二次創作小説(紙ほか)

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AsStory /予告用中編 『二人の精霊王』
日時: 2015/09/20 00:30
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 3qG9h5d1)

初めまして!
書き述べると申します。


 この作品は以前、シリアスのカテゴリーだったのですが、第七話からはこのサイトに投稿されている他の方の作品の内容を混ぜ込ませていただくことになりましたので、このジャンルに引っ越してきました!

カキコ内二次(合作じゃないですよ)……結構珍しい様な気もします。

混ぜ込む作品は——
『Enjoy Club』(作:友桃様)
です!
そして
『ウェルリア王国物語』(作:明鈴様)

ぇ、二つもやって大丈夫なのかって?貴様のプロットどうなってるんだよって???

(黙殺。。。。。。)



1点注意していただきたい事が……。
冒頭でも触れておりますが、もともとシリアス・ダークの作品なので、そのカテゴリー特有の表現があるかも知れません。できるだけグロい表現は使わないつもりであはりますが……。


更新の間隔が2か月空いたりすることがよくありますが、寛大な御心で受け入れてくださいますと大変有り難いです!


【最新話直前の状況】

(現在修正中・・・・・)




【お客様(引っ越し前の方含みます)】
  アメイジング・グレイス様
  アサムス様
  友桃様
  通りすがりの者です。様
  (朱雀*@).゜.様



【目次】

◆◆ 序章 ◆◆

 1話 >>1

 2話 >>2-3

 3話 >>4-5

 4話 >>6-11

◆◆ 第一章 ◆◆

 5話 >>12-13

 6話 >>14-19

 7話 >>21-25

 8(1)話 >>29-31

 8(2)話 >>38 >>41 >>44 >>46 >>48 >>51 >>53 >>58 >>60-61 >>63-64 >>70-75

 9話 >>81-82 >>87-88

 9(2)話 >>90-91

 9(3)話『時空間操作システム』 >>95-96

 9(4)話『副長官、乱心』 >>98-100

 9(5)話『時間ときを越えて』 >>105-107

 9(6)話『地を駆る鳥』 >>110-114

 10(1)話『ひかり、在れ』 >>118-119

 10(2)話『幕開け』 >>129-132

 10(3)話『交錯する時間とき>>142-153

 10(4)話『混迷に魅入られし者たち』 >>160-166

 10(5)話『絶体絶命』 >>172-175

 10(6)話『PMC、対陸軍攻撃陣』 >>180-189

 10(7)話『突入』 >>192-197

 10(8)話『スナイピング』 >>200-204

 10(9)話『ひかり、在れ』 >>209-210 >>213-214 >>227 >>229-230


◆◆ 第二章 ◆◆

 11話『逃走』(更新中) >>232-239


〜〜小説紹介〜〜
『☆星の子☆』((朱雀*@).゜. 様) >>108
『Enjoy Club』(友桃様) >>109


書き始め 2010年冬頃
(もう3年経ってしまったんですねぇ)

〜〜予告用短編〜〜
『月光』 >>126-127

『二人の精霊王』 >>243-245 <<<<<<<<(現在作成中!)

〜〜クリスマス短編〜〜
『クリスマス・プレゼント』 >>217-225

〜〜キャラ絵〜〜
メクチ >>207
水希 >>208
水希(変装後) >>212


登場人物一覧
>>206 (リアルパート)
>>216 (ファンタジーパート)

〜追伸〜
ツイタやってる方。。。R18記事があってもOKって方は、ちょっとフォローしてやってくれませんか?? => @motto_e

あんまり呟かないですけどねぇ〜(ぇ?)

Re: As Story 10話〜ひかり、在(あ)れ<1>〜 ( No.120 )
日時: 2013/01/27 10:47
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
プロフ: http://www.nicovideo.jp/watch/nm8070136

どうも、アップ完了しました。

なんと、影晴と水希の独壇場です。
って、これはわたくしめのECに対する見方を説明しないと、何のことやらわからないと思いますが。。。。。



 といっておきながら、説明するのが億劫なので、割愛させていただきます。(ぉぃ!!)


そして、次回は、完全に、徹頭徹尾、棚妙水希の独壇場になる予定です!


お楽しみに〜〜!!

