二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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仮面ライダーウィザード〜終幕の先〜【完結】
日時: 2017/04/15 00:31
名前: 裕 ◆.FlbxpLDSk (ID: XGjQjN8n)

こちらでは初めて投稿させていただきます、裕と申します。
今回はこの場を借りて、平成仮面ライダーシリーズ第二期から
「仮面ライダーウィザード」の物語を積み上げてみたいと思います。

個人的解釈としましては、第二期である「ダブル」〜「鎧武」までの作品は、同じ世界観だと思って見ております。なので、今回の物語もそれに沿った流れで書いていこうと思います。それに伴い、第二期各作品(劇場版)の設定も拝借する予定です。

物語の時間軸は「ウィザード」本編の最終回後、さらに言えば冬の映画「戦国MOVIE大合戦」の後の話だと思っていただけると幸いです。

ではでは。


〜登場人物〜


・魔法使いとその関係者

操真晴人=仮面ライダーウィザード

仁藤攻介=仮面ライダービースト

稲森真由=仮面ライダーメイジ

奈良瞬平

大門凛子(国安ゼロ課・刑事)

木崎政範(国安ゼロ課・警視)

ドーナツ屋はんぐり〜・店長

ドーナツ屋はんぐり〜・店員


・財団X

シオリ・カナ(栞 可奈)=仮面ライダーサクセサー

ヤマト=メモリー・ドーパント

ネオン・ウルスランド(局長)


・宇宙仮面ライダー部

野座間友子

ジェイク(神宮海蔵)

仮面ライダーフォーゼ


・鳴海探偵事務所

左 翔太郎=仮面ライダーダブル(左サイド)

フィリップ=仮面ライダーダブル(右サイド)


・怪人

サザル=ファントム・グレンデル

ファントム・ラミアー

ファントム・ヘルハウンド(ログ)

ファントム・シルフィ(ログ)

ファントム・バハムート(ログ)

ファントム・メデューサ(ログ)

グール

クロウ・ゾディアーツ

ペルセウス・ゾディアーツ

黒ネコヤミー

オールド・ドーパント

マスカレイド・ドーパント(白服)

