複雑・ファジー小説

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DARK GAME=邪悪なゲーム= 
日時: 2012/09/14 21:51
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 3TttADoD)

えーと同じくファジーで能力もの書いてる(打ってる)狒牙です。

今回は結構暗そうなものをしたいなということで・・・

まあ、言ってしまうと時折(多分頻度は少ない)グロイかな?

基本的には普通ですので・・・

アドバイスとか変なところ(誤字脱字)があったら言ってください

よろしくお願いします

下手に内容を説明するとネタバレみたいになるんで

一気に一話目打ちます。

そしてこの作品では文章の形式を変えてみたいと思います。



一話目 招待状





「暗いなぁ・・・」

 夜道を、一人の男子高校生が帰っていた。もちろん一人でだ。
 等間隔に設置されている街灯の光を頼りにいつも通りまっすぐ家に帰っていた。
 高校に行き始めてもう三カ月程度経っている。二回目の定期テストが終わり、その手ごたえを塾に伝えに行った帰りだ。
 辺りはもうすっかり暗くなっているが、今日はたまたま曇っているだけでまだ八時にもなっていない。普段ならもう少し明るめだろう。今は月の光すらほとんど届いていないのだから。
 家にたどり着く寸前の急な坂道に青年は差し掛かった。ここだけは何年暮らしていても全く慣れることはできない。角度がそれなりに急な上、それがダラダラと百メートルも続いているのだから疲れている時にはお手上げだ。疲れる意外にここを説明することばはパッとは思い付かない。漢字で表すなら『苦』だ。しかし、苦あれば楽ありということわざもある。
 息を荒くして切らしながらその坂を登りきった彼は汗で少し濡れた顔を上げた。そこには、いつも通りの自分の家の景色があった。隣にある家も普段と何一つ変わらない。
 その家の門の前を通った時にチラッとその中の様子を見た。そこには、住人の一人であるまだ制服を着たままの女子高生がいた。

「あっ、先輩こんばんは」
「おー、楓じゃん。塾?」

 それは紛れもなく自分の部活の先輩だった。楓と呼ばれた彼の本名は楓秀也(かえで しゅうや)。二人とも同じ高校の陸上部員だ。
 といっても、楓は長距離、先輩の方は短距離だった。この時間がまさに『楽』の時間だ。
楓は先輩のことを尊敬している。なぜなら、目の前にいるこの人間は去年インターハイで優勝したからだ。距離が何であろうと関係なく、速い者にはすぐにあこがれる性格だから家がすぐ近く、というより隣の家にその人が住んでいるのは光栄だった。
 ここで一つだけ勘違いしてはいけないのが、別に恋愛対象として見ているのではなく、好きは好きでもスポーツ選手のファンのような感覚だ。思慕の念よりも崇拝と言う方が近い。それほどまでにこの先輩を慕っている。
 ついでに言っておくならこの人の名前は竹永叶(たけなが かな)という。

「普通科は大変だね」

 重い教科書を何冊も詰め込んだ大きなリュックサックを背負って地獄と読んでもいい坂を登り終えた楓に笑いながらそう言った。
 彼らが通っている高校は、体育科と普通科に分かれている。竹永の方は体育科で、楓は普通科だ。しかもこの学校は体育科の連中はスポーツに強く、普通科の連中は勉学ができるというものだ。だから地元でもかなり有名な行きたい高校ナンバー1に選ばれ続けている。

「そうですね、でもテストが一段落したんでしばらくは楽な生活ですね」

 そう言うと、今度は先輩があからさまに疲れたような顔つきになった。その理由は簡単だ。夏休みは腐るほど大会がある。一年にしてインハイで優勝したのだから大会に出されまくっているのだ。相当にだるそうな顔をしている。
 もうすぐ鬼の合宿と呼ばれるイベントが近づいているからだろうか?

