二次創作小説(紙ほか)
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- AsStory /予告用中編 『二人の精霊王』
- 日時: 2015/09/20 00:30
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 3qG9h5d1)
初めまして!
書き述べると申します。
この作品は以前、シリアスのカテゴリーだったのですが、第七話からはこのサイトに投稿されている他の方の作品の内容を混ぜ込ませていただくことになりましたので、このジャンルに引っ越してきました!
カキコ内二次(合作じゃないですよ)……結構珍しい様な気もします。
混ぜ込む作品は——
『Enjoy Club』(作:友桃様)
です!
そして
『ウェルリア王国物語』(作:明鈴様)
ぇ、二つもやって大丈夫なのかって?貴様のプロットどうなってるんだよって???
(黙殺。。。。。。)
1点注意していただきたい事が……。
冒頭でも触れておりますが、もともとシリアス・ダークの作品なので、そのカテゴリー特有の表現があるかも知れません。できるだけグロい表現は使わないつもりであはりますが……。
更新の間隔が2か月空いたりすることがよくありますが、寛大な御心で受け入れてくださいますと大変有り難いです!
【最新話直前の状況】
(現在修正中・・・・・)
【お客様(引っ越し前の方含みます)】
アメイジング・グレイス様
アサムス様
友桃様
通りすがりの者です。様
(朱雀*@).゜.様
【目次】
◆◆ 序章 ◆◆
1話 >>1
2話 >>2-3
3話 >>4-5
4話 >>6-11
◆◆ 第一章 ◆◆
5話 >>12-13
6話 >>14-19
7話 >>21-25
8(1)話 >>29-31
8(2)話 >>38 >>41 >>44 >>46 >>48 >>51 >>53 >>58 >>60-61 >>63-64 >>70-75
9話 >>81-82 >>87-88
9(2)話 >>90-91
9(3)話『時空間操作システム』 >>95-96
9(4)話『副長官、乱心』 >>98-100
9(5)話『時間を越えて』 >>105-107
9(6)話『地を駆る鳥』 >>110-114
10(1)話『ひかり、在れ』 >>118-119
10(2)話『幕開け』 >>129-132
10(3)話『交錯する時間』 >>142-153
10(4)話『混迷に魅入られし者たち』 >>160-166
10(5)話『絶体絶命』 >>172-175
10(6)話『PMC、対陸軍攻撃陣』 >>180-189
10(7)話『突入』 >>192-197
10(8)話『スナイピング』 >>200-204
10(9)話『ひかり、在れ』 >>209-210 >>213-214 >>227 >>229-230
◆◆ 第二章 ◆◆
11話『逃走』(更新中) >>232-239
〜〜小説紹介〜〜
『☆星の子☆』((朱雀*@).゜. 様) >>108
『Enjoy Club』(友桃様) >>109
書き始め 2010年冬頃
(もう3年経ってしまったんですねぇ)
〜〜予告用短編〜〜
『月光』 >>126-127
『二人の精霊王』 >>243-245 <<<<<<<<(現在作成中!)
〜〜クリスマス短編〜〜
『クリスマス・プレゼント』 >>217-225
〜〜キャラ絵〜〜
メクチ >>207
水希 >>208
水希(変装後) >>212
登場人物一覧
>>206 (リアルパート)
>>216 (ファンタジーパート)
〜追伸〜
ツイタやってる方。。。R18記事があってもOKって方は、ちょっとフォローしてやってくれませんか?? => @motto_e
あんまり呟かないですけどねぇ〜(ぇ?)
- AsStory10(6)話〜PMC、対陸軍攻撃陣〜 ( No.188 )
- 日時: 2014/01/03 09:19
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 7lLc0QEy)
それ以上、少尉が胸のうちの言葉を続けることが出来なかった。名仮平以宇衣とかいう至極ふざけた名前の兵士に恨んでも恨みきれない憎悪が湧いてくる。この感情は今に始まったことではない。あの犬畜生以下の出来損ないが、小さくない失態を繰り返すたびに、直接の上官を飛び越えて、己が直々にその馬鹿な生き物をなじってきた。そうでもしなければ、あの感情が抑えることが出来なかった。除隊は自分だけの判断ではできない。佐官(少佐、中佐、大佐のこと)ならば、自分のキャリアの汚点をどうにかして闇に葬り去ることもできるかもしれない。だが一介の尉官にはそのようなことができるはずが無かった。
「とんだ貧乏くじを引いちまったもんだ。最早笑い飛ばすくらいしかないか」 否、笑う気すら起きない。
せめてこのむしゃくしゃを満足ゆくまで何かにぶつけたい。「何か」に……。
少尉の口の端がふとつり上がる。
なんと都合のいいことか。その「何か」はわたしの足元に転がっているではないか!