紹介文ありがとうございますm(_ _)m ( No.121 )
日時: 2013/01/27 17:19
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)

 ここでは初コメですっ、朱雀です!
 ECの方でARMA3さんが私の小説の紹介文を書いてくださったと聞いたので駆けつけてみると……

 えっ、ちょっと、えっ!?(((゜Д゜;)))

 自分如きには勿体無いお言葉ばかり……!!
 うわぁ、ありがとうございます>< 素直にとても嬉しいです!
 紹介文書いてくださっただけでも嬉しいのに(´;ω;`) 自分はもう一年分の幸運を使い果たしてしまった感じがします(笑)
 『無冠の女王』……それも良い気がしてきました!(笑)
 でもやっぱり今度は賞取れるように、これからも頑張ります(`・ω・´)
 丁寧な紹介文、ありがとうございました♪


追伸
 そういえばAs Storyは後回しにしてまだ読んでいなかった事に思い当たったので(おぃ)、受験が終わったらゆっくりじっくり読みますね^^
 次にコメントする時は必ず小説の感想も一緒に!
 ではノシ
 

Re: As Story 10(1)話〜ひかり、在れ<1>〜 ( No.122 )
日時: 2013/01/27 20:08
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)

おぉ!これはこれは、、なんとも珍しいお客様がっ。

ご無沙汰しております!


星の子のコメント、全くの無断で書いてしまって。。。(汗)
さらには、書いたことを連絡していないという、、、社会人としてあるまじきことをしてしまいました。(社会人じゃなくてもまずいだろ。。)

 ちょっとコメントの内容が浅かったので、もう一回書き直すべく、最初から読んでいるところです。
 少々時間を要するかもしれませんが、コメントを再掲しようと思いますので、しばしお待ちください。

Asを読んでいただけるなんて、誠に恐縮でありますっ(お辞儀)

Asは相当癖が強いというかキモイ(グロいわけじゃないです)かもしれないので、ゆっくり慣らしてください。

 それと、ECのメンバー、原作とだいぶ雰囲気が違うので、、、笑ってやってください。


(あとで、友桃様に謝辞のコメしとかなくてはっ)


それじゃ、また〜〜!

As Story 修正告知用SS ( No.123 )
日時: 2013/02/10 16:26
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)

第10話修正告知用SS〜町田アタック3回目パロディ

 4か月ものながきに亘り、全国の学生たちに試練を課し続けてきた1学期。その総決算として彼らそして彼女らに立ちはだかった宿敵、期末試験の攻勢をなんとか耐え凌いだ者たちに、最後の試練とばかりに連日のテスト返却が行われていた。
 大半の学生は、返却された試験の結果を目の当たりにして、本番に実力の7割も出せなかった己の不甲斐なさ故、校内や町の此処彼処で溜息をつく光景が見受けられていた。
 世の中がテスト返却期間にはいると、学生たちのため息という二酸化炭素と湿気に満ちた気体の放出によって、日本近辺は温暖化の現象と不快指数が著しく悪化していた。

 超能力者結社ECのチーム『麗牙光陰』に所属する女子中学生、棚妙水希の通う中学校も昨日からテスト返却期間が始まっており、ある者との喫茶店での待ち合わせの時間も日中の只中にしていた。
 水希が喫茶店に入ると、涼を求める人々でごった返していた。辛うじて窓際の席の向かい側のテーブルの並びで、入口に一番近い4人席が開いていたので、そこに急いでついた。

 (ブラックの)コーヒーを注文し品が来るまでの間、自身の「闇」の能力が日焼け対策に使えたらどんなに幸せだろうと、漫然と考えていると、ほどなく待ち合わせの相手が店に入ってきた。
「ごめん、みぃちゃん、待たせちゃったね。帰りにみんなでテストの話につい盛り上がっちゃって」

 真っ白なブラウスの胸元をやや広めに開け、幅の違う臙脂えんじと濃茶、白のラインが入組むチェック柄のスカートの裾を限界まで切り詰めた、夏真っ盛りな装いの女子高生が喫茶店に駆け込んできた。非常にうっすらと桃色がかった頬や腕に細かな玉の汗が貼り付いている。

「いいよ恵怜、全然待ってないよ。さっきコーヒー頼んだばっかりだし」
 麗牙光陰のもう一人の超能力者、荒木恵怜が水希の向かいの2人席を独占する。
「コーヒーって、もしかして、ブラック?」
「もちろんっ」いたいけな13歳の少女が、目を丸くして胸を張る。それを見た恵怜がさも楽しそうに相好を崩した。

