複雑・ファジー小説

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花と愛と毒薬と {episode}
日時: 2015/01/28 23:50
名前: 朝倉疾風 (ID: CA3ig4y.)

 1年弱の長い執筆がようやく終わりました。
 執筆中、朝倉疾風から夜多岬に名前を変更しました。これからもし、また新しく書くときは、この名前ですので、お見かけした際はお声をかけていただけると嬉しいです。

 小説というにはあまりにも拙く、私の私的感情を爆発させるため書いているようなものですが(所謂ストレス発散)……。
 読んでいただき、ありがとうございます。
 暇な時間があれば、また、ふらっと現れます。
 どうぞその時は、「ああ、またこの人書くのか……」と、呆れながらも読んでいただけると幸いです。



(本編)
執筆開始 2014年 2月5日
執筆終了 2015年 1月25日





 ○現在、完結後の「彼女たちの物語」を書いております。本当は書くつもりはなかったのですが(ただいま実習中)、暇なときにちょこちょこやっていくつもりです。懲りずに(笑)
 ○あと、Twitterをまたまた始めました(既に4回消してる)。IDは@moto_asakuraです。ゆるゆる始めます。いろいろと。



(彼女たちの物語)
執筆開始 2015年 1月28日





    夜多 岬 (元 朝倉疾風)




Re: 花と愛と毒薬と ( No.3 )
日時: 2014/02/17 15:45
名前: 朝倉疾風 (ID: CA3ig4y.)



              ※



 散歩から部屋に帰ってすることは、毎日同じだ。
 パソコンを起動させる。次にサイトを起ち上げて、パスワードを入力、ログインする。そしてそこに書き込まれたコメントをじっくり読む。
 短い文章や簡潔な内容のもあれば、ズラズラと書かれてある重たい内容のコメントもある。それらすべてに目を通す。
 これは、悲鳴だ。
 ずっとあげられることのなかった、彼らの悲鳴。
 ここに書き連ねられているコメントの中に、くだらない内容のものなんてひとつもない。どんな些細なことであっても、彼らにとっては苦痛なのだ。
 だけどこの悲鳴が実際に聞き取れるわけではない。
 こうして文字にしないと表されない。

『М、あなたに会いたい』

 マウスを動かす手が止まった。あるコメント欄に目がいく。
 女子高校生を名乗る匿名の書き込みだった。

『あなたと話をしていると、ものすごく楽しい。こんな気持ちになっちゃいけないんだろうけど、好きになったみたいです』

 たかだかネット越しの出会いを薄っぺらいとは思っていない。こちら側としてはとにかく、少なくともあちら側にとっては重要な出会いになっているかもしれないし。そう信じたい。
 慣れた手つきでタイピングする。軽い指の動き。でも気持ちまで軽さを求めてはいけない。なんにでも軽い気持ちで片足を突っ込んだら後戻りができないと言うから。
 しばらくして、返事が返ってきた。
 それを読んでほくそ笑む。それほど分かりやすい文面だった。


『嬉しい。なら、明日の夕方に飛び降ります。待っていてください』





                ※     





 一月二十日。天気は朝から雨。
 徒歩で登下校しているカオリに合わせるために、ぼくも家から歩きで学校に向かった。
 親からはどうして自転車を使わないのかと聞かれたけれど、適当にはぐらかしておいた。カオリへの執着がバレて姑魂に火が点いちゃ危ないから。

「こんなどんよりした天気だと、髪の毛が湿ってくるから嫌なんだよなぁ。髪だけじゃなくて、部屋干しの量も増えるじゃん。すっげえ嫌なんだよね」

 傘の骨が折れていたからずぶ濡れで来たとは言わなかった。どうせ見透かされているだろうし。
 ブレザーが濡れて色が変色し、重くなっている。教室で効いている暖房で乾くだろうと思ったけれど、すでに五時間目に突入している今現在、ブレザーが乾く様子はない。
 後ろの席でカオリは遅い昼食を摂っていた。フルーツ牛乳のみという彼女の偏った食生活。昔は給食も人並みに食べていたはずなんだけどな。
 視界がカオリの全身を映す。
 造形が整っているせいか、飲食している姿でさえ額縁で飾られている絵のように見える。不思議な感覚にぼくは目眩がしそうだった。なんつーか、本当に綺麗だな。造り物みたいだ。
 しばらくぼうっと見惚れていたら、カオリが首を傾けた。

「にゃんでもにゃいよー」

 にっこり笑って警戒心を解くように促してみる。それは失敗に終わったようだ。
 ちなみに五時間目の体育は絶賛サボり中だ。クラスの連中はいそいそと着替えてボールを相手の顔面に叩きつけるバレーボールという競技をしに行った。ぼくにとって球技は苦痛でしかない。べつに運動ができるできないってことを言っているんじゃなくて、チームプレイがダメだ。意思疎通が計れない。心理系のクイズは得意なくせに、どうしてか協調性や仲間意識というものが足りないらしい。
 それはぼくだけでなく、カオリも同じみたいだ。そこに仲間意識を感じるあたり、人間は矛盾で出来ているんだなぁとしみじみ思う。

