二次創作小説(紙ほか)
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- AsStory /予告用中編 『二人の精霊王』
- 日時: 2015/09/20 00:30
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 3qG9h5d1)
初めまして!
書き述べると申します。
この作品は以前、シリアスのカテゴリーだったのですが、第七話からはこのサイトに投稿されている他の方の作品の内容を混ぜ込ませていただくことになりましたので、このジャンルに引っ越してきました!
カキコ内二次(合作じゃないですよ)……結構珍しい様な気もします。
混ぜ込む作品は——
『Enjoy Club』(作:友桃様)
です!
そして
『ウェルリア王国物語』(作:明鈴様)
ぇ、二つもやって大丈夫なのかって?貴様のプロットどうなってるんだよって???
(黙殺。。。。。。)
1点注意していただきたい事が……。
冒頭でも触れておりますが、もともとシリアス・ダークの作品なので、そのカテゴリー特有の表現があるかも知れません。できるだけグロい表現は使わないつもりであはりますが……。
更新の間隔が2か月空いたりすることがよくありますが、寛大な御心で受け入れてくださいますと大変有り難いです!
【最新話直前の状況】
(現在修正中・・・・・)
【お客様(引っ越し前の方含みます)】
アメイジング・グレイス様
アサムス様
友桃様
通りすがりの者です。様
(朱雀*@).゜.様
【目次】
◆◆ 序章 ◆◆
1話 >>1
2話 >>2-3
3話 >>4-5
4話 >>6-11
◆◆ 第一章 ◆◆
5話 >>12-13
6話 >>14-19
7話 >>21-25
8(1)話 >>29-31
8(2)話 >>38 >>41 >>44 >>46 >>48 >>51 >>53 >>58 >>60-61 >>63-64 >>70-75
9話 >>81-82 >>87-88
9(2)話 >>90-91
9(3)話『時空間操作システム』 >>95-96
9(4)話『副長官、乱心』 >>98-100
9(5)話『時間を越えて』 >>105-107
9(6)話『地を駆る鳥』 >>110-114
10(1)話『ひかり、在れ』 >>118-119
10(2)話『幕開け』 >>129-132
10(3)話『交錯する時間』 >>142-153
10(4)話『混迷に魅入られし者たち』 >>160-166
10(5)話『絶体絶命』 >>172-175
10(6)話『PMC、対陸軍攻撃陣』 >>180-189
10(7)話『突入』 >>192-197
10(8)話『スナイピング』 >>200-204
10(9)話『ひかり、在れ』 >>209-210 >>213-214 >>227 >>229-230
◆◆ 第二章 ◆◆
11話『逃走』(更新中) >>232-239
〜〜小説紹介〜〜
『☆星の子☆』((朱雀*@).゜. 様) >>108
『Enjoy Club』(友桃様) >>109
書き始め 2010年冬頃
(もう3年経ってしまったんですねぇ)
〜〜予告用短編〜〜
『月光』 >>126-127
『二人の精霊王』 >>243-245 <<<<<<<<(現在作成中!)
〜〜クリスマス短編〜〜
『クリスマス・プレゼント』 >>217-225
〜〜キャラ絵〜〜
メクチ >>207
水希 >>208
水希(変装後) >>212
登場人物一覧
>>206 (リアルパート)
>>216 (ファンタジーパート)
〜追伸〜
ツイタやってる方。。。R18記事があってもOKって方は、ちょっとフォローしてやってくれませんか?? => @motto_e
あんまり呟かないですけどねぇ〜(ぇ?)
- Re: As Story10(2)話〜ひかり、在れ(3)〜 ( No.156 )
- 日時: 2013/06/27 20:43
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 7TaqzNYJ)
おお!!半年以上ぶりのお客様です!
ありがとうございますっ!
