二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- AsStory /予告用中編 『二人の精霊王』
- 日時: 2015/09/20 00:30
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 3qG9h5d1)
初めまして!
書き述べると申します。
この作品は以前、シリアスのカテゴリーだったのですが、第七話からはこのサイトに投稿されている他の方の作品の内容を混ぜ込ませていただくことになりましたので、このジャンルに引っ越してきました!
カキコ内二次(合作じゃないですよ)……結構珍しい様な気もします。
混ぜ込む作品は——
『Enjoy Club』(作:友桃様)
です!
そして
『ウェルリア王国物語』(作:明鈴様)
ぇ、二つもやって大丈夫なのかって?貴様のプロットどうなってるんだよって???
(黙殺。。。。。。)
1点注意していただきたい事が……。
冒頭でも触れておりますが、もともとシリアス・ダークの作品なので、そのカテゴリー特有の表現があるかも知れません。できるだけグロい表現は使わないつもりであはりますが……。
更新の間隔が2か月空いたりすることがよくありますが、寛大な御心で受け入れてくださいますと大変有り難いです!
【最新話直前の状況】
(現在修正中・・・・・)
【お客様(引っ越し前の方含みます)】
アメイジング・グレイス様
アサムス様
友桃様
通りすがりの者です。様
(朱雀*@).゜.様
【目次】
◆◆ 序章 ◆◆
1話 >>1
2話 >>2-3
3話 >>4-5
4話 >>6-11
◆◆ 第一章 ◆◆
5話 >>12-13
6話 >>14-19
7話 >>21-25
8(1)話 >>29-31
8(2)話 >>38 >>41 >>44 >>46 >>48 >>51 >>53 >>58 >>60-61 >>63-64 >>70-75
9話 >>81-82 >>87-88
9(2)話 >>90-91
9(3)話『時空間操作システム』 >>95-96
9(4)話『副長官、乱心』 >>98-100
9(5)話『時間を越えて』 >>105-107
9(6)話『地を駆る鳥』 >>110-114
10(1)話『ひかり、在れ』 >>118-119
10(2)話『幕開け』 >>129-132
10(3)話『交錯する時間』 >>142-153
10(4)話『混迷に魅入られし者たち』 >>160-166
10(5)話『絶体絶命』 >>172-175
10(6)話『PMC、対陸軍攻撃陣』 >>180-189
10(7)話『突入』 >>192-197
10(8)話『スナイピング』 >>200-204
10(9)話『ひかり、在れ』 >>209-210 >>213-214 >>227 >>229-230
◆◆ 第二章 ◆◆
11話『逃走』(更新中) >>232-239
〜〜小説紹介〜〜
『☆星の子☆』((朱雀*@).゜. 様) >>108
『Enjoy Club』(友桃様) >>109
書き始め 2010年冬頃
(もう3年経ってしまったんですねぇ)
〜〜予告用短編〜〜
『月光』 >>126-127
『二人の精霊王』 >>243-245 <<<<<<<<(現在作成中!)
〜〜クリスマス短編〜〜
『クリスマス・プレゼント』 >>217-225
〜〜キャラ絵〜〜
メクチ >>207
水希 >>208
水希(変装後) >>212
登場人物一覧
>>206 (リアルパート)
>>216 (ファンタジーパート)
〜追伸〜
ツイタやってる方。。。R18記事があってもOKって方は、ちょっとフォローしてやってくれませんか?? => @motto_e
あんまり呟かないですけどねぇ〜(ぇ?)
- AsStory 〜第11話『逃走』(更新中)〜 ( No.238 )
- 日時: 2015/04/11 17:35
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: NSxNy3Qq)
空きベッドを手本にして、掛け布団の元々の敷かれかたを再現するべく、掛け布団をを宙にはためかせると、あとは地に引かれるにまかせた。だが期待したように真っ直ぐにならない。太身の青年は、スライス前のハムのような手首にシーツの端を巻き込むと、同じ動作を繰り返した。
真冬以外は毛布1枚に適当にくるまり、パソコンのディスプレイの前で寝落ちする日々を送っている青年には、皺なく掛け布団を敷き直すのは至難の業だった。それが今の彼には丁度よかった。弟がメールを打つ傍らに立っていたであろう警察が来るまでの僅かな時間でさえも、静寂に我が身、我が心を落とし込みたくなかった。
己が端の病室に置かれている理由は、凡そ見当がついた。だがなぜ警察が自分を尋ねに来るのかがわからない。覚えがないし、もし己が何かの事件の容疑をかけられてしまうようなことがあったのだとすると、記憶を辿るのが怖い。今は傷病者として扱われるかもしれないが、果たして自分は糾弾されるべき悪人なのか、憐憫を給われるべき被害者なのか、一呼吸分体が動きを止めただけでも、瞼の裏で光と闇の光景が絡み合った二つの凧のように乱れ舞う有様だった。
