複雑・ファジー小説

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DARK GAME=邪悪なゲーム= 
日時: 2012/09/14 21:51
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 3TttADoD)

えーと同じくファジーで能力もの書いてる(打ってる)狒牙です。

今回は結構暗そうなものをしたいなということで・・・

まあ、言ってしまうと時折(多分頻度は少ない)グロイかな?

基本的には普通ですので・・・

アドバイスとか変なところ(誤字脱字)があったら言ってください

よろしくお願いします

下手に内容を説明するとネタバレみたいになるんで

一気に一話目打ちます。

そしてこの作品では文章の形式を変えてみたいと思います。



一話目 招待状





「暗いなぁ・・・」

 夜道を、一人の男子高校生が帰っていた。もちろん一人でだ。
 等間隔に設置されている街灯の光を頼りにいつも通りまっすぐ家に帰っていた。
 高校に行き始めてもう三カ月程度経っている。二回目の定期テストが終わり、その手ごたえを塾に伝えに行った帰りだ。
 辺りはもうすっかり暗くなっているが、今日はたまたま曇っているだけでまだ八時にもなっていない。普段ならもう少し明るめだろう。今は月の光すらほとんど届いていないのだから。
 家にたどり着く寸前の急な坂道に青年は差し掛かった。ここだけは何年暮らしていても全く慣れることはできない。角度がそれなりに急な上、それがダラダラと百メートルも続いているのだから疲れている時にはお手上げだ。疲れる意外にここを説明することばはパッとは思い付かない。漢字で表すなら『苦』だ。しかし、苦あれば楽ありということわざもある。
 息を荒くして切らしながらその坂を登りきった彼は汗で少し濡れた顔を上げた。そこには、いつも通りの自分の家の景色があった。隣にある家も普段と何一つ変わらない。
 その家の門の前を通った時にチラッとその中の様子を見た。そこには、住人の一人であるまだ制服を着たままの女子高生がいた。

「あっ、先輩こんばんは」
「おー、楓じゃん。塾?」

 それは紛れもなく自分の部活の先輩だった。楓と呼ばれた彼の本名は楓秀也(かえで しゅうや)。二人とも同じ高校の陸上部員だ。
 といっても、楓は長距離、先輩の方は短距離だった。この時間がまさに『楽』の時間だ。
楓は先輩のことを尊敬している。なぜなら、目の前にいるこの人間は去年インターハイで優勝したからだ。距離が何であろうと関係なく、速い者にはすぐにあこがれる性格だから家がすぐ近く、というより隣の家にその人が住んでいるのは光栄だった。
 ここで一つだけ勘違いしてはいけないのが、別に恋愛対象として見ているのではなく、好きは好きでもスポーツ選手のファンのような感覚だ。思慕の念よりも崇拝と言う方が近い。それほどまでにこの先輩を慕っている。
 ついでに言っておくならこの人の名前は竹永叶(たけなが かな)という。

「普通科は大変だね」

 重い教科書を何冊も詰め込んだ大きなリュックサックを背負って地獄と読んでもいい坂を登り終えた楓に笑いながらそう言った。
 彼らが通っている高校は、体育科と普通科に分かれている。竹永の方は体育科で、楓は普通科だ。しかもこの学校は体育科の連中はスポーツに強く、普通科の連中は勉学ができるというものだ。だから地元でもかなり有名な行きたい高校ナンバー1に選ばれ続けている。

「そうですね、でもテストが一段落したんでしばらくは楽な生活ですね」

 そう言うと、今度は先輩があからさまに疲れたような顔つきになった。その理由は簡単だ。夏休みは腐るほど大会がある。一年にしてインハイで優勝したのだから大会に出されまくっているのだ。相当にだるそうな顔をしている。
 もうすぐ鬼の合宿と呼ばれるイベントが近づいているからだろうか?

