ライブ~生きるって何?~ 作者/桃花 ◆ev5fSMdyi2

第19章 『奇跡の代償』



「う~ん、一部記憶喪失ですか……。」

医師が唸る。

やっぱり、記憶なんてそうそう戻らないんだろう。

ましてや、人の手で記憶を取り戻す事ができるなんて、私は聞いた事が無いし。

ん? 私は記憶をなくしたからわかんないのか。

でも、それほど科学が進化してるはず無いしね。

「でも、まともに撥ねられて生きていたなんて、奇跡ですよ。」

うん、確かにそうだと思う。

車に撥ねられて生きているなんて、奇跡なんだろう……たぶん、だけどね。

「まぁ、記憶の方は『奇跡の代償』ですかね。」

のほほんと、呑気に医師が言う。

でも、隣にいた男の子が医師に詰め寄った。

「星菜の記憶は、いつ戻るんだよっ!?」

うわ、それって恐喝とかになるんじゃあ……?

やめなよ、知らない男の子!!

「い、いやぁ……それは私にもわかりませんし、何かの拍子に思い出すものなので……ハイ。」

「その、『何かの拍子』がなかったらどうなるんだよ!!?」

「いや、それは、一生そのまま……。」

「何だとぉ!!!?」

やばいって、やばいって!!

それは……恐喝なのに……。

しかも、ここ病院なのに!!

「ちょっと、そこの男の子。ここは病院なんですよ!? 静かにしてもらえませんか。」

看護婦さんに注意されて、その男の子は落ち着いたみたいだった。

医師の人も、「やっと新鮮な空気が……。」とも言いたげな顔で深呼吸をしていた。

「よっぽど運が悪く無い限り、思い出しますよ。きっと。」

医師はそう言って微笑んだ。


そう……なのかな?


本当に……思い出せるのかな?


私の家族と、大切な人の事を―――――――――