やがて、それでも心を蝕む不安を抑え切れなくなってくると、新たな憂患が頭の右隅あたりに現れた。彼の弟はメールに警察のことしか書いていなかったが、両親や姉もここに来ているのだろうか。不意に、起きてから何も食べていないのに、下腹部のあたりで大腸が締め上げられ呻いているかのような、気色悪い音を発すると、間髪入れず光曳は強い便意を催した。
慌ててトイレに向かおうとすると、病室の入り口で、ダークスーツを着た、がたいのよさそうな男の二人組と鉢合わせした。テレビドラマによくある、ベテランと若手と言った組み合わせではなく、二人とも年齢が近そうで、どちらが目上なのか区別が付かない。少なくとも20代半ばの姉よりも年上を思わせる、脂の乗り始めた男の迫力があった。向かって右側の刑事は、さっぱりとした短めの黒髪を、流れに逆らわず撫でつけていた。背の高さは、頭の天辺が光曳の目の高さまであり、一種見やっただけでも肩も相当張っているように見えた。言葉を発しているのはこっちの刑事ばかりであった。もう一人は、光曳の挙動を観察しつつ、左手に持った手帳にメモを取りつつと、忙しく動いていた。少し長めの黒い髪を七三に分け、細長いレンズに薄い黒縁の眼鏡を掛けている。そして引き締まったシルエットのスーツを着て、きちっと直立不動の姿勢を保っていた。こちらの刑事も、右側の刑事ほどではないが、背が高く肩幅もあった。しゃべっている方の刑事とのやり取りに気を取られて、それ以上のことはわからなかった。ただ、二人の刑事に共通して、彼らのスーツの地色に負けず劣らず、その表情にも、名状しがたき悲壮感の影が堕ちているように見えた。
二人の後ろには藜と両親が横一列に並び、両親は憔悴しきった顔を光曳に向けていた。弟は一見、神妙そうに見えるが、矢庭に顔のうつむかせたかと思うと、ウールのコートのポケットに左右の手を突っ込んだまま口の端を異様に堅く結んでじっとしている。兄のことなど二の次で、これから起きる出来事に胸が踊るのを必死に堪えている感じだ。姉の姿は一見したところ見当たらなかった。たまたまその場を離れているだけなのか、それとも病院に運び込まれた弟の心配よりも、アルバイトを優先しているのか、姉の性格からしてどちらの可能性も十分にあることを思い出すと、一瞬光曳の表情に陰がかかった。
「警察の、方、ですか?」決まりきった言葉を、途切れさせて言った。
「栃木県警捜査一課の伍頭といいます」張りつめた佇まいからは思いも寄らぬ慇懃な言葉遣いに、思わず光曳は、目礼をしてきた二人に、深々と腰を折り曲げて礼を返していた。
体を戻すと、左側の警官が内ポケットから名刺代わりに警察手帳を取り出し、胸の前に掲げていた。上の空で名前も役職もろくに確認できずにいる光曳に、伍頭と名乗る警官が何か言おうとしたが、光曳がトイレに行こうとしていたのを思い出すと、手帳を掲げる警官に一言添えてその脇を抜けていってしまった。
だだっ広い背中が建物内に不規則に張り巡らされた廊下の向こうに隠れると、5人の視線がそれまで向き合っていた方向に戻った。息子が無事に目覚めたのを見て気が緩んだのか、両親の双眸が一瞬、開いているのが限界と訴えんばかりにやや閉じかけた。あの青年が病院に運びこまれたのは深更の2時頃、目の前に居並ぶ青年の家族等はきっと徹夜明けに違いなかった。
伍頭が、失礼にならない程度に、ゆっくりと言って聞かせるように、間をおきながら声を大きめにして、話しはじめた。病室の外の喧噪は相変わらずだったが、余談を許さぬ大気圧がかかる室内では、高く張りのある警官の声がやや耳に障るほど響いていた。両親はその語勢に、柳葉のごとく揺られていたが、話題が我が子の置かれている情況に及ぶと、二人の眼に俄に光が戻り、刑事の一言一句に至るまで、聞き漏らすまいとしていた。
両親が病院に来て、最初に状況を説明したのは、現場を目撃したという2名の制服警官だった。だが、彼らも一部始終を見ていたわけではないので、光曳の両親が納得できるような説明を受けられなかった。我が子が被害者なのか加害者なのかさえも、「調査中」の一言で片づけられてしまっていた。警察が迂闊に物事を断定できない事情は両親も分かってはいたつもりだったが、頭で理解するのと心が納得するのは別問題であった。本庁から来た刑事の発言に傾ける姿勢に気迫がのるのも当然であった。
今までの事件の推移を手短に話していた短髪の刑事が、一旦言葉を切り、光曳の去ったほうを改めて一瞥して、口を開いた。
「ご本人の現場立ち合いがまだですが、ご子息は被害者と見て、ほぼ間違いないでしょう」
その一言を聞いた途端、母親が全身の力が抜けたように、その場に頽れた。旦那が立つよう注意したが、立ち上がる様子は微塵もなかった。旦那の言葉が聞こえているのかさえも怪しかった。
とりあえず、伝えておくべきことを一気に喋りきる勢いで、喋り担当のほうが、現場の立ち合いの時期や連絡先について伝えた。冷静を保っている父親が、何度か首肯したのち、短髪の刑事から名刺を受取った。
「では、このことを息子に伝えておけばいいんですね?」
