
 ベルトのサイドレバーを上下させ、掌の紋章に右腕のドラゴタイマー本体をかざした。
『オールドラゴン・プリーズ』
 次の瞬間、フレイムドラゴンを除く三人のウィザードの姿が魔法陣に変わり、フレイムドラゴンの体に集中するように重なりだした。
 ウィザード・フレイムドラゴンは全身から輝きを放ち、その姿を大きく変化させた。
 胸部にウィザードラゴンの頭部、ドラゴスカルが。
 腰部にはウィザードラゴンの尾、ドラゴテイルが。
 同様に、背中には翼のドラゴウィング、両腕には竜の爪ドラゴヘルクローが具現化し、まるでウィザードとウィザードラゴンが融合したかの様なフォルムに変貌した。
 
 ウィザード・オールドラゴン。
 ウィザードラゴンの力を限界まで解放した事で得られた、強化形態の完成形の一つである。

「決着をつけよう!」
 ウィザード・オールドラゴンは両翼を羽ばたかせて突風を起こし、降り注ぐ羽手裏剣を全て吹き飛ばした。
 直後に高速で飛び上がり、クロウ・ゾディアーツの下へ突っ込んでいく。
「来い!叩き潰す!」
 クロウ・ゾディアーツは両腕の鉤爪を振るって迎え撃つ。
 ウィザードもドラゴヘルクローで対抗する。
 空中で両者の爪が激しくぶつかり合う。
 と、突然ウィザードが両腕のドラゴヘルクローを同時に振り上げ、敵の両腕を固定して動きを封じた。
 そして同時に、胸部のドラゴンの頭部、ドラゴスカルから火炎放射を放ち、敵のボディに火傷を負わせた。
「ぐぉおおおおっ・・・。あっついぜぇ!」
 クロウ・ゾディアーツは両足でウィザードを蹴り飛ばし、距離を取ってそれを逃れた。
 直後にお返しだと言わんばかりに、遠距離から羽手裏剣を連射する。
 ウィザードは横に滑空しながら羽手裏剣を回避し、同時にもう一度火炎放射を放つ。
 クロウ・ゾディアーツも同じ様に、横に飛んでそれを避けようと動きを見せたが、反応が一瞬遅れたのか、避けきれずに片翼が炎を浴びてしまった。
「ちっ!しまった・・・」
 片翼を焼かれ、大幅にスピードダウン。空中でのバランスも失ってしまった。
「フィナーレだ!」
 その瞬間、戦いに勝機を見出したウィザードは決め台詞を宣言した。
 全身から四つの魔法陣を放ち、まるで道を作るかのように前面に一列にして並べた。
 四つの魔法陣の先にいるのは、勿論クロウ・ゾディアーツ。
 ウィザードは助走をつけるかの様に一度空中で旋回すると、右足を前に出し、キックの体勢で魔法陣を潜り抜けた。
「はぁあああああ!!」
 赤、青、緑、黄。四色の魔法陣を順番に潜り、四つの属性の魔力を右足に集中させた渾身の一撃は、次の瞬間クロウ・ゾディアーツの漆黒の体に叩き込まれた。
「ぐっ!がぁああああああ・・・」
 ウィザード・オールドラゴンの強力な蹴りが直撃し、コズミックエナジーで構成されたクロウ・ゾディアーツの肉体は崩壊。
 次の瞬間、空中で大爆発が起こった。
 それは、暗闇が支配する研究所を囲む森を、一瞬、真昼間と誤解させるほどの光を放っていた。



(諸事情により、改名させて頂きましたw)

二十七. 不完全な鎧 ( No.34 )
日時: 2014/03/25 19:14
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 完全に日は沈み、夜空には満天の星と丸い月が静かに顔を出していた。
 その背景をバックに、ウィザード・オールドラゴンとクロウ・ゾディアーツは激しい戦いを繰り広げていた。
 二人がぶつかり合う度に放つ火花の光を、シオリ・カナはただ呆然と見ているだけしかできなかった。

 戦いの次元が違う。レベルが高すぎる—
 
 戦いの展開はクロウ・ゾディアーツが苦戦しつつあった。
 ウィザードが放った炎に翼を焼かれ、クロウ・ゾディアーツの動きが鈍った。
 戦いが続くにつれて、自分の心臓の鼓動が速くなっていくのをカナは感じていた。
 バックルを握り締めている手もカタカタと震えている。
 
 まずい・・・。このままでは本当にサザルが倒されてしまう—
 
 カナがそう思った矢先、ウィザードが四つの魔法陣を潜りながら強力なキック技を放った。
 クロウ・ゾディアーツは避ける間もなくそれを体で受けた。
 次の瞬間、ドォーンと地響きを起こすほどの爆発音と共に、空中が眩しく光った。
 クロウ・ゾディアーツの肉体を構成するコズミックエナジーが星空に飛び散っていく。
「サザルー!!!」
 窓に体を密着させながら、カナは絶叫した。
 あの空の爆炎の中にサザルがいる。
 きっと変身も解けて、生身の姿に戻っているはずだ。
 このまま放って置けば、あの炎に燃やされて消し炭になるか、重力に任せて落下して地面に激突するかのどちらかだ。
 最悪の可能性が、次々にカナの脳裏を支配していく。
 カナは必死で脳内のイメージを掻き消した。と、その時、
 爆炎が黒煙の塊になっていく中で、地面に向かって落下していくサザルの姿が見えた。
「サザルっ!」
 カナはすぐに決断した。
 