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五十八. 信じること ( No.65 )
日時: 2015/01/24 18:15
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 相手の能力や技をコピーしてそれを自分の力とする。
 もしそうなら、魔力を持たない怪物が魔法を使うという事実にも納得がいく。
 どういう理屈かは知らないが、再現、つまりは他人の技の真似事をしてくるというわけか。
 しかしそうなると、魔法なしでどうやって戦う?
 格闘術だけで果たしてあいつに勝てるのか?
 いや、無理だ。決定打無くして勝利はない。
 身体に組み付いてくる液状のメモリー・ドーパントをなんとか振り払おうと抵抗を続けながら、
ウィザードは思考を張り巡らせ考える。
「まずはコイツから離れるのが先か……」
『リキッド・プリーズ』
 もう一度液状化の魔法を発動させ、なんとかメモリー・ドーパントの組み付き攻撃から逃れる
ウィザード。
 互いに距離を取った両者は同時に液状化を解除する。
「晴人さん……」
 危機を脱したウィザードに安堵するメイジだったが、自身もまた、無闇に魔法を使えばメモリー・
ドーパントの強化に繋がるかもしれないという状況に困惑していた。
(とは言ったものの、私も魔法抜きでメデューサに勝てる自信はない…。だからといって不用意に魔法
を使えば、晴人さん達の迷惑になってしまう…。どうすれば……)
 メデューサとの攻防を続けながら暫く考えた末、メイジはある結論に至った。
(そうだ、晴人さんと仁藤さんなら、きっと活路を開くことができる。なら私は、せめて二人の邪魔に
ならないように……)
「晴人さん、仁藤さん、ここは二人にお任せします! 私は二人の邪魔にならないようにメデューサと
一緒に何処か別の場所へ……」
「真由ちゃん!?」
「おい、いきなり何を……」
 突然の、メイジの突拍子もない発言に、ウィザードとビーストは一瞬耳を疑った。
 たしかに、敵のコピー能力のカラクリは不明なままだが、メモリー・ドーパントがこの場所にいる以上
、メデューサと戦うメイジも無闇に魔法は使えない。
 もし魔法を使用すれば、メモリー・ドーパントと戦うウィザードとビーストの更なる苦戦に繋がる可能
性がある。
 メイジが場所を変えれば、少なくとも敵の強化の源が一つ絶たれる。
 それに、メイジ自身も周りを気にせずに心置きなくメデューサと決着を付けることができるだろう。
 身勝手かもしれない。
 敵の攻略法も企みも、何一つ明らかになっていないのに、一番厄介な部分を二人に押し付けようとして
いる。
 でも、それでも…。
「二人が私を信じてくれたように、私も晴人さんと仁藤さんのこと、信じていますから!」
 メイジは言い切った。
 今まで、どんな強敵にも勝利してきた二人、あらゆる絶望を希望に変えてきたウィザードとビースト
なら必ず勝てると信じて。
「シャァアアアア!!」
 不気味な声を上げながら、メデューサが大蛇の形をした魔力の光線を放ってきた。
 メイジはすかさずそれを回避して、跳躍でメデューサの後ろに回りこむ。
 そして、背後からガッチリと組み付いてメデューサの動きを拘束すると、心配そうに見つめるビースト
とウィザードに向かって、「大丈夫です」と言わんばかりに首を縦に振り、そのまま右手の指輪をベルト
にかざした。
『テレポート・ナウ』
 次の瞬間、メデューサもろともメイジの姿は光に包まれ、この場所から姿を消した。
「真由ちゃん……」
 メイジとメデューサがいなくなった場所を見つめながら、ウィザードは小さく呟いた。
「おい、晴人! 真由ちゃんのことなら心配すんな。さっきも言ったろ、あの子は強いって。真由ちゃん
だって俺達のことを信じてくれてるんだ。ここで期待に応えないと、俺達、男じゃねぇぞ!」
 ダイスサーベルの刀身を肩にかけながら、自分の気持ちを誤魔化すようにビーストが強気に言い放つ。
 メイジを、真由を心配する気持ちはウィザードもビーストも同じ。
 しかしそれでも、ここで戦意を失わないためにも、誰かが士気を鼓舞しなければならない。
 その役を買って出たのがビーストだった。
「ああ、そうだな…。俺達は俺達のやるべきことをやろう!」
 ビーストの言葉を受け、ウィザードも決心がついたのか、気持ちを切り替えるかのように頷く。
 メイジの気持ちに応えるべく、なんとしてでも敵の攻略法を見つけ、この戦いに勝利しよう。
 ウィザードは決意新たに左手の指輪を付け替えた。
『フレイム・ドラゴン ボォー、ボォー、ボォーボォーボォー!』
 赤い魔法陣を潜り抜け、同時に炎の竜を身に纏い、ウォータードラゴンの青いローブが真っ赤な色に
変化する。
 ウィザードはフレイムスタイルの上位形態、フレイムドラゴンへと進化した。
「おっしゃ! 俺も全力でいくぜ!」
 変化するウィザードを横目に、ビーストも右手の指輪を付け替える。
 そして、ベルトの右側のシリンダーにそれを差し込んだ。
『ハイパー! GO! ハイッハイッ・ハイ・ハイパー!』
 ベルトから鳴るテンションの高い音声と共に、魔法陣から出現したビーストキマイラの幻影と同化
した瞬間、ビーストはビーストハイパーへと進化した。
 真っ赤なローブを翻し、ウィザード・フレイムドラゴンはウィザーソードガン・ソードモードを
構え、ビーストハイパーも黄金のアーマーを輝かせながら、銃型の武器ミラージュマグナムの銃口を
メモリー・ドーパントに向けた。
 二人は阿吽の呼吸でほぼ同時に走り出す。

