二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- イナズマイレブン〜試練の戦い〜
- 日時: 2014/03/26 11:37
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 9kyB.qC3)
皆様、初めまして…の方がほとんどだと思われるしずくと申すものです。実は某大作RPGの二次もやってますが…
今回、再びイナズマ熱が蘇って来ました。
そこで、二年程前に挫折してしまった〜試練の戦い〜をきちんと完結させようと思い、再びスレッドを立てさせて頂きました!
*注意事項
:二年前の〜試練の戦い〜のリメイク版(当時のオリキャラは削除しています。すみません)
:時代遅れなエイリア学園編の二次創作
:オリキャラあり。男主人公です。
キャラ崩壊、設定捏造の類いがあります。
:荒し、誹謗中傷はお断りです。
長くなりましたが、よろしくお願い致します!
本編
序章
>>1
一章「それが、全ての始まり。」
>>4->>11
二章「全ては予定通りに。」
>>12->>13,>>17->>18,>>23->>27,>>30
三章「その風は嵐? それとも?」
>>31->>35,>>37->>39,>>41->>72
四章「その出会いは幸せか」
>>74->>83
おまけ
夜の出来事(蓮と風介。宗谷岬にて)>>73
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- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.39 )
- 日時: 2014/03/02 22:05
- 名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: 8HM4KmaQ)
病院を出た塔子と蓮は、どこに行くあてもなくとりあえず近くの町内公園に来ていた。
塗装がはげ鉄色が見えているブランコとシーソーがあるくらいの小さな公園。そこにあるやっぱり塗装が落ちて木の色があらわになっている古いベンチに座り
「ところで……いつ北海道に行く?」
次の北海道行きの計画を話し合っていた。
「そうだな〜。北海道行きの飛行機のチケットなら二人分もうとってあるけど、出発は明日なんだよな」
「明日かぁ」
蓮はベンチの背もたれに頭を乗せ、空を見やる。
今日も突き抜けるような青空の中に、小さく音を立てながら飛行機が飛んでいた。
「そういえば瞳子監督に一人で行くなんて言ったけれど、今思うと無茶な発言だった。激しく後悔」
「少しは後先考えて行動した方がいいぞ」
「……だね。昔からよく言われてたよ」
と蓮はそこまで言って、はっとしたような表情になる。
「——あれ? 誰に言われてたんだっけ?」
「なんだよ、記憶喪失か?」
茶化すように塔子に笑われ、蓮は背もたれから背を離し、腕組みをして前かがみになる。
「ん〜実は小さいころのこと、あんまり覚えてないんだ」
「なんかあったのか?」
「小学校3年の頃より前の記憶がところどころぶっとんでんだ。親に言わせると、家の階段から落ちて頭をうったらしい」
「白鳥意外とドジだな。でもぶっとんで困ることとかあるのか?」
しばらく蓮は考え込むポーズをし、首を横に振る。
「ないね。友達のことも、勉強のことも覚えてたし」
「白鳥ひょっとして、そのせいで地理の知識が全部なくなったんじゃないか?」
地理が苦手なことをからかってくる塔子に、憤りを覚えつつ蓮は言葉に力を込める。
「それはない! 仮に忘れているとしたら——」
そう言いかけて不意に脳裏に涼野がよぎった。
会ったこともないのに……すごく懐かしい感じがする不思議な少年——涼野 風介。
「ねえ塔子さん」
蓮は神妙な面持ちで口を開く。
「なんだ?」
「……この前初めて会った子——涼野 風介って言う子に、すごい懐かしい感じを覚えたんだ。こういうのってどう思う?」
「急にどうって言われてもな……」
難しい質問なのだろう。塔子は眉根をよせながら、さき程の蓮のように背もたれによりかかり、空中へと視線を泳がせる。
