複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

花と愛と毒薬と {episode}
日時: 2015/01/28 23:50
名前: 朝倉疾風 (ID: CA3ig4y.)

 1年弱の長い執筆がようやく終わりました。
 執筆中、朝倉疾風から夜多岬に名前を変更しました。これからもし、また新しく書くときは、この名前ですので、お見かけした際はお声をかけていただけると嬉しいです。

 小説というにはあまりにも拙く、私の私的感情を爆発させるため書いているようなものですが(所謂ストレス発散)……。
 読んでいただき、ありがとうございます。
 暇な時間があれば、また、ふらっと現れます。
 どうぞその時は、「ああ、またこの人書くのか……」と、呆れながらも読んでいただけると幸いです。



(本編)
執筆開始 2014年 2月5日
執筆終了 2015年 1月25日





 ○現在、完結後の「彼女たちの物語」を書いております。本当は書くつもりはなかったのですが(ただいま実習中)、暇なときにちょこちょこやっていくつもりです。懲りずに(笑)
 ○あと、Twitterをまたまた始めました(既に4回消してる)。IDは@moto_asakuraです。ゆるゆる始めます。いろいろと。



(彼女たちの物語)
執筆開始 2015年 1月28日





    夜多 岬 (元 朝倉疾風)




Re: 花と愛と毒薬と ( No.94 )
日時: 2014/12/13 22:50
名前: 夜多 岬 (ID: CA3ig4y.)

 詩朱との約束の日曜日が迫ってきているけど、ぼくの睡魔の限界も迫ってきていた。最近、恐ろしいほど寝ていない。夜は目を閉じているだけで、しっかり意識がある。たまに寝ているカオリの顔を見たり、その頬を撫でてみたり。時間を潰そうとはしているが、その流れは遅い。
 鏡に隈をつくった顔が映る。ぼんやり眺めて、隈ができてもそれなりに整っている顔立ちだなと思った。母親似だからかもしれない。
 ふらつく足で台所に行き、牛乳をかけて食べるやつ(名前を忘れた)を引っ張り出す。二日……いや三日か。学校にも行っていたはずだけど、その間の記憶が全くない。寝ていないのならその時間は目が覚めているはずだ。だけどその間自分がなにをしているのかさっぱりだ。そうこうしているうちに土曜日になっていた。本当なら検定があるはずだけど、開始時間も過ぎてしまっている。諦めてゆっくりと朝ごはんを食べた。
 皿洗いしているときにカオリが起床してきた。
 パジャマのサイズが大きくて裾を踏んでいる。長い髪はボサボサで右手には枕を持っていた。目をこすりながら欠伸をして、とろんとした目でぼくを見る。ぼくより寝ているはずだけどな。

「おはよう」「おーう」

 短く挨拶を交わす。頭を掻きながら数日ぶりに我が家のテレビを点ける。我が家と言ってもここはカオリのアパートで、ぼくは居候させてもらっている身だけど。新聞も取っていないからここ数日の世間の様子がさっぱりだ。この世界に存在しているのは当然ながら、ぼくとカオリだけじゃない。カオリさえいればぼくの世界は自動的に回ってくれるけど、そういうふうになっちゃったのは、何人もの人の死が礎になっているからだ。ぼくがいてカオリもいる。この二人が今こうして生活できているのは、誰かが犠牲になったから。
 そして、もしかしたら、今日も誰かがぼくらのために犠牲になっているかもしれないから。

「他人の不幸無しでは幸せになれないんだよねえ」
「なにそれ」

 ソファに座っていたカオリがこちらを振り向く。

「ううん。べつに」

 笑みを浮かべて軽く流した。カオリが知る必要なんてない。ただでさえ今も自分を傷つけている彼女に、たまには後ろを振り返って見ろ、なんて言えない。ただでさえぼくらの歩んできた道には、死体がゴロゴロ転がっているというのに。
 テレビは芸能人の誰と誰ができちゃった結婚していたとか、大学生数人が大麻を所持していたとか、相変わらずの出来事しか報道していなかった。




