二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

AsStory /予告用中編 『二人の精霊王』
日時: 2015/09/20 00:30
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 3qG9h5d1)

初めまして!
書き述べると申します。


 この作品は以前、シリアスのカテゴリーだったのですが、第七話からはこのサイトに投稿されている他の方の作品の内容を混ぜ込ませていただくことになりましたので、このジャンルに引っ越してきました!

カキコ内二次(合作じゃないですよ)……結構珍しい様な気もします。

混ぜ込む作品は——
『Enjoy Club』(作:友桃様)
です!
そして
『ウェルリア王国物語』(作:明鈴様)

ぇ、二つもやって大丈夫なのかって?貴様のプロットどうなってるんだよって???

(黙殺。。。。。。)



1点注意していただきたい事が……。
冒頭でも触れておりますが、もともとシリアス・ダークの作品なので、そのカテゴリー特有の表現があるかも知れません。できるだけグロい表現は使わないつもりであはりますが……。


更新の間隔が2か月空いたりすることがよくありますが、寛大な御心で受け入れてくださいますと大変有り難いです!


【最新話直前の状況】

(現在修正中・・・・・)




【お客様(引っ越し前の方含みます)】
  アメイジング・グレイス様
  アサムス様
  友桃様
  通りすがりの者です。様
  (朱雀*@).゜.様



【目次】

◆◆ 序章 ◆◆

 1話 >>1

 2話 >>2-3

 3話 >>4-5

 4話 >>6-11

◆◆ 第一章 ◆◆

 5話 >>12-13

 6話 >>14-19

 7話 >>21-25

 8(1)話 >>29-31

 8(2)話 >>38 >>41 >>44 >>46 >>48 >>51 >>53 >>58 >>60-61 >>63-64 >>70-75

 9話 >>81-82 >>87-88

 9(2)話 >>90-91

 9(3)話『時空間操作システム』 >>95-96

 9(4)話『副長官、乱心』 >>98-100

 9(5)話『時間ときを越えて』 >>105-107

 9(6)話『地を駆る鳥』 >>110-114

 10(1)話『ひかり、在れ』 >>118-119

 10(2)話『幕開け』 >>129-132

 10(3)話『交錯する時間とき>>142-153

 10(4)話『混迷に魅入られし者たち』 >>160-166

 10(5)話『絶体絶命』 >>172-175

 10(6)話『PMC、対陸軍攻撃陣』 >>180-189

 10(7)話『突入』 >>192-197

 10(8)話『スナイピング』 >>200-204

 10(9)話『ひかり、在れ』 >>209-210 >>213-214 >>227 >>229-230


◆◆ 第二章 ◆◆

 11話『逃走』(更新中) >>232-239


〜〜小説紹介〜〜
『☆星の子☆』((朱雀*@).゜. 様) >>108
『Enjoy Club』(友桃様) >>109


書き始め 2010年冬頃
(もう3年経ってしまったんですねぇ)

〜〜予告用短編〜〜
『月光』 >>126-127

『二人の精霊王』 >>243-245 <<<<<<<<(現在作成中!)

〜〜クリスマス短編〜〜
『クリスマス・プレゼント』 >>217-225

〜〜キャラ絵〜〜
メクチ >>207
水希 >>208
水希(変装後) >>212


登場人物一覧
>>206 (リアルパート)
>>216 (ファンタジーパート)

〜追伸〜
ツイタやってる方。。。R18記事があってもOKって方は、ちょっとフォローしてやってくれませんか?? => @motto_e

あんまり呟かないですけどねぇ〜(ぇ?)

AsStory -第10(9)話 『ひかり、在れ』- ( No.213 )
日時: 2014/11/08 19:06
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: WkkVAnf4)

 男の声のこだまが止んだ。改札付近の利用客の声が止んだ。些末な雑音は、界隈に充満する氷の霧によって行く手を阻まれ、張りつめた静寂しじまの中で灼髪の少女と瑠璃色のジャンパーの男が、約10メートルの間隔をおいて共に一歩も退かず視線をぶつけていた。この間一度だけ、新堂が銃声の聞こえた川上の方を、今更ながら一瞥していた。新堂の眼がそれらしき人影を捉えることはなかった。

 再び双方が身じろぎ一つしないにらみ合いが始まると、程なくして川上から吹いてきた風が二人の間を吹き抜け、氷の粒の濃淡の連続を蛇のようにうねらせ、時間の流れが辛うじて止まっていないことを顕していた。

 電気ショック付き手錠を両手首に掛けられ、警察代行の男の足許に仰向けで屈服させられている陸軍軍曹は、PMCの女性隊員が未成年の文民を理由もなく拘束したことに付け入り、己が身柄の解放を要求しようとしたが、時機を逸してしまった。軍曹は木偶の坊の部下から連絡を受け、事前にECの工作員が少女であることを知ってはいたが、銃捌きの素早さと、国内最強と謳われる警備隊員に差し違えんとばかりに向ける眼差しの鋭さ、それに対する容姿のギャップにただ絶句するばかりだった。

 膠着した空気の重さに5分足らずで音を上げた駅構内に掲げられた時計の長針が、音を立てて3時の方向に倒れきったとき、熱を帯びて痛みを発していた少年の左右の肩かにかかっていた張力が消えた。間髪入れず少年が背中から乱暴に突き飛ばされ、虚を突かれた少年が大きく前につんのめった。少年の背後で警備隊員の男がうごめく物音がする。少年が体勢を立て直しきる前に、体をひねりながら地面に倒れ込み、改札側に転がると片膝をついて新堂の方に向き直った。少年の右手には、いつの間にかサバイバルナイフが収まっていた。

 ウィルと2、3歩分の間合いを置いて新堂が唇をやまなりにして少年を見据えている。身構えるでもなく、サブマシンガンの銃口を向けるでもなく、押し黙り、少年の出方を窺っていた。