「たまにさ、裏側の世界があったら言ってみたいと思うよ」

 このポツリと特に重要な意味を持たない言葉が発せられたのを聞いたとき、ふとある噂を思い出した。いや、都市伝説というべきかな。内容はこんなものだ。




 真夜中は気を付けないといけない。特に招待状を受け取ったなら。
 招待状は突然現れる。血のように紅い封筒にどこまでも続く深い闇のように冷たい黒い紙に『You are invited』と白く描かれた紙が入っている。
 それが招待状だ。そこでは夜な夜な残酷なゲームが行われているという。



 まあ、この話はまだそこまで出回っていないので、元からそういうのに興味の無い先輩が知るはずもないからただの愚痴だと思ってスルーしようとした。でも、自体は思っている以上に深刻だった。

「なんかさっきポストを見たら真っ赤な封筒が入ってたんだ」

 これを聞いた瞬間にはまだただの世間話だと思って普通に接していた。
 だが、その一秒後にまたしても噂を思い出した楓は硬直した。それでも、先輩はその封筒がどういうものなのか説明しているからこっちの違和感に気付いていないが、楓の胸の中では胸騒ぎがしていた。
先輩は、その中からどす黒いハガキを取りだした。そこには、やはり文字が書いてあった。



『You are invited』



 これが視界に入った瞬間、瞳孔は一瞬にして開いた。そこには、幽霊を連想させるように白い字でそう書かれていた。
 かく汗の中に冷や汗が混じる。これではまるで噂と同じだ。

「後ろにも変なことが書いてあるのよね」

 そう言って今度は紙をひっくり返した。そこには、今受けた衝撃よりもさらに強いショックを与える文が書いてあった。

『おめでとうございます。あなたはご当選いたしました。裏の、闇の世界へのペアチケットです。あなたと、もう一人誰かをお誘いください。何、迷うことはありません。隣家の後輩で結構です。[げえむ]は今晩の八時から、次の日の午後八時まで行われます。それまでにもう一人の方とご一緒しておいてください。』

 背筋に悪寒が走った。この内容を見る限りこれの差出人は明らかに先輩を狙っている。隣家の後輩とはまず俺で間違いない。
 怪しい雲がさらに月の光を隠すようにもうもうと寄ってくる。ふと時計を見るともうすでに時刻は七時五十九分を示し、秒針はもう・・・









 十二の文字にかかろうとする瞬間だった。








 秒針が五十九秒から六十に動いて行く。その動きがとてつもなくスローに感じられる。体は、ピクリとも動かなかった。



 刹那、手紙から迸った漆黒の闇は叫び声を上げさせる暇なく一瞬で楓と竹永を包み込んだ。グチュグチュと妙な音を立てて闇の繭を作り、ゆっくりと地面に溶けていくように小さく下から萎んでいった。










                                 続きます


第一章 鬼ごっこ編

>>1>>2>>3>>4>>5>>6>>7>>9>>10>>11>>13>>14>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>26>>27>>29>>30>>33>>36>>37>>40>>41
>>42>>48>>49>>50>>51>>52>>55>>56>>57 総集編>>60

第二章 日常—————編 募集キャラ>>70

>>61>>64>>65>>66>>67>>68>>69>>72>>73>>76>>79 総集編>>80

第三章 楓秀也編 プロローグ>>81

>>83>>85>>89>>91>>94>>95>>96>>97>>99>>100>>103>>104>>105>>106>>110>>111総集編>>112

第四章 氷室冷河編
>>113>>114>>115>>116>>117>>118>>119>>122>>123>>124

コメントしてくれた人です(一度でもしてくれたら嫌でも載ります。すいません・・・)

ryukaさん「小説カイコ」「菌糸の教室」「壁部屋」の作者さん
千愛さん 総合掲示板の方でお仕事なさってます
赤時計さん「花屑と狂夜月」「他人の不幸は毒の味」の作者さん
ゆヵさん 「SNEAK GAME」「めいろ」の作者さん

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十三話更新 ( No.72 )
日時: 2011/11/22 19:40
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 01wfR6nM)

第四十四話 金曜日





「そういえば、金曜日なんだよな、今日」

 楓はそんなことを思いだして呟いた。今日が金曜日だとどう不味いのかというと、今日この日が終わると試合に行かないと行けないので陸上部員意外と接点が全くなくなる。
 つまりだ、陸上部の人間以外が参加者だった場合、今日中に見つけないといけないと言う事だ。しかも仇無、アダム曰くどうやら参加者を指名できるのはたった一回だけ、それも、自分が参加者だとアピールできないというさらに面倒な条件付き。それだけでなく、すでに入っている予定をすっぽかして参加者探しはできない。