「たまにさ、裏側の世界があったら言ってみたいと思うよ」

 このポツリと特に重要な意味を持たない言葉が発せられたのを聞いたとき、ふとある噂を思い出した。いや、都市伝説というべきかな。内容はこんなものだ。




 真夜中は気を付けないといけない。特に招待状を受け取ったなら。
 招待状は突然現れる。血のように紅い封筒にどこまでも続く深い闇のように冷たい黒い紙に『You are invited』と白く描かれた紙が入っている。
 それが招待状だ。そこでは夜な夜な残酷なゲームが行われているという。



 まあ、この話はまだそこまで出回っていないので、元からそういうのに興味の無い先輩が知るはずもないからただの愚痴だと思ってスルーしようとした。でも、自体は思っている以上に深刻だった。

「なんかさっきポストを見たら真っ赤な封筒が入ってたんだ」

 これを聞いた瞬間にはまだただの世間話だと思って普通に接していた。
 だが、その一秒後にまたしても噂を思い出した楓は硬直した。それでも、先輩はその封筒がどういうものなのか説明しているからこっちの違和感に気付いていないが、楓の胸の中では胸騒ぎがしていた。
先輩は、その中からどす黒いハガキを取りだした。そこには、やはり文字が書いてあった。



『You are invited』



 これが視界に入った瞬間、瞳孔は一瞬にして開いた。そこには、幽霊を連想させるように白い字でそう書かれていた。
 かく汗の中に冷や汗が混じる。これではまるで噂と同じだ。

「後ろにも変なことが書いてあるのよね」

 そう言って今度は紙をひっくり返した。そこには、今受けた衝撃よりもさらに強いショックを与える文が書いてあった。

『おめでとうございます。あなたはご当選いたしました。裏の、闇の世界へのペアチケットです。あなたと、もう一人誰かをお誘いください。何、迷うことはありません。隣家の後輩で結構です。[げえむ]は今晩の八時から、次の日の午後八時まで行われます。それまでにもう一人の方とご一緒しておいてください。』

 背筋に悪寒が走った。この内容を見る限りこれの差出人は明らかに先輩を狙っている。隣家の後輩とはまず俺で間違いない。
 怪しい雲がさらに月の光を隠すようにもうもうと寄ってくる。ふと時計を見るともうすでに時刻は七時五十九分を示し、秒針はもう・・・









 十二の文字にかかろうとする瞬間だった。








 秒針が五十九秒から六十に動いて行く。その動きがとてつもなくスローに感じられる。体は、ピクリとも動かなかった。



 刹那、手紙から迸った漆黒の闇は叫び声を上げさせる暇なく一瞬で楓と竹永を包み込んだ。グチュグチュと妙な音を立てて闇の繭を作り、ゆっくりと地面に溶けていくように小さく下から萎んでいった。










                                 続きます


第一章 鬼ごっこ編

>>1>>2>>3>>4>>5>>6>>7>>9>>10>>11>>13>>14>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>26>>27>>29>>30>>33>>36>>37>>40>>41
>>42>>48>>49>>50>>51>>52>>55>>56>>57 総集編>>60

第二章 日常—————編 募集キャラ>>70

>>61>>64>>65>>66>>67>>68>>69>>72>>73>>76>>79 総集編>>80

第三章 楓秀也編 プロローグ>>81

>>83>>85>>89>>91>>94>>95>>96>>97>>99>>100>>103>>104>>105>>106>>110>>111総集編>>112

第四章 氷室冷河編
>>113>>114>>115>>116>>117>>118>>119>>122>>123>>124

コメントしてくれた人です(一度でもしてくれたら嫌でも載ります。すいません・・・)

ryukaさん「小説カイコ」「菌糸の教室」「壁部屋」の作者さん
千愛さん 総合掲示板の方でお仕事なさってます
赤時計さん「花屑と狂夜月」「他人の不幸は毒の味」の作者さん
ゆヵさん 「SNEAK GAME」「めいろ」の作者さん

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第一章総集編です ( No.61 )
日時: 2011/11/05 20:05
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 1Nlxg6y3)
参照: 第二章開幕!