 二人の運び屋を背に、ウィルが半歩後ずさりした。男の束縛から解放はされものの、ウィルは難敵を前にして瞬間移動の能力でで運び屋のもとに行くことを躊躇っていた。

 能力を目撃した者は、必ず亡き者にするか、記憶を消さなくてはならない。警備員風の男とはまだ幾らも手を交えていないのに、ウィルはそれを成し遂げられるか不安を感じずにはいられなかった。
 包みまでは10メートルも無い。眼前の警備員が、ウィルのここに来た目的に気付いていなければ、能力を使わずとも包みを受け取り現場から離脱することができる。灼髪の部下は僅かも走れないほどに体が傷ついてはいるが、幸いにも遥声を聞くことはできる。タイミングを見計らって、水希を救出することは十分に可能だ。少年が右手の中でサバイバルナイフを半回転捻らせると、改めて力を込めた。


 部下が連れてきた目を引く装いの少女には完全に虚を突かれてしまった。新堂の疑問と危機感はますます募るばかりだった。
 警察庁長官が直轄する任務。時空間犯罪者の摘発は警察組織の命運に関わる事案であることは、警察任務になじみの薄い新堂も、時空間走査システムのトラブル発生後の警察の動きを見て、よくわかっていた。時空間移動の直前に、長官があのような演説をしていたが、命に危険にさらされたとしても、手ぶらで引き上げてくるつもりは毛頭無かった。だが今、手ぶらの帰還とまではならないが、最悪に近い事態が現実のものとなりつつあった。

 新手の、そして少なくとも戦闘行為に関しては、得体の知れない手段を用いてくる集団のしっぽを掴む機会を、みすみす見逃そうとしているのだ。48名の時空間犯罪者の本体が、もし陸軍ではなかった場合、この面妖な2名の少年少女が関わっている可能性が非情に高くなるにも関わらずだ。

 数時間前まで事務員だった部下は、生命の危機に瀕してもなお、任務を遂行しようとする意志など期待できるはずもない。長官の言うとおり、引け際を見極めなければならない。時間も多く残されているわけではない。だから、少年を解放せざるを得なかった。

 畢竟、このような情況を招いてしまったのも、一所懸命の覚悟をしていながら、自分の気持ちのどこかに奢りがあったせいなのだ。
 しかし、まだ望みはある。新堂が己が心に言い聞かせる。
 望みはある。いや、これからだ。

——これからが、帝栄の、俺の本気だ。

 沈黙を守っていた新堂の唇が、ゆっくりと動き出した。

「今までに見たこともない、素晴らしい身のこなしだ」

 新堂の唐突な発言に、駆け出す隙を窺っていた少年の動きが刹那止まった。
 ウィルが駆けだすとばかり思っていた灼髪の少女が、女性警備隊員の体躯に更に銃口を押し込み、男を牽制する。少年を見下ろしながら、男が言葉を続ける。

「部下の命を、これ以上危険に晒すことなどできない」

 男の言葉に肩透かしを喰った少女と少年が思わず眼を眇める。

「君を解放した。引き替えに部下を、スイレンを解放してくれ」


二〇一二年一月二十日 午前9時20分 ポイント対岸の路地——

 今の季節には相応しくない灰色の雲で陽光を遮られた街路を、モノトーンのジャンパーを羽織った男が疾走していた。背中には腰から黒い大荷物を抱えている。半透明の白に覆われた目の前の空間に、完全不透明の白い靄が立ちはだかる。己が体内から発せられた、生暖かい呼気の塊を、真っ正面から突っ切る。人影の脇に追いやられた靄は、周囲の歩行者とともに、人影の後方に流れていく。

 稲森が待機していたマンションの一室から引き上げ、対岸の町中にのびる道に入った直後、現場で少女とにらみ合いを続ける新堂がマンションに一瞥をくれていた。

 平時であれば、競い合うように通勤通学の人々の行き交う姿を晒しあう相対する両岸の町が、今日は人々が皆で示し合わせたかのように、対照的な光景を作り出していた。ポイントのある側の沿道は、地響きのような怒号と閃光手榴弾、乗客の悲鳴などによって、屋外の人影は消え失せていた。一方、稲森のいる方の道沿いは、本物の戦闘現場から小さな川一本しか隔てていないのに、いつもと変わらないであろう、仏頂面をして警備隊員の脇を通過していく。

 前方の交差点に学生服姿の女子高生が3人飛び出してきた。取り乱して押し合いへし合いし、交差点でしばし立ち往生し、彼方に消えていった。来た方向からして川沿いの乱闘を目撃したのだろう。これでここも騒ぎが一気に広がり、妙に初動が遅い警察も動き出すはずだ。

 また時間が削られる。

 稲森が10秒ほど進み学生が去った交差点にでると、そこを右に曲がった。すぐ先に再び交差点が現れ、今度は左に曲がる。
 稲森のいる側の道は、川沿いの道から、はすの格子状に伸びているため、下流のポイントに接近するには、ジグザグに進まなければならなかった。稲森が次の待機場所に選んだ地点は現在地から200m下流、つまりポイントの駅のちょうど正面を狙っていた。

 新堂達のいる場所は道路の奥に引っ込んでいて、川の上流下流から狙うには死角が大きすぎた。謎の少年と陸軍風の巨漢が対峙しているときは、道路付近にいたために監視することができたが、帝栄の女性隊員を援護した後にポイントを確認したときには、目標ターゲットの一部が敷地の内側によっていた。目標の正面に陣取るということは、狙撃の際の死角をほぼ零にまで減らすことができるが、それと同時に自身の姿を晒すリスクも大いに孕んでいた。熟年スナイパーの当座の問題は、町中の道から如何にして敵方に気付かれず川沿いに出て、なおかつ仲間には到着を知らせるかという、あまりにも明瞭に相反した事象であった。
 再び交差点を右に曲がる。ここを突き当たりまで真っ直ぐ行けば、川沿いの道路にでて、ポイントの駅を真っ正面に臨むことになるのである。

