複雑・ファジー小説

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DARK GAME=邪悪なゲーム= 
日時: 2012/09/14 21:51
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 3TttADoD)

えーと同じくファジーで能力もの書いてる(打ってる)狒牙です。

今回は結構暗そうなものをしたいなということで・・・

まあ、言ってしまうと時折(多分頻度は少ない)グロイかな?

基本的には普通ですので・・・

アドバイスとか変なところ(誤字脱字)があったら言ってください

よろしくお願いします

下手に内容を説明するとネタバレみたいになるんで

一気に一話目打ちます。

そしてこの作品では文章の形式を変えてみたいと思います。



一話目 招待状





「暗いなぁ・・・」

 夜道を、一人の男子高校生が帰っていた。もちろん一人でだ。
 等間隔に設置されている街灯の光を頼りにいつも通りまっすぐ家に帰っていた。
 高校に行き始めてもう三カ月程度経っている。二回目の定期テストが終わり、その手ごたえを塾に伝えに行った帰りだ。
 辺りはもうすっかり暗くなっているが、今日はたまたま曇っているだけでまだ八時にもなっていない。普段ならもう少し明るめだろう。今は月の光すらほとんど届いていないのだから。
 家にたどり着く寸前の急な坂道に青年は差し掛かった。ここだけは何年暮らしていても全く慣れることはできない。角度がそれなりに急な上、それがダラダラと百メートルも続いているのだから疲れている時にはお手上げだ。疲れる意外にここを説明することばはパッとは思い付かない。漢字で表すなら『苦』だ。しかし、苦あれば楽ありということわざもある。
 息を荒くして切らしながらその坂を登りきった彼は汗で少し濡れた顔を上げた。そこには、いつも通りの自分の家の景色があった。隣にある家も普段と何一つ変わらない。
 その家の門の前を通った時にチラッとその中の様子を見た。そこには、住人の一人であるまだ制服を着たままの女子高生がいた。

「あっ、先輩こんばんは」
「おー、楓じゃん。塾?」

 それは紛れもなく自分の部活の先輩だった。楓と呼ばれた彼の本名は楓秀也(かえで しゅうや)。二人とも同じ高校の陸上部員だ。
 といっても、楓は長距離、先輩の方は短距離だった。この時間がまさに『楽』の時間だ。
楓は先輩のことを尊敬している。なぜなら、目の前にいるこの人間は去年インターハイで優勝したからだ。距離が何であろうと関係なく、速い者にはすぐにあこがれる性格だから家がすぐ近く、というより隣の家にその人が住んでいるのは光栄だった。
 ここで一つだけ勘違いしてはいけないのが、別に恋愛対象として見ているのではなく、好きは好きでもスポーツ選手のファンのような感覚だ。思慕の念よりも崇拝と言う方が近い。それほどまでにこの先輩を慕っている。
 ついでに言っておくならこの人の名前は竹永叶(たけなが かな)という。

「普通科は大変だね」

 重い教科書を何冊も詰め込んだ大きなリュックサックを背負って地獄と読んでもいい坂を登り終えた楓に笑いながらそう言った。
 彼らが通っている高校は、体育科と普通科に分かれている。竹永の方は体育科で、楓は普通科だ。しかもこの学校は体育科の連中はスポーツに強く、普通科の連中は勉学ができるというものだ。だから地元でもかなり有名な行きたい高校ナンバー1に選ばれ続けている。

「そうですね、でもテストが一段落したんでしばらくは楽な生活ですね」

 そう言うと、今度は先輩があからさまに疲れたような顔つきになった。その理由は簡単だ。夏休みは腐るほど大会がある。一年にしてインハイで優勝したのだから大会に出されまくっているのだ。相当にだるそうな顔をしている。
 もうすぐ鬼の合宿と呼ばれるイベントが近づいているからだろうか?