足もとの妻を気にしながら、父親が伍頭に訊く。
「はい。それで——」
ほんの一瞬、伍頭が間をおいた。息継ぎよりも短い間だったので、それが逡巡だと相手には悟られていないはずだ。
「息子さんに、何点か伺いたいことがあるのですが」
恐らく、伍頭が喋ろうとしたであろう言葉を、七三眼鏡の刑事が急に割り込んで話してきた。父親が刹那目を丸くし、怪訝そうな顔を斜め上の眼鏡に向けた。言葉遣いに問題はないのだが、伍頭の言葉が相当丁寧だったのと、唐突に割り込んだせいで、もう一人の態度が横柄に見えてしまっていた。
「わたしは十番と申します」
話に割り込んだことに微塵も仏頂面を崩すことなく、細長い右の中指の指先で眼鏡をブリッジを押し上げながら、言ってのける。
曲がり角の向こうから、スリッパのかかとを忙しく床面にはたきつける甲高い音が近づいてくる。その音の尾鰭のように、コンクリートの床材がかすかに震えて、刑事たちの体に低音を伝えてくる。
角から人影が現れた。絶妙なタイミングで、渦中の青年が用足しから戻ってきた。光曳が父から一言話しかけられると、明らさまに困惑の表情を浮かべて、十番の方を向いた。
「すみません。僕いまかなり混乱してて、あの時のことよく覚えてないんですが」
十番が落ち着き払った声で返す。「わたしの質問を受けていくうちに、思い出せるかも知れない」
そういうと、光曳を病室のベッドに掛けるように促した。
「それでは、ここからはしばらくご本人とだけでの確認となりますので、大変恐れ入りますが皆さまは暫くロビーの方でお待ちいただけますか」
唐突な締め出しに、両親が何か言いたげな素振りを見せたが、刑事の慇懃な言葉から滲み出る本庁の警察らしい高圧的な雰囲気を感じ、父親が妻を抱きかかえて向こうに行った。光曳の弟も、詰まらなさそうな顔をして、両親を追い抜いてロビーに向かっていった。
病室の出入り口の扉は開けたままになっていた。警察の二人は別にやましいことをするのではない。ただ、第一発見者の制服警官からあがってきた報告を受け、一点、確認したいことができただけのことだった。
病室のベッドに深く沈み込んでいる光曳のそばに十番が立ち、お面のように動かない表情で光曳を見下ろしていた。光曳は睨みつけられているようにも、微笑みかけられているようにも感じられた。これが本当の無表情、ポーカーフェイスなのかと、刹那己の情況を棚に上げて感心していた。しゃべり担当だった刑事は、少し距離を置いて窓際に立ち、窓の向こうの景色と、光曳とを交互に見ていた。そして、窓のベージュのカーテンを引いた。
光曳は潔癖な身であるのに、二人の刑事の行動に、否応なしに問いただされているような気持ちに陥っていた。
「リラックスして、あのときの光景を思い出してくれ」七三の刑事の言葉に、心の中で盛大に顔を顰めていた。できるわけないだろ。
「他の暴行事件でも言えることだが、何故そのような状況になったのか、経緯等確認しなくてはいけないことは色々ある。が、今は一つだけ答えてくれればいい」
- AsStory 〜第11話『逃走』(更新中)〜 ( No.239 )
- 日時: 2015/05/01 20:43
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: NSxNy3Qq)
- プロフ: https://www.youtube.com/watch?v=PFWedf_dmZE
十番の前置きに、光曳の目線が少し下方を向いた。一つの質問から、芋蔓式に根掘り葉掘り訊いてくるんだろう。何故あんな時間に外にいたのか、他に誰か居なかったか、日頃からそうなのか、交友関係は、とか。
「君は銃を持った二人組に襲われたんだ。一人は覆面のようなものを被っていたとのことだ」不覚にも、刑事の直球勝負の質問に記憶の隙を突かれ、光曳が思わず声を漏らして七三の刑事を見あげた。そして、すぐに顔の右半分に右手を当てて、考え込んだ。そういえば、そうだったような——。
「その後、深夜警邏中の巡査らが駆けつけ、銃で応戦した」
俯いていた光曳が再び斜め上を向いた。「応戦って、銃撃戦をやったってことですか?」
既にその時、アスファルトに臥して、意識が薄れていた光曳は、お巡りと犯人とのやり取りを思い出せるはずがなかった。だが出鼻から完全に警察に主導権を握られてしまった光曳は、頭で考えるより先に言葉を返していた。
「報告では、銃撃戦ではなく、一発撃っただけだと言っている」光曳は、けなげに必死に思い出そうとして、右に左に首を傾げている。
「わたしもそれは報告の通りだと思っている」光曳の動作が止まり、七三の刑事を睨み、無言の悪態をついた。だったら訊くなよ。
「警官が銃を撃った時、被疑者はバイクに乗って背中を向け、逃げようとしていた」
七三の刑事が、光曳の素振りなど微塵も気にすることも無く、一方的に話を進めた。視線があちらこちらに飛んでいた、もう一人の刑事が、いつの間にか光曳を一心に睨んでいた。
「よく思い出してほしい」
光曳がまた、声なき悪態をついた。犯人の乗ってたバイクがどんなだったかでも思い出せっていうの?無理に決まってるじゃん。
「銃撃をした警官——」
——へ?