 もし、それを破ると、当然のように死が待っている————。


 今日を逃すと竹永、乙海、代介の三人ぐらいしか接することのできる人間がいなくなる。それ以外の者が参加者の場合、すぐさまこのげえむは失格、この世界も自分自身もすぐに消えてなくなる。

「しかも、その今日も真ん中を通り越しちゃったし・・・・・どうしたらいいって言うんだよ」

 もうすでに今日の昼休みは始まり、整地が始まっていた。日替わりの当番制なのだが、何もこんな日に当たらなくともと、顔をしかめる。やはりこの時間も陸上部としか関わりが無い。
 深刻そうに溜息を吐いた時に、隣で整地している名も知らぬ野球部員が発した言葉がふと、楓の耳に入った。

「転校生の一人、すっげえ可愛かったぞ!多分俺らのクラスの誰よりも!」

 そんなことをあっさりと、しかも大声で口走っていることに、楓は若干苦笑した。本人は絶対に聞いていないだろうが、大声で言うようなことではない。さらに、楓にとって氷室の男子からの人気にはさらに舌を巻くばかりだ。

「えーと・・・氷室って奴だろ?廊下側だから見えたんだけど何か、もう片方の転校生が入ったすぐ後に、体調が悪いのか少しふらっとしてたぞ」

 体調が悪い、その一言に楓は目を見開いた。そんなことがあるはずがないのだから。確かに、鬼ごっこでは疲れただろうが、こっちの現実に戻って来てからの体調は、第一のげえむが始まる前よりも良いような気にもなった。つまり、げえむのせいで体調が不良になることはない。
 さらに、あの空間でだけ全ての病気やけがから解放されるなんていうのももちろんありえない。もしもそれが真実ならあっちの世界に入り込んだ途端に驚きの色を見せるはずだし、どこかで口にする可能性も高い。
 ここに何かかくれんぼをクリアするヒントがあるのではないかと、楓は考え始める。昨日何度か感じた違和感を共に、もう少しで答えにたどり着けそう、そこまで行ったのだが不意にその前身は遮られた。

「楓ー、手ー止まってんぞー」

 遠くから代介が叫ぶ声が聞こえる。これでは迷惑がかかってしまうと、慌てて止まっていた手を動かし始めた。脳内での議論は一旦終わりにして土をた依頼に整える作業に集中すると、さっきまで託されていた鍵の原型は、再びどこかに預けられた。











 四時間目、科目は体育。最近の授業はずっと水泳だ。夏だから仕方ないと思いつつも、いつも陸の上で動いている楓にとって水泳は苦手だ。決して遅い訳ではない、遅いのだ、尋常ではなく。
 設定タイムがクロール五十メートルで四十五秒、しかし自分はどんなにあがいても五十三秒程度が限界。代介は四十四でギリギリセーフになった。
 フォームはきれいなのになぜそんなに遅いのか分からないといつも皆から嘆息されている。そろそろ現状を打破したいと思うのだが、全く改善されない。ちょっとしたスランプ状態だ。

「もういやだ、この透明な液体が劇薬に見えてきた・・・・・」
「相当病んでんな。いっそのこと諦めて楽しめよ」
「そうだな、そうするか」

 代介から気楽にいけとアドバイスが来る。神経質にしてもふざけても、結果が変わらないなら楽しい方が良いという案だ。そういう性格だから代介にはストレスは中々溜まらない。それが楓にはたまらなく羨ましい。
 ふと、キャッキャキャッキャと黄色い声を上げて楽しんでいる女子が目に入った。ああいう風に楽しめたら良いと言う事だと思うが、どうにもできる気がしない。
 視界の端に氷室が映った時に、さっきの野球部の一年が言っていた言葉が脳裏に響いた。