いま >>91 ですか。たぶん内容的にも書き方的にも一番読みづらいところだと思います。
その頃の当方はまだ血の気の多かった青二才で、地の文から改行しないで台詞を続けるというのがマイブームになっていたはずです。
なので、異様に文字がびっしり詰まっていたはずです。。。(スミマセン)
内容も、後の場面で登場するシステムに対する老獪の思い入れがあいてあるばかりで、、、
会話の中に綺麗所がいなくて 見た目的にパッとしないところが続きます。。。
新堂は(チート的に)超優秀な隊員で、もっとクールなはずだったのですが、水打があまりに一人の世界で突っ走ってしまうので、彼がお目付け役にならざるを得なくなってしまったのです。。。。ご苦労様です、新堂さん。
>>110あたりから場面が変わって、話の展開がかなり速くなりますので、そのあたりから多少退屈感が減るんじゃないかと、甘々の希望的観測を述べてみました。
あと、全編の主人公、光曳梓の出番があまりにも回ってこないので予告編短編ということで、光曳の登場する話があります。その話で冴えない主人公を思い出していただけると非常にありがたいですっ!
改めてコメントいただきまして、ありがとうございました〜〜〜!!!
じゃ!
- Re:As Story10(2)話〜ひかり、在れ(4)〜 ( No.159 )
- 日時: 2013/08/26 18:27
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: 7TaqzNYJ)
- プロフ: http://www.nicovideo.jp/watch/nm8070136?group_id=7610013
どうも〜。毎回ご無沙汰しております(汗)
前回アップした日が6/26。。。。。なんと丁度2ヶ月経ってしまいました。でも、前回よりはかなり更新早いからいいか。(ぉぃ)
今回は、いろいろと文章の視点が変わります。そして、時間も前後してたり、重複したりと。。。つまり、、、、
いつになく読みづらいかも知れません。。。(ダメじゃん)
本当はもっと整理してからアップすべきなのかもしれませんが、わたくしめの能力では収拾つかない状態になってしまったので、わかりづらいままアップです。。。(スミマセン)
前回の最後で、ついに(脳内"正"ヒロインの)水希が能力を発揮しました。でも、力を使いすぎてしまったがために、、、、、(泣)
今回はその続きと、前回新堂に「おまえイラネ」と断罪されてしまった(仕様上"正"ヒロインの)静が登場します。
今回分を読むときは、時間の前後、特に時間が重なっているところが、非常にわかりづらいので、気を付けていただけると、ありがたいです。
(最後に)
ようやく、この回のタイトル「ひかり、在れ」の雰囲気出てきたので、再度元ネタの合唱曲のリンク記載しておきます。
文章は最悪ですが、曲は最高です!!!
それでは、『As Story10(2)話〜ひかり、在れ(4)〜』
始まります〜
- As Story10(2)話〜混迷に魅入られし者たち〜 ( No.160 )
- 日時: 2014/01/02 17:38
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
- プロフ: http://www.nicovideo.jp/watch/nm8070136?group_id
『混迷に魅入られし者たち』
二〇一二年一月二十日 午前8時30分 ポイント駅前——
——ゆるさない!
鮮烈な灼髪を、天を衝かんほどに逆立たせた少女が語気を荒げる。聞き覚えのある声が雲間から降り注ぐ陽光のようにぼんやりと少女の耳に入りこんできたが、当の本人はそんな環境音を意に介す素振りも見せず、はるか前方で悶絶する巨漢を改めて睨みなおし、体躯の左右で握り締めた小さな拳にいっそう力を篭めた——。