 朝ごはんを食べた後、いつの間にか眠っていたらしい。時計を見るとおやつの時間はとっくの昔に終わっていた。今日は何曜日だっけと頭を働かせる。そうだ、土曜日だ。明日が日曜日で、詩朱との約束がある日だ。
 目は覚めたけど起き上る気にはなれず、ベッドの上でゴロゴロしてみる。カオリの残り香がした。そういえばカオリはどうしているだろう。ちゃんと昼は食べただろうか。南野さんがご飯を作りに来ていたときは、おかずのストックがあったから、三食なんとかなっていたけど、来なくなったからなぁ。…………来られても嫌だけど。久しぶりに体重計に乗ったとき、半年前より5キロも痩せていたと言っていた。体重を教えろと言っても、黙秘権を使われたため、未だにカオリの重さがわからない。でも確実にそこらの細見の女子よりは軽いと思う。腕も細いし。餓死されては元も子もない。
 慌てて寝室を出てカオリの姿を探す。
 カオリが餓死するかもしれないという焦りより、起きたときに彼女が傍にいないから、不安になっているんだ。

「カオリ、カオリ、カオリ」
「ど、どうしたのよ」

 朝と同じようにソファに座っていたカオリが顔を上げる。パジャマはまだ着たままだ。髪は梳かしたのか、綺麗に整っていた。クーラーが効いているため、リビングはひんやりとしている。
 思わずその細い身体を抱きしめた。力を入れると折れてしまいそうだ。

「ちょっと、どいてよ。面白くないドラマ見てるんだから」
「面白くないなら、いいじゃん」
「この芸能人、なんか有名な人とできちゃった婚したらしいの。誰だっけ、顔はわかるけど名前が思い出せないな」
「そんなのどうだっていいよ」

 明らかに不機嫌な顔をされた。けど呆れたようにふっと笑って、カオリがぼくの頬を撫でる。

「確かに、わたしたちにとっては無関係だね」
「そんな他人が妊娠したニュースなんてどうでもいい。カオリがぼくの子どもを妊娠したっていうなら、話は別だけどさ」
「そんな明るい未来を想像してるの?真矢らしくない。子どもがもしできたら、真矢はその子を育てるために生き続けなきゃいけないのに」

 言われて気づく。ぼくは、カオリと家庭をつくる未来を望んでいるのか。あんなに死にたいと願っていたはずなのに。目を背けていた自分の内面の変化が怖い。

「ああ、そういえばそうだったね。子どもなんかいらないよ。ぼくはカオリと死ねればそれでいいんだ」
「わたしは嫌だけどね」
「ぼくは有言実行するタイプだからね。カオリが嫌がっても引きずり回して、ぼくのところにずっと置いておく」

 けっこう本気で言っているのに、カオリは涼しい顔で「無理よ」と呟いた。カオリが拒否したところで、ぼくの決定事項は変わらないんだけど。彼女は未だにぼくと一緒に逝く覚悟はないらしい。まだ時間はあるから、ゆっくりその気になってくれればいいんだけど。
 愛おしくその髪を撫でた。くすぐったそうに身を捩るカオリが、軽くぼくを睨む。

「なあ、お腹すいてない?」
「んー特に」
「だめ。なにか食べに行くよ。カオリはもっと食べて太らなきゃやばいって。なんか折れそうだし」
「真矢もクマすごいよ」
「ぼくのことはいいから、着替えておいで」

 優しく促すと、子どものように頷く。その仕草に思わず口元が緩んだ。脱衣所へと消えるカオリの姿を目で追う。ふいにその方向へ手を伸ばしてみた。行為自体に意味はない。ただ、カオリが視界から消えると胸騒ぎがしたから。なんとなく、その嫌な予感が当たるような気がしたから。
 杞憂であることを願いたいけど。


Re: 花と愛と毒薬と ( No.95 )
日時: 2014/12/25 23:30
名前: 夜多 岬 (ID: CA3ig4y.)