「恵怜のところもテスト返却始まったんですか?」
「まあね。ってことはみぃちゃんもテスト返却されたの?」両方の腕で頬杖をつき、曇りかけた恵怜の表情が、急にいたずらな笑みへと変わった。「で、どうだったの?」
 頬杖をついていた腕をくずすと、前のめりになって少女の一言を待った。思わず水希が体を仰け反らせた。

「え、えっと、大体予想通りの点数だったんですけど、予想以上のものがなくて、なんだかつまらないです。それに、ぜったいこれは合ってるっ、って思ってた問題が違ってたりしてて、とても悔しいです」

恵怜がヒュゥと一瞬口笛を鳴らした。
「みいちゃんらしいね。さっすが!その言葉あの子に聞かせてやりたいな」身長150cm台前半と文字通りの小悪魔が、返却されたテスト用紙の束を抱えて、滝のように涙を流す親友の姿を想像していた。

「あいつって、誰なのですか?」
「あぁ、それはね——」恵怜が言葉を続けようとしたとき、彼女の左側にある店の入口のドアに掛けられた鈴が、軽やかに鳴った。
 恵怜がそれに反応して入口を見ると、可笑しそうな笑みを浮かべる彼女の表情が、笑顔のまま凍りついた。
男の後をついてくるようにして閉まり始めた扉をすり抜けてきた彼女の思しき女性が店に入るなり、声にならない声を上げ、直立不動になった。そして、満月のようにまん丸に開いた瞼を、驚異的な速さでしばたたかせた。

「え、恵怜?」
 頭の中が真っ白になりそうになるのを、寸でのところで堪え、精いっぱいの明るい笑顔を振りまいて返した。
「奇遇ね、亜弓ぃ!今日、早く夏休みに入った従兄弟が来ててさあ。ちょっと近所を散策してるのよ。ね〜」
 椅子を横向きに座り、店の入口のほうを向いていた恵怜が、最後の一言をやや間延びさせながら目線を左側の水希に向けると、左まぶたを鋭く瞬かせた。
「あ、初めまして…」
 全てを察した中学1年の少女が、伏し目がちで口数少なく挨拶をし、人見知りが強く話しかけづらそうな女の子に徹した。
「あいつって、もしかしてあの方ですか?」
 レジに背をむける側の座席にいる水希が、同じ通路の奥の窓際の席についた亜弓を一瞥すると、少し身を乗り出して、恵怜に耳打ちした。お互いに背が低いので、あまり間合いが詰められないのがもどかしい。
「ご明察。いかにもテスト嫌いそうでしょ。あんなに打ちひしがれちゃって」
面白おかしく言おうと思ったのだが、時折背後から聞こえてくる、親友の身を切るようなか細い叫びが彼女のいたずらな気持ちを一掃し、元気印の彼女に生気のないため息をつかせた。
 程なく、水希たちのテーブルに、ブラックのブレンドコーヒーと、アイスカフェラテが運ばれてきた。窓際の二人の会話が落ち着いてくると——即ち、亜弓の性根が朽ち果て、会話が途切れがちなってくると——、時節柄学生がひしめく店内の喧騒が、恵怜の耳を不快にたたいてきた。
 向かいの席では水希が徐にタブレットをテーブルに置き、インターネットに接続するところであった。新しい物好きの科学者が、一方的に彼の「子供たち」一人ひとりに配ったものである。そしてそれを真っ先に使い始めたのは、麗牙光陰で最年少の棚妙水希だった。何時でも何処でもネット小説が大きな画面で見られるというのが、大きな魅力なのだという。そして今日も、ネット小説サイトのサーフィンを始めようとしていた。
 顔を伏せ、タブレットの画面に釘付けになっている3歳年下の女の子の様子をものめずらしげに眺めていると、出し抜けに彼女がタブレットを恵怜の前に突き出してきた。
「これ、ちょっと読んでみてくれませんか?」
 改行があまり使われず、異常発生したカビかコケのごとく画面いっぱいに小さな文字が敷き詰められている。あまりの見た目のグロテスクさに、恵怜が肝をつぶし、両手をふって断固とした拒否をアピールした。
それでも、ここの2段落だけでもと懇願してくる少女に押し負け、不承不承タブレットを受け取り、該当する部分にざっと目を通す。
 最初は老眼の高齢者のごとく眉間に皺を寄せ、目を細めて大雑把に流していたが、次の行に移ると瞼を開き、食い入るようにタブレットに見入った。さらに行を進めると、一気にそのページを読みきった。
「え、なんでECのこと書いてあるの?実際と全然違うけど」
水希が、このネット小説はECをテーマにした小説から派生した作品であること、主人公の男が百貫ナントカでオタクであること、異常に物語の進行が遅いことなど、気になったこと一通り恵怜に伝えた。そしてブラックを一口飲み、窓の向こうの人波に漫然とした目線をやると、くだんの一段落について、誰にいうでもなくぼそりとつぶやいた。
「あの部分、闇のちからに対する私の不安が全然書き込まれてないんですよねぇ」