「たまにさ、裏側の世界があったら言ってみたいと思うよ」

 このポツリと特に重要な意味を持たない言葉が発せられたのを聞いたとき、ふとある噂を思い出した。いや、都市伝説というべきかな。内容はこんなものだ。




 真夜中は気を付けないといけない。特に招待状を受け取ったなら。
 招待状は突然現れる。血のように紅い封筒にどこまでも続く深い闇のように冷たい黒い紙に『You are invited』と白く描かれた紙が入っている。
 それが招待状だ。そこでは夜な夜な残酷なゲームが行われているという。



 まあ、この話はまだそこまで出回っていないので、元からそういうのに興味の無い先輩が知るはずもないからただの愚痴だと思ってスルーしようとした。でも、自体は思っている以上に深刻だった。

「なんかさっきポストを見たら真っ赤な封筒が入ってたんだ」

 これを聞いた瞬間にはまだただの世間話だと思って普通に接していた。
 だが、その一秒後にまたしても噂を思い出した楓は硬直した。それでも、先輩はその封筒がどういうものなのか説明しているからこっちの違和感に気付いていないが、楓の胸の中では胸騒ぎがしていた。
先輩は、その中からどす黒いハガキを取りだした。そこには、やはり文字が書いてあった。



『You are invited』



 これが視界に入った瞬間、瞳孔は一瞬にして開いた。そこには、幽霊を連想させるように白い字でそう書かれていた。
 かく汗の中に冷や汗が混じる。これではまるで噂と同じだ。

「後ろにも変なことが書いてあるのよね」

 そう言って今度は紙をひっくり返した。そこには、今受けた衝撃よりもさらに強いショックを与える文が書いてあった。

『おめでとうございます。あなたはご当選いたしました。裏の、闇の世界へのペアチケットです。あなたと、もう一人誰かをお誘いください。何、迷うことはありません。隣家の後輩で結構です。[げえむ]は今晩の八時から、次の日の午後八時まで行われます。それまでにもう一人の方とご一緒しておいてください。』

 背筋に悪寒が走った。この内容を見る限りこれの差出人は明らかに先輩を狙っている。隣家の後輩とはまず俺で間違いない。
 怪しい雲がさらに月の光を隠すようにもうもうと寄ってくる。ふと時計を見るともうすでに時刻は七時五十九分を示し、秒針はもう・・・









 十二の文字にかかろうとする瞬間だった。








 秒針が五十九秒から六十に動いて行く。その動きがとてつもなくスローに感じられる。体は、ピクリとも動かなかった。



 刹那、手紙から迸った漆黒の闇は叫び声を上げさせる暇なく一瞬で楓と竹永を包み込んだ。グチュグチュと妙な音を立てて闇の繭を作り、ゆっくりと地面に溶けていくように小さく下から萎んでいった。










                                 続きます


第一章 鬼ごっこ編

>>1>>2>>3>>4>>5>>6>>7>>9>>10>>11>>13>>14>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>26>>27>>29>>30>>33>>36>>37>>40>>41
>>42>>48>>49>>50>>51>>52>>55>>56>>57 総集編>>60

第二章 日常—————編 募集キャラ>>70

>>61>>64>>65>>66>>67>>68>>69>>72>>73>>76>>79 総集編>>80

第三章 楓秀也編 プロローグ>>81

>>83>>85>>89>>91>>94>>95>>96>>97>>99>>100>>103>>104>>105>>106>>110>>111総集編>>112

第四章 氷室冷河編
>>113>>114>>115>>116>>117>>118>>119>>122>>123>>124

コメントしてくれた人です(一度でもしてくれたら嫌でも載ります。すいません・・・)

ryukaさん「小説カイコ」「菌糸の教室」「壁部屋」の作者さん
千愛さん 総合掲示板の方でお仕事なさってます
赤時計さん「花屑と狂夜月」「他人の不幸は毒の味」の作者さん
ゆヵさん 「SNEAK GAME」「めいろ」の作者さん

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二十九話更新  ( No.43 )
日時: 2011/10/21 16:16
名前: 赤時計 (ID: u5ppepCU)

ヴァルハラの使者・・・?だ、誰でしょう?すみません脳味噌かちんこちんな私は馬鹿なため分かりません・・・誰なんでしょうね。気になります!