「どこから、そのバイクを撃った?」
光曳は、自分が訊き間違いをしているのかと思った。
「何メートル先の目標を撃ったんだ?拳銃で——」
仮初めの世界に入り浸り、退化しきっていた野性の嗅覚が、珍しく体臭ではなくきな臭さを嗅ぎ付けていた。
光曳が、訝しげな表情で七三の警官の双眸を眺めていた。
巨躯のヲタクの目と鼻の先まで、運命の分岐点が迫っていた。
「僕を襲った奴が大柄で覆面を被ってたのは、うっすらと思い出せたんですが・・・」
二進も三進もいかなくなり、低いうなり声をあげた。それで二人の警官には察してもらいたかった。この場で思い出せなければ、何時間かけても思い出せるような気がしなかった。眼前の二人は、顔の筋肉をぴくりともさせず、一心に言葉の続きを待ち続けていた。
大男、覆面、僕を持ち上げた・・・。徒然に単語を挙げていくが、記憶を分断する壁を破るきっかけとなるものが見つからない。凄く恐ろしい夢も見たような気がする。しかし、具体的に何が恐怖だったのかも思い出せない。
急ぎではないと言いながら、二人の刑事は後を本人に任せて去ろうとはせず、4分・・・5分、そして10分経っても無言で佇んでいた。未だ嘗てこれほど静寂で強大なプレッシャーをかけられたことの無かった青年が顔面を蒼白にさせて記憶を掘り起こした甲斐もあり、肝心のお巡りが現れる場面までは程遠いものの、自宅のベランダから妖しい光を目撃し、外に飛び出し、大男に吊し上げられる瞬間までの記憶の断片が少しずつ埋められていった。同時に、今更なだが、もし警官が発見するのが遅れたら自分は死んでいたのかもしれないという実感が湧いてくると、唸るのをやめ、尻の下に敷いている掛け布団を左右の手で握りしめていた。
あの光を見て外に飛び出した時、いつもと違う何かが起きることは確信していが、まさかそれが、このような事態を招いてしまうとは。生死の分かれ目は、足下まで迫ってこないと、全く見えないものなのか。
ベッドの縁に腰掛け、己の膝頭を見下ろしたまま瞬き一つせず思案に耽っている光曳に、七三の警官がぞんざいに声を掛けてきた。「何か思い出したか」
声のする方にふらりと顔を向けた光曳の目に、レンズの鋭い煌めきが突き刺さると、慌てて我に返り、己が身の置かれている情況を思い出した。そして申し訳なさそうに目線を少し逸らして首を横に振った。
「たぶん、警察が来た時はもう気絶してたと思います。だから・・・・・・」
きつく結ばれた二人の刑事の唇が更にひきつる。光曳は一瞬逡巡したが、気合いを振り絞って残りを言い切った。「だから、駆けつけたお巡りさんの姿は思い出しようが無いです」
ビクつき過ぎて、思ったより声が大きくなってしまった。十間近でそれを聞いていた七三眼鏡の刑事は瞼を下ろし、暫し瞑想のごとく黙り込んだ後、重たく口を開いた。
「君が襲われたであろう場所から少し離れたところで、指先大のゴム片が幾つか見つかった」
人のあらゆる機微に猜疑の眼をもって受け止めることを生業とする捜査官らしい回りくどい言い回し。光曳が眉をひそめる。寒風に煽られた窓ガラスが苛立たしく軋んだ。
「調べてみると、バイクのタイヤの破片だった」
光曳が厳めしい表情のまま、粛々と刑事の言葉を聞いていた。まだ何を言いたいのかわからない。
「二人組のうち一人は覆面、バイクのタイヤの破片、ここまでは第1発見者の警官の証言通りだった」
だったら良いじゃないか。お巡りが正確に証言をしている。何が問題なのか。胸の奥で鼻を鳴らしたい気分だった。
「だがその警官の証言の通りだったとすると、どうしても腑に落ちないところがある」
様々なメディアにどっぷりと浸っている光曳は、警察は仲間意識が非常に強い組織というイメージを抱いていたが、目の前の刑事によってそんな浅薄な考えをことごとく粉砕されてしまった。それにしても、そんな危険な考えを外部の人間に話してしまっていいものなのだろうか。十番とかいう風変わりな名前の警官は七三の外見からして、インテリのステレオタイプと見ていたが、実のところそんなにスマートな人物では無いのかもしれない。
「あの巡査長は目標まで約270メートルと証言している」
ベッドの縁に腰掛け沈み込む青年の向かって左斜向かいに立っていた十番が、一歩右に回り込み、言葉を放った。窓際に佇む伍頭は、人が変わったように沈黙を守り、成り行きを見守っていた。
扉の向こうから響いてくる子供の患者達の喚き声が、3人に重くのしかかる沈黙を破ると、それに促されるように光曳が益々困惑の色を深めた顔つきで応えた。
「・・・・・・覚えてません。というか、見てない。・・・・・・と思います」
七三の刑事が視線を落とし、喉の奥で掠れ声をあげて呻いた。男の声は、不本意な回答を受けて苛立っているとうよりも、心の底から困り果てた響きに満ちていた。心配とも猜疑ともとれる目線を向ける青年と目が合うと、十番は慌てて顔を伏せた。長い前髪で色白な面貌が覆われた。
「これ以上訊いても埒があかない。十番、署に戻るぞ」
伍頭が、卒無く会話をこなしていた時とも、黙りを決め込んだ時とも似つかぬ太い声と緊迫した形相で、七三眼鏡の刑事に向けた。
十番が何か物言いたげに窓際の刑事を睨むと、伍頭が黙って向こうが病室の出入り口に向かって顎をしゃくった。日頃のおしゃべりな雰囲気とのギャップが、刑事の振る舞いに静かな迫力を与えていた。
十番が、バーベルを上げる重量挙げの選手のごとく、ゆっくりと腰を上げた。出入り口の方に向き直ると、光曳の方を見ぬままに一言詫びの言葉を入れ、大股で病室から出て行った。相方の刑事も光曳に簡単目礼をすると、足早にこの部屋から去っていった。
再びだだっ広い空間の窓際に、巨漢の青年が一人取り残されていた。1階の総合受付で待っていた両親と弟が病室の出入り口に姿を現すまでに、数分も要さなかったが、家族に刑事たちとの会話を伝えようと、あの時を振り返ってみると、彼らのいる光景が、遙か昔のアルバム写真のごとくぼやけ始めていた。
交番のお巡りではなく、捜査課の刑事と話していたんだ。今更ながら、一生に一度あるか無いかの経験に、光曳の胸がざわめいた。
心底心配そうな面持ちで根掘り葉掘り質問をする両親に、光曳は慎重に、何度も思い返しながら答えていった。
「二百、七十メートル?それ、ホントかよ」
光曳が二人の刑事とのやり取りの最後を話した時だった。両親の後ろで話の輪から外れて手持ちぶさたにしていた弟の矢庭な割り込みに、家族の視線を一身に受けた光曳家の長子が、斜め上の虚空を眺めたまま硬直した。確か、何の数値だったか。
「たぶん、犯人のバイクと警官との・・・・・・」
「ちょっと待てよ、あっくん」
弟が苦笑いを浮かべながら光曳の言葉を遮った。七三眼鏡の要望に殆どパニック状態で応えていた光曳も、弟の素振りに直ぐに刑事の言葉の不可解な点に気がついた。
外出でよく使う電車の車両が約25mなので、270mという距離は車両11両分近い距離だ。大学のグラウンドは陸上部が100mの直線を確保するために、敷地を斜めに突っ切るコースをつくるくらいだから、グラウンドの長辺の優に倍以上の距離がある計算だ。
厚ぼったい左右の瞼の裏で、深更の闇の奥から駆けつけてきたお巡りが両足をやや広めに広げ、バイクに向かって両手持ちで拳銃を構える姿を想像してみる。闇に埋もれそうな自動二輪とそれに跨がる巨漢の覆面男。青年の視界の中では、バイクと乗り手をあわせても、彼のむくんだ右手人差し指の第一関節程度の大きさしかない。
——遠過ぎる。
〜2015/03/08〜
拳銃を発砲した警官、覚えてますかぁ???(ゲス)
テストに出ますよ。。。。マジで(マジか?!)