学校では精錬清楚な笑みを浮かべ、漆黒のツインテールを愛らしく靡かせる女子中学生の鑑のような少女が、ミッションが始まると一変、その能力を象徴するかのように、一切の心、肉体の揺らぎを見せることなく、冷徹な視線によってターゲットの五感を光無き奈落の底に突き落とす小さな能力者となり、仲間を掩護する。気の遠くなるような数の任務を通して築きあげた彼女なりのセオリーにのっとって、最初のミッションを完遂するはずだった。
まだ、かすかに残された理性が、正体を失っている表の自分に自制を促そうと、あらんかぎりの声を上げた。だが、彼女の左右の鼓膜にこびり付いた、人質になっていた少女の叫び声がそれをあっさりと消し去ってしまった。
血のつながった家族が目の前で命を奪われる——そのような酸鼻をきわむ光景は、幾度となく目の当りにしてきた。何度見ても慣れるものではない。それどころか、かけがえのない人を惨たらしく殺された瞬間の被害者の絶叫が心の裏の奥深くにたまり続けていた。
闇の能力者は、自分と同い年かもしれない少女を、自身に重ねていた。そして彼女の悲痛な叫び声によって、水希の左右のまぶたの裏には幼き日の己の姿が映し出されていた。
おとうさん……おかあさん……どこ…どこにいるの?——
か細い声が刹那、暗闇の中に響き渡る。年端もいかない少女にはあまりに大き過ぎる不安で、声が小刻みに震えていた。
産みの親に、水希は捨てられた。彼女のもつ闇の能力を酷く忌避した両親は、ある日突然、水希の前から姿を消していた。そして水希は、秘密結社に君臨する科学者にひろわれ命を救われたのである。だからといって、水希は決して両親を恨んだりはしなかった。両親は自分を嫌ってたんじゃない。自分のこの忌まわしい力のせいで私は捨てられたのだと。
——いつか、いつか……おとうさん、おかあさんに……会いたい。
氷の轟音を貫いた少女の悲鳴が、みたび水希の鼓膜を穿つ。
仄暗くそまった紅き可変色カラーコンタクトをはめた左右の瞳を兵士に向けた。少女がぼろきれのように放り投げられた瞬間だった。
水希の激情が可変色コンタクトレンズに伝播し、瞬く間に燃え盛る火炎の如き赤が闇を凌駕した。永きに亘り小さな能力者の心に蓄積し続けてきた暗黒のマグマが不可視の閃光を迸らせ噴出した。
彼女の意志よりも速く小さな肉体が、闇の視線を大男に飛ばす。幸か不幸か今の水希の風貌がために、麗牙の指揮官はあまり彼女のほうに注意を向けておらず、彼女の異状にも気付いていない。
皮肉にも国を護る為の陸軍の苛烈きわむる鍛錬の成果が、ECの能力に対する抵抗力となってあらわれていた。人質の少女を投げ飛ばした瞬間、名仮平は強いめまいを覚えたが、うめき声を上げながらも姿勢を保っていた。
少女の怒りが一気に亢進する。歯を食いしばり、左右の瞳とベリーショートの髪を真紅に燃え上がらせ、仮借ない能力攻撃を陸軍兵士に喰らわせる。あの男が二度と動けないようにしなくてはならない。
直後、巨躯が音を立てて地面に倒れこむと、恐怖に表情を歪ませ、平衡感覚を完全に喪失した体をでたらめな方向によじらせた。己の声が聞こえなくなった兵士の発する声が、徐々に言葉の体を成さなくなっていった。徐々に声が弱まっていった。
——ゆるさない。
ますます闇の力を加速させる水希の視界に、突如濃灰色のヴェールのようなものが揺らめいた。見る見るうちに視界の彩度が失われていき、モノクロームの世界に包まれた。突如現れた濃灰色の空間に思わず息を呑んだ。
水希は暴走するターゲットの抑止に一心不乱になるあまり、自身がコントロール可能な能力の強さの限界値——暗闇に陥れるターゲットは同時に二人まで——を超えている事に気づいていなかった。眼前のターゲットは名仮平一人だが、屈強な陸軍兵士を闇の深淵に陥れるために、普段の倍以上の能力を要したのである。
自身の限界を越えると言えば、人聞きがいいかも知れないが、ECの能力の場合、殊に水希の闇の能力は自らも闇の力の一部を受けてしまうという「副作用」があることが明らかだった。組織の長に一途な闇の能力者の少女は、独自の訓練により闇の能力をより洗練したものに変えることに成功したが、同時に「副作用」も強化してしまったのである。