意図したつもりは無いが、お膳立ては完璧だった。この糞餓鬼はわたしを生命の危機に陥れようとした。その方法なぞ、わたしが適当に考えればいい。
では何故わたしを襲ったか?
——それはこいつかあの凶悪きわまる地下組織ECの工作員だからだ。
だが部下に出された命令は生きたまま確保ということだ。それを上官が破るとは、ますます立場が悪くなるのでは?
——否、生きていればいいのだ。上のやつらが求めるのは彼らの情報だ。口さえ聞ければいい。もっと言えば脳みそが機能してればいいのだ。あとは悪魔まがいの技術をもつ我が軍の科学班が、おぞましき技術をもってして、この餓鬼から情報を抜き出すだろう。
子供に暴力など、ここは公道。誰かに見られたら——
——だからこその防御スクリーンだ!
一歩二歩と気絶している水希の体に回りこみ、住宅街側のスクリーンと己の間に少女が来る位置に我が身を置くと、改めて肩幅と同じ幅に足の位置を整える。念のため、背中の遥か後ろにある川沿いの道路側にあるスクリーンを振り返る。
布切れ、鳥の羽?のような小さな布片のようなものがスクリーンの端に、ちらっと見えた。
眉を寄せ鼻息で氷の霧を渦巻かせながら吹き散らした。少女の前に向き直ると、先の表情は消え失せ、口元に薄笑いが浮かんでいた。
<防御スクリーン外側>
「ザイルって切るの大変。このナイフの切れ味が悪いのかしら」
一言口を零すと、パワー切れで震える右腕をさすりながら、防御スクリーンの前を走って横切った。スクリーンの中からこっちが丸見えなので、それなりに注意を払ってのことだ。
静の後ろの足がスクリーンの端からでる直前だった。まだ静の後ろ足のブーツのつま先がスクリーンの中から見えていた。陸軍少尉が後ろを振り返った瞬間であった。
間一髪。
そうとは知らずに、静が立ち入り禁止にする区域のもう一方の端にザイルを張りにかかった。
<防御スクリーン内側>
「うるぁ」
ベリーショートの灼髪の裾を鷲づかみにし、一気に引き上げた。水希の体が想像以上に軽く、力を入れきる前に、ふわりと浮かび上がるように持ち上がってしまった。髪の毛が短いせいで持ちづらかったので、すぐに両腕の下に右腕を回し持ち直した。水希の体も氷水の水溜りに浸かっていたため、ぼたぼたと雫がこぼれるたびに柔らかな光沢を放つ分厚い制服の生地にしみが残る。水希の体が触れている制服の上着の左側もべっとりと氷水がしみ込んでいた。
「ちっ、汚ねぇな。おい起きろ」
右の拳で右耳の上の辺りを殴りつける。力が強すぎると、失神が長引いてしまう。どうせならこの小娘が覚醒してから、耳を劈くような悲鳴を聞きながら拳を振るうのも一興だ。少女が短く呻いた。もう一度それを繰り返す。頸の骨が折れたのではないかと思うくらいに、甚だしく頸が揺さぶられ、真紅のドレープが男の目の下で刹那見える。同時に空気を吸い込んだときの引きつるような金切り声が声が少女の喉から一瞬響くと、頸から完全に力が抜け、頭が前に垂れた。
「お、おい」氷よりも冷たい雫が、男のこめかみから頬にかけて一条の跡を刻んでいく。
右手で小さな頭の右即頭部を掴み、小さく揺らす。「おい!おい!目を醒ませ。おい!」
生きたまま確保しろと言われた人間を殺してしまった。いやそれどころではない!平時に子供を、子供を殺してしまった……。
「おい!起きろ!」不意に腕の中で少女の胸がうごめき、小動物かと思しき息吹を、男の皮膚が露になっている左手首に感じた。
「糞餓鬼め、この期に及んでわずらわせやがって」
意識が朦朧としたまま水希が返事というより、ぼやけた声を発し、頭を所在無く揺らしながらもちあげた。水希が己の頸に図太い腕が巻きつけられていることに気付いた途端、その腕が急にこわばっていくのがコマ送りのように見えた。死人の顔をしていた少女の顔がから限界を超えて蒼白になっていく。だが、窮地に陥ったのは少女だけではなかった。少女を抱えた大男も、また異変に襲われていた。
<防御スクリーン外側>
川沿いの道路と川を隔てるコンクリート製の小さな堤防の柵に、ザイルの先端をくくりつけた。ザイルの結び方を検索端末で調べようと思ったが、50年前の世界ではインターネットへの接続方式に静の端末と全く互換性が無いため、断念した。だから我流ーー世間ではそれを「適当」と言うーーでザイルを結びつけた。別に命綱にするわけではないので問題ないとの判断だ。
思っていたより時間がかかってしまった。ここでの時間のロスは、2つの悪い事象を招いてしまう。一つは、立ち入り禁止区域の設置が不法なものであることがばれてしまうこと。そしてもう一つは、新堂と稲森達に、重要、そして深刻な事項の伝達の遅延。