「”懐かしい”ってことは、白鳥がどっかで会った子なんじゃないか? その頭を強打して忘れた頃かもしれないし、ひょっとしたら前世とか」
「ぜ、前世? 塔子さんってそういうの信じる方?」
蓮が訪ねて、塔子は勢いをつけて起き上がる。
「ああ、信じるよ! だってパパが『人と人が出会うのは生まれてくる前に、互いが望んだからだ。塔子と私も前世では、家族や友達だったのかもしれない』って前に言ってたからな。そいつと蓮はどっかで知り合いだから、懐かしい気がするんじゃないか?」
そう言えば涼野は自分が名乗った時、少しばかり彼は驚いたような表情をしていた。と、いうことはやはり知り合いだったのだろうか。しかし思い出すと涼野は、久しぶりとかそんなことは一言も口にしていない。何度反芻(はんすう)しても、やはり……初対面。そう蓮は結論づける。
「でも向こうは全くの初対面って顔してた」
すると塔子はう〜んと人差し指を唇の下に当て、
「じゃあ『既視感(デジャビュ)』ってやつかな?」
「『既視感(デジャビュ)』?」
「フランス語の言葉で、それまで一度も経験したことがないのに、かつて経験したことがあるように思うってことだって。ん〜つまりだな。白鳥が涼野と初めて会うのに、むかしどっかで出会った気がする。それは”既視感”だけど、あたしはこう思う。白鳥は涼野とつながってるからじゃないか?」
「なにが?」
塔子は手を自分の胸に当て、ポンと軽くたたく。
「”心”、だよ」
「心?」
「心が通じあっているから懐かしくなるんだろ。やっぱり、前世の白鳥のおくさんとか子どもとか……親友なんじゃないか?」
そんなことが塔子の口から出てくることに驚きつつ、蓮は改めて自分は涼野のことをかなり気に行っていることに気づく。
「風介と心が通じ合っている……か。だとしたら、彼とはもっと仲良くなりたいな」
「今度あたしにも会わせてくれよ! どんなやつなんだ?」
え〜とか口ごもりながら、蓮は涼野を回想する。
冷静に見えて……表情はめまぐるしく変化しいたし。微笑んでいた顔はなにより可愛らしかった。
「かなり冷静で、表情が無表情に近いんだ。でもよ〜く見てると少しずつだけど変化していて、面白かった」
「なるほど。ミリ単位で変化するってやつか。SPフィクサーズにもそんなタイプのやつはいるよ」
「へぇ……」
塔子とクールな人間について話を咲かせながら、蓮は何気なしにふっと空を見上げた。そしてわかるはずのない答えを模索する。
(風介……キミはいったい誰なんだ?)
風が吹き、蓮の短い髪をいたずらに揺らしていく。今日も空は青い。
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.40 )
- 日時: 2014/03/02 22:10
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ewri1wGo)
オズロックさん
繰り返しますが、此方は小説を書き、その内容や感想を言い合う場であり雑談の場ではありません。
GOについて話されたいのなら他の方の小説に行かれるといいでしょう。この掲示板だけでも、イナズマイレブンGOの小説はいくつもありますから。
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.41 )
- 日時: 2014/03/03 18:39
- 名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: C6pp1bGb)
それから蓮と塔子は、しばし稲妻町で食べ歩きをしたり、観光したり。雷門イレブンは今頃何をしているのか知らないが、他のメンバーには申し訳ない休日。しかし、そんなことをしていると、日が暮れるのも早く、気がつくと町中の時計は午後6時を告げていた。
時計の下の石づくりに座って雷門名物の人形焼きを頬張っていた蓮と塔子が、
「もう六時?」
同時に声を上げた。蓮は人形焼きを飲み込み、
「今日ってまさか野宿?」
不安げに空を見上げる。すると塔子が心配するな! と胸を張る。