そして今しがた水希が受けた副作用は、本人の予想よりもずっと深く重たい闇を彼女の視界にもたらしたのである。
一瞬たじろぎはしたものの、水希は悶絶する巨漢への能力攻撃の手を緩めようとはしなかった。兵士に無残にも投げ飛ばされた人質の少女は、常人らしからぬ走りをする若者の手によって、辛くも一命をとりとめていた。人質の少女の父親も既に大男の手を離れている。自身の致命傷になりかねない副作用も発症している。それでも猶、斃れ、もがき続ける人間を水希が攻撃する理由はただ一つ——。
純然たる憎悪——ヒトを最も激しく突き動かすことのできる衝動が、少女を支配していた。
「水希!」ターゲットの無力化に専心する少女の精神をかき乱そうとする忌まわしき声が遠くでこだましていた。
灼髪を振り乱しながら、顰め面を声のしたほうに向けた。深紅の視線と深海のごとく蒼き視線が刹那交錯した。
みず——。
視線の主の唇が三度己の名を呼ぼうとしている姿が、それを言い終える前に少女の視界から忽然と消え去った。
水希の視界が一瞬にして閃光に覆われ、皮膚に圧力を感じるほどの炸裂音が至近距離で連続する。暗灰色のヴェールに覆われていた意識が白に染まっていった。
水希の意識が完全に失われようとする直前、何の前触れも無く少女の眼前に現れたおぼろげな人影が、白き光の渦にもまれながら、彼女に体当たりするかのごとく突っ込んでくるのを、闇に沈んだふたつの瞳が捉えていた。
- As Story10(2)話〜混迷に魅入られし者たち〜 ( No.161 )
- 日時: 2014/01/02 20:57
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
- プロフ: http://www.nicovideo.jp/watch/nm8070136?group_id
同日 午前8時15分 神奈川県中村川沿道——
ラッシュアワーが過ぎても、未だに進路上にはスキーの回転のごとく、2名の隊員等の前進を阻む人通りが解消する見込みはなかった。
10メートル先を行く、ダリアと呼ばれる隊員が駆け足で暗色系のコートの人の隙間をすり抜けながら、ふと天を仰いだ。規則正しくザクザクと喚いていた80kgの重量を有するバックパックが、ガシャリと呻いた。相変わらず天空は漆黒に近い灰色をしているが、天から繰り出される白き弾幕がやや薄くなった気がした。再びダリアが進行のペースを戻した。
残り1kmのところで、帝栄の女性隊員が離脱してからは2名の男性警備員の進行速度が格段にあがっていた。それぞれが数十キロの装備を背負っているとは思えないほどの駆け足でポイントに迫っていた。
コールサイン"リリー"こと稲森が視界の下端に新堂を捉えつつ、川沿いの道に沿って視線を前方に流していくと、正面からやや右に寄った遠方に、電線が密集したような塊が見える。
「こ・・・らリ・・・ー。あれ・・・駅・・・すね」
「ダ・・・・・・。そうだ。・・・・・・」
新堂が自社の整備係の名をあげて激しく毒づいた。トランシーバの調子がすこぶる悪い。本当に整備したのだろうか。1分経つごとに通信可能時間が短くなっている気がする。だいたいこんな鉄の塊のような機器が、本当にこの時代に使われていたのだろうか。
2012年時点にあわせた機器を用意したと整備係から渡されたその「金属塊」はこの時代からさらに10年前に使われていたと言われる、衛星携帯電話より遙かに大きく重たいのである。
新堂が右腕を右下に下ろし、掌を開いて小刻みに前後に揺すった。そして駆け足のペースを速歩並に落とした。新堂から後方の反対側の路肩に位置している稲森が、それを確認すると、同じように歩みを緩めた。
作戦中の通信は、よほどのことがない限り暗号化された無線で行うつもりであったが、その余程のことが起きてしまったのである。
「予定外のことは、無線通信機だけにしてくれよ」