——でもここまできたら、やるしかない。たぶん相手は万全な状態じゃないはずよ。もし、元気でぴんぴんしてたら・・・・・・。
静が右の腰に手をかけ、下流のポイントの方角を見つめる。
——逃げよう。全力で新堂さん達の元へ。
静が問題の裏路地の脇にしゃがみ込んだ。足下から50cmほど前に、大きなカロリーメイトのような形状をした防御スクリーンの発生装置が設置されている。
さっきまで内なる自分と舌戦を繰り広げていた女性警備隊員が、急に押し黙り、発生装置の破壊の準備を始めた。
防御スクリーンのマニュアルに記載されている、発生装置の破壊方法、それは——。
装置に銃撃、若しくは爆撃等の強い衝撃を与えること。
静が右手をかけていたホルスターから拳銃を引き抜く。静は喫茶店を飛び出したときに拳銃を手にしていたが、一旦ホルスターにおさめていた。それは静が新堂に携行を許可された2丁の拳銃のうち、帝栄警備制式の自動拳銃、SIG ザウアーP220ではない。彼女の祖父が愛用していた大型のリボルバー、コルト パイソン357マグナムだった。
右手でグリップを握り、それを包み込むように左手を添える。昔、シューティングレンジで起立姿勢で構えいたときよりずっと重量感がある気がした。腕がその重さに耐えきれず銃口がなかなか安定しない。
- AsStory10(6)話〜PMC、対陸軍攻撃陣〜 ( No.189 )
- 日時: 2014/01/03 09:27
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 7lLc0QEy)
——時間がないって言うのに・・・・・・。こんな至近距離の目標も狙えないなんて。
ややもせず静の表情に焦りの色が浮かんできた。冷や汗を垂らしながら落ち着け、落ち着けと小声で言い聞かせていた。だがそうすればするほど、心臓がガクガクと震え出すような感覚が強くなっていく。
——ダメ。狙えないっ。
いつの間にか静の二つの瞳をきらめきが埋め尽くしていた。
——まただ。またわたし、泣きだそうとしてる。ダメよ。我慢して!
「我慢して、我慢して」
本人の努力も空しく、視界がめちゃくちゃに歪んでいく。畢竟、我慢の限界を超えた静の目から大粒の涙が零れ、子供のようにかすれ声をあげて泣いていた。
「おじい、ちゃん。ダメ。わたし、拳銃が使えない・・・・・・みんなの、役に立てない。・・・助けて、あげられない・・・」
悔しさのあまり瞼をぴしゃりと閉じ、357マグナムを力の限り握りしめた。
——?
熱い。
熱い。
グリップが、手が、焼けるように熱い。
静が涙を澪しながら、瞠目してマグナムを見つめた。マグナムから発せられた熱は瞬く間に静の静脈を遡り、胸に首に、顔に目に伝播していった。
両手から、両腕から、とても自分のものとは思えない強力な力が湧き出している。あんなに支えるのに苦労していた357マグナムを微動だにせず持っている。もちろん銃口の震えなど、髪の毛1本の太さ分も見受けられない。そして、彼女の目線が無意識のうちにと357マグナムの照門に向けられていた。両腕がマグナムを足下50cm前方のスクリーン発生装置に向け、両手首がマグナムの照門、照星、ターゲットが一直線に並ぶように微調整をした。静は言葉も正体も失っていた。只々357マグナムから伝わってくる「熱」に身も心も委ねていた。静の光彩が針穴のように細くなっていき、鋭い煌めきを放った。
「ゼロイン、開始……」
片膝をついた状態で足を踏みしめ、下腹部に力を込める。呼吸を徐々に深く、ペースを落としていき、体のぶれと瞳のピントのずれを排除していく。そして銃身の角度の最終調整を行うと、壁に張り付く蛾のごとく体勢を固めた。
「完了……」
そして、静が厳かに言葉を放った。
「スクリーン発生装置、破壊60秒前——」
帝栄、そしてヒカリセキュリティ、2つのPMCの隊員で構成される時空間犯罪者拘束ミッションは、誰もが予想しないプロセス、配置で遂行の時を迎えようとしていた。
〜PMC、対陸軍攻撃陣 完〜
- Re: AsStory10(6)話〜PMC、対陸軍攻撃陣〜 ( No.190 )
- 日時: 2014/01/17 12:34
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 7TaqzNYJ)
