ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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日常+@ 完結しました
日時: 2010/12/23 10:11
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=l1Ryaz_fK6c

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題名の読みは 「にちじょう ぷらす あるふぁ」 です。
そのままですね。


重たくて暗い内容になると思いますが、ご了承ください。


登場人物 >>2


イメソンは参照にあります。

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Re: 日常+@ ( No.101 )
日時: 2010/12/14 14:41
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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人は死んだら血肉だけが残って、その人への記憶は決して長続きしない。 忘れられる。 いつか、きっと。
ああ、あんな人いたよねー、で終わり。 フィニッシュ。
一回生まれてきたら、もう後は死ぬしかゴールがないなんて、哀しすぎる。
………うぬぬ、シリアスな事しか考えられない。
一応、千影くんの家に戻ってきたけど。

「            」

乾いた声は、掠れた音しか出てこなかった。
自分が何を言ったのかも分からず、目の前でじっとどこか別の場所を見ている千影くんを、見つめ返す。
水色ちゃんが死んだのに、意外に無関心だった。

「悲しくないの?」

今度は、声が出た。

「どうして」
「水色ちゃん、死んだんだよ」

もしくは、殺されたか。
第一発見者は工事現場で働いてる人だった。 近くのコンビニで弁当を買おうと思い、その途中で発見したのだそう。
真っ赤な、真っ赤な、千切れた少女のバラバラ死体。

「南里は、生きてるじゃん」

だけど、いつだって千影くんは御子柴南里しか見ていなくて。
南里に依存しているその心は、とっくの昔から崩壊していて。

「千影くん、変」 「………そうかな」 「すごく変だよ。 だってわたしに変って言われてるもん」

腕を、ギュッと掴んで。
微笑む。

「変なの」

今頃、水色ちゃんの死体は解剖されてると思う。
警察の人からすごく質問されていて、お兄さんはダルそうだった。 たった一つだけ。 お兄さんがついた嘘がある。

水色ちゃんは、昨日からいなくなったと言った。

本当は、4週間前から行方不明だったんだけど。
お兄さんも悪い人だ。

「おじゃまします」

玄関の方から、聞き覚えのある声がした。 それがキキさんの声だと気づくのに、時間は必要ない。
あの人の声は、独特だから。

「やあ、また会ったね。 南里ちゃん」

現れたのは、やっぱりキキさんだ。
相変わらず、中学生にしか見えない。

「驚いただろう、彼女の──水色ちゃんの件には」
「ぶっちゃけ、死んだとは思ってた」
「まあ、長い間帰ってこなかったからね」
「……なんで、警察に捜索届けを出さなかったのか聞いていいですかぁ」