後方を一瞥し、稲森との間隔が変わっていないことを確認すると、訝る表情で目標地点を睨みつけた。水打を離脱させてからここにたどり着くまでに一度、目標地点の駅付近で強い光が迸っているのを目の当たりにしていた。思い過ごしかもしれないが、そのときに稲妻の筋が見えなかったのだ。しかも、地表付近から放射状に光が拡散していったようにも見えた。
何より、光と同時に伝播してきた不自然に連続した炸裂音——。
どうみてもあれは閃光手榴弾。警備隊員としてよりも海外へ軍隊の支援隊員としての任務のほうが遙かに多いこの男が、稲妻と音響閃光手榴弾の炸裂音、そして閃光を勘違いする可能性は限りなくゼロに近いのである。
ポイントまで500mの地点に達したとき、新堂が後方に武装準備の合図を出した。新堂が後方を一瞥するわずかな間に、稲森が応答の合図をする。暫くすると、また違う合図を新堂が発信する。そして、稲森が応答する。
道路の両脇に斜めに位置する、登山の格好をした男の二人組の奇妙な無言のやりとりに、幾人かの通勤客が怪訝そうに左右を見て、前へと通り過ぎていく。
そのとき、二人のちょうど中程にある路地から、男が氷にしたたかに全身を打たれながら、なりふり構わぬ体で疾走してきた。
「誰か、警察・・・警察を呼んでくれ!」
「どうしたんだ、警察って。何があった」
新堂が駆け寄り、節くれ立った両手で男の肩を掴み、万力のごとく固定した。年は20代だろうか。髪は少し長めだが、前髪を後ろに流し聡明そうな空気を感じた。
「怪しい・・・大男が二人・・・」年齢の割に異様に息切れが収まらないのは、酸欠だけが原因ではないだろう。
若者の目線が彷徨っている。つかんだ肩がガチガチに硬直していた。
「二人は・・・武器を持ってた。片方が・・・」
若者が左手で胸を掻きむしった。そして気を鎮めようと、音を立てて鼻で深呼吸した。
「陸軍だと言っていた。陸軍って、自衛隊のことか?」男が最後に自問自答するかのように、小さ声を発した。
新堂が思わず、相手の肩をつかむ手の力に要らぬ力を入れてしまった。若者が声をひきつらせた。
「陸軍。そう言っていたのか」
物々しい大きな荷物を背負った男の声は、低く、音が絞られていて、感情がすっぽりと抜け落ちてしまったかのような響きであったが、黙秘を許さぬ語気を伴っていた。若者は明らかに動揺し、表情も声も蒼白に凍り付いていた。二人のやりとりを遠巻きに窺っていた稲森が左手で胸の中央を軽くたたくような身振りをし、小隊長に自制を促してきた。
。
「軍・・・関わってるぞ、この事案」
無線端末から、細切れになって届く、新堂の呻くような声が、いぶし銀の鋭敏さを垣間見せるバディを刹那、金縛りに追いやった。年の功が彼の表情を冷徹そのものに保ち続けていたが、肉体の末端から血潮が急速にひいていく感覚が男の動揺を煽った。それでも、いつもの声の音量、高さを保ち、声の揺れが大きくなり過ぎないよう、堪えながら応答した。
「了・・・。40名の・・・・・・者番号不明の対・・・というのは・・・・・・とだったのか。だが、確かポイントには・・・名の対象者で二人とも・・・元は・・・・・・いるはずだったが。・・・・・・に動きがあったのか?」
新堂が胸元の低い位置で手を左右にで小さく振り、意思表示をした。相手の動きについて、自分には情報が寄越されていないという意味と、そもそも稲森が何を言っているのか分からないという、二つの致命的な「わからない」を端的な手振りで示すことに成功していた。
本来ならば、2062年の実行本部から逐次42件の不審な反応の動きについて、状況報告を受け取ることができるはずなのだが、支給された通信装置があまりにも古すぎて、通信装置に搭載しておいた時空間通信装置が機能しないのだ。このとき既に、無線装置が明らかにこの時代より遙かに古いものであることを新堂は確信していた。
事情を察した稲森が眉を寄せ、困惑混じりの嘲笑を浮かべた。
新堂が無言のまま視線を逸らし、行く先に意識を向けた。
敵は余りに巨大だ。システムが検知したのは42人だと言うが、その背後には何十万という兵士を抱える、世界屈指の軍事組織が控えているのだ。よもやこの任務をきっかけに直ちに奴らが巨体を動かすことはないと思うが。
