ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ——怪盗R・B—— なんやこんやで復活
- 日時: 2010/04/22 11:04
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: 9qYqZOsB)
どうも、こんにちは。
作者の空雲 海です。
えっと、第一作目がそろそろ完結するんで、二作目、連載したいと思います。
パクリとか言わんといてぇー!
それでは、どうぞお楽しみください。
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- Re: ——怪盗R・B—— なんやこんやで復活 ( No.100 )
- 日時: 2010/05/03 20:14
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: sq.MYJuj)
「超硬質で出来ています。いくらあなたの自慢の突きと蹴りでも、破ることはできません」
すると、秀有は顔をホワイトに向ける。
そして、笑顔である鍵を取り出した。
「これは、なんやと思う?」
それは、シャッターの鍵だった。
「あんたさんと闘ってるときに、スリしたんや。気付けへんかったやろ?」
秀有の顔に、勝ち誇ったような笑みを見せる。
……沈黙が生まれた。
ホワイトは、その笑みを笑みで返す。
そして、ホワイトもある鍵を取り出した。
それは、秀有の持っている鍵と、とてもよく似ている。
「こっちが本物です」
その言葉を聞いた瞬間、秀有の笑みが固まった。そして、見る見るうちに笑顔が溶け、怒りの形相へと変貌していく。
秀有が鍵を真上に放り投げる。
それが合図のように、また秀有がホワイトに突っ込み、突きを出す。
しかし、ホワイトは見切り、秀有の腕をねじあげた。
「言ったでしょう? 特殊探偵に入ったからには、もう逃げられませんって——」
ホワイトが秀有に耳元で囁く。
秀有に、突然水を浴びせられたかのような冷たい感覚と、衝撃が走る。
ホワイトは、悪賢い笑みを見せると、秀有を突き放した。
力が抜け、地面に座り込む秀有。
「この班のリーダーは私です。私に逆らったものはどうなるかわかっていますね、Ms秀有?」
口元は笑っているが、目が笑っていない。
秀有は、絞り出すような声で言った。
「ずっと、気になっとった事があんねん……」
「……何ですか?」
ホワイトが、優しい口調で言った。
秀有が立ち上がる。
「前、ホワイトはなんでR・Bを逃したんや? あの血は、まだ真新しくて急いで追いかければ捕えられる筈やった……ターゲットが、目標が。すぐ手に掴めるところまで来てんのに……なんで、あん時、あんな奴を長い話なんかしとったんや? 例え、それがホンマに重要やとしても、うちらに命令くらいしてくれたらエエんとちゃうん?」
……沈黙が生まれる。
ホワイトは笑顔のまま固まっている。そして、笑顔のまま言った。
「面白くないじゃないですか、もう弱った体を痛めるのは。それなら、元気で活発な体を、死の淵まで追い詰めたいと、思いませんか? あっちが不利です、フェアじゃないです。だから、私は退散を命じたんです。ゲームは終わった、引き分けで。誰も『勝利』を掴めなかった。終わったゲームに用はありません。そこで、オチを作ってしまうのは抜け駆けです」
「…………」
秀有は、恐怖で言葉が出なかった。
喉につっかえてもいない、言葉。腹で言葉を留まらせているのは、恐怖。
そして、同じく空気も凍りついていた。
秀有の額に冷や汗が垂れる。
彼は、「戦いを楽しむ」人だ——秀有は確信した。
「フェアじゃない」「あっちが不利」「オチを作ってしまうのは抜け駆け」様々な言葉を並べているが、本心は確実に戦いを楽しみたいだけ。もっと、スリルを味わいたいだけ——……。
これで、彼がずっと行動部に留まっている理由が分かった。最高幹部や上層部のように、下の者にただ指示を与えるだけではつまらないからだと。
- Re: ——怪盗R・B—— なんやこんやで復活 ( No.101 )