五十九. 緑と黒の仮面ライダー ( No.66 )
日時: 2015/01/24 19:12
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 まともに魔法が使えない以上、ウィザードとビーストハイパーは接近戦に勝負を賭けることにした。
 接近しながら、ビーストハイパーはミラージュマグナムのトリガーを引き、魔力の光弾を連射する。
「メモリーログ! メイジ、バリアー!」
 しかしそれを、メモリー・ドーパントは光の壁で簡単に防御する。
 薄暗い配管施設に響き渡る複数の足音を背に、ウィザードはウィザーソードガンで斬りかかり、
ビーストハイパーも射撃を止めると同時に渾身のハイキックを放つ。
 だが、メモリー・ドーパントは左右の手で二人の同時攻撃を受け止めると、それらを振り払い、逆に
二人の腹部目掛けて強力な掌底を叩き込んできた。
「ぐっ!?」
「ぐへぁ!?」
 凄まじい衝撃と苦痛を受けながら、ウィザードとビーストハイパーは背後に吹っ飛んだ。
 攻撃を受けた腹部を手で押さえながら、なんとか体勢を立て直す二人。
「ってぇな…。この脳みそ野郎!」
 すかさずビーストハイパーが射撃で応戦を試みるが、超人的な身体能力を持つメモリー・ドーパント
は、アクロバティックな動きで簡単にそれを回避した。
「なんて身のこなしだ…」
 まるで曲芸のような敵の動きに、驚きを隠せないウィザード。
 あの動きを封じるために、本当なら相手を拘束する“バインド”か身体の一部を鞭のようにしならせる
“エクステンド”の魔法を使いたいところだが、メモリー・ドーパントの能力の前ではそれも叶わない。
 敵の対抗策をなんとか見つけ出そうと頭を悩ませるが、そうしている間にもメモリー・ドーパントは
容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
「メモリーログ! メイジ、エクスプロージョン!」
 ウィザードの眼前に魔法陣が出現。
 次の瞬間、そこから強力な爆発が発生した。
「まずい!」
『ディフェンド・プリーズ』
 思わず防御の魔法を発動させたウィザードだったが、相手の爆発の魔法は予想以上に威力が強く、
その爆炎に、ウィザードは出現させた炎の盾もろとも吹き飛ばされてしまった。
 炎の盾が消滅し、冷たいコンクリートの床を無様に転がるウィザード。
「大丈夫か、晴人!」
 そんな彼のそばに、ビーストハイパーが慌てて駆け寄ってきた。
「ああ、なんとかな…。でも、相手は強敵だ。驚異的な身体能力だけじゃない、魔法の真似事も絶妙
なタイミングで仕掛けてくる。このままじゃ、敵の弱点を見つける前に二人とも御陀仏だ…」
「まったくだ…。いっそ誰かにアイツの倒し方を聞きたいくらいだぜ…」
 メモリー・ドーパントの反則的な能力と強さを前に、ウィザードもビーストハイパーも正直うんざり
としていた。
 未だ致命的なダメージをまったく受けていないメモリー・ドーパントの姿に、せっかく鼓舞した戦意
もまた失いそうになる。
 ゆっくりと歩み寄ってくる敵の姿と万策尽きたこの状況に、二人の魔法使いは途方に暮れていた。
「僕の勝ちだね」
 勝利を確信し、思わずニッと笑みを浮かべるメモリー・ドーパント。
「メモリーログ……」
 止めを刺すべく、彼が右手をスッと前に突き出した。と、次の瞬間、
 突然、この地下の配管施設を一陣の風が駆け巡った。
 ビュゥウウーっと大きな音を立てながら、狭い施設内を縦横無尽に吹き抜ける。
 こんな地下でどうして風が?
 ここにいる誰もが疑問に思った。
 風は突風のように強く、嵐のように激しかったが、何故か不思議と爽やかで、包み込まれたウィザード
とビーストハイパーを清々しい気分にさせた。
 一方で、同じく風を浴びたメモリー・ドーパントは、その風の激しさに動きを封じられていた。
 まるで風そのものが全身に纏わりつき、身体の自由を押さえ込もうとしているような。
 突き出した右手も引っ込めざるを得ない状況だった。
 同じものなのに感じ方が全く異なるその風に、呆気に取られる二人の魔法使いとメモリー・ドーパント。
 その時、施設の出入り口である螺旋階段の方から突如声が聞こえてきた。
「おいおい、“仮面ライダー”の名を背負いながら弱音か? お前たちは絶望を希望に変える仮面ライダ
ーなんだろ。だったら最後まで諦めるな。諦めなければ、自分達の絶望的な状況も必ず希望に変わるハズ
だ。そうだろ?」
 その言葉にウィザードとビーストハイパー、メモリー・ドーパントまでもが視線を向ける。
 次の瞬間、彼らの目に映りこんだのは、螺旋階段の上で颯爽と佇む二色の戦士の姿だった。
「お前は……」
 メモリー・ドーパントが驚きの声を上げる。
 すると緑と黒の二色の戦士は、頭部の鋭い二本の触角をクールに撫でながら、
「俺は……いや、俺達は、街の涙を拭う二色のハンカチ、仮面ライダーダブル! 二人で一人の探偵で
、二人で一人の……仮面ライダーだ!」
 と、声高らかに宣言した。

