ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ただそこに
- 日時: 2010/08/23 16:47
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
どうも。神無月です。
文才が果てしなくないため、意味のわからないものになると思いますが・・・(汗
生温かい目で見守って下さい!
《お客様》
アキラ様 ユエ様 白蝶様 Nekopanchi様
@遮犬@様 月兎様 白兎様 故草@。様
スサノオ様
《イメージソング》
日比野陸 >>140
日比野沙羅 >>141
郡上巽 >>142
東雲晃孝 >>143
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- Re: ただそこに ( No.129 )
- 日時: 2010/08/13 22:58
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
帰ってきました。「帰ってきたのよ!!」分かる人には分かる嵐が丘。← はい。旅行行ってました。
>>アキラさん
弟さんの気持ちが書きたかったんです。決してネタ切れとかそういうんじゃ・・・!!
歪みまくった愛ですね。ヤンデレひゃっほい。
- Re: ただそこに ( No.130 )
- 日時: 2010/08/16 17:48
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
突然の、というほどでもなかったように思う。
もともと、どこかで危惧していたのだ。
あの人たちは俺たちが嫌いで、
あの人たちにとって俺たちはいらない子で、
そろそろ、無理やり水の上に作られたこの砂の城は壊れるのだろうな、と。
壊れてしまったのは、俺が8歳の時だったと思う。少しずつ成長してきた頭は、両親の不仲をすでに理解していて。俺と、7歳の弟はそんな両親が怒鳴りあうのを見て過ごしていた。
幸い、両親は俺たちに手をあげることはなかった。でも・・・両親は、俺たちをまるで“空気”のように扱っていた。
色々なことに多感な時期だ。殴られることよりも、まるでそこにいないかのように扱われるほうが辛かった。まだ、殴ってくれたほうがましだったのだ。だって、殴ってくれたなら・・・
両親の中に、俺たちというモノが存在したのだから。
毎晩毎晩、目の前で両親が怒鳴りあう光景を見ていた。震える弟を、抱きしめながら。
罵りあう両親。
時には、暴力を振るってまで我を通そうとする彼らに、俺は、あぁ、こんなもんか。そう思った。
大人でさえも、こうやって・・・・。
こうやって傷つけあってまで自分が全てであろうとする。
この世界は、なんて汚いのだろうか。
その頃の子供にしては、ずいぶんと冷めた考えだったと思う。でも、そう思わざるを得ないものがあったのだ。
だから俺は、一つしか違わないにしても自分よりも小さくて、弱い弟を守ることを心に決めたのだ。
こんな腐ったものを見せて弟まで腐らせたくない。
弟だけは・・・せめて、弟だけでもいいから・・・綺麗で、あってほしかったのだ。
それからは、ただただ、弟を守って過ごした。
両親が俺たちをいないものとして扱うから、食事だって勿論ない。両親はそれぞれ外食をし、家に帰ってこないことも多くあった。
だから俺は、近所のおばさんに頼みこんで食べ物を分けてもらっていた。
俺たちの両親の不仲は近所でも有名で、そのおばさんもそのことを知っていた。だから、初めは俺たちに食べ物を分けることをとても渋った。
それはそうだろう。今にも別れそうな夫婦の、それもいないものとして扱われているような子供だ。そのおばさんにも子供はいて、育児放棄というものが許せなくはあったと思う。でも、そんな扱いを受けている子供に何かを与えるのは嫌だったのだろう。
結局は、彼女も体裁を気にする腐った大人だったのだ。
そういうものが大人たちの世界で重要なものだというのは理解していた。けれど、命よりも、それは大切なものなのだろうか。
おばさんに侮蔑の視線を向けることはたやすかったが、そうしては食べ物を分けてもらうことが出来ない。
演じたのは、それが最初で最後。
可哀相で、でも明るい、子供の無邪気さを残した少年。お腹が減った、パパとママはお家にいないから何か下さい。そう言えば、同情を誘うのは簡単だった。
この子は何も理解していないのだろう。
そう思わせれば、もう後は・・・。
今思えば、俺も相当腐っていたんだろう。
でも、その頃の俺はどうしても、弟を守りたかった。
おばさんに頼んだのは一人分の食事。
「弟に食べさせてあげるんだ」
そう言えば、同情したおばさんは二人分の食事を用意してくれた。なんて簡単な世の中。
簡単で、単純で、腐りきった世界。
そして、“それ”は危惧していた通りに、以外にもあっけなく訪れた。
“パパとママはお別れするんだ”
父親が言った言葉に、あぁ、ついにきたか。そう思った。
どれだけ優しく言ったって意味がないことが分からないのだろうか。あれだけ目の前で汚いものを見せておいて。家の中に溜まっていくゴミに見て見ぬふりをしていた腐った大人どもが。
両親が別れることには何の感慨も受けなかった。
—けれど、どうしても、許せなかったことがあった。
・・・お兄ちゃん、お兄ちゃん!!