「スミスたちに頼んで、ホテルを予約してもらったんだ。今日は、そこに泊ろうよ」
「ところでさ……塔子さん」
今まで気になって仕方がなかったことを、塔子にズバッと尋ねる。
「ホテルといい、飛行機のチケット代と言い、本当に出してもらっていいのか?」
「大丈夫だよ! スミスたちがいいって言うんだから」
友達の金の分もあたしが出すのは当然だ! と笑顔で塔子は言ってくれるが、実際問題いくら彼女が払ってくれているのかわからないので、ますます蓮の不安と申し訳なさは募る(つのる)一方だ。
しかし塔子が言うなら大丈夫だろうと無理やり自分を納得させ、気分を切り替える意味合いも込めて、
「ところでそのホテルって言うのは、この近く?」
話を切り替える。
「ううん。明日飛行機に乗るから、近くの方がいいと思ってさ、空港まで電車で数駅って場所に取った。そろそろチェックインもできる時間だし、行こうよ!」
「そうだね」
そうして稲妻町から電車を何本も乗り換え、さらにそのホテルの最寄駅から、歩く頃には、すっかり七時を回っていた。空は暗いが、都会のネオンが煌々と光り輝いているので眩しすぎるほど。その下で、
「……これが……ホ……ホテル?」
ホテルを見た蓮が震えた声で言った。
都会によくある全面がガラス張りのビル。光りながら夜空に向かってそびえたつ様子は、東京タワーなんかを連想させる。その造りは一般人の蓮からすればどうにも豪華だ。塔子と蓮が立つ入口は外国風の大理石造りで、上には黒い石に金色の文字でホテルの名が浮かび上がっている。横にはしゃれた西洋風のランプが。さらに出迎えのボーイが立っている。
そして左右に視線を向ければ、リムジンに上品そうな服を着た淑女紳士たち。
「ああ。パパの知り合いが経営しているんだ。だからいつもより安く泊まれるぞ」
がくがくしながら塔子の袖を掴んで進んでいく蓮は、もはや涙ぐんでいる。まるで歯医者に連れて行かれる幼い子供のようだ。そんな情けない姿の蓮とは対照的に、塔子はしごくあっさりしている。
「ほっほほほほ……ほんとうにここにとまるのか!?」
蓮が塔子に耳打ちをする。
「なに言ってんだよ。このホテルはあたしが泊った中じゃ結構安い方だぞ。白鳥ったら大げさだなぁ」
塔子は笑い飛ばして見せる。
それから情けない姿の蓮をロビーのソファに放置しておいて、塔子はフロントへと進む。やはり外と違わず(たがわず)ロビーも豪華であった。
ソファに放置された蓮はシャンデリアを見つめて、目を丸くしてる。
「財前 塔子様に白鳥 蓮様ですね。ご連絡承っております」
「どうも」
フロントのホテルマンと塔子が会話を交わし、チェックインの手続きをする。
それが終わるとボーイが現れ、二人の荷物をすべて真鍮製のキャリアカートに乗せた。エレベーターに乗り泊る階へと到着すると、派手ではないが優雅さを醸す部屋に案内された。ボーイが恭しく(うやうやしく)礼をして退室した後、
「あ〜疲れた」
蓮は靴だけを脱ぎ、ベッドに倒れ込んだ。塔子はもう一つある別の部屋に荷物を置きに行く。やはり中学ともなると、異性を意識するものだ。
改めて蓮は部屋を見渡す。ベッドの横には立派な木製の机。上には白いティーカップとポット。そして窓側に置かれた本革で作られたらしいソファ。イギリスとかからの輸入品か。ベッドの上にはポストカードサイズの抽象画が、額縁に入れられ飾られている。
「白鳥! すぐ夕飯に行くぞ!」
塔子にせかされた蓮は、
「……あ、ああ」
しぶしぶ起き上がる。
そして二人はエレベーターで食堂へ。ボーイに案内されて座る。
高級レストランを思わせる白いテーブルクロスに机、イス。照明はいい塩梅に調節され、中は少し薄暗い。そしてバッグに流れるのは美しいピアノの旋律。
「僕たち、なんか浮いているね」
テーブルの上にある高そうな食器や、倒したら簡単に割れそうなグラスを見ながら蓮が小声で言う。
周りにいるのは下にいた上流階級らしい紳士淑女。彼らから見れば、ジャージ姿の二人はきっと奇妙に見えるに違いない。いや、そうだ。ひそひそ話をする紳士淑女が蓮の黒い瞳に映る。
「そうか? パパとホテルに泊まったら、こんなもんだぞ」