それでも、ただでさえ一触即発の軍部と警察の関係は、彼ら3名(一人は離脱しているが)の動きの如何によっては、取り返しの付かない事態になるおそれが十二分にあった。
——取り返しの付かない事態。
「警察、呼ばないんですか?」
矢庭にさっきの若者の声が割り込んできた。新堂がはっとして声の主を睨みつけた。
「そういやおまえ、事件現場にいたんだろ。鉄警隊はどうした」
「テ、テッケイ?」
新堂はいつもようにドスの効いた尋問するような鋭い口調に、返ってきた声はすっかり裏返っている。
「鉄道警備隊だ。奴らはどうしたんだ」
「あぁ、そう言われてみれば、全然来てなかったような」
若者が、司祭に赦しを請う罪人のごとく悲痛な声をあげる。
- As Story10(2)話〜混迷に魅入られし者たち〜 ( No.162 )
- 日時: 2014/01/02 20:59
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
- プロフ: http://www.nicovideo.jp/watch/nm8070136?group_id
「何?」
「あの男たちが現れてから20分以上経っているはずなのに、鉄道警備隊も警察も来ないんです。110番に掛けても誰も出ない」
確かに若者のいうとおり、重大な事件が起きているにも拘わらず、付近に警察車両の気配が全くしない。
それもあいつらの仕業なのか。仮にそうであったとしても、一体どうやって?
新堂の後方で、何人かの通勤者が事態の状況を確認しようと、1台のタブレットのスピーカを全開にしてラジオを聞いていた。その不明瞭な声が、新堂の自問自答をあっさりと断ち切った。新堂が呼気をとめ、再び聞こえてくるであろう声に耳をそばだてる。
わざと自分の邪魔をしているのかと勘ぐってしまうほどに、バラバラとアスファルトの地表を振動させる氷の振る舞いに焦燥しつつも、幾つかの言葉の断片を拾うことができた。
近辺の道路・・・渋滞・・・上下線通行止め・・・迂回・・・不発弾・・・信管のない手榴弾・・・。
新堂が傍らに立ち尽くす青年に、スマートホンを要求した。状況が全く呑み込めていない若者が、いわれるがままにジャケットの左袖のポケットからスマートホンを取り出した。新堂が50年前のタッチパネルの反応の悪さに、一言二言悪態をつきつつ、ニュースのチャンネルの速報を確認した。ウェブサイトのトップから3番目の記事に、新堂が想像したとおりの事故について記載されていた。
『横浜市内の国道沿いに信管のない手榴弾見つかる』
記事に目を通すと、その手榴弾は外観からすると、その手の定番となっている帝国日本軍の不発弾ではないとのことだった。続く文には、かなり年式の新しいものの可能性が高い、そう書いてあった。
新堂は愕然としていた。陸軍の犯行であることは火を見るより明らかだ。
自国の治安を維持するのが主たる任務であるはずの軍部が、わざと一般社会のど真ん中に爆弾をおいたのだ。しかもその目的は、警察に本来の職務を遂行させないためなのである。
どうみてもテロリストの行為と何ら変わらないではないか。スマートホンから視線をはずし、氷に我が身を穿たれる有らん限りの力で右の拳を固め、低く呻いた。
「例えマルタイがどんなに巨大であろうとも」新堂が胸を大きく膨らませて熱のこもった息をはく。
「取り締まらねば」
——だが。
新堂がふと頸を持ち上げると、その視線は右にカーブする道路の脇に立ち並ぶ雑居ビルを飛び越え、500メートル先にあるはずのポイントを見据えた。
——何故そこまでして。
——此処に、50年前の、錆び付いたこの時代に何があるというのだ
新堂がこれからとるべき対応を伝えようと、若者に注意を向けたとき、ポイントのある方角を向いた耳に、かすかに甲高い音が聞こえた。人の叫び声のようにも聞こえる。稲森もその音を聞き逃さず、再び前方を二人が向いたのは、ほぼ同時だった。間髪入れず二人の視界のやや右よりにある建物の群の向こうで、何度聞いても、どんなに離れていても胸糞悪くなるような不自然に連続する爆音と、稲妻とは明らかに形状の違う閃光が、下から上に迸った。