——どうする。

 中年男の脳裏に浮かんだ幾つかのセオリーと現状を即座に照合する。交差点の向こうに、お誂え向きに背の高い緑色の宅配車を見つけた。口の端をわずかに持ち上げ、右足を持ち上げようとしたそのとき——。

 パトカーのけたたましいサイレンが、いつもなら援軍の喊声のごとく男の気持ちを後押しするはずの音圧が、稲森のいる方の川の上流方向から氷の霧を蹴散らし、進軍する男の意志を押し潰そうとしていた。


 
二〇一二年一月二十日 午前9時22分 ポイント駅前——

 手錠をかけられてから数分。氷の霧が薄らぐ気配を見せていたが、今は直径0.01mmの一粒一粒が虚空で微動だにしなくなっていた。

 上流を見ると先ほどの銃声の発生源になりうるビルがややぼやけて見える。凡そ190〜200m程度だろう。日本国防衛軍陸軍軍曹域七浜谷は、日々の過酷な訓練の甲斐あって、目視による距離の評価はお手の物だった。そのビルの後ろから頭を出しているビルの姿も見えるので、現在の視程は凡そ250〜260mだろう。人質救出の事案でもないのに、狙撃手まで配置している点がどうしても解せなかった。

 意表を突かれたが、幸いだったのはこの霧。250m程度までなら、人間の頭も胴も十分に識別できる大きさで確認できる。律儀に移動先の時代に装備の水準を合わせる奴らが、この時間帯に、人の多い現場で、巨大な赤外線シーカを装着して狙撃手が街中うろつくようにも思えないので、必ずスナイパーは250m以内の範囲に潜んでいるはずなのだ。新堂の足元後ろという、比較的安全な場所から、見える範囲の建物に注意を払っていれば、狙撃手を見つけることができる。更に、容疑者との武闘で職員が負傷、若しくは死亡することには、域七ら軍人らがそうなるよりも世の中に取り沙汰されやすい身分の警察なだけに、いつも大量の人員と物量を送り込んで相手を圧倒する戦術をとってくるのに、今日の彼らはどう見ても数が少ない点だった。

 だが域七の中で、狙撃手の存在よりも大きな問題となりつつある事象が二つ。

 一つは、帝栄の男によって破られた膠着状態は、次の展開が、次の一言を誰が何を言うのかもわからかない、霧どころか一面湯煙で覆われたような視界不良に陥っていること。元々は木偶の坊の部下に引導を渡すためのミッションであったが、ECの関係者の身柄を確保できそうな状況にあったのだ。それがターゲットを目の前にして、何もすることができない。手錠を解除しようとする、わずかな動きさえ、緊迫したこの情況にどんな影響を与えるか皆目見当がつかない。

 矢庭に、聞き慣れたサイレン音が赤茶色に日焼けした分厚い肌を打った。

 もう一つの懸念事項が風船のように急速に膨らんできた。最強の警備隊員の背後の足許で、陸軍曹長域七浜矢の顔から血の気が引き、土気色に染まっていく。この時代の警察がくるには早過ぎる。向こう側は域七の上官に警察の足止め工作をしてもらうはずだった。もしそれができなかった場合は、サングラスタイプのHMDに搭載された無線を通じて連絡が入るはずだった。

——まさか。あの銃声は。

 気付くのが遅すぎた。今更であっても、少尉と連絡を取らなくてはならない。もし、少尉の身に何かあれば、本ミッションの2つの目的を達成しても、この上ない大失敗だ。最悪の場合、警察に重要な機密が、己が身に身も知らされていない、多くの機密が漏えいする可能性がある
 目と鼻の先で呑気に気絶している、無能の烙印を押された部下を睨み付ける。今、両手が使えるのは、この男しかいなかった。
 名仮平、目を醒ませ。名仮平!


——おい、木偶の坊、起きろ!


「どういうつもりですか」

 特段、怒鳴っているでもない少年の静かな声に、胸が張り裂けそうになった域七が、体を引きつらせて上を見上げた。


AsStory 第10話(9)『ひかり、在れ』(少し更新) ( No.214 )
日時: 2014/12/30 07:42
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: WkkVAnf4)

 眼前の警備隊員の意図は火を見るよりも明らかだ。時間稼ぎ。さっきの銃声の主が警備隊員の仲間なのだろう。ECの二人は折に触れて銃声のあった方に一瞥をくれているが、対峙する男の方は上流側への注意は、どことなく余裕のようなものが感じられた。

 一方、両者の共通していたことは、数百メートル上流側から鳴り響く、パトカーのサイレン音に、異常になまでに神経を逆立てていることであった。

「こちらが請うたわけでもないのに、自分から人質を手放すなんて」

 ウィルが左右の瞼をやや下ろし、警備隊員に苦笑いを向けるふりをして、彼の肩越しに、対岸の様子を窺う。妙な動きをする人影は見当たらない。パトカーのサイレンはまだ鳴りやまず、着々とボリュームを上げ続けている。

「いいですよ。ただし——」

 口を厳しく結び、2つの碧眼で真っ直ぐに男を睨む。必ずしも、少年は完全に解放されたわけではなかった。まだ、男は立派にドイツ製の短機関銃を右手に抱えているのだ。要求の度が過ぎればその銃口が、少年と少女のどちらかに向けられるとも限らないのだ。

 水希がそれを察知してか、女性警備隊員を男のいる方に向け、さらに駅構内側に1歩移動した。

「30秒間——」

 やや低くした声で、ウィルがきっぱりと言い放つ。

「僕たちに一切手出ししないでほしい」
 武器を捨てろと言いたいところだが、ジャケットの中にサイドアーム(補助の武器)を携帯されていたら全く意味がない。また、その有無を確かめる術もない。退路を確保しつつ、最大限に譲歩するための苦渋の決断だった。