「いつもそれ飲んでるけど、好きなの?」
「これが購買で一番安いの」

 昼休み前に教室にいないと思っていたら、購買に通っていたのか。

「ぼくが弁当作ってこようか」
「え……いい。いらない」
「なんでさ」
「唾液とか入れそう」

 カオリがぼくをどんな人間だと思っているのか詰問したい衝動に駆られた。最悪な、人間として底辺にあるぼくのイメージを改ざんしたい。

「カオリと一緒に死にたいとは思っているけど、唾液はいれないよ」

 教室に二人きりだけど、そこの部分は小声で話した。
 自殺計画が誰かに知られたら、本人の意思関係なく阻止されるにきまっている。死ぬという行為には勇気がいる。せっかく勇気を出して死のうとしているのに、それを諦めろと言うのはあまりに酷だ。終わらせようとしていた人生を引き継がなくてはいけない。ズルズルダラダラ。

「真矢の死にたいって気持ちが、わたしには全然わからない」

 パートナー候補のカオリは残念ながらあまり乗り気ではないらしい。そこは後々理解してもらうとして。

「わからなくていいんだよ。きみがぼくの気持ちを知ってしまったら、たぶんドン引きだ」
「ごめんね。もうしてるから」

 ずこここここーーーー。
 ずこここここーーーー。
 ずここ…………。
 飲み終わったのか、いつもと同じ方法で紙パックをゴミ箱に捨てる。見れば見るほど神業だ。どうすりゃ入るんだ。ぼくも部屋で何度か試しているが、10回中7回は外れる。練習して何回か続けて入るといった感じだ。
 背中に目がついているのかも。

「理解できないよ。真矢がどうしてわたしといるのか分からない。わたしは…………、…………っ」

 口元が小刻みに震えたのを見逃さなかった。
 彼女の抱える闇がこれ以上浸透しないように、ぼくは軽く首を横に振る。それ以上は何も言うなと意味で。
 しばらく沈黙が続き、この重たい空気をどうしたものかと考えていると、教室の扉が開く音がした。その方へ向くと、一人の女生徒が怪訝そうにぼくらを見ている。

「塚原と益田じゃん」

Re: 花と愛と毒薬と ( No.4 )
日時: 2014/02/14 16:46
名前: 朝倉疾風 (ID: CA3ig4y.)




 教室に入ってきたのは、学級委員長の粟島萌希だった。
 なにを食べればそんなになるんだと突っ込みたくなるほど、髪と眉の色素が薄く、脱色した明るい金髪に近い。中学校が同じだったので、今となっては見慣れてしまったけれど、最初はそれなりに印象が強烈だった。「粟島萌希です。これは自毛なんで、あまりからかわないでください。ハーフとかじゃなくって、国産品なんで!」と自己紹介で毎度のように言っている。出席番号順から行われる新学期はじめの自己紹介は憂鬱なのだと毎回嘆いていた。
 与える印象が印象だからか、せめて真面目に生きようと努力しているらしく、学年では優等生で通っている。
 着ている体操服の前ファスナーもきっちりと首元まで閉めている。クラスで特定のグループを作らない地味っ子でさえ、ここまできっちりしている子はいない。
 その粟島から名前を呼ばれたけれど、滅多に呼ばれない苗字の方だったので、自分のことだとわかるのに少し時間がかかった。
 なかなか反応しないぼくに戸惑ったのか、子リスみたいなまんまるな目がぼくをじっと見る。こういう小動物的な顔に弱い。目を逸らしたくなる。けれど相手が自分からぼくに話しかけてくれるというイレギュラーな人物だったので、軽く会釈した。なるべく保てる人間関係は良好にしておきたい。

「バレーしてたのかよ、粟島」

 自分でも驚くほど会話をきりだすのに時間がかかった。
 不自然なぼくの対応を粟島は特に気にしていない様子だった。

「きみらはサボってたのかよ。冬の体育って超寒いんだぞ。しかも今日は雨だからさ。体あったるまでがすっごく寒い」

 粟島の歯がカタカタと音をたてているのがこっちまで聞こえてくる。暖房の熱風が届くところまで移動して、手を擦り合わせながら、粟島の視線がカオリに向く。
 先ほどからだんまりモードのカオリは、途中で登場した粟島に興味がないのか、机の上の一点を注視している。

「まだ終わりのチャイム鳴ってないけど、早めに終わったのか?」
「そうそう。次も移動教室だからさ」

 そんなカオリの態度にも慣れているらしく、声をかけない粟島。ぼくがトイレに行って、今ここで二人だけにしたらなにか人間関係に進展はあるのか。そんなくだらない好奇心が沸いたけれどやめておいた。

