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ロストヒーロー計画(完結)/ラストヒーロー計画
作者: 彩都&Lメイドウィン ◆B/lbdM7F.E  (総ページ数: 221ページ)
関連タグ: メイドウィン小説 オリジナル仮面ライダー 仮面ライダー 原作、設定:彩都、執筆:メイドウィン 
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*201*

 ダークライダーが雄叫びを上げる。その雄叫びはまるで『赤ちゃんの大声』のようだった。そんなダークライダーを戦場雁陸人は静かに見つめていた。
「だ、誰かっ!? 誰か助けてぇ!?」
 金髪の少年がダークライダーに掴まれながら叫ぶ。だが、皆怖気付いて誰も動かない。
「お、おい! そこの庶民! い、色々と謝るから僕を助けてくれぇ!!」
「……何で? だって君は試験に合格した身。だから『そんな状況も自分の力で引っ繰り返せ』よ? もしかして、裏金、裏口入学みたいに『カリギュラ』に『お金を払ってズルしてヒーローになろうとした』ってか?」
「……お前……! それでもヒーローか!? それでも市民を守ろうとするヒーローかよ!?」
 叫ぶ金髪の少年に対し、戦場雁陸人は静かに言う。
「へぇ? そういえば市民って基本的に『庶民』が使う言葉だよなぁ? それなら君も『庶民』扱いで良いんだよねぇ?」
「も、もうそれでいいよ! だ、だから助けてくれぇ!」
「……俺じゃ無理だ。だって俺は『ヒーロー試験に合格した』だけで、『ヒーロー』そのものじゃないからね? ってか何で自分が君と会話しているのか、分かっているのかい?」
 戦場雁陸人の発言を受けて、金髪の少年が怒鳴って叫ぶ。
「は、はぁ!? 分かる訳無いだろ!? そんなのどうでもいいんだよ! いいから助けろよ!」
 金髪の少年がそう言うと、『背後から銃を乱射する音』が聞こえ、少年の背中に銃を背中で受けるダークライダーの衝撃を感じる。えっ……? どういう事だ? 意味が分からない? 意味が理解出来ない? 意味が、意味が、意味が。そんな事を思っていると、戦場雁陸人の隣で笹原大尽が息を切らしながら戦場雁陸人に言う。
「足止めサンキュー陸人! 『背後からの援軍の銃の乱射』、流石にダークライダーも御陀仏だろうな──」
 笹原大尽が額の汗を拭った瞬間、少年を掴むダークライダーが叫んだ。まるで鳥のような叫び声に戦場雁陸人以外の存在は耳を塞いだ。
「うわっ!? 何だこの声……!? うるっせぇ!!」
「た、確かに……!」
 静かに周りの受験者を避難させる花咲陸咲もその場で立ち止まって耳を塞いだ。それ程に大きな声だった。
「…………」
 戦場雁陸人は静かに『前に進んでダークライダーに近づいて』行く。まさかの行動に笹原大尽が叫ぶ。
「陸人!? オイ!? 止まれ!? お前の怪力でもどうにもならない敵だぞ!? おい!?」
 叫ぶ笹原大尽を無視して、戦場雁陸人はダークライダーの前に立ち止まり、金髪の少年を指差す。
「…………なぁ? 一つ良いかぁ?」
 戦場雁陸人はそう言って、ダークライダーと意思疎通を図ろうとするが、ダークライダーは反応がない。
「俺と人質代わってよ?」
「はぁ?」
「はぁ?」
「はぁ?」
「はぁ?」
『その場に居る全員が同じ発言である『はぁ?』と、発言』した。『はぁ?』と発言していないのは戦場雁陸人だけだった。
「いや、だから、『俺と人質を代わってよ?』って言ったんだよ? 分からないのか、このクソダークライダーさん?」
「…………」
 ダークライダーは戦場雁陸人の『クソダークライダーさん?』という発言にブチギレて、金髪の少年を笹原大尽の方に投げ、笹原大尽が受け止める。そして戦場雁陸人はダークライダーの手によって、首を左手でロックされ、ニコニコと口だけを緩めていた。
「うわぁん! 怖かったよぉ!」
「お、おう、坊ちゃん大丈夫かぁ?」
「大丈夫に見えるかよ!? って、てか、アイツはどうするんだよ!? 『自ら人質になる』庶民は初めて見たぁ!」
「い、いや、俺も初めて見たぜ……」
 泣き喚く金髪の少年を見ながら、戦場雁陸人に叫ぶ。
「お、おい陸人!? 人質になったはいいが、『お前の力』ではダークライダーは倒せない! どうする気なんだ!?」
 笹原大尽がそう言うと、戦場雁陸人は静かに発言する。
「んー……どうしよう? とりあえず、目の前の金髪クソ野郎を助ける事が出来たし、本望かもね?」
「はぁ!? お前、海斗みたいな立派なヒーローになるって……!?」
「うーん、でも、海斗さんみたいに『一人でも人を救えたからいい』や。『俺』というヒーローが目の前の金髪クソ野郎という『ヒーロー』を救えた、つまり、『未来の超大物ヒーロー』になるかもしれない人物をこんな『弱小なヒーローが救った』っていう風に解釈すると、それはそれでもういいかなぁって。だからさ……」
 戦場雁陸人はそう言って、口の端を思いっきり歪ませて、発言した。
「金髪クソ野郎、お前、立派なヒーローになれよ?」
 戦場雁陸人の発言を受けて、金髪の少年が言う。
「巫山戯るな! お前も一緒にヒーローになるんだよ!? お前が『僕の所為で死んだ』ら、僕は心に穴が開いてヒーローなんかなれねぇよ! だから……お前も生きろよ!!」
「……生憎それは無理だよ。だって俺は今、人質。そしてこの状況を『一変に引っ繰り返す』方法なんか、『俺の考えうる中では思い付かない』んだ。だから、俺は死ぬしかない」
 戦場雁陸人はそう言って淡々と答える。するとダークライダーが右手を鎌にして、戦場雁陸人を攻撃しようとする。
「おっ? これでお別れか……またな! 来世で逢おうぜ! 金髪クソ野郎!」
 戦場雁陸人はそう言って、その場でニッコリと笑いながら、ダークライダーに首を──

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