塔子が、すでに運ばれてきたステーキをフォークとナイフで、きれいに切りながら答える。周りの紳士淑女に負けない、美しい切り方だった。
「塔子さんは、テーブルマナーがなってるな」
両親に聞いたことがある知識と塔子のみようみまねで蓮は、下品にならない程度にステーキを切って行く。
「白鳥だって。なかなかだぞ」
「そ、そうかな」
高級レストランで楽しそうに話すジャージ姿の二人は、それなりに浮いていた。
やがて夕食が終わり部屋に戻った二人は、順番でシャワーを浴びる。
「じゃあな白鳥! おやすみ!」
ピンクの髪をぬらしたままの塔子が、隣の部屋に消えて行く。
「おやすみ、塔子さん!」
蓮はそこまでは精一杯の笑顔を作ってあいさつを返したが、塔子の姿が完全に見えなくなると、
「こんな高級ホテルに僕が泊っていいのか……いいのか」
またベッドに倒れ込んで苦しみだした。
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.42 )
- 日時: 2014/03/04 16:16
- 名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: w/AVokpv)
翌日——蓮が眠る部屋では、無機質な電子アラーム音が響いていた。高級羽毛掛け布団から蓮の手がするりとこぼれ落ち、アラームを止めるスイッチをオフに切り替える。続いて蓮は布団から起き上がり、ベッドから出した足だけを床につける。それから少しぼーっとしていた。ジャージのまま眠っていたので、首筋や顔にうっすらと汗が浮かんでいる。エアコンが効いていて、そこそこ涼しいのだがジャージ+厚い羽毛布団はなかなかきついものがある。
「……まだ6時30分」
ベッドわきに腰かけたまま、蓮はデジタル時計の表示を見てぼやいた。いつもなら絶対に起きられない時間。どうしてか旅行先だと、いつもより早起きになる性分なのである。親がいない分、塔子に迷惑をかけられないといった責任感のせいに違いない。
やることが特にないので洗面所へと行き、冷たい水で顔を洗い、鏡を見ながら髪を整える。
「おはよう。早いな」
そこへ塔子が入ってきた。帽子を被っているせいか、髪は特に乱れていない。
「おはよう塔子さん」
あいさつを交わすと、塔子の邪魔にならないよう蓮は右にずれた。
塔子は洗面台に置かれた霧吹きに手を伸ばすと、それを持ちながら髪に吹きかけ始める。水滴が薄暗い明りの元に舞い、いい香りが辺りを包みこむ。それからくしで念入りに髪をとかしていった。
(へぇ……塔子さんはおしゃれだなぁ)
そんな塔子を横目に見ながら、蓮は小さいタオルを水に浸し、汗まみれの首筋や身体を拭いていた。暑いので、ジャージの上は腰に巻きつけてある。
「よし終わった」
やがて朝の手入れが終わったのか、塔子が霧降きやくしを持って部屋に消えて行った。蓮の方は昨晩中に私物は片づけてある。残っているのは元々置かれていた、コップや歯ブラシセットのみ。
「白鳥! 朝飯に行くぞ〜!」
そんな塔子の元気な声がしたので、
「うん!」
蓮もまた元気に声を出して部屋を出た。
朝食の会場は昨晩と同じであるが、バイキング形式なので形状はだいぶ異なっていた。
机の配置などは同じだが、いくつかのテーブルはくっつけられ、料理が並ぶ。少し目を向ければ、ふだんならまずお目にかかれない高級素材……例えばトリュフやフォアグラ、キャビアなどが豪勢に使われた料理が。少し横を見れば北京ダック。だが一般人向けのパンやジュースなどもしっかり置かれていり、蓮は少し安心した。それでも、格調が高そうなボーイやシェフには相変わらず慣れることが出来ない。
朝の日差しが入ってくる食事会場は開放感にあふれ、そのうえさらに鳥のさえずりが上のスピーカーから流れ込んで、朝のさわやかさを演出してくれる。
やはりボーイに案内され席に着いた二人は、各々(おのおの)で好きな料理をプレートに乗せる。蓮はクロワッサンやスクランブルエッグに、サラダを足したバランスのいい食事。飲み物は緑茶。
対する塔子はご飯を取ってきたと思えば、プレートの上には何故かウィンナーやハムなどの西洋風料理。と思ったらわきには焼き鮭や肉じゃが。飲み物はオレンジジュース。和洋混合のよくわからないレパートリーだ。