光曳編の舞台は、栃木県ならしいです。。。。(他人事?)
昨日決めました。。。(ぉぃぉぃぉぃ )
いや、北関東ってのは決めてたんですけどねぇ。群馬か栃木かで悩みました。。。
で、ABたちが逃走に使った道路が、国道4号のつもりで書いてたのを思い出して、栃木に決定〜〜〜(いい加減過ぎる)(涙)
ちょっとこの話長くなりそうです。。。
〜2015/03/26〜
最近仕事が殺人的に忙しくて、全然更新できてない愚民です。。。。
ちょっと山場過ぎたから、もしかすると近々更新できるかも。
"この世界には、トナリがあって、時々混ざり合ってる……"
で、昨日発売された、我が崇拝する歌手naoのシングル『相対性VISION』のMusicVideoがちょっとAsのイメージに通じるところがあって、微妙に感動したので、URLあげてしまいます。。。。(宣伝宣伝)
歌詞では「次元」と表現されるところが、恐らくAsでは「時間軸」という言葉で現れてくると思います。。。(またまたテストに出るよ!!)
ただ、ネプテューヌっていうゲームのテーマソングなのが珠に瑕。。。
〜201/04/11〜
漸く仕事の(色んな意味で)終わりが見えてきたかもしれない昨今。。。。
今日か明日当たりに更新できるかも。。。。いや、なんとかして更新しようっっ。。。
来る参照10,000の記念短編とかも作りたいし。。。
じゃっ!
〜2015/04/11 その弐〜
相対性VISION 4月30日からJoySoundで配信開始〜〜〜!しゃぁぁぁ歌うぞぉぉ!!
- AsStory 〜第11話『逃走』(更新中)〜 ( No.240 )
- 日時: 2015/05/01 20:47
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: NSxNy3Qq)
- プロフ: https://www.youtube.com/watch?v=LjGGOoyrUCw
警察物のドラマなら、とっくに発砲を諦めて振り返り、歩き始めて10歩は進んでいるくらいの距離だ。刑事の言葉を今一度振り返り、間もなく怪訝そうに左右の瞼で眼を細めた。
まだある。もう一点不審な事が・・・。
光曳の思考エンジンが漸く人並みに回り始めた。銃撃によって飛び散ったタイヤの破片が見つかったのなら、バイクは走行不可能になったはず。その場に転倒したのかも知れないし、スリップしながら、アスファルトにボディの側面の塗装を擦り付けて止まったかも知れない。いずれにしても巨躯のヲタクの出す結論は変わらなかった。
——どうしてバイク本体の話が話題ならなかったんだろう。バイクは押収できたはず・・・。
人に何か思い出してもらいたかったら、もっと目に見える情報を与えるものではないのか。
両親と弟が見守る中、光曳家の長男はベッドのスプリングを痛々しく軋ませながら背中を丸め、頭を抱えた。そんなことまでは、己が気にすることではないのはわかっている。警察だって伊達に何十年も捜査を生業にしているわけではない。敢えて伏せている情報だってあるのだろう。自分は警察に質問されたことだけ気にしていればいいんだ。
光曳の目線が完全に下を向き、己の影の落ちたベージュのホーロータイルが視界を埋め尽くしていた。混沌とする当時の光景を、脳裏から払拭しようとする主の意志に背き、あの時の記憶が、自室の窓ガラスに貼り付けられたポスターに驚いた瞬間から順を追って克明に、走馬燈の様に流れ込んできた。
完全な黒色に染まった風景の遥か前方から、拳銃の発砲音。遥か後方でうなりをあげるバイクのエンジン音。発砲して一瞬の後、エンジンが刹那黙り込む。その後に聞こえるはずの、FRPの外殻とアスファルトがぶつかり擦れあう音の代わりに、フルスロットルのエンジン音が再度響き始める——。
記憶の奔流はそこでプツリと切れた。
霧笛のように低い声に乗せて、深くため息をつく。抱え込んだ頭を小さく左右に揺らす。
僕はどうしてあんなものに遭遇してしまったのか。悪い夢?夜更かしし過ぎの幻覚?