イグサム可愛いですね。。。僕口調はどうして可愛さが出てくるのでしょうか?可愛いなあイグサムイグサム。いや、氷室ちゃんも可愛いのですが!(笑)

全然全く陳腐ではありませんよ?!ジールの所や空港では、本当に驚きました。「こうゆうルールで・・・!!」誰も考えれないと思いますよ?

では、更新頑張って下さい。。。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二十九話更新  ( No.44 )
日時: 2011/10/21 18:54
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Ikb4yhFE)

ヴァルハラについては雑学があるかないかですので、
脳みそ堅いとかは関係ありませんから大丈夫ですよ。

あっ、間違いが今発覚しました。
良く見たら二十八話が『俺』になってる・・・
すぐに修正しときます。

イグザムは・・・一応小さい子です。
と言っても大体小学校三年生ぐらいなんですけどね。
時々口づかいが悪いです。
氷室については言ってしまうと次の話が格好いいです。

空港は頑張りました。
元々空港がフィニッシュに設定されていたんですが、どん詰まりになって先に出ました。
この小説自体鬼ごっこと空港しか考えずに始めたので・・・
まさかの書き始めてからラストを考えるという異例の事態。
そこで出てきたのが聖騎士団とヴァルハラの使者です。
ああ、また自分の話に神話が絡むな、と感じる瞬間でした。

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第三十話更新  ( No.48 )
日時: 2011/10/24 17:30
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OGmuT4jt)

第三十話 叱咤激励








 走っても、走っても。走っても走っても走っても走っても、いくら遠ざかってもあの足音は一向に耳から離れない。流石に少しは動きにくいのだろうから、差が詰まっているということは無いのだが、この追い上げはあまりにもおかしい。
 この辺りは、地元の人でも相当慣れている者でないとあっと言う間に迷ってしまう細い路地裏。初見の人間が自由自在にひょいひょいと動き回れるような所ではない。
 それなのに、それなのにだ。イグザムの隊が自分たちから遠ざかっている気がしない。まるで、自分たちの後を正確にたどれるかのように、さっきまで自分のいた位置からガシャガシャとした金属音が聞こえてくる。
 まだ楓には体力が残っていたが、氷室はどうであろうかと、楓は氷室を危惧して振り向いたがまだ余裕そうな表情で真っ直ぐ走っていた。それでも、離れることのないイグザムには不可解な念と苛立ちを覚えているようだ。

「くそっ・・・あいつらいつになったら離れるんだよ」

 音を上げたかのように、弾む息の中で楓は不安を口にする。どうやってあいつらが自分たちを追っているのかを考えないと。ただひたすらそれだけに集中する。
 音で察知している?いや、それは無いと即座に心の中で打ち消す。それならばよっぽど自分の隊列の方が五月蠅いのだから不可能だ。聞こえる訳が無い。
 上空から何か飛ばしているのではないかとも考える。だが、この辺りは屋根がある部分も多数存在し、しかも何度もそういうところを通っているのでその可能性も無くなる。
 発信器なんてちゃちな物は使わないと、楓はイグザムの良いように錯覚していた。まさか幹部が発信器なんてありきたりなことはしない、そう考えると呼んだイグザムの策は見事に当たっていた。

「いつになったら・・・」

 さっきから、全く進展の無い思考に苛立ちながら考える、ただ単に偶然で奴らが付いて来ていることを信じ、足を動かす。左右に折れ曲がり、次々と道筋を変え、何分も走りまわっているのに一向に追跡が途絶えないのだから、そんなことも無いのだが微かな希望にすがりつきたくなる。