 そして、男に有無を言わさず言葉鵜を続ける。

「少しでも妙な動きを見せたら、僕の部下があなたの大切な部下を即座に撃ちます」

 男の表情からは何も読みよることはできなかった。ウィルの視線をそのまま跳ね返すように、新堂が視線を向沈黙した。声がやむなり、再び表舞台にしゃしゃり出てきたサイレン音がウィルの焦燥をあおる。

 我慢比べのような時間の流れが10秒進むと、新堂が重たく口を開いた。了解でも、拒否でもない、新堂の発した言葉は——。

「君たちは、一体何者だ」

 ウィルの目が真円に開かれた。「何を聞いていたんですか?そんな下手な時間稼ぎにはのらない。みず——」

 ウィルが左を向こうとすると、下から、警備隊員の男の足元の奥から、野太い不吉な声がした。

「教えてやるぜ。新堂」

——きた。

 陸軍がのってきた。数分足らずの沈潜の中で、新堂はある可能性を見いだし、そしてまた新たな疑問を己が胸の内にわき上がらせていた。件の少年に対する陸軍の対応は、一介の抵抗者に対する応酬ではない。軍が何らかの理由で少年と少女を狙っているのではないか。建物の陰から少年を窺っていたときに感じた不可解な感覚。そこに明瞭な理由は無い。幾多の修羅場を、血を血で洗う凄惨な戦闘をかいくぐり、辛うじて生き延びてきた戦人いくさびとの直感が、新堂にそう伝えているのである。
 彼とは立場は違えど、戦場にしか生きる意義を、存在価値を見出せない陸軍もまた、の少年に危惧を抱いていたのではないか。だが翻ってみれば、それは軍にとって「力」にもなり得ることでもある。
 国軍が国家叛逆罪に並ぶ厳罰に処されるリスクを冒してまで追いかけてきたであろうターゲットを、一人の警察代行風情にみすみす逃がされては任務失敗どころの話では済まされないのだ。
 いかにも現場仕込みの、ずる賢そうな目つきの軍人が口にすることなど、9割引ぐらいでしか聞くつもりはないが、現状を打破し、形勢逆転にまで持ち込むには、背後で座り込む男の力がどうしても必要だった。

 新堂の双眸が右に逸れる。少年の銀髪が恐慌のあまり、白んだ虚空でかすかに逆立った。少年の矢のような怒鳴り声が、陸軍軍曹域七浜矢の話声に圧倒された。

「俺には手を出すなとも、妙な気起こすなとも言ってねぇよなぁ。糞生意気な少年よぉ」

 後ろ手でしゃがみこんだ姿勢のまま、新堂の足元からにやけ交じりに言い放つ。新堂が右手を腰に当て、休めの姿勢をとるのを目にすると、域七が手錠を勢いよく吹き飛ばしながら、背中にまわされていた両腕を思い切り左右に広げた。
「交渉成立だな」ささやき声の域七に、背中を見せる警備隊員が応える。「偶然だ」

 ウィルが自ら女性隊員のとどめを刺そうと右腕を振りかぶるのと、警備隊員の男が短機関銃を少年に向けたのが同時だった。

「部下を傷つけるような真似をすれば、即座に君を撃つ。対象者死亡もやむを得ん」

 対岸のサイレンが止んだ。警察の車両はまだ対岸の道路に姿を顕してはいない。声が止み、再三にわたる沈黙と膠着の時間がおとずれようとしたとき、新堂の離れたところで、小さな金属音がした。彼が音の発生源を察知するのに、労を要することはなかった。

「M500じゃ、てめえの…ボディーアーマー…破れなくても……その勝ち誇った面ァ……木端微塵にすることくらい……造作もねぇぜぇ」

 満身創痍の巨躯を横たえたまま、覆面姿の運び屋がS&W M500"ハンドキャノン"を瑠璃ジャケットの襟に囲まれた顔面に向けていた。


 新堂が思わず、左右の眉が繋がるのではないかというくらいに,顔をしかめる[漢字]。
 壇風虎、かつては練達の傭兵として、己が身一つで海外の軍隊を転々とし、あまねく世界の戦場を経験してきた男。その後暫くは地下の運び屋を個人でしていたが、ここ数年は、裏の世界で右肩上がりの成長を成し遂げている法人の運び屋に籍を置いている。
 時空間走査システムがその人相、経歴、その他諸々の情報を抽出することができた、ただ一人の人物であった。

 疑問の外堀が少しずつ埋められていく。システムで検知した時空間犯罪者の中に運び屋がいたために、時空館移動法違反と密輸の件で取り締まる予定だったが、現場に行くと陸軍と新手の地下組織と思われる少年と遭遇。急遽、彼らの身柄確保を優先することとなった。ところが、運び屋が件の少年を援護している。この事案、やはり物品がらみの取り締まりになりそうだ。取引はこれからなのか或いは済んだのだろうか。陸軍はおそらくそれを奪取しようとしたが、まだできていない。ブツは少年と運びやのどちらかが持っている。

 新堂が慎重に少年と少年の肩越し見た。

「手詰まりみたいだな、新堂。そいつの正体教えるのは、あの覆面を片付けてからだ」

 新堂の思考を中断させた域七が身を屈め、地面を滑るようにして、失神している部下のそばに動いた。一瞬前まで域七の頭があった空間を閃光が貫き、爆音が駅舎と周囲のビルの壁面に反射して、居合わせる者どもの鼓膜を強かに打ち据えた。
 陸軍曹長がうっすらと笑みを浮かべて立ち上がった時、彼の右手に握られた陸軍制式拳銃の銃口が、10メートル先の運び屋の顔の中心を正確に捉えていた。

「大人しく我らに従っていれば、こんな目に遭わなくてもすんだのにな」
 域七が、オートマチックのスライドを引く。乾いたラチェット音が短く響く。「いや、変わらんか」

 満身創痍のABの腕は、先の一発で、6kgあるM500のボディを安定して支えられるほどの力を残していなかった。それを見切っていた域七が、直立不動の姿勢で右手の人差し指をトリガーにかける。
 ABが、まだ意識朦朧としている相棒と、相棒の右腕に抱えられて気絶している少女を、二人まとめて空いている方の手で後ろに押しやった。