去年は12月に入っても、全然構想が固まらなくて、というか考える気すら起きなくて、殆ど放置状態だったのですが、ようやくやる気が戻ってきつつあります。
すみません、前のコメに誤りがあったので修正。
静はチートの設定はありましたが、この場面のつもりではありませんでした。
そんな設定先一昨日まで無かったです。。。。
で、チート設定があるといっても、強くなり過ぎはよくないので、そのへん非常に気を付けながらやっていこうかと。。。とりあえず、恒常的に銃撃系の能力が新堂や稲森を超えないようにという感じです。
1回2回くらいは、驚くべき射撃能力を発揮するかもしれません。。。
年末年始で、今回の更新分を一気に書いて殆ど未チェックでアップしてしまったので、もしかすると、というかかなり高い確率で大幅な修正があるかもしれません。。。。
今回は当初の『ひかり、在れ』の4/6場面にあたる部分をアップしたので、次回は残り2場面になるかと思います。
ちなみに当初の『ひかり、在れ』の場面構成は、
1、駅前①
2、川沿いの道路①
3、裏路地①
4、川沿いの道路②+ビル
↑↑ ここまでアップ済み ↑↑
5、裏路地② <--(途中)
6、駅前②
です。
次回更新はできれば今月中にしたいなぁ、と思います!
あと、登場人物設定、そろそろ纏めないといけない気がするな。。。。
改めて、今年もよろしくお願いします〜〜〜!!!
じゃっ!!!
- AsStory10(7)話(今月中アップ予定) ( No.191 )
- 日時: 2014/04/14 09:16
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: Vkpu3Lr3)
ご無沙汰しております。
年明けからリアルのほうで自業自得的な忙しさに追われていた & 話の展開の詳細にてこずり、久しくアップしておりませんでした。。。(汗)
前回、序盤があと2場面になるという旨のコメントを書いたのですが、そこまでたどり着けませんでした。。。。毎度毎度本当にスミマセンっっ!
今回更新分の草稿を昨日書き上げましたので、これから細かい修正に入るところです。今月中にはアップできるかと思いますので、どうか、どうか今しばらくお待ちください。。。。(土下座)
ちなみに今回アップ分はまNo.190の記事の表現で行くと、
5、裏路地②-1 ってなとこです。
それでは、また〜〜!!
- AsStory10(7)話〜突入〜 ( No.192 )
- 日時: 2014/04/14 16:33
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: Vkpu3Lr3)
〜突入〜
二〇一二年一月二十日 午前8時45分
<防御スクリーン内側>
すべてが一様に黒一色の世界で宙に浮いたような、体が上下左右前後に滅茶苦茶に回されているような不快さがふと和らいでくる。漆黒の空間に体が溶けだしていくような感覚に囚われる。——これが、死ぬと言うことなの?
頭の中では上と思っていた位置に、白く透き通った光のカーテンが降りてくる。あの向こうが死後の世界。私が行き着く先は・・・・・・。
自分の胸の真ん中と思っているところに、右手だと思っている何かを当てる。あくまでそういうイメージをしただけだ。実際に何がどういう形をしているのか想像もできない。意識の主の思い出がぽつぽつと、何処からもなく湧き出してくる。
EC−Enjoy Club−、血も涙もない裏組織とは表向きのことで、実際は意識の主にとっては素晴らしい友人、否、家族に等しい仲間との素晴らしい日々だった。闇の空間の此処彼処に記憶の断片が映し出される。捨てられた自分を救い、ここまで育て上げてくれた組織のトップの名前を心の中で唱える。そして行動を共にした麗牙の仲間の二人、学校の友人を、そして最後に麗牙のリーダーであり、こんな自分を慕ってくれた人。彼の名前を慎ましやかに声にした。
しかし、死後の場所は思い出の輝かしさによって決まるものではない。生前に己が犯した罪の重さがそれを決めるのだ。
——私が行き着く先は・・・・・・。
徐々に光のカーテンが明るさを増していき、白い半透明のカーテンが濃さを増し、光り輝く壁のごとく遙か遠方に聳える。ホワイトノイズのような耳鳴りがだんだんと大きくなり、ややもせず意識の主は音と光の奔流に飲み込まれた。
白とびした視界が徐々に落ち着いてくる。白みがかった狭い路地。路地の両脇を挟む薄汚れた灰色のビルの外壁。路地の向こうに見える住宅。
——え?