「じゃ、作者に文句言っちゃいなよ」

 予想だにしない返事に水希が驚いて視線を正面に戻すと、見計らったように恵怜が右肩をやや前に突き出し華麗な右目のウィンクを寄越した。水希が肩をびくつかせ、プレーリードッグ然と背筋をのばし、真円に見開いた両目を忙しくしばたたかせた。彼女とあまり背丈の差のない3つ年上の女史は、頻繁に片目を瞬かせる仕草を見せるが、繰り出すタイミング、形、どれをとっても完璧だった。鈴の音まで聞こえてきそうな気がした。瞬きだけでではない。彼女の佇まいや仕草、そのほか彼女を取り巻く様々なものが、「カワイイ」を体現することに徹している感すらある。そして一方では、秘密結社ECの一員として、めざましい活躍をしているのだ。
 ふとしたことから感じた眼前の仲間の偉大さに、思わず嘆息する。そして、うつむき加減になり、こっそりと、ゆっくりとバレないように左の瞼だけを閉じようと試みる。
 ——やっぱり、両目が閉じちゃうなぁ…。
 
 突如天を仰いだかと思うと、今度は眠たそうにうつむき始めた女の子に、恵怜が心底心配そうに声をかけた。
「大丈夫?!みぃちゃん。なんだかとても具合悪そうだけど。買い物行くのまた今度にしようか?」
 水希が顔から火の出る思いで自分の体調は至って快調であることを主張した。だが、恵怜の不安はぬぐい去ることができなかった。少女は腹をくくった。

「ごめん、心配かけちゃって。あのね、恵怜ってウィンク上手だなぁって思って、つい」
「……へっ?」

 刹那、二人の間を沈黙がよぎる。ことは瑣末であっても、標準的な日本人女性の生涯の1割とちょっとしか生きていない彼女のとっては、ありったけの勇気を振り絞って臨んだ告白をだったのである。少女にとって長い長い刹那だった。

 気を取り直した恵怜が、右目、左目と瞼を交互に閉じる。今度は3回ずつ。顔全体に余計な強張りのない、理想的なウィンクだった。水希がそれを真似しようとすると、 いつもの瞬きなのかウィンクなのか全く区別がつかなかった。それを見て、今度は水希が恵怜に不思議そうな眼差しを向けられる番になった。
 水希が、すっかり意気消沈して小さくため息をこぼす。

As Story 修正告知用SS ( No.124 )
日時: 2013/02/10 16:41
名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)

「どうすればそんなに上手くなれるの?」
恵怜が困惑気味に返す。「うーん、いちいち練習した覚えないしね。別にできないからって困ることでもない気がす……」
 恵怜が背後の異変を察知した。二人の声が聞こえないのだ。店内でひしめき合う学生の喧騒に埋もれかけてたとはいえ、亜弓たちの声はぼんやりと耳に入っていた。単に話題が尽きたのか、それとも険悪な事態に陥ったのだろうか。水希が話し相手の様子に気付き、右前方のテーブルを一瞥する。
 奇妙な光景だった。恵怜に風也と呼ばれていた少年が、窓の外の「何か」に釘づけになっている。

——恵怜!

 遥声ヒアと呼ばれる、ECの能力者特有の、通常の人間には聞くことのできない音が恵怜の脳裏に響く。少女の 遥声 を聞くなりバネじかけのように恵怜が後ろを見やる。その瞬間、窓の外で黒い「何か」が店の入口に向かって驚異的な速度で移動していくのが見えた。

——何?!みぃちゃん、掩護おねがい!