今でも、鮮明に思い出せる。
連れていかれる弟。泣き叫ぶ弟の表情。
届かなかった手。
あの日、世界は本当に壊れたのだ。
・・・・巽いいいいい!!!
守るべきものがなくなったら、俺はどうすればいいんだ。
それから、巽は母親に引き取られ、俺は父親に引き取られ・・・名字まで変わって、一切の繋がりもなくなった。
—そう、あの日、あの場所で、
—「お久しぶりですね・・・・・・兄さん」
再び、出会うまでは。
- Re: ただそこに ( No.131 )
- 日時: 2010/08/17 08:01
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
なんか……哀しい過去です。
自分は兄の行いを 「腹黒い」 などは言いませんよ。
そうしないと、生きていけないんですから…。
- Re: ただそこに ( No.132 )
- 日時: 2010/08/17 13:07
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
>>アキラさん
そう、ですね・・・。でも、よくあることだと思いますよ。悲しいけれど。
でも、晃孝は自分を汚いままだと思って・・・あ、ネタばれになりそう!!(汗
生きるために、そういって頑張って自分の心を保とうとしていたんです。まぁ、微妙ですがこれが二人の過去・・の一部、ですかね?
- Re: ただそこに ( No.133 )
- 日時: 2010/08/18 22:36
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
「・・・・それが、俺たちが離れ離れになったとき、だろ」
過去の醜い記憶を思い浮かべながら答えた。
あの時の自分は、今考えてみてもやっぱり腐っていたんだろう。話すのが、ほんの、ほんの少しだけ・・・辛かった。
「・・・・そうだね。それが・・・終わった日だ」
巽が呟く。その呟きに、微かな疑問を覚えた。
・・・終わった日?
「・・・どういうことだ?」
俺が問うと、巽はいたずらっぽく微笑んだ。
「あぁ、間違えた。“終わらせた日”だったね」
その言葉に、ますます分からなくなる。
終わらせた?