六十. ダブル ( No.67 )
日時: 2015/01/29 19:18
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 仮面ライダーダブルは風の街“風都”を守る秘密の戦士だ。
 鳴海探偵事務所の探偵“左 翔太郎”と、地球の記憶の全てを脳内に持つ魔少年“フィリップ”が
一つになることで誕生する超人で、専用に開発された八本のガイアメモリとそれを使ったハーフチェンジ
を駆使して、数々のドーパント犯罪に立ち向かってきた。
 風都を実験場と称してガイアメモリの研究と密売を行ってきた組織、ミュージアムを壊滅させ、さらに
その背後でスポンサーとして暗躍していた財団Xのエージェント、加頭 順を倒したダブルは、組織に
接触した最初の仮面ライダーでもあった。
 ボディの真ん中を走る銀色のラインを境に分かれた二つの色。
 フィリップが司る右半身の緑と翔太郎が司る左半身の黒。
 そして、真っ赤な複眼とV字型の二本の触角、右肩から伸びた銀色のマフラー。
 素早い動きと格闘戦を得意とするサイクロンジョーカーと呼ばれる形態のダブルは、手摺りを乗り越え
て足場としていた螺旋階段から飛び降りると、ウィザードとビーストハイパーの眼前にスタッと着地した。
「待たせたな。国安の木崎って人からの依頼、引き受けに来たぜ!」
 気取ったポーズを決めながら、ダブルが言い放つ。
「君達が仮面ライダーウィザードと仮面ライダービーストだね? 魔法を使う仮面ライダーか、実に
神秘的で、興味深い……」
 右目を点滅させながら、続けてまたダブルが言う。が、
 しかし、その声は最初に発したものとは声質が異なっていた。
 最初のダブルの声が成人した青年のようなものならば、二言目のダブルの声はクールに振舞う少年の
ようなものだった。
「おい、今、コイツから二人分の声が聞こえてこなかったか?」
 違和感を感じたビーストハイパーが、まるで子供のようにダブルを指差した。
「ああ、さっきも言ったろ、俺達は二人で一人の仮面ライダーだって。俺の中にはもう一人、フィリップ
って奴の人格もあるんだよ」
「そういうことだ。さっき喋ったのが左 翔太郎というこの身体の持ち主で、今、こうして喋っている
のがフィリップ、つまり僕のことだ」
「あ〜…、なんかよくわかんねぇけど、不思議なことってのは理解した」
 言いながら、ビーストハイパーは後頭部をポリポリと指で掻いた。
 そんな彼に「わかってねぇじゃん」とツッコミを入れつつ、ウィザードはダブルに握手を求めた。
「とにかくありがとう。来てくれて感謝する。あんた達に助けてもらうのは、これで何度目かな」
「何度目? 俺達が会うのは、これが最初のはずだぜ?」
 出されたウィザードの手を握り締めながら、ダブルは首を傾げる。
 正確にはダブルの左半身、翔太郎が首を傾げる。すると、
「恐らく、彼の言っている僕達とは、別の世界のダブルのことだろう」
 と、ダブルの右半身、フィリップが話に割って入ってきた。
「別の世界? どういうことだ、フィリップ」
「簡単な話だよ、翔太郎。僕達が存在するこの世界のほかにも、似たような世界は無数に存在するという
ことさ。そのことについてはディケイドが既に証明してくれているからね。僕達も過去に経験している
だろう?」
「経験って……。あ、おやっさん!」
「そう。僕達は以前、別の世界の仮面ライダースカル、鳴海壮吉に会ったことがある。ウィザードが
言っていることも同じことだろう。彼が会ったのは別の世界に存在する僕達のことさ」
「ふ〜ん、なるほどな」
 一見すると独り言のようにも思えるダブルの会話。
 そんな様子にウィザードとビーストハイパーは思わず苦笑する。
 フィリップの言うとおり、ウィザードは別世界のダブルと何度か共闘をしたことがある。
 一度目はポワトリンのアンダーワールドでアクマイザーと戦った時。
 二度目は旅の途中、魔法石の世界に迷い込んだ時。
 そして三度目は戦極時代で武神鎧武と激闘を繰り広げた時。
 どの世界で出会ったダブルも確かに力を貸してくれた。
 そして今回も。
 疑問が解決されてスッキリしたのか、ダブルの左半身、翔太郎は「さてと」と気持ちを改めた。
「お前たちの仲間のスクールガールとポリスレディーの案内でここまで辿り着いたんだ。依頼分の仕事
はきっちりさせてもらうぜ!」
 そう言いながら、ダブルは左手首を回しながらメモリー・ドーパントの方に視線を向けた。
「もしかして、あんた達をここまで連れてきたのは、凛子ちゃん達か?」
 ダブルの横に並びながらウィザードが尋ねる。
「ああそうだ。彼女達もここに来ている。危険だから上で待たせてるけどな」
「そうか…」
「話は後にしようぜ! まずはあの脳みそ野郎をぶっ飛ばすのが先だ!」
 ダブルという助っ人の登場ですっかり戦意を取り戻したのか、両手に武器を構えて威勢を見せる
ビーストハイパー。
「何故だ…、風都の仮面ライダーであるお前が何故ここにいる!?」
 いつの間にか風の妨害も解け、身体の自由を取り戻していたメモリー・ドーパントが叫ぶ。
 ダブルの乱入が相当誤算だったのか、その異形の表情からは焦りをも感じさせていた。
「ちょっとした出張依頼って奴さ。相手がドーパントで財団Xなら、俺達が動かないわけには
いかないだろ? それに、仲間のある仮面ライダーが言ってたぜ。“ライダーは助け合い”だってな。
同じ仮面ライダーの名を持つ者がピンチなら、俺達は迷わず駆けつける!」
「ああ、仮面ライダーの絆が、俺達の希望だ!」
「今度こそ食ってやるから覚悟しろよな、脳みそ野郎!」
 ウィザード・フレイムドラゴンが剣を構え、ビーストハイパーがサーベルと銃を手に取る。
 そして、ダブル・サイクロンジョーカーが左手の人差し指を突き出してこう告げる。
「「さあ、お前の罪を数えろ!」」