新堂が若者を突き放し、分厚い瑠璃色のジャケットを着込んだ右腕を真横に突きだし激しく前後に振った。そして殆ど役割を果たしていない通信端末に向かって、言葉を発した。秒刻みで通信品質が低下していたが、新堂が発したであろう言葉は、彼が言葉を終える前に、一言一句の違い無く、稲森の脳裏に完成されていた。
「閃光音響手榴弾確認。民間人が巻き込まれている可能性が高い。リリー、全速でポイントに急行する」
言葉が終わらぬうちに、二人の警備隊員が無数の氷を弾き飛ばし、低い姿勢で駆けだした。なおも新堂の指示は続いた。
「マルタイの抵抗が強硬な場合は、直ちに任務を武力による無力化に移行する。リリーは全体を見渡せる位置で待機。後方援護を頼む。相手は陸軍だ。慎重の上に慎重を重ねて行動せよ。以上」
細切れどころかノイズと綯い交ぜになって、ミンチと化した上官の言葉を即座に組み立てると、己の思い描いたとおりの指示が来たことに、新堂が語気を強めて応えた。
「リリー、了解」
一切の無駄のない会話が済むや否や、稲森が前を向いたままバックパックの側面を縦に貫くジッパーを一気に下ろすと、SIG560を引き出した。安全レバーを確認する作動音が、住宅街で氷を駆る足音に混じり小さく響いた。
瞬く間に小さくなっていく二つの人影を、青年が呆然と眺めたまま立ち尽くしていた。
同日 午前8時15分 川沿いの喫茶店——
部屋の高さの半分ほどもある大きな窓の向こうに、音もなく天から白い粒々が降り注ぐ住宅街の景色が広がっている。すぐ向こうには背の低い打ちっ放しのコンクリート製の堤防が見える。そして、透き通った窓ガラスには、背景に紛れて消え入りそうな半透明の女性の姿が映っていた。まるで自分の力が至らなかったがために、部隊からはずされた、窓際に座る女性警備隊員の心を映し出すかのように。
やや外に張り出した窓枠には、店主のコレクションと思われる陶器でできた可愛らしい人形が、薄暗い背景に細やかな彩りを添えている。任務でなければ何時間でもその眺めを愛でていたいものだが、今はとてもそんな気分になれなかった。そして彼女は、隊長曰く「ファースト・フード・ショップ」の空気から浮いていた。
水打静(すいうつ しじま)は新堂から彼の指示する「ファースト・フード・ショップ」での待機を命じられていた。彼女の必死の訴えにも新堂は聞く耳を持たず、彼女を一人残してポイントへ急行していったのである。
やむなく新堂の指示した看板の店に入ると、そこは個人経営と思しき小さな喫茶店だった。格子状にガラスのはめられたドアを開けると、真っ先に店の主人と目が合った。瑠璃色の防弾ジャケットに10kgの装備という、あまりに場違いな出で立ちの来客に、店の主人の挨拶が二文字目で途切れた。二人の先客も露骨に怪訝そうな表情で静を見つめている。それ以上足を進めることができなくなった静は、しきりに目線を泳がせたまま、店の出入り口で立ち尽くしてしまった。そして、1分ほど経ってから来た、店の常連客に追いやられるように、店の奥の窓際の席に座っていた。
防弾ジャケットを貫いて己の心の臟に突き刺さってくる、店主や他の客の訝る目線を避けるように窓際に寄った。肩がちぎそうなほど重くて大きいバックパックは、自分の右脇に置き、件の視線に対する防御壁にした。
頬杖をついて、濃密な失意をたっぷりと含んだ溜め息をつく。静の容姿は決して悪くなく、普段なら周囲の殆どの男共から淫靡な目線を向けられそうな「華」のある眺めになるはずであったが、今日に限ってはそんな雰囲気が微塵も感じられなかった。
暖かい店内にいるはずなのに、体も心も冷え切っていた静の吐息は、氷よりも冷たい窓ガラスを曇らせることはなかった。
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