一体、何を。
「ねぇ兄さん。兄さんは、幸せだった?」
楽しそうに笑ったまま、巽が俺に言った。
「あの日、僕と離れ離れになったとき。あの男に連れていかれたでしょ?あんな気持ちの悪いゴミクズと一緒にいて幸せだった?」
あの男、とは父親のことだろう。父と口に出すのも嫌なほどに巽はあの人を・・・いや、あの人たちを憎悪しているのだ。それが伝わってきて、胸がズキリと痛んだ。
あんな光景を見せてしまったから。
巽がこんなことを言うのも、結局は、完全に腐敗から守り切れなかった俺のせいなのだ。
ズキズキと痛む胸を服の上から軽く押さえ、巽の問いに答えた。
「幸せな、はずがない」
意図せずとも、震えてしまう声。言葉を紡ぐたびに溢れてくる感情を、唇を噛みしめ、必死に抑えた。
「あんな・・・あんなふうに引き離されて・・・。・・・あの日、俺の世界は壊れたんだ」
—憎い。憎い、憎い。
溢れ出るのは、どれも汚い感情ばかりだった。
必死に溢れ出る感情を抑える俺の様子を見て、ふと、巽が微笑んだ。
それはそれは、愛おしそうに。
「あぁ、ちゃんと僕のことを想ってくれていたんだね・・・。だから、離せないんだ・・・。なのに」
やわらかい口調の中に、だんだんと、激しい感情が混ざり始める。
「僕と兄さんを引き裂いた・・・。許せないと思わない?・・・あぁ、だからね。“あれ”は、当然の報いなんだよ・・・」
段々と、瞳が歓喜に・・・いや、狂気に満たされていく。
「兄さん、僕を褒めて?」
「・・・あ?」
「邪魔者は、ちゃんと消してあげたから」
嬉しそうな表情に、ぞくりとした。まるで、自分がいいことをしたとでもいうように・・・子供のような、無邪気な瞳で。
「キレイだったよ?けっこう。まぁ、あの腐った奴から出たにしてはマシだったと思う。兄さんにも見せたかったなー。あ、大丈夫だよ。僕がヤッたんじゃないから。
あいつが、勝手に飛び降りたんだよ?
あ、結果的には“あいつら”かな」
何故だか分からないけど、泣きたくなった。
いつの間にかいなくなっていた父親。それを、思いだしたからじゃない。
巽の言う“あいつら”が迎えた結末よりも、巽が・・・巽を、そんなふうにしてしまった自分が憎くて堪らなかった。
「・・・・巽」
「ん?なに、兄さん」
「巽・・・・」
「んー?」
「ごめんな・・・・・」
ただ、謝ることしか出来なかった。
この状況では頭を下げることは出来ないから。精一杯申し訳なさそうな顔をする俺を、巽は不思議そうに見た。
「?何が?」
「・・・なんでもない、ただ・・・自分がどうしようもなく嫌いになったんだよ」
本当に。不甲斐なくて・・・。
涙が、こぼれた。
次々と溢れ出る涙に気付いた巽が、目を見開く。が、次の瞬間、
「誰?」
地を這いずるような、低い、声。
巽が怒っているのだと分かった。なだめさせようとするが、上手く言葉にならない。
「誰、兄さんを泣かせたの、誰?」
「・・・つみ、」
「言ってよ、兄さん。僕が消してあげるから」
「・・・たつみ、」
「ほら、早く言って?
いらないよね、いらないでしょ。兄さんを傷つけるもの、兄さんを妨げるもの、全て、全て、全て!!
早く言ってよ、兄さん。消してあげる、今すぐに。二度と、生まれ変わることさえ出来ないように、キレイに、消してあげるよ?」
「たつみ、巽」
「言わないの?本当に兄さんは優しいね。そんな兄さんが僕は好きだよ。・・・そんな大好きな兄さんを傷つけたのに、庇われているのは誰なんだろう。
・・・その人は、僕より大切なの?
あぁ、そんな訳ないよね。兄さんの一番は僕で、僕の一番は兄さんなんだから。
そうだ、いっそのことみんな消してしまおうか。
いいよね?だって悪い訳がないもん。
この世には、僕と兄さん以外いらな—
「巽!!!!」
もう、耐えられなかった。涙が止まらない。
「・・・なぁに、兄さん。言う気になった?」
「違う、違う・・・。もう、いい」
「・・・何が?」
「もういいんだ、巽。・・・お前は頑張ったから。だから、もう、いい」
「・・・・・」
俺の懇願するような声を聞いて、巽は若干不服そうな顔をしながらも口を噤んだ。
俺は、溢れ出る涙を鎖に繋がれた腕を頑張って伸ばして乱暴に拭った。
そんな俺を見る巽の目が、どこまでも優しくて。
愛おしそうで。
それが、どうしようもなく苦しかった。
俺しかいらないと、お前は言うんだ・・・・。
それはなんて、重い鎖なんだろうか。
絡みついて、離れない。
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