複雑・ファジー小説
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- DARK GAME=邪悪なゲーム=
- 日時: 2012/09/14 21:51
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 3TttADoD)
えーと同じくファジーで能力もの書いてる(打ってる)狒牙です。
今回は結構暗そうなものをしたいなということで・・・
まあ、言ってしまうと時折(多分頻度は少ない)グロイかな?
基本的には普通ですので・・・
アドバイスとか変なところ(誤字脱字)があったら言ってください
よろしくお願いします
下手に内容を説明するとネタバレみたいになるんで
一気に一話目打ちます。
そしてこの作品では文章の形式を変えてみたいと思います。
一話目 招待状
「暗いなぁ・・・」
夜道を、一人の男子高校生が帰っていた。もちろん一人でだ。
等間隔に設置されている街灯の光を頼りにいつも通りまっすぐ家に帰っていた。
高校に行き始めてもう三カ月程度経っている。二回目の定期テストが終わり、その手ごたえを塾に伝えに行った帰りだ。
辺りはもうすっかり暗くなっているが、今日はたまたま曇っているだけでまだ八時にもなっていない。普段ならもう少し明るめだろう。今は月の光すらほとんど届いていないのだから。
家にたどり着く寸前の急な坂道に青年は差し掛かった。ここだけは何年暮らしていても全く慣れることはできない。角度がそれなりに急な上、それがダラダラと百メートルも続いているのだから疲れている時にはお手上げだ。疲れる意外にここを説明することばはパッとは思い付かない。漢字で表すなら『苦』だ。しかし、苦あれば楽ありということわざもある。
息を荒くして切らしながらその坂を登りきった彼は汗で少し濡れた顔を上げた。そこには、いつも通りの自分の家の景色があった。隣にある家も普段と何一つ変わらない。
その家の門の前を通った時にチラッとその中の様子を見た。そこには、住人の一人であるまだ制服を着たままの女子高生がいた。
「あっ、先輩こんばんは」
「おー、楓じゃん。塾?」
それは紛れもなく自分の部活の先輩だった。楓と呼ばれた彼の本名は楓秀也(かえで しゅうや)。二人とも同じ高校の陸上部員だ。
といっても、楓は長距離、先輩の方は短距離だった。この時間がまさに『楽』の時間だ。
楓は先輩のことを尊敬している。なぜなら、目の前にいるこの人間は去年インターハイで優勝したからだ。距離が何であろうと関係なく、速い者にはすぐにあこがれる性格だから家がすぐ近く、というより隣の家にその人が住んでいるのは光栄だった。
ここで一つだけ勘違いしてはいけないのが、別に恋愛対象として見ているのではなく、好きは好きでもスポーツ選手のファンのような感覚だ。思慕の念よりも崇拝と言う方が近い。それほどまでにこの先輩を慕っている。
ついでに言っておくならこの人の名前は竹永叶(たけなが かな)という。
「普通科は大変だね」
重い教科書を何冊も詰め込んだ大きなリュックサックを背負って地獄と読んでもいい坂を登り終えた楓に笑いながらそう言った。
彼らが通っている高校は、体育科と普通科に分かれている。竹永の方は体育科で、楓は普通科だ。しかもこの学校は体育科の連中はスポーツに強く、普通科の連中は勉学ができるというものだ。だから地元でもかなり有名な行きたい高校ナンバー1に選ばれ続けている。
「そうですね、でもテストが一段落したんでしばらくは楽な生活ですね」
そう言うと、今度は先輩があからさまに疲れたような顔つきになった。その理由は簡単だ。夏休みは腐るほど大会がある。一年にしてインハイで優勝したのだから大会に出されまくっているのだ。相当にだるそうな顔をしている。
もうすぐ鬼の合宿と呼ばれるイベントが近づいているからだろうか?