六十一. 反撃の兆し ( No.68 )
日時: 2015/02/06 17:27
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

「翔太郎。ウィザードとビーストも聞いてくれ!」
 肩を並べる戦士たちに、ダブルの右半身に宿るフィリップが声をかけてきた。
「まずは敵の攻撃パターンを知りたい。すまないが、僕の指示通りに動いてくれないか?」
「指示通り? それってどういう…」
「まずは情報収集ってことだろ、相棒? わかってるぜ。情報集めは探偵の基本中の基本だからな!」
「俺は構わないぜ! アイツを食えるなら何でもいい!」
「わかった。俺もあんた達の指示に従うよ!」
「ありがとう。それじゃあ、できるだけ敵に手の内を曝け出させるために、皆にはあらゆる攻撃を
試してほしいんだ。遠慮なく魔法を使ってくれて構わない」
「はあ? いいのかよ、アイツはな…」
「問題ない。敵の能力については先に情報を得て既に検索済みさ。僕が知りたいのは、その能力を使用
するメモリユーザーの行動と思考。それがわかれば、敵を攻略する術も見つけられるはずさ!」
「なんかよくわからねぇけど、遠慮する必要ねぇんだな?」
「ああ、後のことは心配しなくてもいい」
「あいよ。じゃあ、行くぜ!」
 話の趣旨は理解し切れなかったものの、とりあえずウィザードとビーストハイパーはフィリップの提案
に乗ることにした。
 作戦も決まり、改めて戦闘態勢に入った戦士たち。
 ウィザード、ビーストハイパー、そしてダブルの三人は一斉に駆け出した。
 標的は眼前に立ちはだかるメモリー・ドーパント。
 頭部から伸ばした無数のプラグコードが、触手のようにうねりながら襲い掛かる。
 ウィザードとビーストハイパーがそれぞれの剣でそれを弾き返し、先導するダブルが飛び蹴りを放つ。
 あっさりと、ダブルの蹴りを払うメモリー・ドーパントだが、ダブルも負けじとさらに連続で回し蹴り
を繰り出していく。
 鋭い連続キックが、ヒュンヒュンと音を立てながら何度も風を切る。
 しかし、メモリー・ドーパントはその超人的な反射神経を研ぎ澄まし、ダブルの攻撃全てに対応し
順応してみせる。
 素早い動きと蹴り技を主体に戦うダブル・サイクロンジョーカーの技の数々が、時に潜り抜けるように
回避され、時に掌で受け止められて弾かれてしまう。
 一撃もヒットしないまま、今度は逆にメモリー・ドーパントが反撃に出る。
 一瞬の隙にダブルの腹部に拳を二発叩き込み、怯んだところで魔法を発動させる。
「メモリーログ! ウィザード、サンダー!」
 出現した魔法陣から放たれた雷撃が、ダブルの身体に感電する。
 体勢を崩すダブルを余所に、ならばとウィザードとビーストハイパーが攻撃を仕掛ける。
 ウィザードがウィザーソードガン・ソードモードを振るい、ビーストハイパーがダイスサーベルで
突きを出す。
 が、それらの攻撃すらもメモリー・ドーパントは難なく回避する。
 それどころか、すれ違いざまにウィザードとビーストハイパーの懐にカウンター気味にパンチとキック
をお見舞いする始末である。
 攻撃するつもりが逆に攻撃を受けてしまった二人。
 苦痛を感じながら、ウィザードとビーストハイパーはその場に倒れこんだ。
「最初は焦ったけど、所詮一人増えたところで勝敗は変わらない。この勝負、やはり僕の勝ちだね。
メモリーログ! ウィザード、ブリザード!」
 眼前に倒れ伏すウィザードとビーストハイパーを前にし、己の勝利が揺るがないことを確信したメモリ