「ジールとは・・・えらい違いだな。これじゃ・・・」

 これじゃ、の先は言ってはいけないと慌てて口をつぐんで大きく首を振ってその考えを打ち消した。何を言っているんだ、諦めてどうする、と自分に激を飛ばすが、負の感情は深奥まで潜り込んでいて、そう簡単に消えようとしない。
 もう一度、氷室の方を振り返るがまだ体力は大丈夫そうだった。しかし、何かに対して怒っているようにやや目が細められていた。苦虫を噛み潰すような表情を浮かべて、ただ一点を睨みつけている。
 そんなことを確認し、前方に向き直ろうとすると、思わぬことが起きた。突然、イグザムが追ってくる事も構わずに、氷室は楓に体当たりを決めて、押し倒した。
 マラカスの音を低くしたような、地面と服が擦れる音がその場に反響する。横向きに倒れた楓は、痛みよりも驚きの方が大きかった。咄嗟の受け身でそれほど怪我をしなかったというのも一つの原因かもしれないが。
 そんなことよりも、なぜ氷室がこのような行動に出たか、それが自分の最も危惧していることだった。なんでこんなことをしたんだ、と聞くよりも早くに氷室が大声で、怒号を飛ばした。

「いつまでボウッとすてんのよ、さっさと頭働かせなさい、最低人間!」

 いきなり、さっき以上の驚愕が訪れ、目が点になる。えっと・・・今なんでこんなに怒られているのでしょうかと誰かに訊いてみたくなった楓は、意識が半分飛んでいる状態で反論する。

「さっきから、考えてるよ。でも、全然思い浮か・・」
「言い訳は聞いてないのよ、さっさと考えなさい。というよりその落ちぶれようは何よ?肩にずっと発信器付けられてたのに気付いてないの?」

 そう言われた瞬間にまさかと思ってさっき触れられた方の肩に目をやった。そんなことはしないだろうと思っていたことが、確かにそこにはされていた。そこに対して後悔しようとすると、さらに叱咤の言葉は飛ぶ。

「そりゃ私だって気付いたのはついさっきよ。でもね、あんた一人で何でも考え過ぎなのよ。あっちに付いているのは奴隷、こっちには味方がいんのよ。奴隷はたださせたいことをやらしたら良いけど、仲間だったら協力しなさい。力になる、ならない関係無く!そう、あんたの先輩が言ってたわよ」
「だったら・・・なんか考えてくれよ、とりあえず時間稼ぐ方法とか!」
「それを今から二人で考えるんでしょうが!まあ、今この瞬間は無理かもしれないけどね」

 あまりにもの言われようの自分に情けなくなった楓は逆上し、自分に向けるべきはずの怒りを氷室に向ける。
 だがそれすらも、あっさりと彼女に返され、たじろぐ。そして、今は無理という言葉に怪訝そうな表情を浮かべる。なぜ今だけは無理なのかが分からない。

「今のあんたはね、空港にいた時とも、コイントスに行っていた時とも、学校で合流した時とも、ジールと対決した時とも、全然違う。ただのそこら辺にいる焦り気味の高校生になり下がってんのよ。私達が信頼している、天才とは全く違う。昔の、私だけが知っている最低人間でしょ、それじゃ」

 この言葉に、最初は全く反応できなかった。その次の瞬間には己の耳を疑った。『私達』が信頼している、『天才』という言葉は、おおよそ氷室の口からは楓には発されない筈の言葉。なのに、至って自然にその言葉は冗談でも無く現実に、間違えようも無く出てきた。
 ああ、そうかよと楓は弱く呟く。まだ抵抗する気かと氷室はさらに叱責しようとする、が・・・