今度は恵怜が水希に音無き声を発すると、間髪入れず恵怜の右足が床をしたたかに蹴る。夏服のスカートと、セミロングの黒髪をはためかせながら、彼女の体が巡航ミサイルのようにテーブルの高さを超えないように狭い通路をすり抜けていく。
 1秒後、全く音を立てることなく、誰にも気づかれることなく店の扉の脇に恵怜がたどり着いたのと、外開きの扉が激しく開かれたのは同時だった。
 黒い「何か」が左下に屈んでいる恵怜に気づくことなく、勢いそのままに店内を突進しようとする。突進を始めた「何か」の左腕を背後から掴んで制止させようとした。

——?!速いっ。
能力を発動した恵例の右手が「何か」の突進に追いつかなかった。水希の目線が明らかに「何か」の動作に遅れをとっていた。

「かざやくぅぅん!!」

黒い「何か」が発した絶叫で、何もかもが明らかになった。全身かの筋肉がしびれたように、恵怜がぺたんと尻餅をついた。居合わせた学生、社会人、あらゆる面々の視線がさきの声の出処に集中する。

「町田!あいつ何様なのよ」恵怜がぼそりと呟くと、ふんと鼻を鳴らして席に戻ろうとした。
恵怜がすくっと立ち上がると、今のところ危機は回避したことを目線で水希伝える。
 せき止められた喧騒が、ややもせずもとの勢いを取り戻し始めていた。

——ん?というか思い切り亜弓のデート邪魔してるじゃない!
 
 恵怜がくだんのテーブルに目をやると、鮒のように口をぽかんと開けたまま、斜め上を眺めている親友と、その向かいでは、招かれざる客に迷惑そうな素振りを隠そうともしない風也の姿、そして重厚そうな携帯を両手で握り締め、何かをものすごい勢いで打ち込んでいる「黒い何か」の正体、「町田美沙」の姿が目に入ってきた。携帯に入力しているのはまさか、メールアドレスなのだろうか。

「ありがとう、かざやくぅん。また明日、いえ、一時間後に会いましょう!」

 計算され尽くした角度に数分違うことなく上体の向きを整え、少女漫画そのままに栗色のロングヘアーを優雅になびかせると、左まぶたの奥の小宇宙に星をいっぱいに湛え、華麗なウィンクを素早く2回、風也の胸に叩き込んだ。
 猛者どもの集う下橋を統べる男が、両手で左胸を握り締め、悶絶する。亜弓が正気を取り戻し、風也に駆け寄っていった。水希がおぉ、と低く唸る。

 自称「紫苑風也のプリマ・ドンナ」、他称「町田」がわずかの時間に風也の彼女を押しのけ、彼からメールアドレスを訊きだすと、猫よりも猫らしい声を出してその場を立ち去ろうとしていた。彼女の右斜め後ろの下の方で完全に存在を消されていた親友に謝罪の一言もなく。

 窓際の席そばの通路を駆け抜け、レジの前で折れ、店の入口を通過しようとしたとき、右の二の腕に強く締め上げられるような痛みが走った。
 風也から直々にメールアドレスを教えてもらうという、大手柄でのぼせるあまり、右腕の太い血管が切れたのかしらと、笑えない冗談を想像しながら、右を向くとどこかで見たような顔が、目を覆いたくなるような憤怒の相でこちらを睨みつけている。
「あなたが町田ね」
 4秒前まであったはずの、天をも突くような昂揚感が消え去っっていた。
「突然なにごとなの?いきなり人の腕を鷲掴みにしたり、呼び捨てにしたり。まずはあなたから名乗るのが礼儀というものではないのかしら?」突如現れた不審な女に右腕を強く握り締められているのを盛んに気にしながら言い返す。

 大きな瞳をつつむ左右の瞼と、優雅な弧を描く鼻梁に挟まれるあたりに、深くシワが刻まれる。恵怜が一層声を荒らげた。
「あんたね。人さまのデート邪魔しておいてその言い種はなんなの?謝りなさいよ、亜弓と風也に!」
町田の右腕を振り払い、町田をくだんの窓際の席に向けさせる。風也の容態がようやく落ち着きを取り戻し始めていたが、彼の右に座る茶髪の見知らぬ女が、右隣の彼を心配そうに見つめ、声をかけているのが見えた。
「あ…」町田が言葉を失い、呆然と立ち尽くした。恵怜がほっとため息をついた。

「かざやくん、どうしたの?具合が悪いの?」

 再び恵怜の顔面から血の気が失せ、その肌が雪女よりも真っ白になり、氷のように冷たくなる。声の飛んでいった先では、亜弓が体を凍りつかせていた。

「それと相席のかた、風也くんのこと気遣ってくれてありがとう!」曇り一つない軽やかな声で感謝の念を伝えると、深くお辞儀をした。

 かざやぁ、わたし偶然ここに座ってただけなんですかぁ、と彼の右腕を抱え込んで哀れな彼女がおいおいと声を上げて泣きじゃくっている。亜弓の頭を撫でると、風也がたまりかねたように町田を睨みつけながら立ち上がる。「おい、まち——」