 近所のファミレスで簡単に食事をすませたあとも、30度を超える店外に行く気もなく、ドリンクバーで時間を潰した。カオリはメロンソーダが気に入った様子で、シュワシュワと泡立つ水面を眺めている。
 やがてそれに飽きたのか、氷をひとつテーブルに置いて、それが溶けるまでじっと見つめ始めた。特に話題もなかったので、ぼくもそれを見つめることにする。じわじわと、ゆっくりと、小さな水たまりが生まれる。カオリが指先でその水たまりをつつき、「つめてー」と呟いた。
 ポケットの中で携帯が震える。無視していても、何度も、何度も。
 人と一緒にいるときに携帯を見るのはぼくのポリシーに反する行為なんだけど。目の前に座るカオリを気にしつつ、着信履歴を見て、瞬時に理解する。このゆったりと流れる日常が、終わりを迎えようとしているんだってことを。
 電話をとる。
 ひどく電波の悪い向こうに、そいつはいた。
 興奮状態でまくしたてる相手の声を聴きながら、頭の中を整理する。ぼくたちにとって良い方に向かっているのか、あるいは悪い方へ向っているのか。どちらにせよ、今日で全部が終わるかもしれないと思うと、緊張で心拍数が上がってくる。
 だいじょうぶ。
 ぼくたちなら、だいじょうぶ。
 電話を切る。
 まだ水たまりを弄っているカオリの指先を軽く握った。

「そろそろ出よう」

 ぼくたちが幸せに死ぬために、今を生きるうえで邪魔なやつらを皆殺しにしよう。



Re: 花と愛と毒薬と ( No.96 )
日時: 2015/01/01 23:51
名前: 夜多 岬 (ID: CA3ig4y.)


 ファミレスから出て、すぐに歩き出そうとしたカオリの手を引っ張った。なにをするんだと怪訝な表情でぼくを見る。「こっちだから」と誘うとおとなしく着いてきた。ふたりでまだ日が高い街を歩く。緊張で手が冷たくなっていることが、カオリに気づかれているかもしれない。

「この用事が済んだら、花が綺麗に咲いている大きい公園に、デートしに行こうか」

 なるべく明るい話題を振ってみた。デート、という言葉にあからさまにカオリが不快そうな顔をする。

「公園にデートって…………少女漫画みたい」
「たまにはいいでしょ。電車で行けるところにあるんだよなぁ。花が綺麗に咲いている中央公園。秋に行けば、コスモス祭ってのがあるらしいし。絶対に綺麗だよ」
「花なんてそこらへんに咲いてるのに。わざわざ行く意味がわからない」
「カオリとデートしたいんだよ」

 大きくため息をつかれた。毎度のことだから、ぼくもそこまで気にしない。
 花を見るんだ。
 たくさんの花を、カオリと一緒に。

「真矢って恥ずかしいやつだよね」
「なにそれ。ぼくはけっこう真面目に言ってるんだけど」
「そういうところが恥ずかしいんだってば。ていうか、用事ってなによ。今からどこへ行くの?帰らないの?」
「野暮用だよ。カオリも付き合って」

 歩いていくうちに、すれ違う人の数も減ってきた。ここまで来ると、カオリもぼくがどこへ向かっているのか気づいたようで、手を強く握ってくる。訪れるのは半年ぶりだった。南野さんが詩朱をここへ浚ってきたとき以来だから────半年ぶりくらいか。
 前にカオリが住んでいた屋敷を目の前にして、ぼくは息をのむ。ここにいるはずだ。『待ってる』とわざわざ電話で言ってきたんだから。牽制のつもりか。ぼくが怯むはずないのに。
 屋敷の周りをぐるりと一周して、震える指先でインターホンを押した。ピンポーンと、間抜けな音が響く。