棚妙水希が思わず双眸を全開にしてしまい、現実界の光を直に網膜に通してしまった。頭頂部に鈍痛を受けるほどの光を受け、目を薄めた。
——さっきまで、わたしがいた路地。
状況が飲み込めずピンボケした風景を瞳に映したまま、呆然としていた。そして突然側頭部に何かが激突した。細い首がへし折れそうなほどに左右に深く折れ曲がり、水希が甲高い悲鳴を上げた。体の外に浮遊していた自分の意識が、己の大声で引き戻されると、今度はピントは合ったがぐらぐらゆれている視界につられ、アカベコのごとく頭を小刻みに揺らしていた。混乱の上に混乱をふっかけられた少女の脳内は、オーバーヒートを回避するべく少女の自己防衛本能が働き、直ちに意識レベルを落としはじめ、頭の振り子運動も程なく終わりを迎えていた。だが、「外なる力」の仮借無き仕打ちは止まるところを知らなかった。紅蓮のベリーショートヘアに右側面から鷲掴みにされる感触が走ると、傍目には、透き通るほど儚く紅い花弁を無邪気な子供に乱暴に握られた一輪挿しの雛罌粟が、痛々しく振り回されるかの如き様相となった。
丸太のような腕の中で少女が悲鳴を上げようとして、大きく息を吸い込むとすぐさま口をつぐんだ。体内の空気をごっそり入れ換え、頭をやたらめたらに揺さぶられて漸く気付いたのだ。自分の置かれている極めて危機的な状況が。
あの兵士にー未だにこの地下組織の少女は、将校と兵士の区別がついていないのだがー捕縛されている。自分を生け捕りにすると言っていたあの兵士の言った通りになってしまった。満身創痍の精神状態で能力を使ったがために、兵士を再起不能に至らしめる闇の淵まで陥れることができず、己が気絶した途端、兵士の肉体と精神があっさりと光の世界に這い上がって来られてしまった。水希も制御を失った己の能力から、少尉と全く同じタイミングで解放されていたにもかかわらず、相手に機先を制されてしまったのは、小学生のあどけなさを残す少女の肉体的精神的消耗の深刻さを克明に顕しており、数分の休息程度では到底戦力として復帰できないことを、いやが応にも思い知らされていた。
兵士を真の闇の深淵に陥れることができず、陸軍少尉の手に堕ちた少女が胸のうちに抱えていた選択肢はただひとつ——。
この兵士の所属する組織の拠点まで敢えて拉致され、脱出の機会を窺うこと。
当座の問題は、水希が己が手で完膚無きまでに叩きのめしてしまった自身の精神状態ゆえに、ヒアでウィルと連絡が取り合えないことだった。
水希は拉致されても戻ってこられるつもりでいるが、連絡を受けていない彼女の上官ウィル=ロイファーは、血眼になって水希を拉致した犯人を突き止め、チーム『麗芽光陰』の総力をあげて救出しにかかるだろう。だが、それはこれまでになくECの最大の武器である「秘密」が明るみになりかねないリスクを孕んでいるのである。水希は己の指揮官の身元がばれてしまう可能性に対してのみ気を揉んでいたが、実際はそんなに小さな話ですむことではなかった。
過去に対する「たら」「れば」を言うのは不毛な行いの最たる例ではあるが、もしこの追いつめられた情況にウィルがいて、敢えてさらわれるという案を聞いていたら、説教好きで心配性でツインテールの部下にただならぬ思い入れがある指揮官は機関銃のフルバースト掃射のごとく、少女の軽率な思いつきをこう言って窘めていただろう。
——この国の最先端の力と頭脳が集結する軍事組織の網を、僕とみいちゃんの能力だけでかい潜っていけるなんて保証は何処にもないよ。確かに僕たちのミッションの成功率はとても高い。どんなに堅牢な警備を誇るターゲットだって破ってきた。でもそれは、僕たちの能力の高さというより、影晴様がお膳立てをしっかりしていてくれるからだよ。いつも僕たちは任務では一方的にターゲットに襲撃を仕掛けていて、ターゲットは僕たちが何時何処にどうやってくるのか、何のためにくるのかも全く把握できていない。それどころか、僕たちの姿さえ知らないんだから。物を奪取するミッションだと、持ち主がブツを奪われたことにしばらく気付かいこともよくあるよね?それは影晴様の準備が完璧だからなんだ。
タラレバの世界での銀髪の指揮官の長広舌は長い前置きを終え、漸く本題を切り出した。
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