左右の目とタイル床の間を、窓から差し込む弱弱しい外界の光に照らされ白く浮かび上がる埃の欠片が呑気に左右に揺らめきながら降りていく。呆然とそれを瞳の奥に通しながら、ふと言葉を漏らした。
「やっぱり、あり得ない」
「ああ、俺もあり得ないと思っている」
被害者の青年の収容されている病室を背に、底の固い革靴を甲高く鳴らしながら伍頭が相方を睨み返した。
「お前はそれでも課の候補より、奴さんを推すのか」
伍頭の視線を気にも留めず、十番が呟く。相手の言動に答えたつもりなのか、独り言なのか、判別のつきづらい物言いだった。七三眼鏡の刑事は、いつもの癖で、寒くもないのにウエストのしまったダークスーツのポケットに両手を突っ込んで歩いていた。その出で立ちに無表情で少し俯き気味に前を見据える姿は、白衣に生気あふれる表情で患者に応対する看護師の行き交う廊下では、がたいのいい相方よりも目立っていた。
「証言のウラをとらなくてよかったのか?」
廊下の脇に並ぶ長いすで談笑する3人の年輩のご婦人らが、刹那顔を硬直させ、前を通過する黒衣の男を一瞥した。直ぐに病気持ちとは思えない元気のいい声が飛び交い始めた。
「できればとりたかった」伍頭が前に視線を戻した。「だが、正式な任務ではない。あくまで片手間だ」
会話が途絶えると、二人が早めの歩調で足並みを揃えた。
病院の正面玄関自動ドアを抜けると、南の彼方に、黒雲の層が視界の水平方向いっぱいに広がっていた——。
警察庁から全国の県警に一通の通達が届いていた。内容は至極筋の通った、異論の余地のない物だった。
『来る東京五輪に向け、あまねく全国の県警においては、対テロ体勢の強化に取り組むこと』
だが、総論に賛成できるからといって各論までそうはならないのが世の常。都心周辺の県警はSAT(特殊急襲部隊)、そして伍頭らが所属する栃木県警刑事部捜査一課にはSIT(特殊捜査班)があるため、それらの強化が最優先事項となるが、栃木県警SITでは具体的な強化内容の一つに、狙撃手の増員を挙げていた。そして、その内容について、いつもの如く各課間の調整は紛糾に紛糾を重ねた。人手が足りない。どこから人を引き抜いていくのか。狙撃手を養成するのにも膨大な時間と労力がかかる。何より一撃必中が狙撃手の必達事項。本番までにそれだけの実践経験をどうやって積ませるのか。
既に増員を目標として決定したのに、そもそも狙撃手がこれ以上いるのかという再検討から始まり、結局必要と言うところで落ち着きはした。ただし、SITは警視庁のSATを参考にしているため、戦闘範囲の狭い市街戦を想定したトレーニングを積んでいる。凡そ200m以内まで目標に接近し、ビル等の人工建造物の内部に侵入、エリアを確保して一撃で無力化すること重きを置いている。無力化という遠回しな表現をするのは、目標を射殺することが目的ではないためである。最終目的が身柄拘束なのは、日本における「警察」の定義の非常に重大な部分なのだ。
そして県警本部の幹部連中は、そこに致命的な弱点があることに、気がついたのである。それだけでも、再検討はとりあえず意味のあることだったのかも知れない。
県の面積の半分以上を占める山間部。そこにテロリストが潜伏されると、場合によっては犯罪者相手に手も足も出なくなる事態が想定されたのである。
都内では市街地に潜伏していた方が明らかに有利だが、ここでは必ずしもそうはならない。鬱蒼とした山林に身を潜め、市街地にゲリラ的に展開し、人質をとり、警察の動きを封じてくる事も十分考えられる。
だからといって、少数のテロリストのために、サーモバリック爆弾で山林一体を焼き払うという海外の軍隊の真似は、戦争放棄を標榜する国家の警察として許されざる事である。
畢竟、県警の幹部らが選択した対テロ戦術は、最小限の人員とヘリ等によって地道な索敵となった。この戦術のネックは、高精度なレーダーを積んだヘリで、敵の所在がピンポイントで絞り込めたとしても、即座にヘリで射殺できない点にある。ここでも、最終目的が「拘束」というポリシーが大きな障壁となって立ちはだかったのである。
——最後の地上での白兵戦はどうしても避けられない。
地上戦となると、2つの大きなリスクがある。一つは、山岳地帯の地形と時間とともに急変する天候がもたらす地理的リスク。そしてもう一つが、攻か守かで有利不利の差が発生する攻守リスク。攻城戦と似たようなシチュエーションになると、攻め側、つまり警察側が不利になりやすい。
——白兵戦を有利に、安全に進めるには?
そして漸く県警幹部等はあの結論に至ったのである。巨大な兵器を使うことなく、存在を気付かれることなく、彼方から敵兵力を削る兵科を強化するという結論に。
求めるのは、野戦型——。
スコールに見舞われようと、皮膚を焦がす炎天下の中、ギリースーツを羽織り30時間地面と同化する羽目になろうとも。即座に順応し、敵の索敵圏外に潜み、指示したターゲットを一撃で仕止める古典的な狙撃手。
求めるのは、極大の射程——。
テロリストがスコープで探索したとしても、彼らの視界には動物と人間の区別もつかない程度の矮小な点にしか映らない1,500メートル以遠から、急所以外に百発百中の精度を誇る、極大射程を有する狙撃手。
現状を鑑みると、まるで雲を掴むような話ではあるが、幹部らにこのような思い切った決断をさせたのは、件のお達しが全国の県警に伝わっているという情況だった。そして、最終的な成果を見せるまでに相当な時間を与えられていたことも彼らの背中を押したのである。
斯くして、将来の栃木の治安を両肩に掛けるであろう狙撃手探しの活動が始まった。
栃木県警SIT狙撃手強化任務の最初のステップとして、本部や派出所で狙撃部隊編入候補者の擁立が行われた。まずは各部署から他薦、自薦を共にの氏名、所属、経歴、推薦理由等を記載したメールを総務部に送付し、書類選考が行われるはずだった。
しかし、各部署から推薦のメールは集まったものの、書類選考は行われず、突然被推薦者の見極めのステップに入ったのである。総務部のメールボックスに蓄積された大量の推薦メール。前代未聞の高い返信率——いつもなら本部からのアンケートに返信をしない末端の臨時職員のみの部署からの返答も含まれている——、その返信率を達成する期間がいつもの半分という成果が、SITの強化施策に対して、県警全員が高い関心を持っていることを如実に顕していた。ただ、残念なのは、彼らの関心の高さの出所は、日本の治安を守る仕事への熱意故ではないことである。彼らの関心事は、ただ一人の人間に向けられていた。
『諏内 葉(すない よう)』
〜2015/04/27〜
聖剣伝説の最新作がVitaに移植されるぅぅぅ!