「たまにさ、裏側の世界があったら言ってみたいと思うよ」
このポツリと特に重要な意味を持たない言葉が発せられたのを聞いたとき、ふとある噂を思い出した。いや、都市伝説というべきかな。内容はこんなものだ。
真夜中は気を付けないといけない。特に招待状を受け取ったなら。
招待状は突然現れる。血のように紅い封筒にどこまでも続く深い闇のように冷たい黒い紙に『You are invited』と白く描かれた紙が入っている。
それが招待状だ。そこでは夜な夜な残酷なゲームが行われているという。
まあ、この話はまだそこまで出回っていないので、元からそういうのに興味の無い先輩が知るはずもないからただの愚痴だと思ってスルーしようとした。でも、自体は思っている以上に深刻だった。
「なんかさっきポストを見たら真っ赤な封筒が入ってたんだ」
これを聞いた瞬間にはまだただの世間話だと思って普通に接していた。
だが、その一秒後にまたしても噂を思い出した楓は硬直した。それでも、先輩はその封筒がどういうものなのか説明しているからこっちの違和感に気付いていないが、楓の胸の中では胸騒ぎがしていた。
先輩は、その中からどす黒いハガキを取りだした。そこには、やはり文字が書いてあった。
『You are invited』
これが視界に入った瞬間、瞳孔は一瞬にして開いた。そこには、幽霊を連想させるように白い字でそう書かれていた。
かく汗の中に冷や汗が混じる。これではまるで噂と同じだ。
「後ろにも変なことが書いてあるのよね」
そう言って今度は紙をひっくり返した。そこには、今受けた衝撃よりもさらに強いショックを与える文が書いてあった。
『おめでとうございます。あなたはご当選いたしました。裏の、闇の世界へのペアチケットです。あなたと、もう一人誰かをお誘いください。何、迷うことはありません。隣家の後輩で結構です。[げえむ]は今晩の八時から、次の日の午後八時まで行われます。それまでにもう一人の方とご一緒しておいてください。』
背筋に悪寒が走った。この内容を見る限りこれの差出人は明らかに先輩を狙っている。隣家の後輩とはまず俺で間違いない。
怪しい雲がさらに月の光を隠すようにもうもうと寄ってくる。ふと時計を見るともうすでに時刻は七時五十九分を示し、秒針はもう・・・
十二の文字にかかろうとする瞬間だった。
秒針が五十九秒から六十に動いて行く。その動きがとてつもなくスローに感じられる。体は、ピクリとも動かなかった。
刹那、手紙から迸った漆黒の闇は叫び声を上げさせる暇なく一瞬で楓と竹永を包み込んだ。グチュグチュと妙な音を立てて闇の繭を作り、ゆっくりと地面に溶けていくように小さく下から萎んでいった。
続きます
第一章 鬼ごっこ編
>>1>>2>>3>>4>>5>>6>>7>>9>>10>>11>>13>>14>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>26>>27>>29>>30>>33>>36>>37>>40>>41
>>42>>48>>49>>50>>51>>52>>55>>56>>57 総集編>>60
第二章 日常—————編 募集キャラ>>70
>>61>>64>>65>>66>>67>>68>>69>>72>>73>>76>>79 総集編>>80
第三章 楓秀也編 プロローグ>>81
>>83>>85>>89>>91>>94>>95>>96>>97>>99>>100>>103>>104>>105>>106>>110>>111総集編>>112
第四章 氷室冷河編
>>113>>114>>115>>116>>117>>118>>119>>122>>123>>124
コメントしてくれた人です(一度でもしてくれたら嫌でも載ります。すいません・・・)
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千愛さん 総合掲示板の方でお仕事なさってます
赤時計さん「花屑と狂夜月」「他人の不幸は毒の味」の作者さん
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- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第十話更新 ( No.11 )
- 日時: 2011/08/21 17:01
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: kji2ZSe9)
第十一話 コイントス
「なんで・・・俺が?」
「いやなんでってランダムだからに決まってんじゃん。要するに適当なんだよね。別に選びたくて選んだ訳じゃなし。ところで、今光で射された順番分かってる?その順番通りにげえむの順番回すから。じゃ、ワープ行くよ」