——チキショウ、こいつらは巻き添えにさせちゃイケねぇ。

 そして最後に、背中の陰に置いていた小包の箱を、CDと少女の間にねじ込んだ。
 ABが間近のアスファルトを睨み、黒光りするレンズの裏で一度、左右の瞼を強くしばたたかせた。そして、脳裏にこびりつく様々な記憶と思いを振り払うように、顔を上げ、10m斜め上の陸軍曹長の顔面を睨みつけた。域七の右腕が動く——。

 サプレッサーを介さない、小さな雷鳴のような銃声が駅前で轟いた。アスファルトの路面に、進行方向に潰れた直径9mmの弾丸が食い込んでいた。
 覆面の運び屋の瞳は、一瞬前の風景の続きを、途絶えることなく、映し出していた。歴戦の傭兵が、呆然としていた。陸軍曹長は、銃口を真下に向けていた。
 弾丸は域七の足下に横たわる、巨大にさらに輪をかけて巨大な部下の耳元の地面に着弾していた——。


「目を醒ませ。木偶の坊」

 この任務は失敗させることが目的のものだ。その理由は言うまでもなく、出来損ないの兵士に、己が兵士として不適合者であることを知らしめるためだ。年を経るごとに厳しくなる除隊の規定を満たすために、あらゆる手を尽くし、ようやく足下の木偶を不名誉除隊に追いやることができたが、残るはダメを押すための「失敗」が必要だった。軍規の基準に則って機械的に除隊させては、後々の禍根となり、場合によっては反乱分子を生み出しかねない。永きに亘る軍の歴史がそれを証明している。だから、本人が軍に居残ろうとする気持ちを打ち砕かなくてはならないのだ。そのためには、本人が気絶したまま、作戦失敗で完了は許されない。


Re: AsStory 第10話(9)『ひかり、在れ ( No.215 )
日時: 2014/11/22 18:35
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: WkkVAnf4)
プロフ: https://www.youtube.com/channel/UCmv1CLT6ZcFdTJMHxaR9XeA

予想通り長い話になりそうです。。。。

ホントはABは動かす予定ではなかったのですが、あまりにも場面が長引いてしまってるので、ちょっと拳銃を持ってもらいました。

なので、これからの展開、作者にもわかりません。。。。。(ぉぃぃぃ)

あと、登場人物紹介の文(>>206)を、最近ちょっとずつ更新しているので、気が向いたら見てもらえるとありがたいです!!

序章最終話、もう少し続きます!!

どうぞよろしくお願いします〜〜!



(わたしくごと)
職場の部の忘年会の幹事になってしまった。。。。
店探してたら、なんかカキコのメンツで盛大に忘年会とかあったらいいなぁ、なという妄想が。。。。
まぁ、時間的に今から忘年会間になわないけど、いつか、というか来年あたりオフ会とかね。。。。やってみたいなぁ。。。



つか今気づいたが、4年(5年か?)かかって記事数215って、遅すぎだな。。。


〜2014/11/09〜
キャラ設定更新しました〜!(>>206)

〜2014/11/17〜
「教えてやるぜ、新堂」以降の新堂の描写が不足していたので追加しました。


〜2014/11/20〜
そろそろ12月ですねぇ〜。Asではフルートアンサンブルが出演するかもしれないのですが、そのシーンを妄想してたら、ふと手元にあったフルートのクリスマスキャロル、拡散させたくなった。。。。ってことでリンク貼っときますね!
あ、このCDまだAmazonで売ってた気がします。。。

〜2014/11/22〜

たびたび小説以外のことで更新スミマセン。。。。

クリスマスキャロルの動画探してたら、なんかPENTATONIXというアカペラユニットのキャロルの再生回数が飛びぬけてたので、ちょっと聴いてみました。。。。。(もしかして今更か。。。)
 歌詞はよくわからないですが、曲の雰囲気は悪くないかも。。。(みんな笑顔がちょっと強すぎるが気になりますが。。。。)
11/26に日本版のアルバムリリースされるみたいなので、ポチってみました。。。。
自宅にTVがないので、巷の話題とか、1、2年遅れで知ったりしてます。。。(苦笑)
 リンク先は公式サイト。。。。。。



どうも失礼しました〜〜〜

AsStory 登場人物設定(ファンタジー・パート) ( No.216 )
日時: 2015/05/12 10:02
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: NSxNy3Qq)
プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=hXJQOnT0xAM

文字数の問題で、登場人物設定を分割しました。

(ファンタジーパート)

(流刑島)
ウェルリアから1,000km以上南の海に浮かぶ小さな島。太古の火山の噴火によってできた島で、島中央部に火山の火口がある。火山は活火山で、今でも火口から噴煙を上げている。土石流、火砕流を伴う大規模な噴火は100年以上ない。
 もっとも近い大陸岸からも1,000km以上離れている。数百年以上昔に、大陸の国々が流刑地として利用していたが、処刑手段の変化により、200年ほど前に流刑が廃止されてからは、新たな人が流されてくることはなくなった。

(流刑島戦闘団)
 国家のような形式の整った組織ではないが、島の全住民(約2,000名)がで構成するゲリラ組織である。昔は海賊行為で生計を立てていたが、大陸側にも領土を持つようになってからは、小規模ではあるが、食料の生産も行っている。ただし、自分たちは全くその手の知識が無いので、全て領民に丸投げ状態ではある。領民が不作だといえばその真偽を確かめるでもなく、それ相応の年貢をもらうだけである。