ー・ドーパントは、今度こそ彼らに止めを刺すべく、掌をかざして魔法陣を展開した。
 現れた魔法陣の中心から、強烈な冷気が放出される。
 真っ直ぐと自分達の視界に飛び込んでくる冷気の姿に危機を感じるウィザードとビーストハイパー。
 なんとか避けようと身体に力を込めるが、メモリー・ドーパントから受けた攻撃の威力が想像以上に
強く、その反動が彼らの回避行動の妨げとなっていた。
「まずい…」
「やべぇ…、このままじゃ今度こそ氷漬けだ…」
 動きたくても動けない。
 絶体絶命の二人だったが、しかしその時、
『メタル・マキシマムドライブ』
 突然、ウィザードとビーストハイパー、そしてメモリー・ドーパントの耳に聞き慣れない電子音声
が届いてきた。
 ウィザードとビーストハイパーが振り向くと、そこにいたのは特殊な金属棒を構えた赤と銀色の身体
をしたダブルの姿だった。
 緑と黒のサイクロンジョーカーだったダブルが、いつの間にか攻撃と防御に特化したヒートメタル
という形態に変化していた。
 ダブルの最大の特徴であるハーフチェンジ。
 そのプロセスとは、Wの形をしたベルト、ダブルドライバーに装填された二本のガイアメモリの組み
合わせを変えることで変化する。
 今、ダブルは咄嗟の判断、正確にはフィリップの判断でベルトの中の“サイクロン”と“ジョーカー”
のメモリを抜き取り、代わりに熱の記憶を持つ“ヒート”と闘士の記憶を持つ“メタル”のメモリを
装填した。
 そして、熱き闘士のヒートメタルとなったダブルは、メモリー・ドーパントが放った冷気に応戦する
べく、渾身の一撃を放とうとしていた。
 ベルトから抜き取った“メタル”のメモリを金属棒型の専用武器、メタルシャフトのスロットに装填
し、エネルギーを集中させる。
「「おおお…メタルブランディング!!」」
 ダブルの中の翔太郎とフィリップ、二人は呼吸を合わせるかのように声を重ねて技名を叫んだ。
 と、同時に、先端から高熱が放出されたメタルシャフトを豪快に振り回し、炎の波を撃ち出した。
 冷気と炎が衝突し、直後に白い蒸気が施設内に充満する。
 視界の悪い状況の中で、ダブルはウィザードとビーストハイパーの元に駆け寄った。
「風で蒸気を吹き飛ばす。敵の姿を確認したらすぐに攻撃を」
 それだけ言うと、ダブルドライバーの右側に装填されていた“ヒート”のメモリを抜き取り、すかさず
“サイクロン”のメモリと交換した。
『サイクロン・メタル』
 電子音声が鳴り響くと同時に、赤色だったダブルの右半身が再び緑色に変化する。
 風の属性を得たダブル・サイクロンメタルは、メタルシャフトを二度三度振るって突風を巻き起こした。
 刹那に白い蒸気は掻き消され、メモリー・ドーパントの姿も露になる。
「今だ、仁藤!」
「おう!」
 敵の姿を目視した途端、ダブルの言葉通り、ウィザードとビーストハイパーは攻撃に打って出る。
『チョーイイネ! スペシャル サイコー!』
『FIVE! ハイパー! セイバーストライク!』
 ウィザード・フレイムドラゴンの胸部に具現化したドラゴンの頭部、ドラゴスカルから炎が放射され、
ビーストハイパーがダイスサーベルで描いた魔法陣から、ファルコン、バッファロー、カメレオン、
イルカの幻影が各5体ずつ、計20体の幻影が一斉に放たれた。
「くっ! メモリーログ! ウィザード、ディフェンド!」
 蒸気が消えた途端に迫り来る火炎放射と幻影の群れに一瞬たじろぎながらも、メモリー・ドーパントは
防御技を唱えた。