足元に、闇が現れる。これは一度見たことがある。感じたことがある。これは自分たちをここに誘ったあの闇だ。あの時みたいに抵抗する暇なく迅速に包み込むのではなく、伝言を置いて行けるようにゆっくりと包み込んでいく。これは、今目の前にいる人達に何か言いたいことは言って行けよ、ということなのだろうか?ならば調度いい。一つだけ、助かる道を伝えておこう。緊急の時はどこに逃げ込むべきか。
「先輩、何かあったら警察署まで誘導お願いします。あそこなら・・」
「分かってるって!そんなことよりみにげえむの方をしっかり頑張ってちょうだい。これから先の難易度がかかってるんだから」
先輩からの励ましを受ける。どうやらこの調子なら大丈夫そうだ。三人を信頼したその瞬間、闇の浸食のスピードが増す。一つだけ、嫌な予想がある。もし仮にコイントスにクリアしたとして、自分たちの戻ってくるタイミング、そして場所などが一切分からない。でも、げえむに失敗したら十二時にはその鬼が解放されるというのだからそれまでには終わるだろう。だが、もしも十二時ギリギリに終わったのだとしたら、そして今この場所に戻ってきたとしたらおそらく先輩たちとバラバラになって孤立するだろう。そうなった時に、逃げ切れるかは分からない。
「楓、六時よ」
「はい?」
「午前六時に学校集合。いいわね?」
「了解」
力強い顔で楓は頷く。その瞬間に完全に闇は秀也を埋め尽くした。ぐちゅぐちゅと気味の悪い音を立てて地面に吸い込まれていく。ちょっとずつ、ちょっとずつ地面へと入りこみ、遂には瞬間移動するかのように消えてしまった。
気付いた時には、ガラス張りの部屋にいた。部屋と言うより、檻といった方が正しいかもしれない。透明な壁に囲われた空間に自分を含めて四人の人間がいた。五人選ばれたはずなのに、最後の一人はどこにいるんだろうと辺りを見回す。結局見当たらなくて肩を落とし、地面を見る。すると、そこにいたのだ。五人目の人間が。そこに立っていたのは黒人系の男性だった。少し歳はいっているが人種ならではの体力を活かしてここまで逃げ抜いてきたのだろう。汗で、着ている服の色が変わっているほどだ。どうやら、この今立っている空間は信じられないが宙に浮いているらしい。そんなことに感心しつつも意識は、コイントスのルールがどのようなものになるのかということに向いていた。そこに、あの素性の知れぬ奴の声が響いた。
「やあ、選抜者五人組。今からルールの説明をするよ。ルールは簡単!コインが裏か表か五回連続で正解したらOK。一人何回でも挑戦できるよ」
要するに、時間をかけたらクリアできる可能性があるということだ。思った以上にシンプルで簡単なげえむに心底ほっとする。競技開始のチャイムの音と共にその黒人のおじさんは『表』と言った。肝心のコインが無いではないか、そう言いそうになった瞬間に上からコインが落ちてきた。ゆっくりと、床に向かって落下していく。カーンと軽い金属音を立てて床に当たったコインが跳ね上がる。何回かバウンドした後にカタカタと動きをゆっくりと細かくしていく。止まるのはもうすぐだ。おそらく、絵柄を見る限り今回は裏だろう。残念ながらはずれだが、次が当たれば良い・・・・・
—————ちょっと待てよ
おかしい、不自然だ。あんなに鬼ごっこが理不尽なルールで残酷なものだったのに対しこの簡単さは逆におかしい。あいつは確かに何度でも挑戦していいと言った。しかし・・・罰が無いとは一言も言っていないんじゃないか?頭の中に罰ゲームの単語が反芻される。まさか・・・
「おい!そこの人!何にかはまだ分からない!けど、気を付けろ!」
地面に向かっておもいっきり叫ぶ。しかし、下の奴に聞こえている気配は無い。どうやら、こっちの声は聞こえていないようだ。周りにいる三人が突然の叫び声に目を丸くする。こいつは何を言っているんだとでも、言いたげな。
そして、コインは裏の目を出した。彼の、短絡的な判断が裏目に出て、そこから地獄絵図は始まったんだ。
「うああああっ!!」
突然、外れの目を出したあの人が叫び声を上げる。腹の奥を抑えつけていかにも痛そうにしている。一体、何が起こったのだというのだろうか?
「そこの楓くんの言うとおりだよ。言動には気を付けた方がいい。単純に決めて、外れたら罰が下るんだ。その罰って言うのはね・・・」
いつものふざけた口調とは違う、真剣で、冷酷な声で彼はそのルールを告げた。
「外れるたびに一つ、ランダムで身体のどこかの骨が砕け散るんだ」
続きます
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第十一話更新 ( No.13 )
- 日時: 2011/08/27 09:09
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: emiPMG4Z)
- 参照: 勉強合宿終了!