 大陸に移動してからも、収入源は盗賊による強奪品と戦争による賠償金、捕虜の身代金である。大陸諸国の外交辞令など知る由もなく、宣戦布告なしに戦闘を開始する。また、大陸きてからも、基本的な戦術は変わらず、軽装の隊員4、5名からなる無数の戦闘グループが、強力な機動力を武器に変幻自在に散開し、敵を遊撃する形をとる。
 ただし、どうしても数が欲しいときは、領民を駆り立てて、十数万の大軍勢を組むこともある。

 なお、専門知識の習得が必要な魔法は、彼らの組織には存在しないし、今後も魔法を導入しようとする動きもない。現状でも十分資金を稼いでられるため、魔法の必要性を感じないのである。


●アレスタ (男) 『おいらに大陸を見て来いと。面倒くさいのう。スカユフ様一人で行ってこいや』

【所属・役職】流刑島戦闘団陸戦隊隊員(元大陸某国の陸軍歩兵)
【年齢】22歳
【身長】160cm前後
【体重】60kg台中盤
【その他】
 先祖は高位の爵位を持った貴族の家系だったらしいが、貴族間の抗争に敗れ、一族は没落、離散した。
 そして現在の本人の立居振舞からはその影を見ることはできない。ただ、よく見ると、ぼさぼさの髪は泥と垢とフケの奥に白金の輝きが微かに残っている。垢で分厚くなった顔の真ん中によっている双眸も、明るい青をしている。
 紆余曲折を経て、流刑島戦闘団に拉致される。流刑島では、とても拉致された身とは思えない横柄な態度をとっている。
 ドラゴン捕獲は、到底実現不可能な夢物語でまたいつもの王侯貴族の気まぐれ程度にしか考えていない。


●スカユフ (女) 『雷?はっ、ソトモノはみんな間違えるけどねぇ、あれは生き物の羽音だよ』

【所属・役職】流刑島戦闘団陸戦隊隊長
【年齢】20歳
【身長】170cm前後
【体重】70kg
【その他】
 本人曰く、髪の毛は目も眩むようなブロンドならしい。だが、自分でも臭いに気付いたら髪の毛を洗う程度で、水で汚れを落とす(落としたつもり?)ていどなので、地の色はもはや不明である。
 男勝りの筋肉質がガタイなうえに、嗄れ声が彼女の迫力を強めている。海風と強力な日光にさらされ続けた肌は、赤黒く、皺も深く刻まれ、初対面の人間からは40台後半くらいにみられる。

 日頃は本島にいて、大規模な襲撃を行うときや、興味をそそられる作戦の時は自ら赴き、陣頭指揮を執る。
 大陸を偵察していた斥候の報告を受け、自ら調査に乗り出そうとしたところで、思わぬ客人を迎えることに。



(ウェルリア王国軍/『ウェルリア王国物語(明鈴様)』より)

●ヨハン・ファウシュティヒ 『列強に、ドラゴンに抗うのだ、アロマ。今、我々が生き残る道はそれしかない』
【所属】
 ウェルリア王国軍総司令官
【年齢】(要確認/結構年配)
【身長】不明
【体重】不明
【その他】
 動じることが滅多にない。軍人によくあることだが、表情から感情を探ることができず、周囲からは温厚な性格と思われている。だが、温厚な人柄のまま、血も涙もない物言いをするため、実際の人となりは謎に包まれている。

 昨今の悩みの種は、大陸の列強が、ドラゴンを手中に収めようと躍起になっていること。ドラゴンは神と同格のエンシェント・ドラゴン、次点のアーク・ドラゴン、、下位のドラゴン、そして、より小型のナーガがあり、いずれも人間との意思疎通が可能で、絶大な魔力を持つ。翼竜と呼ばれる、本体が人間より少し大きい程度の種族があるが、これは野生動物がドラゴンに似た外見をもったようのもので、知能は犬程度であり、魔力を全く持たない。ドラゴンとは進化の樹の根元を異にする全く別の種族。

 列強が目に付けているのが、世界に10体いるかどうかと言われているアーク・ドラゴン。全力を出せば星を消滅させることも可能といわれているが、知能が高いのと、自然界の番人として知られている彼らを従僕にするのは不可能なはずだった。

 にも関わらず、なぜか(<-ここポイント)列強が先を争って、自殺行為に等しい暴挙に出ている。長年に亘る諜報からもそのような前兆が全く見られず、しかもこの動きはわずか1ヶ月の間に、示し合わせたかのように列強各国で始まったのである。実際に示し合わせたのであれば、各国で協働するはずなのだが、各国間で衝突、出し抜きを繰り返しているのである。

 ウェルリアは海に面する小国で、アーク・ドラゴンを狩り、飼いならせるほどの資金も人民もいないため、万が一大国がアーク・ドラゴンを僕にした場合の対抗策を講じる必要があった。彼自身は刻一刻と変化する列強の動きを察知しなくてはならず、身動きが取れない、そこで彼が白羽の矢を立てたのが、アロマであった。

 虎の子イズミを失い、彼の後継者や軍事的な展開等で悲観的になっていた彼であったが、イズミがいなくなってからメキメキと頭角を現してきたアロマに、ウェルリアのの命運を左右する任務を与えたのである。


●アロマ・ナムロス 『ファズ号令!全軍散開よ!巻き添えを喰らいたくなければさっさと動くのよ!』

【所属】
 ウェルリア王国軍Sクラス/同国騎士団副団長
【年齢】21歳 (原作+1)
【身長】不明
【体重】(内緒)
【その他】髪色:水色/ポンパドール
  実直で融通が利かない。負けず嫌いが影響しているのか、相手を見下したような言い方をする。

 女性兵士であるにもかかわらず、並み居る男性士官らを差し置いて急速に昇進してしまったことと生来の性格の悪さが望まれざるシナジー効果を生み出し、配下の兵士、士官との軋轢が絶えない。
 それでもSトリオの二人に支えられ、ヨハンから与えられた特務を遂行するべく、大陸を海を駆け巡る大冒険をする。