—————体調が悪いのか少しふらっとしてたぞ。




「あれ?じゃあなんで、プールなんてしてんだよ」

 おかしい。どう考えてもこの違和感はぬぐえない。まさか、その転びそうになったのは、もっと違う何かが絡んでいるかもしれないと。
 だが、何度目かは分からないが、思考する楓の手は止められる。今度は今までよりも遥かに酷い止め方だったが。

「今から、クロールのタイムトライアルを行う」

 遂にキター、と周りの男子は次々に喚きだす。その子供っぽさに遠くでクスクスと女子は笑っている。クールを決め込んでいるのか、深刻な表情で黙りこくる氷室だけを例外として。
 それは自分も同じかと、楓は苦笑する。ここ二日ほど、笑いという笑いがとても悲しげなもの以外が無くなっていた。自嘲する笑い、酷い状況に対する苦笑、不味い事になった時に浮かべた失笑、深刻なのはどっちだよと、誰かが言ったように感じた。

「よし、早くコースに並べ」

 男子はここで順番を譲り合う。一番最初は中々にプレッシャーがくる。ただ、こうなると楓は断ろうにも断れない振り方をされる。

「学級委員!行ってこい!」

 やはりそうなるかと、楓は深い深いため息を吐いた。この雰囲気を達した時は決まって楓に順番が回ってくる。拒否しようにも、クラスの鑑になれと、冷やかされる。
 楓行くなら、とクラスの中でも遅い運ぜいが三人ほど手を上げた。

「てめえら・・・俺で自分の遅さ隠すつもりだな・・・」

 もちろんと、彼らは笑みを浮かべて見せた。忌々しいと、冗談っぽく楓が呟くと皆笑い始めた。自然と、自分も笑っていた。
 たった数日ぶりなのに、何年も笑っていなかったような懐かしさにかられた。

「いいから、早く並べ」

 痺れを切らした教師が四人に声をかけた。急いで全員スタート位置に付く。そして、その掛け声の下、揃って四人は台を蹴った。
 頭から、綺麗に入水する。その瞬間、普段なら嫌気がさす世界は百八十度違って見えた。水の中ってこんなに気持ち良かったっけ、と頭の中で何度も復唱した。
 自分が自分じゃないような気がした。自分の思い通りに水を割いている気がする。気付いた時には、壁が目の前に迫っていた。
 壁にタッチして楓はターンした。ターンした後も同じで、そのクリアな背景に気を取られているうちに、もう終わろうとしていた。
 入った時と同様に頭から、今度は空気中に出る。

「楓、四十三秒」

 水の上の世界も、いつもとは違って見えた。昨日よりも、さっきよりも、その世界は色鮮やかに映っていた。



                                            続きます

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十四話更新 ( No.73 )
日時: 2011/11/24 18:30
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)

第四十五話 第二げえむ終了 part1









「おい楓ー、何いきなり速くなってんだよー」

 冷たい水の中からプールサイドに上がった楓はいきなり一緒に泳いだ三人に囲まれた。別に、一人速かったことに対する怒りや憎悪は当然のごとくなく、冷やかすようにニヤニヤしている。いや、そもそもこれぐらいで怒る理由すら無いしな。







——————————普通ならな






 誰かの声が、脳裏に響いたような気がした。この声を楓は聞いたことがあった。いや、あったはずなのだが誰の声なのか思い出せない。ただ、その声を聞いた時に楓は言いようの無い恐怖に襲われた。背筋が冷たく凍りつくようになるのと対照的に、頭の中は対照的に熱くなる。楽しげに熱くなるのではなく、流した涙の熱————。
 これって一体誰だったっけと自問自答する。もう一人の冷静な自分が声をかける。必ずそれは良い記憶ではないぞと。脅迫するように、目を鋭く尖らせて口の端を上げて妖しげに笑いながら、自分を落とし入れて楽しむ者そっくりの眼差しを持った、自分が告げている。
 でもその妙な自分の姿は、自分ではなく誰かの影に自分の姿を映しているのだと分かる。理由は、段々とその自分の影はぼやけていき、さらにその深奥のある一点に小学生高学年といった男子のシルエットが見受けられたからだ。
 楓にはこの記憶がどういうものだったのか、忘れていた。もう一人の自分が、楓を守るために思いだすことを拒絶していた。