世界観がLOMみたいだったら最高なんだけどな〜。
何にせよ公式サイト見てたらたまらなく欲しくなってきた。。。。ぅぉぉぉ!
キャラのシリアス感と無垢さが。。。。ヤヴァイ。。。。
取り合えずゲームの前にサントラポチッた。。。。
〜2015/04/30〜
たぶん今日サントラ届く〜〜!あとはVita版のリリース待つのみだ!
参照はテーマソング『Believe in the Spirit』(KOKIA)!是非聴いてくだされ!
〜2015/04/30(2)〜
ツイタで書いたことこっちで書きなおすのが面倒(&馬鹿らしい)ので、プロフィールページにツイタID載せました。。。我がフォロー先が美少女ゲーネタ多いので、それでもOKって方は、是非フォロお願いします〜!
じゃっ!!
- AsStory 〜第11話『逃走』(更新中)〜 ( No.241 )
- 日時: 2015/05/01 20:50
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: NSxNy3Qq)
その名は、SITを抱える刑事部捜査一課を始めとする2、3件の回答を除く全てのメールに刻まれていた。
——拳銃射撃の神が交番にいる。
去年の初夏の頃にどこからともなく発生した噂は、ゆっくりと管内に広まっていった。聞く人によって100メートル先でも命中させるとか、500メートルだとか、内容のぶれが大きく、半年もすれば確実に消えるだろうと、伍頭ら刑事部の面々は踏んでいた。交番勤務の1巡査あるいは巡査長が射撃の話題でSITよりも注目されるなど、刑事部として全く以て面白くない話だった。
だが、伍頭達の見込みとは裏腹に、件の噂は半年を過ぎても無くならず、それどころか警察署を飛び出し、一般市民の間にも県警の都市伝説として知れ渡っていったのである。そして、組織内部では「神」と呼ばれる人物の氏名まで特定され、瞬く間に県警の頂点から根の端までその名が伝播したのである。今回のアンケートの結果に至ったのである。
捜査一課は、噂の人物の名が明らかになり、徐々に確度の高い情報があがってくるにつれ、その者の評価についてはっきりと温度差のある、二つのグループに分かれていた。
課の古株を中心に課の大半を占める、諏内を捜査一課の眼の上の瘤のように、忌避するグループ。静観を装ってはいるが、彼らの言動の端々には、諏内を忌み嫌う感情が滲み出していた。
そして諏内の実力に、少なからぬ興味を示している伍頭ら少数派。意外なことに、最も諏内の存在を認めたくないはずのSITの面々の大半が含まれていた。
どんなに射撃場での腕前が優秀でも、現場のプレッシャーに負けて、実力の半分も出せないことがあることを、作戦現場の隊員は、胃と心臓に穴があくほどに思い知っている。だが、この噂が真実に近いものならば、それら後ろ向きな要素を鑑みても、彼らにとって興味をそそらずには入られない人物であったのである。
伍頭派の最大の問題は、未だに誰も肝心の諏内に会ったことが無いことだった。事件の証言をしたのは、諏内が発砲した現場に居合わせた、堀田という巡査で、諏内は少し前に空き巣の通報を受けて、現場に現場に出ていた。
刑事部捜査一課と言えば、どの警察組織でも例外なく花形であり、同時に一年を通して激務の続く部署でもあった。お互いが全くタイミングの合わせづらい情況の中、この度の暴行事件。伍頭は絶好で唯一の機会とえた。諏内に会えずとも、シューティングレンジ以外で、諏内の発砲を目撃したただ一人の目撃者から都市伝説の真実、狙撃候補者に推した己の直感が誤っていないことを確かめられるはずだった。現場のアスファルトから硝煙反応があり、タイヤの破片も見つかり、その距離は確かに凡そ270メートルだった。それでも、刑事の性は直接の目撃者の証言を欲していたのである。
だが、被害者の青年の口は重たかった。本当に覚えてないのか?正式な捜査で、取調室に連れ込めたなら、間違いなく糾弾していたところだった。
結局伍頭は、いつものように時間が無いという理由で、追求の手を止めてしまった。
十番が、会話の弾まぬ足取りを、相棒が歩みを止めない程度に緩め、やや右前に出た相方の背中を瞳を右に寄せて見つめた。眼鏡の中心に右の人差し指をあて、刹那瞼を下ろした。貴重な機会にもかかわらず、あまりにあっさり手を引いてしまった伍頭の心境を図りあぐねていた。目の前の背中は、そんなことを全く気にする素振りも見せず、一定の速度で病院の廊下を進んでいた。
「しょうがないな。行くか、十番」
矢庭に前の男の歩みが止まり、左後ろに振り返ってきた。
「ああ、そうだな。時間が押している。次の聞き込み先は——」
十番が左内ポケットからスマートホンを取り出し、素早く指を滑らせる。間髪入れず相方の声が、俯いていた十番の頭越しに飛んできた。
「違う。ヤツに会いに行くに決まってるだろ」
十番が両眼を剥いて顔を持ち上げた。
「行くって、今からか?それにアポ無しじゃ」
「警察官ってのは、アポがあったってスッポカすもんだろうが」
