ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ただそこに
日時: 2010/08/23 16:47
名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)

どうも。神無月です。

文才が果てしなくないため、意味のわからないものになると思いますが・・・(汗

生温かい目で見守って下さい!

《お客様》
    アキラ様 ユエ様 白蝶様 Nekopanchi様
    
    @遮犬@様 月兎様 白兎様 故草@。様

    スサノオ様


《イメージソング》

日比野陸 >>140
日比野沙羅 >>141
郡上巽 >>142
東雲晃孝 >>143

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Re: ただそこに ( No.134 )
日時: 2010/08/19 07:44
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

きっと、巽は心はまだ子供のままなんですよ。
トラウマを植えつけられた子供が、そのまま大きくなったみたいな。
最後の三文いいんですね。 かなり重い事でしょう

Re: ただそこに ( No.135 )
日時: 2010/08/19 12:44
名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)


 >>アキラさん

そうですねぇ・・・。巽は心は子供のままで、そんなふうにいられるのは晃孝の前だけなんです。
どんな自分でも受け入れてくれる「兄」というものが巽にとってはとても大切なんですよ。

Re: ただそこに ( No.136 )
日時: 2010/08/21 13:05
名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)



零れおちる涙がようやく止まった頃。俺の嗚咽をかみ殺す声だけが響いていた空間に、こんこん、と控えめに扉をたたく音が混じった。


「どうぞ」


巽が声音も、表情も、全てを一瞬にして変えて扉のほうを向いた。

俺も、そちらへと顔を向ける。


「失礼します」


ガチャッと音をたてて扉を開いて白衣を着た男が部屋に入って来た。


「どうしましたか?」


巽の問いに、男は軽く強張った顔で答える。


「『強欲な女神』がお呼びです」


男の言葉に、巽はぴくりと眉を動かした。

俺は男の発言に気になるところがあり、小首を傾げた。・・・『強欲な女神』?なんだそれ。


「女神が?何故です?」


責めるような巽の声に男はさらに顔を強張らせた。そして、どこか不安の滲む声で答える。


「『純白の罪人』が暴走して・・・」


その言葉に巽は軽く眉根を寄せると、はぁ、とため息をついた。

そんな巽を横目で見ながら、またも俺は疑問を抱いた。今度は、『純白の罪人』?


「またですか・・・。先程の行動から“外れた”かと思ってましたけど、とうとう・・・」


苦い巽の表情に俺はまた首を傾げた。


「・・・『漆黒の堕天使』は?今日は“検査”の日ですからいるでしょう。先程も見ましたし。彼に頼みなさい」


『漆黒の堕天使』・・・?

再び聞き覚えのない単語が出てきて、俺は眉根を寄せた。

そんな俺はよそに、男は困ったように眉を下げた。


「それが・・・№零に落ち着かせるようお願いしたのですが、ほっとけ、と仰って自室に戻られてしまって・・・」


すみません、と言う男に巽は額に手を当てて盛大にため息をついた。それは男だけではなく№零とかいう奴にも向けられていたのだろう。

さっきの巽の発言とこの男の言葉からして№零=『漆黒の堕天使』であることはなんとなく窺い知ることが出来た。


「ですから、『強欲な女神』が『黎明なる道化師』を呼んで来い、と」


「・・・まったく、面倒なことを・・・・」


何度目かになるため息をつくと巽は俺のほうを見た。

今度は『黎明なる道化師』という言葉が気になって唸りながら考えていた俺を見て、巽は不思議そうに首を傾げた。


「兄さん」

「んぁ?あぁ、何だ?」

「少し仕事が出来てしまったようなので・・・申し訳ないんですが、もうしばらくここで待っていて下さい」

「・・・・・・」


どこか他人行儀な巽の口調に眉根を寄せる。でも、巽の表情が本当に申し訳なさそうだったため問い詰める気はおきなかった。

思わず洩れたため息に巽がびくりと肩を揺らすのが見えて俺は巽を真っすぐに見つめた。


「ぁ・・・・・」

「巽」

「・・・・・なんですか?」

「・・・気をつけて行くんだぞ」

「え・・・・」


驚いたような巽の声に俺は軽く笑みをこぼした。
そんな俺を見て巽は泣きそうに顔を歪めた。


「・・・怒ってない?」

「は?何で俺が怒るんだよ」

「だって・・・・」


いつの間にか口調も元に戻っていた巽に俺は、しょうがないなぁ、と笑った。


「大丈夫だ、ちゃんと、分かってるから」


優しい声音にやっと安心できたのだろう。巽は、ほっとしたような顔で小さくありがとう、と呟いた。


「それじゃあ、行ってくるね」


せかす男に軽く手を上げて、クローゼットにかかっていた白衣をはおると巽は俺に微笑みながら言った。


「あぁ、行ってらっしゃい」


鎖に繋がれたままの手をひらひらと振ると、鎖ががちゃがちゃと音をたてた。その音に眉間に皺を寄せた俺を見て巽が苦笑した。


「ごめんね、帰ってきたら外してあげるから」


その言葉に俺はそうか、と言って腕を体の横に落とした。ぼすん、とベッドをたたく音と共に鎖もじゃらりと音をたてた。


「じゃあ、またね」


扉の向こうですでに泣きそうになっている男に目をやると、巽は扉の外に消えた。

ぱたん、と扉が閉まる音を聞きながら俺は考える。


『強欲な女神』

『純白の罪人』

『漆黒の堕天使』

そして、『黎明なる道化師』—・・・


似たような言葉達。そして、それが指すものはみな人間。


「二つ名、ってことか・・・?」


二つ名で呼ばれる人間たち。その中に自分の弟が含まれていることも、先程の会話から知ることが出来た。


大抵、こういうものは偉い人間につけられるんだろう?


と、どこかで読んだマンガを思い浮かべながら考える。


・・・となると、巽はずいぶん偉い立場にある、ということになる。


俺は、無邪気に笑っていた巽を思い浮かべた。昔から変わらない、その笑顔。守らなければならないと思っていた。特に、向けられるのが自分のみだと知ってからは、もっともっと、その思いは強くなった。


誰よりも、近くにいたのに。


今は何故かとても遠く感じる最愛の弟のことを想いながら拳を握りしめ、目を閉じた。


どうしてこうなってしまったのかなんて、分からないけれど。



「俺の存在は、お前にとって“何”なんだ?」



時計の秒針が進む音だけが響く静かな部屋に、俺の呟きはやけに大きく響いた—・・・。




Re: ただそこに ( No.137 )
日時: 2010/08/22 11:37
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

兄弟愛だよ……何コレ泣ける……。
『強欲な女神』……女の子、だよ、ね??

Re: ただそこに ( No.138 )
日時: 2010/08/22 12:18
名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)

久しぶりに来たような気がします。

ふむ、あの二人にはそんな過去が……。
この兄弟愛は歪んでいるのでしょうか。
それとも純粋なんでしょうか。

でも過去をみると、そうなってしまうのは必然的だと思うので
純粋に曲がっていった という感じでしょうか……??


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