- 日時: 2010/05/04 12:32
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: sq.MYJuj)
「私の能力を知っていますか? あなたの能力を知るためには、私の能力を知らなければなりません」
ホワイトが、ゆっくりとしゃべりだした。
「私の能力は、世界三大能力の内の一つ——。レッドアイです。レッドアイは、オンブルやファントム以上に恐ろしい技——何か分かりますか?」
ホワイトが、試すような口調で言う。
秀有は、何も答えない。
「精神世界の崩壊です」
ホワイトが、ゆっくりと、まるで時間にその言葉を刻みつけるように言った。
「精神世界の崩壊……?」
秀有が、訳が分からないといった様子で、呟いた。
「私のレッドアイの能力は、精神世界の崩壊。自分の精神世界に連れ込み、その人の精神世界を壊すのです。あるいは、相手の精神世界に潜り込んでね」
「……精神世界がホワイトの手によって、滅んだらどないすんねん?」
恐れをなさない力強い言葉で、秀有が言った。
その質問を、待っていた様に、気味悪く笑うホワイト。
「精神世界が滅んだら、あなたの心はなくなる。体だけになってしまう。つまり——人は自殺するでしょうね」
……沈黙が流れた。
「さぁ……。さっそく体験してもらいましょうか」
ホワイトの右手を、右目に当て、下を向くと、ゆっくりとこする。
そして、ホワイトの手が下りると顔を上げる。
そこには、いつものホワイトの瞳が炎が灯されたように赤く光っていた。その炎は、とても穏やかで、静かだった。
「ちょっと待てい。一つだけ質問したいことあんねん」
「……何ですか?」
笑顔で聞くホワイト。
「それは——うちの能力の覚醒に必要なんか?」
秀有の瞳は、エネルギーに満ちている。
すると、ホワイトの笑顔が消え、真剣な表情になる。
「はい、必要です」
ホワイトが、また笑顔で言うと、秀有は笑った。
「ほなええわ……。行こか、ホワイトの精神世界に——」
その途端に、秀有の意識がなくなり、ホワイトが支える。
そして、ホワイトもゆっくりと目を瞑った。
「あーあ……。行っちゃったよ、精神世界」
後に続いた沈黙を、破ったのはヴァンだった。
その後に、ソノリテも続く。
「どうするの? 彼女、あっちでホワイト様に痛めつけられて無かったらいいけど……。ホワイト様は、味方も敵も躊躇なくやっちゃう癖があるから……」
また沈黙が続く。
「R・Bの能力と秀有様の能力は、どちらが上なのだろう……」
アルジャンが呟いた。
それは、みんなに言っているのか、それとも自分のただのひとりごとなのか——……。
わからないソノリテとヴァンは、何も答えなかった。
- Re: ——怪盗R・B—— なんやこんやで復活 ( No.102 )
- 日時: 2010/05/04 19:23
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: sq.MYJuj)
水無月が盛大なくしゃみをした。
すると、カーテンが小さく揺れる。
「豪快なくしゃみですねー。誰か、噂でもしてんじゃないんですか?」
水無月の掛けているメガネから、情報屋の声が聞こえた。
ここは、水無月の家。広い自室の部屋の白いベッドに、腕を枕にして組んでいた。
水無月の体には、包帯があちらこちらに巻いてある。
奥歯に潜む送信機で、答える。
「噂? 誰がだよ」
「そんなの、霧島か特殊探偵に決まってるじゃないですか」
「…………」
この時、情報屋はある禁句の言葉を行ってしまった。
情報屋が慌てて言う。
「あ! もしかしたら、違う人があなたのことを言っているかも知れませんよ! あなたは、偉大なる怪盗R・Bなのですからね!」
「…………」
情報屋のフォロー、遅し。
……沈黙が続く。
水無月は、秀英に負った傷があり、家で療養中だった。
水無月は、相手のペースにまんまとはまり、何も出来ず、おまけにゴールデンクラウンも盗られてしまった自分に、とても悔しい想いをしていた。
「まったく、何なんだあの霧島 惣滋郎とかいう奴は」