●ファズ・レスト 『あんまり深入りしない方がいいっスよアロマぁ。きな臭いにおいがプンプンするんスよ』

【所属】ウェルリア王国軍Sクラス/同国騎士団団員
【年齢】25歳 (原作+1)
【身長】不明
【体重】180kg
【その他】
 思いやりがあるが、軍隊の中ではそれが人に強くものを言えないという欠点になってしまっている。
 いつも溜息をついていることが多いせいで、周囲からアロマに虐げられていると勘違いされている。かなり上位の位に位置しているが、配下の兵士、士官から親しく話しかけられる柔和さがある。

 副団長であるアロマと、配下の兵士との間に立ち、調整役を務めている。

  巨漢であるため、馬にまたがることができないので、戦場では2頭立てのチャリオット(戦車)を駆り、見るからに重厚そうな胸甲を身に着け、右手に大剣、左手に弩級を持って先陣を切る様は、他国の軍からも畏怖の念をこめて戦車騎士と呼ばれている。

 自分の意見をもっと強く主張できれば、副騎士団長は彼であったと言われている。



●ノアル・ルーメイナ 『事件現場に発生していた黒い靄……。久しぶりに人体実験以外の楽しみができそうですねぇ(ニヒ)』

【所属】ウェルリア王国軍開発班
【年齢】23歳 (原作+1)
【身長】不明
【体重】不明
【その他】メガネ
 兵士間の嫉妬、昇進争いを超越した存在。アロマと同様、口が悪いが、周囲から悪魔の化身として扱われている彼に口答えする猛者はいない。
 猛毒な薬品や、奇怪な大砲の開発を手掛けている。突然道端でにやけ始めたりすると、どんなに上位の士官でもその場を立ち去る。
 アロマがヨハンから受けた密命の遂行に、彼の科学力が一役買うことに。また、「物語の瘴気」と呼ばれる不可解な現象の究明の中心的役割も果たす。




この人、リアルパートとどうやってまとめるんだろうね。。。。。(他人事)

ちょっと(どころじゃなく)頭悪いよね。。。

リンクは『The Never Ending Story(果てしない物語)』
(映画知ってる人皆無だろうなぁ)

もちろん自嘲です(苦笑)



〜2014/11/27〜
クリスマス短編、プロットがだいたいできましたっ!
舞台は東京丸の内。というか、東京駅丸の内口周辺。見た目がおしゃれな方の出口。。。(わかる人は激しく同意ヨロ)
クリスマスシーズンになると、1.2km(長っ)にわたってイルミネーションが飾られるらしいです。。。ちょっと見てくるかな。。。梓目線で。。。

登場人物は
光曳梓、メクチ、AB、CD、恵怜、亜弓、風也、水希、そして。。。。。

町田ァァ!

これはヤヴァイ。。。。


〜2015/05/13〜
ウェルリアのSクラスの三人、フルネーム掲載しました〜

As Story〜クリスマス短編〜 ( No.217 )
日時: 2015/06/08 02:01
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: EMf5cCo0)

12月24日に完成させる予定です。。。。。。

タイトルも展開もベタです。。。
コントにならなくなりつつあります。。。。(汗)
書き途中なので、誤字脱字多いかも。。。。


〜2014/11/30〜

丸の内イルミネーションの現地見てきたのですが、あまりにもイメージと違ったので、最初からごっそり書き直します。。。。(焦焦焦)

登場人物の設定は変えません。

。。。にしても凄く綺麗だったなぁ。。。


〜2014/12/07〜
せっかく久しぶりに町田が登場するので、この娘にピッタリな曲をリンクに貼っときます。
『scarlet leap』(nao)

まぁ、(健全な)紳士向けゲームのテーマソングなんですけどね。。。(恥)


〜As Story クリスマス短編〜

『クリスマス・プレゼント』



 駅舎の煉瓦の壁面が師走の柔らかく透き通った日差しを浴びて、素材の赤みを程よく浮かび上がらせている。
 東京駅の丸の内側の駅舎は、2年前に復元が完了したばかりだった。駅舎といっても赤レンガの建築は、ほとんどが駅に隣接している東京ステーションホテルの建物であり、正面からみて左右に広がる二つの広大なロータリーは、昼夜を問わずタクシーが、駅を降りた客やホテルのチェックアウト客待ちで列をなしている。
 最低でも50年の寿命を保証されている鉄筋コンクリート造の建築物の生涯からすれば、まだ幼子のような輝きを放つステーションホテルは、件のロータリーを隔てて150mほどのところにあるオープンスペースが絶好の撮影スポットとあって、休日になると、全国、海外からくる観光客のスマートホンやカメラの被写体となっているのがいつもの光景となっていた。


2014年12月24日 23時00分 東京駅丸の内北口——

 月明かりを遮る濃灰色の雲が,、駅前に屹立するインテリジェントビル群の屋上に触れんとばかりに肉付きのよい体躯をせり出し、重たい冷気を都会の谷底に押しやっている。

 天空の不穏な蠢きを察知したのか、痛ましく樹皮を晒す落葉の樹木らは、息を潜めるように小枝の先の振れを止めている。丸の内中央口前の巨大ロータリーは、オフィスが稼働している時間帯はひっきりなしにタクシーの出入りがあるが、終電も近いこの時間では、時間と共に客待ちの車列が伸びる一方であった。

 例年に無く暖かな季節となった今年の冬。今日この日も例外なく、スプリングコートでも過ごせる日中を迎えていた。しかし天気の気まぐれさも例年にない傾向で、日没近くになってから、どこからともなく湧いて出てきた薄雲によって、宵の星々のきらめきが遮られると、雲はそのまま着々と増殖し続け、夜中には月の姿さえも完全に隠してしまうほどの分厚い黒雲と化していた。
 一段と暗くなった深更の闇と、微動だにしない樹々、地の底にこずんだ空気が、実際の気温以上の寒さを演出し、小さき者たちは皆ねぐらで体を縮込ませて、遅い夜明けまでじっと耐え忍んでやり過ごそうとしていた。