「きみらも授業くらい出なよ。特に塚原は勉強も全然やってないんだからさ」
「今のぼくに必要なのは勉強より恋人との時間だと思うんだよね」
「恋人…………。益田でしょう」

 微かにカオリの肩が動いた。たぶん心の中で全力で否定してるんだろうなぁ。
 なんだかカオリにとってのぼくの存在って、本当にそこらの不審者と変わらないんじゃないか。やばい、なんかへこんでくる。

「どうしたの。なんかすごく絶望してる顔だけど。益田じゃなかった?」
「あー……まあ、仮ってことで……」
「ふしだら」

 ケダモノを見るような目で見られてしまった。誰もそんな節操無しなことはしていない。
 なるべく誤解のないように、ぼくは再び嘘くさい笑顔を取り繕った。

「ちょい待ち。ぼくはなにもしてないよ?」
「きみ、ヘタレだもんね」

 反論できない。
 確かにぼくは自分で死ぬのが怖くて、カオリを道連れにしようするほどヘタレだ。こうもキッパリ言われてしまうと立つ瀬がない。ああ、だんだん死にたくなってきた。なんで今日は雨なんだ。ぼくの心も頭もどんよりしてくる。

「そろそろ着替えてこようかな。もうすぐでチャイム鳴るし」

 黒板上の時計は長身が5をそろそろ指そうとしていた。
 更衣室はクーラーが設置されていないから、粟島はわざわざ暖房の効いている教室まで来たらしい。……また更衣室に戻るんだから、二度手間じゃないか。
 忙しく粟島が教室から出て行く。
 足音が遠くなっていくと、カオリが小さく「疲れた」と呟いた。
 14歳までのカオリなら、必死で相手と会話を繋ごうと努力もしただろうけど。どうやら今は無理らしい。

「人と話すのは苦手?」
「カウンセラーみたいな顔、やめてほしい」

 チリリ。
 体の内部で痛みが走った。微細に左目のすぐ下が震える。
 敵わないなぁ、この子には。

「ぼくはカオリと対等にしているつもりだよ。治療する側、される側とかじゃなくて。ぼくはどちらかと言えば……後者である自覚もあるし」
「それはわたしに対しての嫌味?それとも、」

 おねえちゃんへの?
 きっとカオリはこう続けるつもりだったんだろう。だけど彼女の心身的な事情でそのあとの言葉は発せられなかった。
 それはぼくにとっても好都合だ。
 今カオリにそんなことを言われたとしたら、ぼくは胃の中身を全部ぶちまける自信がある。そんな醜態を今さらカオリに見られたところでどうも思わないけど、後片付けが面倒だから。

「ぼくはカオリが大好きってことだよ」

 嘘じゃないよーと。
 言葉にするのは容易い。声帯を震わせて音にしてしまえば、心も軽くなる気がする。
 でもカオリにとっては、ぼくを信じることは難しいことだろう。
 今も信じていない。ぼくの気持ちを受け入れるどころか、カオリは疑ってかかっている。まともに聞こうとしていない。
 興味がないのか、返事が面倒くさいのか、

「ああ、そう」

雨音で消えそうな声で、そう言った。



Re: 花と愛と毒薬と ( No.5 )
日時: 2014/02/14 18:15
名前: 奏 (ID: GX8mvGbi)

はじめまして。

題名に惹かれ、読んでみると、とても面白かったので

コメントされていただきました。


人物描写がとても上手だと素直に感じました。


まるでプロの様だと思いました。


意味不明でごめんなさい。


これからも応援しています。


頑張ってください。

Re: 花と愛と毒薬と ( No.6 )
日時: 2014/02/14 22:21
名前: ハル ◆oEryf/uxzI (ID: c9BCqrK0)

初めまして。
ハルと、申すものです。

「あなたを失う理由」の方ですか?
同じ名前だったと思うのですが…

主人公のヒーローな感じと
怖いけど、すごく読みたくなる感じ。
すごく好きでした。
最後も、海へと消える感じがとても印象的でした。

この作品も、とても好きです。
初めの方から、惹きこまれるような感じ。
怖いけども、何度も何度も読み返したくなる文章。

ああ。わたしもこういう文章、描けるようになりたい。
続きの更新、楽しみにしてます(*^^*)



長々と、失礼いたしました。

Re: 花と愛と毒薬と ( No.7 )
日時: 2014/02/15 13:19
名前: 朝倉疾風 (ID: CA3ig4y.)




奏さま

 コメントありがとうございます。
 稚拙で読みにくいところも多々あると思いますが、最後まで精一杯書かせていただきます。どうぞよろしくお願いします。



ハルさま

 初めまして、朝倉です。
 「あなたを失う理由」の作者です。1年と半年ほど前の作品になりますが、覚えていてくださって嬉しいです。
 これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。



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