曇っていた十番の表情と眼鏡のレンズが一気に透き通っていく。伍頭は今日のスケジュールの何件かが午前10時にして、フイになってしまい、困ったような表情を見せているが、内心は結構乗り気なのは見え見えだ。
十番が再び眼鏡を右手で持ち上げ直し、かすかに苦笑した。
青年のはっきりしない対応のせいで、かえって相棒の心を煽ってしまったのだろうか。
「ああ、だが他の事案はどうする」
「取りあえず、諏内とかいう神様に会ってからだ」
十番が軽く鼻で笑う。「了解だ」
付近の患者と医療スタッフがふと目線を留める程に、伍頭が颯爽とダークスーツの背広を靡かせながら向き直ると、今度は伍頭のスマートホンがメールの受信を報せるアラームを鳴り響かせた。
伍頭が露骨に顔をしかめると、周囲に配慮をしつつ激しく悪態をつきながら画面を睨みつけた。伍頭の目線が数秒間釘付けになると、ほう、と小さく呟いた。
「どうした」
「おい、さっきの学生のとこ寄ってくぞ。学生を襲った奴の顔が割れたかもしれん」
伍頭がスマホの画面を十番に向けた。十番も伍頭の同じように顔をしかめ、同じように、ほう、と声を漏らした。
「悪の権化みたいな野郎だな」
画面には、横浜の病院名と"壇 風虎"という文字、そして院内で遠巻きから密かに撮った、覆面を外した巨漢の運び屋の斜め右の面貌が写っていた。
(保留)
〜2015/05/01〜
なんだか、同じこと何度も書いてる気がしてきました。。。。
すっかり空虚な決まり文句になってしまいましたが、またあとで直すかもしれません。。。。直さないでそのまま突き進んでしまうかもしれません。。。。
とりあえず、本編は中断して、参照10,000記念の短編に取り掛かろうかなぁ。。。とヵ。。。
- AsStory 〜予告用短編作成中〜 ( No.242 )
- 日時: 2015/09/27 12:42
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: BLMhacx0)
- プロフ: https://www.youtube.com/watch?v=LjGGOoyrUCw
ここからは、来る参照10,000に向け、短編を書こうと思います。
以前、光曳梓とメクチの登場するシーンを先行で紹介する予告用短編『月光』を書いたことがりましたが、今回も予告用短編を作製しようと思います。
登場人物は、予定では以下のようになります。
・アロマ (ウェルリア王国騎士団副団長)
・スカユフ (流刑島戦闘団団長)
・アレスタ (流刑島戦闘団団員)
・エンシェントドラゴン
・アークドラゴン
・ドラゴン
・フィティア
アロマは、本家のスレで出てきたのでご存知の方も多いかと思いますが、下の二人ってどこの馬の骨だよ!って思った人は、登場人物紹介をご覧ください。
予告用短編自体は映画の短い告知みたいに背景説明なしで書いてしまうので、ここでちょっと背景と少しあらすじ。。。。
【あらすじ】
舞台はウェルリア王国物語原作から1年後。大陸東部に位置する王国からは遥か離れた大陸の西部の某所。
大陸の列強各国は時を同じくして、突如ドラゴン狩りを始めたのである。正確には、ドラゴンを生け捕りにするのが目的。
竜族は眷属から順にナーガ、ドラゴン、アークドラゴン、エンシェントドラゴンとあるが、列強が狙うのは、この星に10体しかいないと言われるアークドラゴン。
神の右腕と呼ばれる彼の神獣を狩るのもおろか、生け捕りにするなど、自殺行為としか言いようのない列強の動きに、王国群総司令ヨハンが、アロマに列強の動向について、詳細な調査をするよう命じた。
アロマが向かったのは、アークドラゴン生け捕り作戦の現場。急きょ駆り出された農民や傭兵どもに混じり、彼女も身分を隠して一介の農民あがりの雑兵としてもぐりこんでいた。
指令内容のあまりのスケールの大きさに、彼女は雲を掴むような思いでこの地に出向いていたが、作戦に参加した列強の司令官、兵士、誰もが予想だにしなかった事態に遭遇するのである。
【ここまで】
登場人物の最後の「フィティア」。こいつは、メクチとともにAsStoryを考え始めたころから一貫して設定の変更の無いキャラクターです。
ファンタジーパートではあまり出番ないですが、とてもキーキャラクターです。。。。何者なんでしょうね。聖剣伝説Legend of Mana(LOM)の影響を強烈に受けて作ったキャラなので、LOMをやったことある人は、ぁぁコイツが元ネタか、と考えてみるのも面白いかもしれません。。。。面白くないかもしれません。。。
まぁ、LOMやったことある人は考える間もなくわかるはずです。逆にわからなくて、LOMやったことあるって言うのは。。。。ねぇ。。
ぁ、でも声は違うかも知れない。。。。(え?LOMってボイスついてたっけ??)。。。。。。一人だけいますよね????声のついている登場人物!(笑)
参照は聖剣伝説Rise of Mana(ROM)のテーマソングですが、この短編でも使います。。(ぇ????)
どうぞお楽しみに〜〜
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