第十二話 解析
「うあああああっ!!」
腹を押さえ、苦しそうに一番手の男の人がもがいている。彼が指定した向きは表、それに対して出たのは裏。要するにハズレだ。そんな彼に、非情な罰ゲームが下ったのだ。身体の中の骨をランダムで一つ粉砕するという、極めて残酷な・・・
「ちょ・・・あの人大丈夫なの?」
横にいる二十代ぐらいの女の人が心配そうにそう口にする。どうやらここにも、まともな人間はいるようだ。嘲るようなものでも、演技でもなく素で全くの他人を心配している。筋の通っている楠城といい、先輩といい、たまに空回りするが、それでも正義感が強い氷室がいているように、人情味溢れる人間が多く参加しているようだ。この箱の中にいる自分を含めた三人は、表に出す出さないは置いておいて一番手の黒人の彼のことを心配していた。
「・・・まだ、次がある」
動揺を隠し、平静を装いながら秀也はそう呟いた。下で転がる人に話しかけたのでも、周囲の三人に訊いてみたのでもない。鬼ごっこといい、残酷なげえむに追われて、身体の芯から冷めていくような感覚を落ちつけるために、自分のためにそう口にしたのだ。自分には見ていることしかできない。
「もう一度・・・表だ」
もうそろそろ落ち着いた声で下に立つ彼はそう答えた。また、頭上からコインが落ちてくる。回転しながら落ちるその硬貨の動きが、スローモーションのように見える。ここで直感した、これはまた外れると。きっとこれも頭を使わないと解けないであろう『げえむ』、何かしらの規則性を見つけないとダメだろう。だったら・・・
「ビビってる暇は無い・・・」
もう一度、深く考えてみる。おそらく、これは普通にしていたら絶対にクリアできない『みにげえむ』だ。落ちる目は何かの決まりに沿って決められていて、そのルールを暴くことが必要なのだろう。自分の、下の彼の、先輩達の身を守るためにはここで自分が解析するしかない。徐々に、落ち着きを取り戻してきた秀也は脳をフル稼働させる。だが、今出ているサンプルはたった二つ。一つは一回目、もう一つは今この瞬間地面に反発したあの硬貨だ。そこで、よくよくコインを観察する。色が、明らかに変わってしまっている。さっきは金貨と呼ぶにふさわしかったのに、今のは赤黒く、血塗れたようなコインだ。さきほどと、どこがどう違うかは全く見当がつかない。しかし、唯一付いていた見当である、外れということは的中した。
「紅い・・・コイン?」
それに気付いたもう一人の人が反応する。その人の発言に合わせて反応したかのように皆の視線が下に注目する。
「本当だ・・・さっきと違う」
その瞬間、一番手の彼の足もとに孔が開いた。何が起きたのか判断する前に、そのまま真っ直ぐ落ちていく。紅いコインとは一体・・・
「紅いコインは強制終了の印だよ。あれでミスったら即げえむおーばー、場外退場で確実に首の骨が粉砕!えぐい映像は見せない主義だから目にしないから安心して」
あの声が説明としてそう告げる。要するに、あれはルールが理解できていなかったら即死を呼び込む死神と言う訳だ。
「じゃ、二人目だよ」
最初に紅いコインに気付いた人が下りる。その人に至っては散々なものだった。外れの連続なのに何度も何度も挑戦し、遂には身動きが取れなくなったところで場外に退場になった。ここで楓の脳裏に焼き上がってきたのは怒りでも、悔しさでも、悲しさでもなく恐怖だった。未だにルールが把握できていない。このままでは・・・
「怖い・・・」
ふと、隣にいる女性が泣きだした。声にならない嗚咽を漏らしてすすりま気をしている。涙を流すことすら忘れるぐらい、秀也は畏怖に陥っていた。そんな中で、また降り立った三人目の挑戦者が、げえむを始めた。しきりに頭を抱えて何かを考えている。
「表にするべきか、裏をかいて裏にするべきか。いや、裏の裏をかいて表に・・・」
何言ってんだあの人?考える内容が表が出るか裏が出るかの法則性なら分かる。だが、何も分かっていない状況で直感で答えるのに裏をかくも何もないだろう。
「よし決めた、裏の裏をかいて表だ!」
高らかにそう叫んだはいいが、裏の裏をかくって要するに表に返っただけじゃないのか?恐怖を一時捨て、と言うよりも恐怖を上回るほど彼が心配になってきた。他の人みたいにスパッと決めろよ。分からないならさあ。上空から、コインが落ちてくる。もう今の段階で彼が叫び声を上げるのが予測できる。冷や汗が額に浮かぶ。だが・・・