六十二. インフィニティー ( No.69 )
日時: 2015/03/24 04:04
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: HKLnqVHP)

 その瞬間、ウィザードのものと同様の炎の盾が実体化し、二人の魔法使いの攻撃を寸前のところで
防御した。
 しかし、二人が放った高威力の必殺技はその盾をも破壊し、メモリー・ドーパントの身体を後方に
吹き飛ばした。
「ぐはぁあああ……」
 炎の盾による防御で致命傷は避けたものの、初めて大きなダメージを受けてしまったメモリー・ドー
パントは、その衝撃に流されるままコンクリートの床を転がった。
「この戦い、僕達の勝ちだ!」
 一連の流れを目の当たりにしたダブルは、何かを確信するかのように静かに頷いた。
「何かわかったのか?」
 倒れ伏したメモリー・ドーパントの動きに警戒しながら、ウィザードが尋ねてきた。
「ああ、敵の倒し方がわかったんだ」
「皆まで言うな。俺も理解したぜ。さっきみたいに、相手が防御しきれないほどの強い攻撃を、俺ら
全員で同時に叩き込めば勝てるって話だろ?」
「いや、そうじゃない。推察する限り、奴はなかなかの戦闘センスを持っている。同じような手がそう
何度も通用する相手ではないだろう」
 自信満々で言ってきたビーストハイパーの意見を、いともあっさりと否定するダブルの右側。
「なにっ?」と、仮面の奥で不愉快な表情をするビーストハイパーを余所に、ダブルの右半身である
フィリップは説明を続ける。
「だけど、敵の攻略法は意外と単純さ。時間がないから詳しい説明は省くけど、要は敵の隙を狙って
攻撃すればいい」
「敵の隙って言ってもなぁ…。アイツ、なかなか機敏な動きを見せるんだけど? 狙う隙なんてある
のか?」
 と、首を傾げるウィザード。
「問題ない。メモリー・ドーパントは魔法を使う際、必ず言葉を発する必要があるんだ。「メモリーログ」
とね。僅かなタイミングだが、その瞬間だけは奴は無防備だ」
「なるほどな。言葉を唱えるその一瞬が反撃のチャンスって訳だな? 相棒」
 いち早くパートナーの考えを理解したダブルの左側である翔太郎がうんうんと頷く。
「そのとおりだ。そして、その一瞬の時の中を誰よりも自由に動けるのは、ウィザード、君だ」
「俺?」
「そう。光の速さに到達する術を君は持っているね?」
「光の速さ? ……そういうことか!」
 フィリップの言葉にピンと来たウィザードは、左腰のホルダーからダイヤモンドのように透き通った
淡い水色の魔法石の指輪を一つ取り出した。
 それは仮面ライダーウィザードを最強形態に導く指輪、インフィニティーウィザードリング。
 かつて晴人が自らの力で生み出した、晴人だけの魔法。
 旅の道中、魔法石の世界で出会った別世界の“はると”に指輪を託し、一度は失われたインフィニティ
ーの力だったが、その後、異世界の戦極時代で出会った武将“イエヤス”からその世界のウィザード、
武神ウィザードの形見であるインフィニティーの指輪を受け継いだ。
 つまり、今ウィザードが手にしているのは二つ目のインフィニティーの指輪である。
「勝負だ、メモリー・ドーパント。この力で、お前をフィナーレに導いてやる!」
 ダブルからレクチャーを受けたウィザードは、既に体勢を立て直しつつあるメモリー・ドーパントの