「世界三大能力者です。あまり、侮らない方がいいですよ」
「そんなこと、わかってる! わかってるけど……けど……」
R・Bは、勢いよく上体を起こすと、カーテンを開けた。
外は、天気がよく快晴の空。まるで、水無月の真反対の心の状態で、挑発するかのような天気だった。
「おい、情報屋。今すぐ霧島を洗いざらい調べろ。何か分かるかもしれない。私にこんな傷を付けさせておいて、このままとんずらをこくなんてさせない、私が許さない。特殊探偵もだ」
「…………」
情報屋は、立ち直りの速さに声が出ない。
「速く調べろ!」
「はい!」
情報屋が言った後、すぐに通信が切れた。
「やってやろうじゃないか、霧島と特殊探偵。まとめて私が、チリのようにひねり潰してやろう」
水無月の瞳には、みなぎる闘心が、静かに燃えていた。
- Re: ——怪盗R・B—— なんやこんやで復活 ( No.103 )
- 日時: 2010/05/05 00:01
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: sq.MYJuj)
「終わったみてーだな……」
ヴァンが言った。
その声は、微かだが震えている。
二回の倉庫に居るアルジャン、ソノリテ、ヴァンは全員体が硬直し、冷や汗を垂れ流していた。
血だまりの姿の——ホワイト、そして、何も怪我をしていない秀有——……。
「嘘……でしょ? あの、ホワイト様を……あんなお姿に……」
ソノリテが、ようやく声を絞り出した。
何も言えないアルジャン。
「素晴らしい……。さすがは、私のレッド・アイをも上回った能力……」
ホワイトが、口から血をこぼす。
荒い呼吸。肩で息をしているが、それはちゃんと息が出来ているのかも定かではない。
体の至る所に傷ができ、それは見ているだけで痛々しいものだった。
それを見て、秀有は茫然としていた。無表情でその場に立っている。
「アイツ、あんな姿のホワイト様を見て、何も思わないのか!?」
ヴァンが、恐怖の様な苛立ちの様な、複雑な顔をして言った。
「一体、ホワイト様の精神世界で何があったのか……」
その言葉と共に、アルジャンの額から冷や汗が垂れた。
「……。これがうちの能力なんか……?」
半信半疑の目で、ホワイトを見る。
「ええ、そうですよMs秀有……」
ホワイトが、ゆっくりと立ち上がる。
立ち上がる体力は残っているようだ。
「私をここまで追い込んだ者は初めてです。いいですか? 私の精神世界でやったあなたの行動こそが、あなたの能力なのです。使っている時、意識はありましたか?」
ホワイトが涼しげな顔で言った。
見るのも無残な怪我をしているとは思えない様な口調だった。
「あったな……。今回はあったで。前、うちがやってしまったことは、能力を使ってしまったことやってんな……」
冷静な顔で秀有が言った。
動揺している訳でもなく、感情的になっていない秀有を見て、上の階に居る三人は不思議を抱いたほどだ。
「そうです、Ms秀有」
ホワイトが、笑顔を浮かべて言った。
「いいですか? あなたが持っている能力は、とっても危なく、体力気力と共に消費が激しいです。あまり、使わないことをオススメします。まぁ、慣れない今は——の話ですが」
「わかってるて、ホワイト」
「あなたの能力は、ここだけの秘密にしておきましょう」
ホワイトが、にこやかに人差し指を口に当てる。
そして、後ろを振り向くと二階に居るアルジャン、ソノリテ、ヴァンを呼び出した。
「そこにいる三人! 下まで下りてきてください!」
三人は、ホワイトの言葉にびくつく。が、すぐに飛び降り、静かに地面に着地した。
「何かお呼びでしょうか、ホワイト様」
アルジャンが、でかい図体を折り曲げて、野太い声で言った。
「彼女の能力を紹介します。私の能力よりも恐ろしい『神の目(ゴット・アイ)』のことを——……」
あの事件から数ヵ月後——。
「本日、ルーヴル美術館に新たな国宝が展示されることになりました」
テレビから、感情のないアナウンサーの声が聞こえてくる。
「『最後の晩餐』や『モナ・リザ』のような有名作品を残してきたとされるレオナルド・ダ・ヴィンチの作品に、新たに絵画が加えられました——……」