 そしてそのマイナス方向の感情は、氷室と目が合った瞬間に、最も強くなった。


「おい、楓聞いてんのか?」

 顔面蒼白といった表情で呆然とし、返答しない楓に心配した三人が声をかける。その一言でようやく、彼は我に帰った。

「ああ、すまねえな。コツ掴んじまったみたいだ」

 得意げに笑いながら楓はそう返した。このやろうと言いながら、三人は冷やかしの声を次々に、またしても浴びせてくる。わざと大げさに反応してみせた楓が精いっぱいに抵抗する。次の集団がスタートするから静かにしろと注意されて四人はようやく静かになった。
 やっぱり代介の言うとおり、この世界は楽しんでみてなんぼのものらしい。急に胸の中で関西弁になってしまったことに自分で突っ込むとより可笑しく思い、楽しくなった。
 このことが後の楓の精神<こころ>を壊さなかった要因になるのかもしれない。あの、ほとぼりの冷めた声の主から——。











 四時間目の授業も終わりその日最後の授業が始まった時に、忘れていた焦燥が息を吹き返したかのように舞い戻ってきた。今日中に決めないと、もう一人の参加者にコンタクトを取るのが難しくなるどころか、アダムとも会話ができなくなる。つまりは、回答を告げる事ができなくなる。そうなると強制的にゲームオーバーだということだ。
 何としても今日中に見つけ出さないといけないなと思った矢先に、ちらりと教室中を見渡した。今楓が怪しいと睨んでいる候補者は全体集合としてクラスメート全員、そして担任の教師だった。
 仇無がこの教室を出る機会は移動教室、そして登下校以外はほとんど無いとの証言が入っている。つまりはルール説明をしたのはこのクラスの人間の前だけということになる。
 その中でも特に目を付けているのは三人。自分の暮らしている現実<世界>と違っている点は元の世界で流行しだしたものについてらしい。つまりは小説の書き手に回っている者が可能性が高いと彼は踏んだ。この教室で言うならば赤弥と乙海。代介は体育は同じだが、隣のクラス、要するに青宮のクラスだ。
 そして最後の一人がちょっと的の外れそうな人物になるのだが、氷室冷河だ。氷室にまつわる不可解な証言が数多く存在しているので疑っているのだが、正直この辺りに越してきたのはつい昨日。この辺りのことなどろくに知りもしない氷室を疑うのは不可能だと思っている。
 始業の合図であるチャイムが鳴って五分も経ったようやくのそのタイミングに五時間目の家庭科の先生が入ってきた。このおばさんは都市伝説マニア、というよりもオカルト大好き人間だと生徒から呼ばれている。

「今日の都市伝説コーナー」

 また始まったよと楓はため息を吐いた。この人はオカルトを布教したいのかは分からないが、授業の最初の時間を使って都市伝説について語りだす。

「本日紹介するのは———————————」

 聞く必要は無いと、楓は黙々と授業の準備をしだした。唯一の救いは家庭科が週一だということ。週に二回以上こんなもの聞いていられるかといつも思っている。
 そう言えば、『あれ』を先週から実施していることを楓は思い出した。いっそのこと実話なので言い放ってやるかと楓は決心したのだがそれを口に出すことは無かった。
 なぜなら、『あれ』が行われなかったからだ。




 パズルのピースは、これで全て集まったようだ。




                                                続きます


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今回は一旦保留、は抜きでした。
良かった良かった・・・
でも今回改行やダッシュ多いんで読みづらいかもですがね。
次回次次回で二章を終わらせたいですね。
相当な急展開で本当、申し訳ありませんでした。



さてと、三章の告知を前回同様(?)しちゃいましょうかね。

1、この次の日とさらに翌日、要するに陸上の試合が舞台の話。でも陸上部分はそれほど重要ではない。

2、二章初登場キャラの、代介、乙海も登場。だって陸上部ですから。

3、この話しの前半と、大いに関わりがあります。

4、三章のタイトルは……おそらく『楓秀也編』です

5、げえむ一切関係ないです。

では、次回に続きます。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十五話更新 ( No.74 )
日時: 2011/11/24 20:02
名前: 赤時計 (ID: u5ppepCU)

お久し振りです赤時計です。。。期末テストが終わり万歳気分です(笑)

桐哉が登場していらっしゃる・・・!!なんだか自分が作ったキャラが出るってすごい感動しますねこれは。

あらら冷河ちゃん転入したんですか・・・学校ではどのようなげえむがおこるんでしょうねぇ。。。仇無君早くも浮いちゃってる・・・!