「あんたねぇ、本当に周りが見えてないのね。あんたみたいなやつは唯我独尊て言葉がぴったりね。あ、言っとくけど褒めてないからね。思いっきり皮肉ってるんだから!さっさと亜弓に謝んなさいよ!」
 風也の言葉を遮り、恵怜が猛然と怒鳴りつけた。最初は失笑していた店内の店員と全ての客が、テレビドラマよりも激しい感情のやりとりを固唾をのんで見守っている。
再び町田が声を詰まらせる。ふと息を吸い込むと、鋭い目線を向けて言い放つ。
「よくもまあ言い当てたわね。わたしの四字熟語の座右の銘を。褒めてあげるわ。でもね、私にお似合いの四字熟語は唯我独尊じゃないわ。それはね……」町田が胸の前で祈りを捧げるように手を組むと、瞳が刹那強いキラメキを放った。
「紫——」
「俺の名前は四字熟語じゃねぇ!」
怒りに任せ、席を飛び出そうとする風也を、涙が乾き切らないうちから亜弓が身を呈して彼を抑えている。
「あら、あたしのためにそんなに熱くならないで、かざやくん」
「るせぇ!携帯寄越せ、へし折ってやる!」
 全く自分の世界を崩さない女子高生に恵怜が怖気付き、一歩二歩とあとずさった。不覚にも店の壁にぶつかってしまった。
「もう、照れいないでかざやくん。また逢いましょうね。外だと外野がやかましいから、あたしのうちに来てね!風也くんの左胸ポケットに、あたしの住所のメモ入れてあるからねっ!」
 風也が左胸のポケットを探ると、おぞましい感触が手を伝い、彼の首筋を這い上がってくる。呆然と風也が町田の方を向く。ピントの合わない町田の姿が異世界からやってきた怪物のように蠢いて見える。
 止めの言葉を言い切るなり、町田が再び最高のポジションに体勢を整えると、胸の前に両手を柔らかく組み直し、肩を左顎に寄せ、全ての光を飲み込むブラックホールを孕む左の瞼で、鋭いウィンクを3回、風也の瞳に発射した。窓を突き破るようなRPG(バズーカ砲のような兵器)の弾の炸裂音が3回、風也の意識を無茶苦茶にし、彼の両方の瞳から光を奪い去ると、両手で目を覆ったまま床の上にもんどりうって倒れ込んだ。亜弓が顔をボロボロにして、彼の名を叫びながら男の肩を揺すっていた。
 水希が再び、おぉと低く呻いた。

 季節はずれのハリケーンが消え去った後、苛烈を極める夏の直射日光が降り注ぐ町の目抜き通りを、恵怜と水希が仲良く並んで歩いていた。救急車がけたたましくサイレンを鳴らしながら、二人を追い越していく。
「ごめんね、さっきは大騒ぎしちゃって」
「ううん、いいよ。とても楽しかったし。それに、とっても勉強になりましたし」水希が満面の笑みで応える。
「勉強?」
「うん」
 ふと水希が歩みを止めると、恵怜の方を向いた。そして、両手を後ろにくみ、体をすこし斜めに向け、肩を少しすくめると左目でウィンクをした。。いつものように両目が閉じていた。
 恵怜が可笑しそうに笑い声をあげた。それを見て水希も口元に手を当ててくすくすと笑った。

 学生生活の一年の中で最も楽しい季節が、いよいよ始まろうとしている——そんな昼下がりのささやかな事件だった。

〜〜SS完〜〜

 本編第10話を修正したのですが、ただ修正した箇所をコメするのをつまらないので、ECの登場人物に連絡していただくようにしました。
 しかしっ、そのための話がまとまらず、文章が間延びしてしまい、何より時間がかかりすぎてしまいました。おかげでどこを直したのか忘れてしまいました。。。(ぉぃ)
 。。。とりあえず第10話のどこかってのは確かです。

スレを2本にして、小説紹介もやろうとしているところですが、個々のスレの更新頻度が半分以下になってしまい、いろいろとお待たせしてしまっております。少しずつではありますが、どれも進めておりますので、もうしばらくお待ちください。。。(お辞儀)

じゃ、また〜〜!!


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