「当ったり〜」
上空から、おどけた声であいつが声を出す。いや、それよりも内容だ。当たりって・・・
「表が・・・出てる」
横にいる女の人がポツリと呟く。そのコインを秀也も観察する。それは確かに表を向いていた。そう、初めて当たりが出たのだ。数え切れぬほど外れの連なる中初めて当たりが姿を現した。ここぞとばかりにサンプルを手に入れた楓は考察、解析を開始する。彼と他の人との一番の違いは、考えた時間だ。すっきり一発で他の人が決めたのに対し、あの男性はグジグジグジグジと無駄に時間をかけてぶつぶつと裏をかく裏をかくと無駄に連呼して考えていた。長く深く考えた方がいいというのか?
「じゃあ今度は、裏の裏の裏の裏の・・・・をかいて、裏だ!」
また、味を示したのか裏をかくという言葉を繰り返す。さっき当たったなら今度もきっと当たるはず・・・そう思っていたのも外れていた。表が今度は出たのだ。つまりは外れ。骨が一つ粉砕される。下の人が小さいうめき声を上げてその場に崩れ落ちた。
「今のは肋骨だから他の人たちと比べたらマシだよ〜」
それでも骨が砕けてるじゃないか、そう反論したくなる。そうして、楓はようやく気付いた。たった一回だけ成功した謎を。
「おい、天の声」
「何だい?楓君」
「今から、順番を変えてそこに俺を行かせろ」
続きます
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コイントスのルール次回解明の予定でございます
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第十二話更新 ( No.14 )
- 日時: 2011/08/31 20:42
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: lxH2OECm)
第十三話
「今からそこに俺を行かせろ?」
「えっ?なんで?どうしてかな?」
どこまでもふざけやがって・・・目を細く鋭くし、歯ぎしりをする。こっちの苛立ちに気付いたのか、少々バツを悪くしたのか普通に話しかけてきた。
「で、どういう理由があんの?」
ここで一つ気になることがある。ルールが分かった、だから変えろ。そして「はいそーですか」と返すほどこいつは出来た性格なのだろうか?正直な感想を述べるとそんな訳が無いと思う。でも、上手い言い訳が見当たらない。ダメ元で言ってみるしか無いようだが・・・
「ま、別にいいんだけどね。でも条件がある」
葛藤の中、以外にも了解の回答がくる。威嚇するように細めていた目は驚きで一気に見開いた。
「君の順番は本来最後なんだから、あとの二人にはもうコイントスに参加する権利がなくなるけどそれでもいいかい?」
小さく楓は舌打ちを鳴らした。その場合、俺一人がいいと答える訳にはいかなくなる。そもそも、このみにげえむは本来のげえむである鬼ごっこのクリアに近付くために必要不可欠と言ってもいいかもしれない。隣にいるこの女性がどういう反応を取るか・・・
「・・・生きて帰ってくる自信はある?」
唐突に、横の人はそう訊いてきた。あまりに予想外の、質問という返答だったので何と返していいか分からず、硬直してしまった。それを見て心配になったのか、かぁの序はもう一度訊いてきた。
「死なない自信はあるの?」
不安そうではなく、念を押すように強い口調でそう言ってきた。すぐに分かった。この人は人が目の前で苦しんでいる姿なんて見たくないのだと。
「ええ、あります」
力強く秀也はそう答え、頷く。瞳には決意が満ちている。それをしっかりと確認したその人はにっこりと笑って優しくこう答えた。
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
下の人の返答は、聞くまでもなく明らかだった。へたれなのか知らないがもうすでに骨を一つ粉砕されて死にそうな顔をしている。全く、格闘選手を見習ってほしい。あの人たちはもっと凄い怪我でも闘い続けるというのに。すうっと、闇に包まれてないのに浮遊感が身体を取り巻く。いつものような気味の悪さは一切無く、いつの間にか下に降り立っていた。
「じゃあ、楓君はルールが分かったと言ったぐらいだから全部紅コインでいいかな?」
「いいぜ、一つたりとも外す気は無い」