「こんなところに何の用があるの」
 
 あれ、怒ったかな。まあ不快に思われても仕方がないか。ぼくの説明不足のせいでもある。話すつもりもないけど。
 質問には答えずに、適当にはぐらかす。
 どれだけ待っても応答がないから、お邪魔することにした。手入れされていない庭は昔の面影もなくて、歩くたびに雑草が絡みついてくる。重い扉を開けて、カビの匂いがする屋敷の中へ入る。先客が絶対にいるとわかってはいても、人の気配がまったくないせいか、警戒が解ける。背中につうっと汗が流れた。
 二階に行けば遭遇するかもしれない。カオリの手を引いて、階段を上る。
 なにか後ろで物音がした。振り返る。カオリも同じように振り返った。しかし特になにもなかったので、気のせいだと心を静め、前を見る。
 視界に青白い顔がぬうっと出てきた。カオリが小さく悲鳴を上げる。幽霊とか苦手だったっけ。いや、単にびっくりしただけか。急にあらわれたその顔に、ぼくも面食らった。反応ができないほど驚いた。カチンコチンに固まってしまったのだ。ぼくもホラー系が不得意だから。
 とりあえず落ち着いてその顔をまじまじと見つめる。
 中澤千秋が理性を欠いた獣のような目でぼくを見ていた。夏なのに冬に着るような分厚いパーカーを着ていてフードを深く被っている。その白い生地には赤い液体が飛び散って模様のようになっていた。汗をびっしりとかいていて、唇が微細に震えている。
 中澤がここにいるってことは、まあ、そういうことか。少し意外だったな。

「ねえ、わたしが何をしてきたかわかる?」
「ある程度の予想はつくよ。きみが生きているってことは予想外だったけど」
「なにそれ、おっかしい。わたしが死ぬと思ってたんだね、塚原くんはァ」

 
 南野さんの居場所を中澤に教えたのはぼくだ。図書館で中澤を挑発するように、南野さんが穂乃花を囲っていた人物だと、彼女の殺意が暴れまわることを期待して教えた。益田家のでっかい屋敷なら少し調べればすぐに出てくる。
 ぎゃくに南野さんには電話で、穂乃花を殺した人間がそちらに行くと教えてあった。そうすれば南野さんと中澤の相討ちになって、上手く行けば両方が死んでくれるかなと思ったから。でも人生は山もあれば谷もある。そう上手い方向には転ばなかったらしい。
 現に、中澤千秋はここにいるんだから。
 つまり、だ。

「南野秀一を殺したってことか」

 核心に迫ると、中澤は優しく微笑んで頷いた。どんなに柔らかい表情をしていても、どこか歪で違和感がある。感情のない機械が人間の皮を被っているみたいで、薄気味悪い。

Re: 花と愛と毒薬と ( No.97 )
日時: 2015/01/02 20:53
名前: 夜多 岬 (ID: CA3ig4y.)


 まるで陸に上がった魚のようだったと、中澤は笑いながら話した。

「苦しそうに泡を吐きながらジタバタしててさ。少し傷を抉っただけで、赤ちゃんみたいにビービー泣くの。うるさいから、早めに殺しちゃった。ピューッて血が噴き出てたから、それをじっと見てたの。でも、南野秀一はわたしが来るのをわかっていたみたいだったなぁ。けっこう暴れられた」

 生々しい話だ。気持ち悪い。想像しないように視界をギョロギョロ動かすけど、目に映る景色は、過去の血なまぐささを思い出させた。

「嘘だよ」

 静寂を打ち消した彼女は、ぼくの隣で小刻みに震えていた。乾いた眼球を目いっぱい広げて、ひび割れた唇の端は不自然に吊り上がっていた。お世辞にも綺麗とは言い難い表情だった。崩れていく。壊れていく。ボロボロに、塵になって、どこにもなくなってしまう。
 カオリの絶望した顔を見て、中澤は恍惚とした表情を浮かべた。こちらは至極醜悪だった。やってやったと言わんばかりに、笑いを堪えている。

「秀一さんがいないなんて、うそ。そんなの信じないから」
「信じなければいいんじゃないの。これ見てもそんなこと言えるのなら」

 中澤がこちらに手提げバッグをひとつ、ポーンと投げる。床に落ちたとき、水音が聞こえた。中身がなんとなく予想がつくので、触れることを躊躇っていたら、カオリが先にバッグを開いた。
 一瞬、彼女の時間が止まり、そして、

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!??ひ、ひ、ひあっ、ああああああああ、おえっ、え、ごぼっ」