「分かったよ、やってやる。お前がいうぐらいなら天才なんだろ?今からイグザムにひと泡吹かせてやろうじゃねえか。その前に、結構来てるから逃げないとな」

 右肩の忌々しい機会を強引に毟るようにして取り、力強い表情をしているのを目に収めた氷室は、フッと笑った。
 ふと楓が、反射的に顔が紅潮させたのは、本人にも分からないほどの、微かなものだった。





                                            続きます




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さてと、宣言通り今回の氷室の活躍は上々だと思います。
今までで最も扱い良かったと思います。
次回、イグザム対楓の仕切り直し。
では、次回に続きます。



Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第三十話更新  ( No.49 )
日時: 2011/10/24 17:30
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OGmuT4jt)

第三十一話 反撃開始







「ん?発信器の動きが止まったな・・・そろそろばれちゃったかなー?」

 手元のモニターに映っている光の点の動きが止まったことに違和感を感じたイグザムはふと呟いた。さすがにそろそろばれていてもおかしくはないだろうが、少々発覚するタイミングが悪いな、と感じていた。
 さっきまではずっとこの機械の動きで追えていただけであって、入り組んだ道をノーヒントで走りまわれるとは思っていなかった。せめて、この細い路地裏を通り抜けてくれないと、大勢での隊列が組めないので普通の道に出てからの方が断然いいと、軽く舌打ちをする。
 一旦歩みを止めて思考していたのが悪かった。この瞬間はまだ楓が氷室を怒らせている真っ最中で、今詰め寄れば楓達にとって絶体絶命だった。しかし、次の策を考えている時間が二人に隙を与えてしまっていた。

「とりあえず、行ってみるか」

 十秒ほど思考を張り巡らすも、現状を見ないと分からないと判断したイグザムは再び歩を進める。結局こうなるのだったら手を打たれる前にした方が良かったと、自分の躊躇いに後悔する。
 それを反省したいのならば、この後の行動を迅速にするのだと焚きつけて駆け出す。少年の体では少し走るのは遅いが、人間とは性能が違うので、体力は底なしにある。その内尽きるのだが、人間の十倍程度の持久力は悠に持ち合わせている。
 もう一度、壁との感覚が狭い路地の中に、五月蠅い金属音が鳴り響く。耳障りだから銃は1人の兵士あたり一丁だけにしてくれと思う。本人たちの動きも制限されるし、丸腰の連中を殺るだけならそれほど大がかりな装備は必要ではない。
 もう一度、画面の中の光が動きだした時に、より後悔の念は強くなる。動きだしたならば一旦立ち止まっただけであり、おそらくまだ気付かれていないと踏んだイグザムは速度を上げる。

「さてと、いつになったら追いつけるかな?」

 モニターの中に精神を集中させてどのように俺曲がったりして移動しているのか深く確認し、現実で路地を眺めて照合し、後を追う。そのような天才的な脳内変換も彼にとってはお手の物だった。
 だが、人の心の中までは完全に読み取れない。多少こんな風に考えているだろうという予測は付けられるが、それに至っては確証は持てない。

「・・・・・・・・あれ?」

 またしても発信器の動きが止まった。この先百メートル程の所を曲がってすぐの辺りだ。どうなっているのやらと、十数秒考えた後に曲がって見て遂にその訳が分かった。
 やはり、発信器はすでにばれていたようで、発信器を付けたカッターシャツがおもむろにその辺に放置されていた。しかも、左右に分岐する分かれ道の右側に。
 ここで少し考察する。なぜそのような中途半端なところで脱ぎ捨てられているのか。主に挙げられる理由としては・・・