そうして、一番最初の表か裏かの選択が迫ってくる。どちらを選ぶかと言われたら、五回連続で表を選ぶ。それがさっきの結果と合わせると、最良の答えだと秀也は思っている。
「じゃあ・・・・・・」
この後の楓の言うことを聞いてこの先の安否を問いただした彼女は、開いた口が塞がらなくなる。
「裏の裏の裏をかいて表だ」
これは先ほど、秀也が思いっきりバカにしていたことである。おそらく、声にも出ていたであろう。それを聞いていたせいでますます彼女は不信に思っていた。なぜ今さらそんな物を持ち出すのか・・・と。上空から真紅のコインが落ちてくる。くるくると回転して、地面へと向かい真っ直ぐに、落下してくる。地面にたどり着いた硬貨は、高らかに音を立てて跳ね上がった。秀也にはその音は勝利の福音のように聞こえた。
「やっぱりそうだ」
出た目は表。秀也の予想通りだ。どうなっているか分かっていない上の二人に説明を入れる。
「このコイントスで出る目は、挑戦者がどちらかを指定した瞬間にもう決まります。全くの運任せなんて不可能です。そして、大勢の方々は表か裏か、それだけしか言いません。そして、さっきの裏の裏の・・・という言葉を使った時、たった一回だけ当たりが出ました。その理由がルールと繋がっているんです。コイントスで出る目は・・・」
—————その人が選択の際に最も多く口ずさんだ選択肢の反対側
口笛と、拍手をする音が聞こえてくる。きっとあいつの仕業だろう。と、いうことはこれは正解のようだ。
「普通の人は表か裏か、そのたった一回しか口にしません。たとえば、表と言えば、表は一回言ってしまったのに対し、裏は一回も言っていない。つまり、一番多く言っているのは表ということになり、その反対の裏が出てしまうということです」
ここで楓は説明を一旦切った。小さく、フフッとあの天の声が笑ったからだ。どういうことかと耳を傾ける。
「もう二回目の選択は始まっている。今、君は表と裏、どっちを多く言ったか覚えているかい?」
「関係無いし、聞いとけよ」
軽く息を吐き出し、一気に深呼吸で空気を肺に充足させる。そして・・・
「裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の・・・」
まだまだ、息の続く限り続けていく。そうして、限界に達したその瞬間、
「・・・裏をかいて表だ!」
そう、数え切れぬほど裏と繰り返したら裏の方が多くなるに決まっている。あちゃ〜と、残念そうな声が聞こえる。頭を抱えているのが想像できる。
みにげえむ:コイントス、CLEAR
続きます
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さあ、次回から鬼ごっこ復帰だ!
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第十三話更新 ( No.15 )
- 日時: 2011/08/31 21:43
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: XV0l11ek)
狒牙サソが13話投稿する前に、コイントスのルールどうにか解明しようかと頑張ってました(´‐ω‐`)けど結局分からずじまいで13話見てしまった………
そういうルールだったのか!
「もう二回目の選択は始まっている。今、君は表と裏、どっちを多く言ったか覚えているかい?」てとこが好きです。思わずコメってしまいました。すいません。
更新頑張ってくださいー。
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第十三話更新 ( No.16 )
- 日時: 2011/08/31 22:48
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: lxH2OECm)
ryukaさんへ、来て下さったのですか、ありがとうございます
基本的にあの天の声の人は軽薄な性格に仕立てたいと思ってますね
結構痛いところを突く達人ですけど
正直あのヒントで予測できる秀也は天才越えてます
俺の場合ずっと表って言いまくって終わりですから
次回から鬼ごっこなんですけどね、あと十時間は余ってるっていう・・・
ちょっとしたピンチ・・・・・
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