一瞬、キキさんの視線が千影くんに移った。 
……うむ、そういう事か。

「千影くん、わたしコーヒー飲みたいから、下にある自動販売機でちょっと買ってきて」
「……飲みたいの?」
「うん。 一回パシられてみて!」


不思議がる様子もなく、財布を持って千影くんが出ていく。 玄関の閉まる音が聞こえてから、

「はい、じゃあどうぞ」
「すごく、キミは気が利くね」

クスクスとキキさんが笑う。 えくぼが可愛い。

「そうだね、この話は夜音がいると少ししにくい。 それに、あまり他言すべきものでもないからね」

自分に言い聞かせるように言って、

キキさんは顔をあげる。

「夜音は、キミの両親を殺したのだろ?」



どこかで。
ガラスの割れたような音が聞こえて気がしたけど、気のせいだったみたい。

「…………………………………………………………………なんで、知ってるのかなーて聞いたら、どうかな」
「どうにもならないよ。 これは、わたしと真夜しか知らない」

それとキミもね、と。 
わたしを見てゆっくり微笑むキキさん。

「あの子が、御子柴南里という少女に依存しているのはわかっていた。 学校から帰ってくるなり、いつもは無口なあの子が突然、『南里が欲しい』 と言いだした」

あの時、お互いにお互いが惹かれていた。 魅かれていた。
どこに? と聞かれても答えられないと思う。
不思議と、惹かれていた。

「冬の日、どこからか帰ってきたあの子は手袋を必死で洗っていた。 驚いたね。 その水が真っ赤に染まっていたのだから。 何も言わず、夜音は洗っていた」

わたしに、プレゼントだと持ってきてくれた。
あの頃はまだ純粋だったと思う。
複雑な家庭環境から、変わった子どもだとしても。 あの頃の千影くんは、まだ。

「後日、市内の御子柴という人物が死亡していて、その二人の一人娘が無事だったというニュースを見て、もしかしてと思った。 母親の犯行だとしていたけれど、違うんじゃないかって」

かわってしまったのなら、わたしのせい。

「もしかしたら、警察は交友関係のあるキミたち二人を見て不審がるかもしれない。 一度、その事件の後に警察が家に来た事があってな。 真夜が追い返したけど」

わたしも、その時聞かれた記憶がある。
近所の人から、わたしの家にわたしと同じくらいの男の子が出入りしたという情報があった、と。
その経緯で千影くんの家に警察が向かったのなら、千影くんにも事情を聞くつもりなのかもしれない。

「だから、ギリギリまで警察には関わらずにはしないように?」
「そういうことだ。 私たちは、夜音の罪を隠そうとしている。 それだけだ」

千影くんは、わたしの両親をめった刺しにした。
わたしは自由になって、千影くんは人殺しという重みを負った。

「…………………そういうことか」

今回も、同じなんだ。
けっきょくわたしは、人に重みを与える事しかできていない。
無意識に、無邪気に、その手は伸びていって。

「………………っ」

キキさんの細い首に、伸びていった。

「なんの、つもりかな」

冷静さを装っているけど、微かに震えているのがわかる。
…………おフザケすぎるでしょ、わたし。

「ジョーク、だよ」

笑って見せる。
ジョーク、ジョーク。
ただの笑いごと。 かわいそう。

「水色ちゃんを殺した犯人、見つかればいいねぇ」

他人事。
わたしはキョーミないし。
あったとしても。 どうしようもないし。

Re: 日常+@ ( No.102 )
日時: 2010/12/14 16:42
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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千影くんが戻ってきて、コーヒー(すごく熱い)を飲んで、キキさんと三人でぼんやりしていたら、お兄さんが警察署から帰ってきた。

「………………葬式、デカいのやんねーから」
「おや、トーマは? 真夜と一緒だったんじゃないのかい?」
「そのトーマって人なら、どっか行っちゃったよ」

確か、わたしたちに水色ちゃんが死んだと教えに来てくれた人だ。
キキさんがこちらを見る。

「キミたちと会ったのか?」
「水色ちゃんが死んじゃったの教えて、どっか行ったけど。 あの人、誰?」
「真夜の男だが」

………………いや、お兄さんも男デショ。
あっさり言ってのけるキキさんも怖い。

「水色ちゃんが殺されたのに、やけに冷静だね。 泣かないの?」
「そんなことより、問題はさ………………」

お兄さんが冷蔵庫からビールを取り出し、勝手に飲む。
飲み終わって、続きを言う。

「おかーさまにどう言うか、なんだよな」

ずっと気になっている、千影家のママさん。
もの凄い美人だろうなっていう予想はつくけど。

「もうニュースで流れたんだから、知っているはずだがな」
「知っていたら余計ヤバイ。 ……なんだよ、その睨んだような目」

あ、気づかれてしまった。

「いやいや、あれだけ水色ちゃんがいなくなったくらいで泣いていたシスコンのくせに、いざ死んだらもうあっさり切り捨てるんだねぇと思って♪」

死んだら、もう終わり。
それは分かるけれど、もうちょっとこうさぁ……。

「切り捨てるに決まってんだろ。 死んでんだから」
「真夜、お前はデリカシーがないのか」

キキさんが口をはさむ。 
お兄さんの言い分は理解はできないけれど、共感ならできる。
死んだら、どんなに悔やんでも戻らない。 ハッキリ言ってしまえば、「あきらめがつく」。