 大量の胃液を吐き出す。痙攣しているのか、苦しそうに息をした。
 ひーふーふっ、ひー。
 不気味な呼吸音。
 後ろからぼくもバッグの中を覗いてみる。赤黒い液体がたぷたぷと入っていて、その中に、人間の首が入っていた。この位置からでは人の顔だということはわかるけど、それが南野秀一の首かどうかは判断しづらい。けど、まじまじと見るのも気持ち悪いから、カオリの後ろ姿だけを眺めた。
 恐れていた死が目の前にある。
 それだけでも狂いそうになるはずなのに、カオリは喚きながらも、南野さんの首をしっかりと凝視していた

「そいつは、益田穂乃花を庇ってたんでしょう」

 まるで幼子に言い聞かせているようだった。

「何人も何人も殺しておいて……自分たちだけ逃げるなんて許さない。益田穂乃花も、南野秀一も、お前たちも殺してあげる。全部ぜーんぶ、わたしが終わらせるの。あとは益田さんと塚原くんだけだから。なんでぼくたちを殺すんだってバカなことは聞かないでね。紅音が死んだのも、お前たちのせいだよ。わたしが────化け物になったのも、お前たちのせいだ」

 それを聞いて、ピタリと。カオリの嗚咽がおさまった。
 再び静寂が訪れて、そのたびに、ぼくの心はざわつく。耳にこびりつく雨音が大きくなるから。
 ゆっくりと顔を上げたカオリが、どういう目で中澤を見ていたのかはわからない。今前に出てもカオリはぼくのことなんて頭にないだろうし。

「お姉ちゃんも、殺したの」

 中澤が驚いた顔でぼくを見た。まだ言っていなかったのかという風に。
 カオリに穂乃花の死を言う必要はないと思った。カオリ以外がどうなってもぼくたちにとって無関係だ。わざわざ教えることもない、と。

「塚原くんはとっくに知ってたはずだけど。教えてもらえなかったの?」

 カオリがこちらを振り返る。嘘でしょうと、声にならない声で問われた。
 無言で頷く。首を触って、赤くなった手で肩に掴みかかられた。嫌悪感で鳥肌がたつ。けど、カオリはお構いなしで、ぼくに唾を吐いた。こんな激昂しているカオリを見るのは初めてで、上手く対応できない。ぼくが無抵抗なことをいいことに、カオリはぐいっと顔を近づける。

「ねえ、真矢。穂乃花が殺されたんだよ。なんでそんなに、なんでもないような顔していられるのよ。おかしいよ、おかしい、真矢は狂ってる!誰よりも真矢が一番狂ってる!」
「狂ってないよ」
「狂ってるよ!絶対におかしい……なんなの、あんたたちなんなの。人を殺したのにヘラヘラしてるし、大事な人を殺されても平然としてるし……おかしいよ」
「狂ってないって。ちゃんとぼくはここにいるよ」
「そんなこと言ってるんじゃない」

 会話が噛み合わないことに苛立ったのか、語尾が強くなる。

「あんたが大切なのは、わたしじゃないでしょう」
「ぼくが大切なのはカオリだ。カオリなんだよ。穂乃花じゃない!」
「それは違うよ。あんたもわたしもお互いが必要だったから一緒にいただけ。もっと簡単に言えば寂しかっただけなんだよ」

 寂しかった?ぼくが?どうして。

「自分が狂ってるってことに気づいてないんだよ」
「待って。雨の音がうるさくて、聞こえない」
「外を見てよ。雨なんて降ってない!」
「え────なんて……」
「だからっ、雨なんて降ってないんだってば」

 ザアアアアア……
 ザアアアアア……

 嘘だろう。こんなに、雨音がうるさいのに。地面に叩き付けられているのに。
 

────マヤ、一緒に死んでくれる?
────わたしも愛されたい。だから、愛してよ。マヤ、わたしを愛して。


 ぼくたちの周りは、いつだって雨だった。

Re: 花と愛と毒薬と ( No.98 )
日時: 2015/01/04 01:12
名前: 空 (ID: LLmHEHg2)

この続きどーなるのー!?!

新年、あけましておめでとう!!
執筆頑張って! 応援してるぜ!!

どーなるんだろー。
南野さん死んじゃうー、かおり激怒するー、まやどーなるっ!?!?


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22