テレビのアナウンサーの声が、聞えるリビングの中。
「…………」
水無月は、険しい顔つきでテレビを見つめている。
水無月が座っているのは白いソファ。横にはいつもの黒い肩掛けカバン。
白いワイシャツに黒いネクタイを緩めに締め、黒いショートパンツ。黒ぶちメガネに、ストレートの黒髪。
壁全体に広がる窓から降り注ぐ太陽。水無月の片手には、朝のクレープが。
そこには、「チョコチップバナナクレープ」と書かれている。
- Re: ——怪盗R・B—— なんやこんやで復活 ( No.104 )
- 日時: 2010/05/05 12:04
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: sq.MYJuj)
「情報屋」
水無月が、奥歯に潜む小型送信機で情報屋と連絡を取る。
「掛けてくると思いましたよ、R・B。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画を、獲物にするんですか?」
「よくわかったな、情報屋」
「それくらい、あなたが朝のニュース番組を見るのが日課になっていることで、想定出来ることだったので。盗むんですか?」
「ああ。出来ればそうしたい。詳細データをこちらに転送してくれ」
「了解」
水無月は、無言でテレビの電源を消すとチョコチップバナナクレープを口に押し込む。
そして、時計に目をやると、急いでスケートブーツに履き替える。
「データ送信、完了しました」
情報屋の機械音声で、黒ぶちメガネに情報が映し出される。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ作、『微笑む美女』です」
右のレンズには「微笑む美女」詳細データが、左のレンズには普通のメガネと同じ、道路を映す。
軽快にスケートブーツを走らせる水無月。
「『微笑む美女』。縦七十四センチ、横五十五センチの油絵です。モナ・リザととてもよく似ていて、同じ時期に書いたものだと言われています。それにこの作品は、すでに闇市で出回っていますね」
「ふーん、そうなんだー……って、おい!」
「…………」
情報屋は絶句した。あの、あの水無月がノリツッコミをしたことに……。
「おい、情報屋?」
水無月が、会話が途切れた情報屋に言う。
「……何ですか?」
やっと返事をした情報屋。
目の前が一瞬、真っ白になった情報屋であった。
「その『微笑む美女』っつーのは、本当に闇市で出回っていたのか?」
「はい。確認が取れています。この作品は、闇市で出回っていた為にあまり表舞台に出ることが出来ないまま、ここまで引きづってきたものだと思われます。闇市オークションデータでも、しっかりと残っています」
「なるほど……。それで、今はルーヴル美術館の物になっちまったって訳か?」
「はい、そうなりますね」
水無月が、神妙な顔をして顎に手を付ける。
水無月は、その時道路を右折すると軽快に大学の敷地内に入って行った。
天気は気持ち良い晴れ。土曜日の午前は最も講義が多いため、大学生が敷地内を大移動していた。
その中を、まるで草原を駆け抜けるように、あっさりと人ごみを進んでいく。
「なるほどな……。それで、今回の獲物なんだけど、怪我も治ったことだし、仕事をしたい」
「言うと思ってましたよ、R・B」
情報屋の返事を聞くと、不敵な笑みをこぼす水無月。
「でも、大丈夫なんですか? 全身の怪我が治ってまだ半月しか経ってないじゃないですか」
「いいんだよ。R・Bに『休み』なんて文字はないね」
「……わかりましたよ。それじゃぁ、一応全世界の新聞社、及び警察機関には予告状を送っておきます」
「頼んだ」
水無月は、ぶっきら棒に言うと、通信を切った。
「さってと……。私は私の日常的生活を」
水無月が言うと、スケーターブーツである教室に向かう。
階段の前で立ち止まると、水無月はローラー部分を取り外すと、階段を上がって行った……。
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