ライブ~生きるって何?~ 作者/桃花 ◆ev5fSMdyi2

第24章 『記憶』



床が迫ってきた。

しかし、床が近づく度に記憶は戻ってきて……。

全て思い出した時には、ちょうど床にぶつかり、私はあまりに痛かったので悲鳴をあげた。

その悲鳴に近くの人が気づいて、5,6人くらいの人が心配そうに近づいてきた。

「大丈夫かい!? 階段から落ちたのかい!?」

「怪我は? どこかぶつけたの?」

「お医者さん呼ぶかい?」

私は、立ち上がってにっこり笑った。本当は痛かったのだけれど、これ以上心配かけたら悪いと思ったので。

「大丈夫です。ちょっと階段から落ちただけです。」

「そうかい? 気をつけるんだよ、お嬢ちゃん。」

「無理しなくていいんだよ。」

「いえ、大丈夫です。お騒がせしました。」

私は、そそくさとその場を後にした。

早く、伝えたかった。

今のはちょっとしたハプニングだったけれど、それで記憶が戻ったんだから、感謝しないといけない。

これは、神様がやってくれたのだろうか。

それとも―――――――――――。


「星菜ー。来たぞー。」

「こんにちは、星菜!! どう? 調子は。」

いつもと同じ時間に、2人が来た。

この2人は、いつも同じ時間に来る。どうして、いつも同じなんだろうと不思議に思うくらい。

私は、緊張する。

この事を知ったら、2人は喜ぶだろうか?

ううん、喜んで欲しい……。

「あのね、話があるんだけど……。」

「何だ?」

「何? 何の話?」

……こういうことを言うのって、凄く緊張する。

しかし、言わなければなるまい。





                「……私、記憶が全部戻ったの。」





「……え?」

「何だって? 星菜、今、何て言った。」

「だから……記憶、戻ったの。」

しばらくの沈黙。

2人とも、驚愕の表情で私をじぃっと見つめている。

それから、53秒後の事だった。

「せ、星菜!!! それ本当!!?」

「本当なんだな!? 本当に本当に記憶が……。」

「戻ったってば!!!」

私は、あまりにも2人がしつこいので思わず叫んでしまった。

私は、その後自分の口を押さえて、しまった、と思った。

怒ったかもしれない……。

ところが、2人は涙ぐんで、良かった、といった。

「本当に、良かった……。星菜のバカ。もっと早く言ってくれれば良かったのに。」

「……良かったな。で、どうやって記憶を取り戻したんだ?」

ヤバイ。

階段から落ちた、だなんて言ったら、余計な心配かけてしまう。

「なんでもないよ。」

「は!!? 何だそれ。」

「絶対嘘でしょ。私の勘は確かよ!!」


私は、ふっと笑った。


「ありがとう、2人とも。」