 この状況で彼を救えるのは私しかいない—

 カナはその手に握る機械仕掛けのバックルを、躊躇い無くその身に取り付けた。
 バックルから伸びたベルトがカナの腰に巻きつく。
 
 まだ魔力を持たない不完全体だけど、彼を助けることはできる—

「変身!!」
 カナはその可憐な声で力強く叫んだ。
 ピピッ。
 カナの音声コードを認識したバックルから起動音が鳴り、次の瞬間、カナの体は薄い灰色のアーマーに包まれた。
 その姿は、スラッとスリムな体形に丸みの帯びたアーマーが装着され、魔女のトンガリ帽子を連想させる頭部と、背中のマントが印象的な鎧の戦士の様だった。
 カナが変身した鎧の戦士は、目の前の窓ガラスを壁ごと突き破り、研究所の外へ飛び出した。
 そして、そのまま落下するサザルを空中でキャッチすると、華麗に地上へ着地した。

「あれは!?また新手か?」
 上空でその様子を見ていたウィザードは、新たに現れた鎧の戦士の姿に戦慄しながらも地上へ降りることにした。
 着地した瞬間、オールドラゴンの形態を解除し、フレイムドラゴンに姿を戻した。

 鎧の戦士の腕の中で、サザルは目を開いた。
「主任・・・。アンタ、ベルトを使ったのか!?」
 視界に飛び込んできた鎧の戦士の姿に、サザルは驚きを隠せなかった。
「ええ。貴方の命が危険だったから・・・。後は私に任せて、貴方は休んでなさい」
 そう言ってサザルから離れると、鎧の戦士はスッと立ち上がり、ウィザード・フレイムドラゴンの前に立ちはだかった。
「アンタ、まさかウィザードと戦う気か!?無理だ!ソイツはまだ魔法が使えない・・・、身体能力を向上させるだけのただの甲冑でしかないだろ!」
 地面に座り込んだ状態で、サザルは言い叫んだ。
「大丈夫よ。私は貴方達の上司だもの。部下だけに戦わせる訳にはいかない!」
 サザルに背後を向けながら、鎧の戦士=カナも叫ぶ。そして、
「ウィザード、今度は私が相手をするわ。私はサクセサー。貴方を倒して、貴方の後継者になる女よ!」
 戦いの構えを取り、ウィザードに堂々と宣戦布告するのだった。
「俺の後継者に?ってことは、お前も魔法使いなのか?」
 ウィザードも構えを取って戦闘体勢に入る。
 だが、同時にふとした疑問が脳裏を過ぎった。

 サクセサー、
 俺も魔法使いになってから随分と経つが、こんな異質な魔法使い、見たことが無い。
 指輪をつけていないし、ベルトの形もなんというか・・・機械的で、初めて見る形だ。
 頭部の形だけは、かつて魔法の世界で遭遇した金色の魔法使いに似ている気もするが・・・。

「後継者だか何だか知らないけど、お前が魔法使いだっていうなら、その力、見せてもらう!」
 ウィザードはウィザーソードガン・ソードモードを手にすると、そのまま走り出し、鎧の戦士・サクセサーに斬りかかった。
 上下左右に刀身を振り、攻撃を仕掛ける。
 一撃、二撃目は回避されたが、下段から繰り出した三撃目がサクセサーのアーマーを傷つけた。
「きゃああっ!」
 思わず悲鳴を上げて地面を転がるサクセサー。
 随分と女の子らしい悲鳴が鎧の中から聞こえ、ウィザードは何だか拍子抜けな気分になってしまった。
 だが、だからといって手を抜くわけにはいかない。
 連戦が続いたせいで、ウィザードの魔力も残り僅かなのだ。
 ウィザーソードガンをガンモードに変形させ、サクセサー目掛けて射撃した。
 どう動く?魔法で防ぐか?
 しかし、思惑とは裏腹に、サクセサーが取った行動は、ただ横に飛んで回避するだけだった。
 銀色の弾丸が地面に着弾する。
 サクセサーは素早い身のこなしでウィザードに接近すると、左右交互に連続で蹴りを打ってきた。
 ウィザードは両手であっさりとそれを弾くと、銃口をサクセサーの胸に密着させ、ゼロ距離で弾丸を撃ち込んだ。
 その衝撃で、サクセサーの小柄な体は、背後に大きく吹き飛んだ。
 ウィザードの疑問がさらに大きくなる。
 コイツ、本当に魔法使いなのか?さっきから魔法を使う様子が全く無いし、何より弱すぎる。

 ほとんど一方的なウィザードとサクセサーの戦いを目にし、サザルは苛立ちを感じていた。
「ちっ。あの女、余計な事を・・・。ここで倒されたら計画が台無しだろうが」
 そう呟いたサザルの手には、一枚の銀色のメダルが握り締められていた。

 800年以上前の錬金術師達が作り上げたメダルの一つ。
 セルメダルが。


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