多分私のクラスに冷河ちゃん来たらすごい人気者になると思うんですよね・・・蛇足すみません。


では、更新頑張って下さいませ。。。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十五話更新 ( No.75 )
日時: 2011/11/26 16:06
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)

赤時計さん期末テストもう終わったんですか、俺は明後日から一週間です。
桐哉はちょっと間が飛びますがまた出てくると思います。
氷室来ました。そうじゃないと次から絡めないので。
アダムは本当、もうおふざけ前回のキャラクターです。

おそらく氷室はどこ行っても大人気だと思います(素を知らなければ)
楓は流石にびびりすぎですけどね。

では、コメントありがとうございました。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十五話更新 ( No.76 )
日時: 2011/11/26 19:46
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)
参照: 今回会話ばっかりです、すいません。

第四十六話 第二げえむ終了 part2







 五時間目が終わり、放課後に突入した途端に、楓はすぐさま二年生の教室に向かっていた。まずは体育科の棟に向かう。このことから、会いに行く相手は大体限られる。楓が自分から赴こうと思えるような者で、二年生の体育科の者、そしてげえむにまつわっている人間と言えばあの人しかいない。

「もうすでにオカルトマニア先生から確認は取った。後は先輩の所に……」

 そう、楓は現在竹永の所にへと向かっていた。竹永にはげえむをクリアするための、最後の確証を得るために接触しようとしている。何にせよ時間が無いのだ。帰宅部の『あいつ』が帰ってしまう前に行かないといけないと、その歩調は見る間に早くなっていく。
 もうまさに体育科の棟に入ろうとしたその時に、彼の探している棟の本人である竹永は調度良く出てきてくれた。もうすでに練習用のウェアに着替えている。隣に並んで歩いている楓とは面識の無い先輩と歩いていたが、足音ですぐに気付いたようだ。

「おう楓、どうした? 明日についてか?」
「いえ、一つ訊きたいことがあるんです」
「何だ? 言ってみ」

 楓にいち早く気付いた竹永は自分からすぐに声をかけてくれた。後輩だと察してくれたのか隣の先輩も少し引き下がってくれた。そんな中で楓は質問があると言った。試合の事以外に何が訊きたいのか分からない竹永は、楓に訊き返した。

「うちのクラスの転校生、氷室冷河について知っていますか?」
「えっと……私の知り合いにそんな名前の奴はいないわよ。それがどうかした?」
「いえ、大丈夫です、分かりました。……ありがとうございました!」

 お礼の言葉だけ言い残して逃げるように楓は駆け出した。これで、集まったパズルのピースを入れる枠がようやく完成したと断言できた。全てにおいて理屈も通る。

「あいつが……あいつがもう一人の参加者だ」

 楓は、できるだけ急いで教室に向かっていた。仇無もそうだが、あいつが、氷室が帰る前に教室に戻って、答えを告げないといけない。

「氷室が、見つけるべき参加者だ」

 そう呟いて、周りから当てられるやや冷たい視線を気にせず走る。形振りは構っていられない。自分の身だけではない。このパラレルワールド全体も助けないといけないのだから。
 もう一度、間違いの無いように楓は頭の中で自分の理屈を組み立てる。一つ一つ積み上げて、もう一度納得する。そうしている間に教室の前に斗たどり着いた。感傷に浸っている暇は無いと、切羽詰まったようにドアを引いて開けた。
 教室の中を見渡すと、誰かがそのための舞台を用意したかのように氷室と仇無……アダムの二人の姿しか無かった。急いで走ってきたので、上がっている息を落ちつけて楓は二人を見据えた。間に合ったと、心の中で安堵のため息を吐く。