第三十八話 日常————?






 昨日起きたあの『げえむ』は本当に現実だったのか、そういう疑問が頭の中で絶えず渦を巻いている。朝自分のベッドから起きて以来ずっと、片時も頭を離れること無く、他に集中できぬようにフィルターがかかっている感覚。
 今この手にある現実が、昨日のあれはただの悪夢だったのだと、しきりに叫んでいる。事実そんな『げえむ』をしたというのに、体に一切の疲労は残っていないし、経過したはずの二十四時間は無かったことになっている。
 悶々としたままに身支度を整え、朝食を食べていたために、きちんと時間割をして家を出たか、朝ごはんに何を食べたかは全く覚えていない。朝練に来たというのにこれでは意味が無い。
 その様子に見兼ねたのか、心配してくれた一人の先輩に後ろから小突かれた。

「楓、何落ち込んでんのさ?氷室ともう少し話したかった?」
「そんな訳無いでしょう?だってあいつは・・・」

 待てよという声が楓自身の中から聞こえてきた。もしも『げえむ』が無かった場合、なぜ竹永が氷室のことを知っているかだ。知っているはずが無いのだから。全てのつじつまを合わせるにはあれは本当に起きた事実だと断定する必要がある。

「カマをかけてみて正解みたいね・・・やっぱり、昨日のあれは事実か」

 どうやら竹永も、同じようなことを考えていたのかと、一人勝手に納得する。そして、悪夢であったことを信じて、楓に声をかけた。
 だがそれは紛れも無い現実だということを再認識するだけに終わってしまった——。

「これ以上は昼休みに話しましょう。まずは練習」

 ほんの少しの間だけ、竹永は暗い顔をした。やはりあれが実際に起こったとしたら多くの者が死んでいるということだ。良い気なんてする由も無い。それなのに、意気を入れなおして急に力強い表情に変わった。
 それを見た時に思った、自分もこんなに暗いままではいけないな、と。

「そうですね、じゃあ練習に打ち込みましょう」







第二章 日常—————————編









 その日の教室はとても騒がしかった。そういえば、と楓はあることを思い出した。今日このクラスに転校生が来るのだと。可愛い女子だとかカッコイイ男子だとか色々な噂が飛び交っているがいずれにも共通しているのは容姿がすぐれていることだけだった。
 座席に着いた時に、隣に座っていた女子が話しかけてきた。

「楓ー、楓も始めろよ、小説。賢いんだから凄い文章かけそうじゃん」

 この高校ではなぜか、小説を書くことがちょっとしたブームになっている。そのブームを最初に起こしたのは三年生の先輩で、そのブームに拍車をかけたのが、隣に座るこの女子、乙海 凛だ。
 他の者には無い発想力でいきなり小説カキコのサイトの管理人賞をいきなりかっさらっていった。
 作者である自分同様に陸上部員の高橋や鈴木、カイコの出てくる『小説カイコ』、タイトルだけでなく文章や中身の面白さも整っているという凄さ。
 ついでに言うと楓はそのサイトで読む側に回っていた。理由は、反対側に座る女子が読め読めと最初に言って来たからだ。
 もう少し乙海の説明をするならば、楓は監視する側に回っていたりもした。ファジーで書いている作品、『菌糸の教室』では、楓秀也という人物が出てくる。その理由は、やはり反対側に座る女子が楓の興味を惹かせるためにキャラ募集の時に投稿したからだ。
 カイコのキャラの土我さんの出てくる『壁部屋』も読んでみるべきだと楓は思っている。