前に立ちはだかると、左手の中指にインフィニティーウィザードリングをはめ込んだ。
 そして、ベルトのサイドレバーを操作し、中央の掌の紋章にそれをかざした。
『インフィニティー・プリーズ ヒースイフードー、ボゥーザバビュードゴーン!』
 四つの属性全ての変身音声を合わせたかのような奇妙奇天烈な電子音声と共に、白い魔法陣と結晶
のような姿のウィザードラゴンの幻影に包まれるウィザードの身体。
 魔法陣を潜り抜け、全身を包む結晶が弾け飛んだ次の瞬間、フレイムドラゴンの姿だったウィザードは
全身白銀色のインフィニティースタイルへと進化を遂げた。
「来い! ドラゴン!」
 その言葉を合図に、ウィザードの周りを飛び交っていたドラゴンの結晶が専用武器アックスカリバー
に変化し、ウィザードの手に収められる。
「あれが……ウィザードの進化した姿……」
 初めてその目で見るウィザード・インフィニティースタイルの姿に、思わず呆気にとられるメモリー・
ドーパント。
「いくぞ!」
 ダブルとビーストハイパーに見守られる中、ウィザードは颯爽と駆け出していく。
 構えを取りながら待ち受けるメモリー・ドーパント目掛けて、剣と斧が一体となった武器、アックス
カリバー・カリバーモードが振り下ろされる。
 その剣撃を容易にかわし、拳を打ち込むメモリー・ドーパントだったが、ダイヤモンドを思わせる
絶大な防御力を持つ今のウィザードの身体はビクともしなかった。
「なにっ!?」
 怯むメモリー・ドーパントに、さらに剣を振るうウィザード。
 メモリー・ドーパントはすかさず素早いバックステップでそれを回避して距離を取る。
 ならばと、右手をかざし、魔法を発動させようとするメモリー・ドーパントだったが、その瞬間を
ウィザードは見逃さなかった。
 ダブルの言葉が正しければ、今、この一瞬が反撃する最大のチャンス。
「メモリーログ! メイ…」
「今だ!」
『インフィニティー』
 メモリー・ドーパントが魔法発動のキーワードである言葉を口にしかけたその瞬間、ウィザードは
インフィニティーの指輪をベルトにかざした。
 時間干渉による高速移動を可能とするウィザード・インフィニティースタイルは、人が瞬きする刹那
の間にメモリードーパントの目と鼻の先まで急接近した。
 驚く間も迎え撃つ間もなく、メモリー・ドーパントはその身体に二発の斬撃を受けた。
 メモリー・ドーパントがよろめくように後退りする中、ウィザードは容赦なくさらに追い討ちをかける。
『インフィニティー』
 もう一度インフィニティーの指輪をベルトにかざし、高速移動を開始するウィザード。
 光の速さであっという間に距離を詰め、一瞬の間に何度も敵の身体に刃を入れる。そして、
「はぁっ!」
 渾身の力を込めてアックスカリバー・カリバーモードを思いっきり振り上げる。
 その瞬間、メモリー・ドーパントの身体は下から上に大きく切り裂かれながら、その勢いに乗って宙を
舞い、そのまま空中で爆発した。
 爆炎の中からコンクリートの床に叩きつけられるメモリー・ドーパントの姿を見つめながら、ウィザ
ードは振り上げたアックスカリバーを静かに下ろすのだった。


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