1、気付いてすぐ捨てたので、通った道の上に放置。
2、そちら側に逃げたと思わせるため。

 1はおそらく無いだろうと反対側、即ち左側の道を見る。こっちか、とも考えたが楓は頭が回る奴。ここまでの自分の思考も予測しているだろう。だからこその、自分の通る側にシャツを脱ぎ捨てたと決めてイグザムは右側に顔を向ける。
 これ以上の裏の掻き合いの堂々巡りは面倒な上、そこまでしたところで逃げ切れる確率は二分の一しか引き当てられない。楓は賢いのだから二回裏を掻いたら満足するだろうと、シャツのある方向に目を向ける。しかし、何かあったら困るなと反対側も少々気にかけるが気付く。向こうはイクスが阿呆のように大暴れしていると。
 そんな所に行くはず無いのだから真っ直ぐシャツのある方向に走りだす。楓が1のような答えを引き当てるとは信じ難いが、戻って来ているという選択肢は最もありえない。それならばすれ違っているはずだと、打ち消すことになるからだ。
 だがここでもう一度考え直す。本当にあのシャツには意味が無いのか?という事だ。まさかと思ってどけてみると、そこには蓋の外されたマンホールの穴が開いていた。

「やっぱり、楓は最高だね」

 もう少しで騙されるところだったよ、と楽しそうに満面の笑みを浮かべながらそこをマジマジと観察する。ここは確実に軍で通るのは難しいだろうと考えたのだろう、やはり楓は最高の好敵手だと感慨にふけっている。
 そして次々と、骸骨たちは薄暗い穴の中に飛び込んで行く。最初に五体ほどの下っ端を送りこんでその後に将たるイグザムが飛び下りる。そしてその後を追うように余りの兵士はぞろぞろと付いて行く。

「さてと、もっと僕を楽しませてよ、楓君」

 イグザムはこんなものではまだまだ物足りないとでも言うように目をぎらつかせている。声が飲みこまれると共に、闇の中に銀髪碧眼の彼は消えた。
 だが、イグザムよりもこの時ばかりは楓の方が策を考えることに関しては優れていた。

「ふう・・・作戦成功」

 物陰から楓と氷室の二人は現れた。つまり、前進も後退もせずにただその場で待っていた。イグザムがどこかに進むと勝手に予測をしたのだが、それは見事に的中した。

「ようやく、本調子出てきたじゃないの」

 その様子を満足げに見つめながら氷室は頷いている。
 帰ってきた凛々しい彼の表情にやや赤面しているのは果たして彼女は知っているのだろうか——。



                                            続きます



________________________________________________


ではでは次回に続きます



Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第三十一話更新  ( No.50 )
日時: 2011/10/25 15:59
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OGmuT4jt)

第三十二話 イグザム撤去完了









「さすがだね・・・まさかそう来た?」

 マンホールから下に降りた後にいきなり、穴から刺し込む光が遮られた。さっきまでうっすらと光が射しこんでいた世界がいきなり闇に包まれて無明となる。
 さっき自分は楓は下に降りたと予測し、その予測には信憑性があると自身を持って中に入ったはずだった。しかし、楓はその予想を大きく裏切って、中には入っていなかった。中に入っていないどころかどこにも逃げてはいなかった。

「マンホールに気付いても良し、気付かなくても良しだったって訳なんだね」

 気付かずに真っ直ぐ進んでも、どのみち反対方向に引き返すだけで済む話だった。それでいて気付いた場合はこのように入り口を塞げば幹部である自分を無力化できるしな・・・と残念そうに肩を落とした。
 ただ入口を塞がれただけだったら外せばいいのだが、もうすでにとっくに下に降りてしまっているので、上に戻るにはまず手を引っ掛ける取っ手を探さないといけないのだが、それがこう真っ暗だと見つからない。しかもイグザムの身長は知ってのとおりの低さだ。跳躍力も大したことが無い上にこんなゴツゴツ武装した骸骨に持ち上げられると何かの拍子に武器が刺さるかも、と抵抗が隠せずにいた。