「嫌だ、面倒くさい」
「ちぇっ、まあいっか」

 あ、そうそうと言って、彼女は話題を変え始めた。どのような話題に変わったかと思うと、他愛も無い世間話だった。

「ちょっと昨日CD買ったんだけどさ、その店他の店よりも結構高かったんだよね」
「ただのぼったくりじゃねえか」

 良く彼女が友達から言われる言葉は、どこにでもいそうな顔をしている、金の使い方が下手、時間も使うのが下手、だ。

「しかもそのCDずっと聞いてたら宿題忘れてた」
「やっぱり色々使い方下手だな」
「まあね、でも猫と亀さえ見ていたらそれもおちつ・・」
「もういいよその話も」

 家で飼っているのだか知らないが、乙海は猫と亀が好きで話し始めると止まらない。元来博識な彼女は妙に細かいことをしっていたりして、人々の頭に疑問符を植え付けることが多々ある。
 野生の猛禽類が高い所から亀を落として甲羅を割って餌にするなんていう話に憤慨した時は、まずみんながその乙海の知識に舌を巻き、一拍遅れて驚いた覚えがある。

「お前らー、席付けー」

 突然、授業が始まるにしては早いのに担任が入ってきた。この騒ぎですっかり忘れていたが今日は転校生が来る日だった。
 皆がその事に対し、小学生のようにふわふわした気持ちで、落ち着かなく待機していたら、いきなりドアから一人の女子が入ってきた。

「セーフ!!だよね!?」

 それが、俺の隣に座るもう一人の人間、赤弥 藍妃だった。
 先生に促されるままに素早く席に着く。エナメルを乱暴に下ろして汗に滲む額をぬぐい、ほっと息を吐いた。

「・・・・・またギリギリかお前は。まあいい、転校生の紹介だ」

 その瞬間、ほんの少し景色が歪んだような気がした。視界がねじれて、平衡感覚が狂うような。


 それが第二の、開戦の合図——。





                                           続きます




________________________________________________



二章始まりました。では、時間が無いので次回に続きます。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二章スタートです ( No.62 )
日時: 2011/11/05 23:33
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: hTgX0rwQ)

スーパーにやにやタイム\(^o^)/
乙海使ってくれてありがとうございますー。
リアルに鷲がカメ落として肉つつくのに憤慨したことあります。文章読んでかなりビビりました。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二章スタートです ( No.63 )
日時: 2011/11/06 19:01
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: McW0.Kc7)

はい、乙海いきなり出させていただきました。
話の中で書いてある通り陸上部ということになっているのでちょいちょい出てきます。

あっ、本当に知ってたんですか。
唯一亀について知っている雑学を取り入れてみたのですが・・・
まあ、実話に沿っているということで・・・

まあクラスメートである以上赤弥もちょいちょい出ますが。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二章スタートです ( No.64 )
日時: 2011/11/06 19:53
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: McW0.Kc7)

第三十九話 転校生二名








 先生が転校生の方に向いたのか、廊下から軽く顔を出して入れと促した。その時、つい今しがたやってきたばかりの赤弥が話しかけてきた。

「転校生、男と女どっちだと思う?」

 もうすぐ入ってくるんだから待っていろよと、楓は弱い溜息を吐く。赤弥は明るい時と暗い時があり、その二つの差がかなり激しい。今は明るい時のモードだ。明るい時は執拗に絡んでくる。

「別にどっちでもいいだろ。じゃあ両方」

 小さい子をあやすように適当に楓はあしらい、前を向き直った。またカキコの話題を出されて乙海との勧誘攻めが始まるとひとたまりも無い。
 ryuka・・・つまりは乙海がその名前で小説を始めたのは赤弥に誘われたからだ。赤弥藍妃、夏蜜柑という名前で活動している。基本的に二次小説が多く、それ以外だと『幻』をコメディ・ライトで書いているらしい。
 内容は、精霊などが数多く出現するファンタジー色の強いものだと前に宣伝してきた覚えがあると楓は思い返す。
 暗い方の赤弥だと良く映えて見えるのだが、明るい時の赤弥だとその落ちついた藍色の髪の毛と、透き通るような水色の瞳には対照的に映る。