「ウジウジやったって脳細胞死滅するだけだわ」
「大事な妹が死んじゃったのにねぇ」
「るせーよ。 まあ、好きだったけどな」
「家族愛かぁ。 泣けるねー」

茶化して笑ってやった。

「いや、恋愛的に」
「あ、千影くんもう寝るの?」

急にふらりと立ち上がった千影くん。
わたしの質問に答えようと、少しだけ身をかがめてくれる。

「風呂、入る」 「ん、わかった」

ぼんやりとした虚ろな表情。 重たそうな瞼。
こりゃお風呂の中で寝るかも知れない。 うーぬ。
この子、お風呂は好きなくせに髪洗うの好きじゃないんだよね。

「夜音」 

呼びとめたのは、お兄さん。

「ちょい、オレも入る」 「…………うん」

パタリと閉まる音。 
バクバク鳴る心臓。
ゆっくりと振り返って、ソファに座ってお茶を飲んでいるキキさんに言う。

「犯すつもりだ!」 
「キミはバカか」 
「あの人、バカなんだよ?」 
「兄弟水入らずで話したいんだろう。 水色ちゃんが殺されたんだから」
「…………………」

考えてみる。
あの二人が、風呂で兄弟水入らずで死んだ妹の話をするのかどうかと考えれば……………。

「いや、しないでしょ!」
「しないだろうな」

Re: 日常+@ ( No.103 )
日時: 2010/12/14 18:41
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)

アキラ様の書き方に憧れる……。

というわけで、本当に良いんですか、良いんですね、よっしゃ←
では、私のクソ小説を発表致します。
「Are You OK?」
「貴方に生を、僕に死を」
「脳内アリロッド」
「真空パック」
の4つです。
勿論面倒だったら見に来なくてもOKです。どうせクズなんで。

Re: 日常+@ ( No.104 )
日時: 2010/12/15 10:37
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

今から行きます!
全部ゎ少し無理かも知りませんが……っ!
クソだなんて言わないでくださいよっ(;O;)

Re: 日常+@ ( No.105 )
日時: 2010/12/15 12:24
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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正直、お風呂に入ってる二人が気になったけれど、千影くんがいないので、人に会いに行く事にした。
会いに行く、と言ったけれど実際会えるかどうか分からない。 キキさんに後は頼んで、夕暮れの道を行く。

その子の家の場所は知らないから、よく出没するとされるわたしの実家に行ってみる。 実家と言っても、もう更地に変えられているけれど。

「……………………あれ」

驚いたな。 
まさか本当にいるとは思ってなかった。
向こうもこちらに気づいて、首を傾げる。

「こんな時間に来たら、死んじゃうよ」

江波戸 真澄が口を開いた。
パジャマ姿で裸足。 不審すぎる服装に、嫌でも目立つ痣。

「死なないよん。 わたしは神様だかんね♪」
「カミサマ……。 カミサマっていたんだね。 知らなかった」
「だよねー、わたしも知らなかった」

神様はね、いないんだよ。 いたらさ、全人類幸せだしね。
矛盾したわたしの言葉は理解できなかったようで、江波戸が笑ってわたしを見つめ返す。

「ずっとこの更地見てるけど、そんなに珍しい?」
「ん? んー……、ここね、前にね死んだ人がいるんだって」

わたしの両親です。

「羨ましいなぁ。 死ねるんだね。 生き物ってそういうトコ得してるよね」
「死にたいんだ?」

わたしの質問に、

「当たり前じゃん」

すんなり答える江波戸。
ふうん、死にたがってるのか。 わたしと逆だね。 …………いや、違うかもしれない。

「ねえ、あんたと私ってどこかで会った事あるっけ?」


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