 丸の内北口から現れた人間のカップルが、仲間内との談笑で暇を持て余すタクシーの運転手らを横目に、ロータリーの外を伸びる歩道をゆっくりと進んでいく。女性が長身の男性の左脇にぴったりと寄り添い、ロングヘアーを相手の肩にあずけていた。
 水分をたっぷりと含みよどんだ空気の中で、女性が静かに吐く息が本物の綿あめのように濃密な白い塊となって虚空で静止するのを二人が子供のように目を丸くして眺めている。日没から日の出にかけて気温は確実に下がる一方にもかかわらず、男と女の顔には笑顔があふれていた。カメラのシャッター音と子供の歓声で賑わっていた広場も今は人がはけ、先の男女の他に、数組の男女が二人の時間をゆったりと過ごしていたが、彼らそして彼女らは皆、真っ白な息を吐きながら、厳しい寒さに抗うように顔を、そして心をほのかに赤く火照らせていた。

 広場の中ほどに来た二人がふと左に折れると、そこには遥か前方から後方に至るまで、両脇ををホワイトゴールドの輝きを放つイルミネーションで飾られた壮麗な光の隊列が暗闇に浮かび上がっていた。

 時はクリスマス・イヴ。紀元0年に生まれた聖者の誕生日にもかかわらず、八百万やおよろずの神々を信ずる日本人は、それを数多ある年中行事と同列に扱ってしまう。
 プレゼントは開けるまでが楽しみであり、思いは告白するまでが華。聖なる日も午前0時が訪れるまでがイベントの盛り。その程度にしか考えていない彼らの気持ちは、前夜に訪れたイルミネーションのもとでたけなわを迎えていたのである。

 先のカップルに続くように、丸の内口北口の床に敷詰められたタイルを、象のように図太い足が踏みしめる。100kgを超える巨躯を前に進める重労働で切れ切れになっている息は、綿あめからは程遠い、消火器をみだりに噴射した後のごとく盛大に白濁した空間を作り出していた。

 巨漢のオタク光曳梓は今日この日、現実が常に充実している者どもが、最高に充実した気分を味わおうとする空間、『丸の内イルミネーション2014』に敢えて単身で踏み込み、おニュウのカメラで夜景の撮影をしようとしていた。

 実はそのような暴挙は、本人の望むところではなかった。この根暗がカメラで撮るものと言えば、重厚なドレスに身を包んだコスプレイヤーばかりであったのだが、ここ最近、廃墟に棲みついた黒ずくめの少女(悪魔?)と一緒に、屋根裏の窓から星空を眺めたりしているうちに、もっと綺麗な夜景を見せてやりたいという思いが抑えられなくなっていた。
 だが、いざ撮影スポットをウェブで探してみると、期待に副う夜景はどこも都会ばかり。そしてイルミネーションの特別な演出があるのが——当然と言えば当然なのだが——クリスマス・イヴ、まさに今日であった。

 北関東住まいでマイカーの無い光曳は、電車で移動しなければならない。ところが電車はおろか、ほとんど外に出ない黒衣の少女を一緒に電車で連れて行き、夜の都会をうろつかせるのは、同伴者がいたとしても危険極まりない行為に思えたのである。

 寒さが苦手な光曳が、巨大な体を分厚いダウンジャケットで風船のように真ん丸に膨らませ、その上から屋外での夜景撮影には欠かせない大型の三脚を専用のバッグに入れて肩にかけて歩む様は、まるで聖夜の前夜に、巨大な雪だるまが魔法によって動き出したかのような光景だった。


「まだこんなにいるのかぁ」

 溜息に不満をめいっぱいにのせて低い声を吐く。

 丸の内イルミネーション2014の会場、東京駅の西側をほぼ南北方向に一直線に伸びる丸の内仲通りに辿り着いた光曳の眼に映し出されたのは、燦然と輝くイルミネーションとその傍らで幸福のオーラを撒き散らす男女のつがい達だった。帰りの終電を諦めてまで、人混みが捌ける時間帯を選んだつもりだったが、イベント会場にわくカップルの時間経過に対する耐性の強さは、アザラシを狩るイヌイットさながらだ。
 もう少しあの種の人間どもが多かったら、もう少しこの界隈の充実感のガス濃度が高かったら、間違いなく光曳は重篤な酸欠に陥って、その場に倒れていたところだった。

 己が身の重量による息切れと軽いガス中毒から引き起こされる眩暈を堪えながら、撮影スポットを探したが、ざっと見回したところ、めぼしいところは無邪気にじゃれあう異人種の二人連れによって場所を占拠されていた。

 仲通りの北は冷たく黒光りする金融系オフィスビルの建ち並ぶ大手町に、南はカラオケやデパート、飲み屋、映画館など、遊興に事欠かない街、有楽町に繋がっている。既に電車だけでは自宅に帰る術のない光曳は、撮るものをとったら即、漫画喫茶に潜り込めるよう、南へ足を向けた。だが先を急ぎたい男の気持ちとは裏腹に、己の足取りは重く、体もいつも通りに重かった。

 無粋な電線は地下に埋設され、計算しつくされたコーディネイトの建物の外壁と道路、街路樹、街路灯が独り身のヲタクを囲む。左右の瞳をばらばらに泳がせながら虚空を見つめると、街路灯から垂れ下がる西欧かぶれな赤いフラッグ状の美術展の広告が飛び込んでくる。大地を水平方向に進んでいるはずなのに、1歩進むたびに、海淵を沈降しているかのように、体躯を、気持ちを押し潰そうとする圧力が強くなってくる。

——街が僕を拒絶している。

 100メートル進んだだけで肉体が疲労困憊していた。それ以上に精神的な消耗が激しかった。彼と彼女の世界に入りきっているカップルの脇を3度通り過ぎたが、誰もが光曳の顔をちらりと見上げ、背中の方をみやった。背中に背負いなおした大型の三脚を皆気にしているのだ。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。