「両方って何だよ!適当にあしらわれた・・・やっぱり嫌われてる・・・」

 出た、暗い方のモード。そういう風に楓が呟いたのが問題だった。
 一瞬にして明るい方の状態に戻り、反撃してきたのだ。暗い時に不機嫌になりそうなことを言うと一気に立ち直って捲くし立てるのも特徴の一つ。
 だが、それはすることができなかった。ようやく、噂になっていた転校生が入ってきたのだから。ザワザワと騒いでいた教室からスッと五月蠅さといったものが取り払われ、ちょっとした静寂が訪れる。
 入ってきたのは中々に顔の整った好青年、といった感じの男子だった。この高校は公立である上、特に規則も厳しくないから別に咎められることも無いのだが、彼は髪を赤く染めていた。

「仇無獅子也(あだなし ししや)、よろしくね」

 その姿はどことなく、イグザムと似ていて、一瞬戦慄を感じた楓は顔を上げて大きく目を見開いた。それに、この声どこかで聞いたような気がする。
 クラスにいる特に女子たちは珍しいその髪の毛を指してか、整った顔を指してか、小さいながらも黄色い声を上げていた。一応、楓の両サイドの二人も。それのおかげで動揺を見られること無く済んで楓は安心した。
 ただし、この次に起こったことに関しては本当に動揺を隠しきることができなかった。まさか、もう二度と会わないのだろうと思っていた人間が出てきたのだから。
 もう一人転校生は居ると先生が言った時、より強い騒ぎが教室中に響き渡った。ただでさえ転校生なんて珍しいのに、一度に一つのクラスに二人も来たのだから。
 まずは、仇無の名前を黒板に書いた後に、もう一人の転校生を部屋の中に招き入れた。
 黒板に『氷』という字が書かれる。

「入って来て良いぞ」

 先生がそう部屋の外に言い放つと、はいという小さい返答が返された。これまたどこかで聞いたことのある声だと思いながらもう一度黒板に目をやった。
 この瞬間、楓の思考は一瞬だけフリーズした。その次に書かれた字が『室』だったからだ。
 いやいや、無い無い無い無いと、首を振ってその考えを打ち消す。あいつがこの高校に転校って?そんなの聞かなかったぞ。とりあえず、楓は関係の無い別人の氷室さんが転校してくると思おうとした。

「氷室冷河です、よろしく」

 そう言いながら入ってきたのは、まさしくあの、真っ黒な髪の毛にうっすらと浮かぶ染めているであろう茶色い髪の毛。長さは秀也と同じぐらい。瞳の色も極めて日本人的で、茶色と黒目、そして白目。発せられる雰囲気は、冷たいと言うか何と言うか。人を寄せ付けない雰囲気が漂っている。
 自分の知っている氷室冷河でしかなかった——。

「楓ー、どうした?」

 赤弥が、楓が慌てて椅子に座ったまま飛び退いたのを見てそう訊いてきたが、返答する余裕は無かった。赤弥だけではなく、クラス中の視線が楓のところに注がれている。
 その冷たく痛々しい視線よりもこの現実の方が数倍ショッキングだった。まさかあいつが転校してくるとは、その定型文だけがずっと、楓の頭の中を巡っていた。
 しかし、氷室は一切反応を示さずに自分の席を探しだした。氷室の席は廊下側座席の一番後ろ、要するに乙海を挟んで隣の隣だった。
 なぜ無視されたかはよく分からなかったがとりあえず楓は落ちついてきて普段通りに戻った。それを見たクラスメイト達は、不可解そうな表情で前を向き直った。もうすぐ授業が始まるのだから。