「楓くーん、そんなに慌ててどうかしたのかな?」
「大体は、理解できてんだろ? 解答を突きつけにきたんだよ」

 それは楽しみだと、いつも通りふざけた様子で返事をする。相変わらず忌々しい奴だと、声に出さず吐き捨てる。

「で、誰なのかな? 早く言いなよ」
「氷室だ」
「根拠は?」

 誰か訊いたその問いにぴったり合わせて全く隙を与えずに答える、氷室という解答を。するといきなりそう判断した理由を訊いてきた。往生際の悪い子供のような素振りが、これが合っていると裏付けているようだった。

「まず俺は、ここが何についてのもしものパラレルワールドなのか考えた。お前が最近流行になっている何かと言ったから、この学校では小説だろうと踏んで、赤弥や青宮、神田さんとコンタクトを取った」
「へ〜、だったら氷室ちゃんじゃないでしょ? 引っ越してきたばかりなんだから」

 そう言ってくると思ったと、楓は唇の端を上げた。

「それは実は間違っていた。条件は、小説じゃなかった。お前は俺に氷室がこのげえむには関係無いと錯覚させるためにわざとヒントをあの言い方で言ったんだ。でも、家庭科の先生のおかげで分かったんだ。キーワードは『都市伝説』だって」

 急に、さっきまで反論をしていたアダムが黙り込む。やはりそういうことだったかと、楓の胸の中は高揚感に包まれる。

「最近この辺りで流行りかけている都市伝説。招待状が届いたら裏の世界に迷い込む。そこでは夜な夜な残酷なげえむが行われている。どうしてだろうな? お前たちの鬼ごっこそっくりだ。俺たちがクリアするまで、鬼ごっこは毎晩行われていた。だからスタートの段階であんなに骸骨の兵団がいたんだろ。そえは置いておいて、その都市伝説はお前たちの行為そのものだった。そしてその都市伝説はこの辺りで流行している上に氷室も巻き込まれている。題材にするにはぴったりだった」
「へえ……」
「そしてさっきオカルト好きの先生に訊いたけど、その都市伝説に関する記憶が無くなってた。先週に開始を宣言したその都市伝説に関する情報収集の部門が今日行われなかったからな。しかも、先輩にも訊いたけど、氷室のことを知らなかった。つまり、俺と氷室以外の記憶から、その都市伝説の記憶がスッポリ抜け落ちてた」
「じゃあどうして氷室ちゃんって分かったのかな?」

 明らかにこいつは動揺していると、楓には断言できた。冷や汗のようなものが浮かんでいる上、笑みは引きつっている。そして幾分か声が震えている。

「俺を責め立てなかったからだ。空港で会った時、最初にあいつは俺の信用を失わせるために竹永達にあのことについて話しだした。なのに、クラスという、暴露して俺の印象を下げるうってつけの空間で何も言わなかったってことは、第一げえむでヴァルハラの使者から受け取った記憶で幾分か怒りが薄れているからだろ」
「ヴァルハラの使者……だって?」

 妙なところにアダムが反応したが、今は関係無い。話しの続きを口から出す。

「それに、野球部の奴の話と俺の記憶を照らし合わせると俺と氷室は同じタイミングで眩暈に襲われた。これはおそらくパラレルワールドに踏み込んだサインだ」

 ついに、アダムは抵抗を止めて黙り込んだ。今までのふざけた口調とは打って変わって眉間にしわを寄せて、忌々しげにこっちを睨みつけていた。
 楓から声をかけようと思ったが、その瞬間にアダムは絶叫した。

「分かったよ!! げえむクリアだ! くそ、あのバカガミが・・・・・・人間なんかに肩入れしやがって……」

 何か意味不明のことを口走っているが、どうやら一応げえむはクリアらしい。ホッと息を吐こうと思ったが、どうやらこの状況では気を抜けそうにもない。
 だがそれでも、第二のげえむは終わる————。




                                               続きます



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今回長いから何も書きません。
会話ばっかりでごめんなさい、ではまた次回に続きます。


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