「ま、いっかこのまま闘ってミスって死んだらもう楽しめないしね。僕はこの辺でサボらしてもらおっと」

 後はイクスに任せた、だって冗談抜きでここから出れないもんね、漫画ならば最後に音符が付きそうな口調で最後にそういう風に付けたして壁にもたれかかった。歩きまわって溝にハマりたくない。
 ま、今日のところは中々楽しかったから次こそちゃんと楽しんで闘えるようにしようと、アダムの使者と一緒にいる時には見せないような笑顔でニヤニヤと笑っていた。
 強敵が現れた高揚感と期待に胸膨らむ期待感、先が待ちきれないように無邪気に待とうとするその様子は、幼い子供のようにしか見えなかった。

「ていうかここ臭いんだけど?やっぱり出たくなってきたな」

 これでイクスがやられちゃったら、もう鬼はいなくなるんじゃない?そう天井に向かって言ってみたが案の定彼の父親にその声は届いていなかった。
 バカ親父め・・・そう呟く時だけ彼の顔から笑顔は消え失せてこの世に絶望したような恐ろしげな表情を浮かべていた。今回で楓が生き延びようが僕の知ったことじゃあないしと付け加える時にはいつも通りに戻っていた。





「どこだぁァっ!楓秀也、氷室冷河、竹永叶斎藤麗華楠城怜司ィぃっ!!制裁だ制裁だ制裁だ制裁だ!!!我が仲間<とも>を殺したその罪万死に値する。貴様らの命など我らアダムの使者にとって要らぬものに過ぎんというのにっ!!なぜ貴様らはそうまでして地上にはびこる!?ブラフマーもオーディンも須佐乃袁尊も、全て、自身が何かの自覚を忘れていたのか!!」

 周囲の物何もかもを破壊しながら突き進んでいるのは暴走する骸骨の見かけをした一人の何か。骨しかないのだから生物ではないのだが、確かにそこに石は存在していた。
 そんな彼は空に怒号をぶちまける。優しき心を持っていた過去の彼はもう此処には存在していなかった。ただ、ジールが殺された恨みを晴らすために前へ前へと全てを破壊して突き進んでいるだけ。
 この世に絶望した人間らしい行動だった。自分の思い通りにならぬのなら、何もかもを壊しつくしてしまえば良い。そうして残ったところに、自分の求めた世界が出来上がる。救世主がいないのならば、自分で自分の世界だけは護ってみせる、創り上げてみせるのだ。
 そのようにするために、自分の理想を築き上げるために彼は、関わった敵すべてを抹消しようと動いていた。
 それは例えるならば竜巻のようで、通った後は瓦礫の山と化して、昔町であったことだけを物語っていた。煌々と燃える炎は自身の破壊願望が満たされたと心の中に充足感を注ぎ込み、新緑に萌える遠くにそびえる山々の木々はよりいっそうの破壊を自分に促しているように欲望を駆り立てる。

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い、どれほど恨んでも恨み足りないほどに人間が、楓秀也が憎いんだ!!分かっているさ、彼は彼なりに自分の世界を守っただけだと!それでも物足りないんだ、我が親友の消えた理由としてはぁっ!」

 そう叫び続ける彼の引き連れる兵隊、それが持っている弾薬はもうすでに、当初に一割を割っていた。
 この戦闘の終わりに、刻一刻と近づいている——。




                                            続きます



________________________________________________



おっと、そろそろ近づいて来たんじゃない?
第一章の鬼ごっこ編完結が遂に?
第二章の内容は大体決まってます。前言ったけど総合でキャラ募集したしね。
ジール消滅、イグザム(+イグザム軍)下水道に封印(笑)
後は弾薬尽きそうな暴走亡霊のみ。

先に二章の告知をいくつか・・・

1、誰も死なないげえむ内容。でも、巻き込まれたら少しショッキング
2、一章以降出てこなさそうなあの人が・・・いやまあ出ないと不味い人なんだけども
3、募集キャラの提供元の御方もさらっと紹介します。
4、一章よりも短い
5、第三章(げえむ関係無し)につながる話題が出る。

以上です、次回に続きます。


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