 するとその瞬間、いきなり仇無が壇上で話し始めた。いや、叫ぶと言った方が正しいかもしれないが。

「さぁーさあ、始まるよ。第二のげえむが!」

 この瞬間、楓の表情は青ざめていった。あいつ大丈夫かと、驚き呆れるクラスメイトを尻目に、表情から精気が抜けて行く。嫌だった、的中して欲しくなかった予想がついに確定する。あの出来事は全て、現実だった。

「今度のげえむはかくれんぼ!一緒にパラレルワールドに迷い込んだ仲間を探しだすげえむ!参加者は二人、仲間を見つけたらげえむクリア!詳しいことはまた話そう!制限時間は七十二時間」

 そこで一旦、彼は言葉を切る。なんちゃってと付け足しながら自分の座席に向かうその姿に、みんな下を捲いて、目を丸くしていた。関わり合いにならないようにしようとも思っているだろう。
 この時楓が考えていたのはもちろん、げえむの内容であり、彼の言葉を真剣に受け取った唯一の男子だった。

 仇無獅子也→あだ無ししや→あだむししや→アダムの使者

 どうやら本当に、達の悪い冗談でも、出来の悪い悪夢でもなく、揺らぐことの無い現実だったと言うしか無かった。

「あー、本当に楓の言ったこと当たったよ、すごーい」

 そんな赤弥の声も、一切彼の脳裏には刻まれていなかった。





第二章 日常—————>>パラレルワールド脱出(かくれんぼ)編




                                            続きます



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展開早い?自分でも思ったから気にしないでください。
後、詳しいルールは次回辺り説明します。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二章スタートです ( No.65 )
日時: 2011/11/09 21:30
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: z9DnoDxA)

第四十話 かくれんぼ、スタート







 その転校生二名の紹介が終わってすぐに一時間目が始まったため、氷室に色々訊いてみようとしたができなかった。
 仕方ないかと楓は肩を落として退屈な科学の授業を欠伸を浮かべて耳に入れていると、視界の端に仇無の姿が入った。
 思い返す、つい先ほど奴が言った内容を。仇無は確実に、『第二のげえむ』が始まると宣言した。ゆっくりと状況を整理してみる。あいつの風貌はどことなくイグザムに似ている。何かしらの関連性があるとして、やはりアダムの使者であることは間違いない。
 その次に注目するべきは声だ、あの声をどこかで楓は確実に聞いたことがある。それも、つい最近、つい前日、それも夜に。つまりは正体を分かりやすく言うと、鬼ごっこのルールを一々説明し、おちゃらけた口調で苛立ちを駆り立てた天の声、アダムの可能性が高い。

「楓君、この問題解いてみて」

 楓がそのようにアダムのことを考えていると不意に、科学の教師から名指しで当てられた。何事かと思い目を見張ったが、彼の言った以上の内容ではなく、ただ単に今話題に出ている問いの回答を答えろと言われただけだった。

「えっと・・・11,2リットル?」

 即座に彼は頭の中で演算し、答えを弾きだす。先生がまだかと待ちかまえているところについ今しがた求めた答えを返す。急いで説いた割にはきちんと計算もあっていたようで、ひとまず安心して思考に戻る。
 だがやはり、あのルール説明では全然分からなかったので、もう少し本人から訊いてみようと思い、授業に戻ることとなる。退屈な授業を耳に収めても面倒なだけだが、気を紛らわせるのには充分だった。






 予想通り、一時間目と二時間目の間の休憩時間は転校生周りに人だかりができていた。一つ予想を裏切られた点は氷室の周りにその群れが出来るのは当然として、仇無の周りには誰一人として近づこうとしなかったことだ。
 氷室の周りには複数人の女子と、男子が十数人連なっていた。まあ、顔だけは整っているからなと、楓はため息を吐いた。先日のあのような状況での、今にして思い返すと冷酷な数々の発言は、内面のひねくれようを表わしていると感じる。
 そんなことよりも仇無の方だ、まあ誰も近づかない要因は予測するのが容易だった。いきなり壇上で奇怪な事を叫ぶのだ。痛い子扱いされて遠ざけられても仕方ない。クラスの目が氷室に向いている今、ルールを訊いてみるには調度良いタイミングだった。

「おい、アダム」

 単刀直入に訊きだすため、楓は仇無ではなくアダムと呼びかけた。当然というかの如く彼は振り向いた。その顔には人面の良さそうな笑みを浮かべているが、よそよそしく見えてならなかった。

「僕のあだ名かな?学級委員さん、どういう用件かな?」
「しらをきるな。もう大体分かっている。声がそのままなんだよ、昨日とな」

 その作り笑顔でそれを受け流そうと仇無は試みたが、楓にばっさりと切り捨てられた。そして、疲労感漂うような深い深いため息を吐いた。
 まるでついさっき、授業が面倒くさいと自分が思っているように、そういうだるさをその息に含ませていた。

「やっぱり君さぁ・・・怖いんだよね、鋭すぎ。これじゃあ僕たち本当に死んじゃうかも」
「何を言っているんだ?」

 ざわめくクラス内の雰囲気のおかげでその会話を第三者が聞いているようなことは無かった。そういう状況だからこそこの二人は安心してかのような会話をしているのだが、いきなりアダムの呟いた言葉は楓に疑問を抱かせた。

「こっちの話だよ。一々来たってことはもちろん・・・」
「ルールを聞きに、だ」
「了解長くなるけど聞いててね」

 さっきのそんなぼやきは聞かなかったことにしておいて欲しいというように彼は話題を転換した。今話題にすべき点はそこではないと分かっている楓もそれに合わせるように答える。
 そうして、またしても長い長いルール説明が始まる。

「まず、げえむの名前はかくれんぼさ。参加者は二人、これはもう言ったよね。でもってクリア条件なんだけど、楓はもう一人の参加者を探しだしてくれたら良い。参加者を見分ける方法なんだけど、まずここはパラレルワールドだってことを知っていてね」

 パラレルワールド、その言葉の意味は良く知っている訳ではないが楓はイメージ的なものは一応持ち合わせていた。それが間違っていると困るために、一応確認する。

「パラレルワールド?現実と並行して動く、第二第三の世界みたいなものか?」
「ま・・・そんなイメージで良いんじゃない?それでね、パラレルワールドと言うからには、現実とはちょっと違う点が一点あるんだよね。その違いに順応出来ていない人を探し出してくれたらOKさ。だから・・・別に氷室ちゃんでも竹永さんでなくても、このげえむは成り立つってことも覚えておいてね。制限時間は七十二時間、三日だね。それを過ぎると・・・」

 鬼ごっこの内容から察するに、どうせろくでもないバッドエンドが待ち受けているに違い無いと断言できた。事実、本当にろくでも無かったからだ。

「三日を過ぎると、どうなるって言うんだ?」
「異端者を含んでしまった世界には歪みや淀みが生じる。それを放置することは世界の崩壊につながるんだ。だから、制限時間吐き。あっ、ミスったらもちろん楓君も消えちゃうから注意してね」

 おふざけにもほどがあるだろうと、憤りたくなったが、そうも言っていられない。何せこの目の前の男子をどうにかしてしまうと、それこそどうなるか分からない。

「二個だけヒントあげるね、君の仲の良い知り合いが参加者になっている。そして・・・ここで最近ブームになっていることに関してのもう一つの世界、さ」

 それだけ言い残して、仇無はそっぽを向いた。これが、げえむ開始の本当の合図。
 制限時間まであと、七十時間三十分。



                                            続きます



________________________________________________



さて、第二げえむの説明アホみたいに長いです。
楓はあれで理解しましたが分かりづらい人は言ってくださったら読者&作者用作ります。
自分でも正直七割ぐらいしか理解していません。ちょっと問題ですけどね。
では、次回に続きます。


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