「いただきます」
二人は両手を合わせてきちんと礼をする。
「あ、おいしい」
クロワッサンをかじった蓮が歓声を上げた。
噛むと風味豊かなバター味が口の中に広がり、噛めば噛むほど濃厚さが増す。
「うまいだろ? ここの料理は天下一品なんだぜ」
目の前に座る塔子がオレンジジュースを飲みながら、自慢気に言った。
「うん。こんなうまい料理食べたことないよ」
そう蓮が感慨深げ(かんがいぶかげ)に漏らすと、塔子はグラスを置いた。
「なあ白鳥。今日の北海道に行くことについてだけど……」
「ん?」
パンをちぎり、バターをぶっていた蓮の動きが止まる。
「せっかく後一日と何時間も休みがあるんだ。今日は北海道観光の日にしないか?」
「え〜……」
本来なら大声を出したいが場所が場所なので、声をひそめながら呆れた声を出す。
「さっさと合流した方がいいと僕は思うよ?」
「昨日出たばっかりなのに、みんなはまだ白恋中学校についているわけないだろ? 先に行って会えなくてもつまらないし……な、いいだろ?」
子供のようにせがむ塔子を相手に、蓮は項垂れる。
「でもお金……」
また似たようなことを遠慮がちに蓮が尋ね、
「費用はあたしもちだから大丈夫だよ! それにもうスミスにそう行くからって頼んじゃった」
「…………」
二の句が継げない。断わる権利がないのだから。
朝食を終えた二人は電車に乗り、空港の最寄り駅で降り、そのまま空港に行った。そこで塔子に渡された航空チケットを見ると、行先が「千歳」。
「まずは旭山動物園に行くぞ!」
「あの……旭山に行くのか」
飛行機に揺られ数時間ほど。千歳空港に降り立った二人は、スミスが迎えによこしたリムジンで一路旭山動物園へ。北海道は東京よりぐっと寒く、ジャージでいても涼しさを感じるくらいだ。
そして半日ほどかけて動物園を見学。
「すごい! ペンギンが近くにいるぞ!」
子供のように塔子が目に超新星を宿してはしゃぐ。トンネルのようなガラスドームの向こうには海の底の岩が綺麗に再現され、ペンギンが悠然と泳いでいた。
「ひゃあ……話には聞いていたがすごいや」
この後、塔子はぬいぐるみやら限定グッズを買い込んでいた。蓮は両親への土産にとクッキーやペンギンのぬいぐるみ、シャーペンなんかを買った。
夜は何故か夜景で有名な函館へ。そこで夕食(やっぱり高級レストラン。蓮はかなり疲れていた)や雷門イレブンへのお土産、自分用のお土産を買ったりしてすごした。そして宿は稚内(わっかない)。疲れが残るまま飛行機に乗り、また来た迎えの車で宗谷岬の近くにとった宿へ。今度は海辺のコテージといった感じで、部屋では波の音がはっきりと聞こえる。
「あたしもう疲れた……おやすみ」
やはり塔子とは別々の部屋。疲れたのか宿に着くなり、塔子は欠伸をもらしながら部屋に入って行った。今日の部屋は木材で作られたベッドやタンスがあるだけのシックな部屋。キャンプで使うランタンが煌々と明かり変わりに輝き、独特の雰囲気を出す。だが、蓮としてはこっちのほうが落ち着く。
「まだ眠くないなぁ」
あれだけはしゃいだのに、蓮は眠気が全然ない。はしゃぎすぎて逆に目がさえてしまったのだ。
「岬でも見てくるか」
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.43 )
- 日時: 2014/03/05 18:14
- 名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: .3t6TJMo)
蓮は与えられた部屋には戻らず、コテージを出た。外に出た途端穏やかな波音が耳を騒がせ、心地よい潮風が髪をなでる。草の感触を踏みしめながら、岬へと向かいそろそろ見えてくるか……というところで。身体を押し戻すような強い潮風が吹いてきた。蓮は目を閉じた。そして目を開けたとき——先客がいるのが見えた。
ゴールの証である、円状の台座に三角定規を乗せたような記念碑に誰かがのっている。月光を鈍く弾き返す銀の髪と紫のフードが、潮風を受けてはためている。彼は三角定規の斜辺に手をあてながら、ただただ暗い海に視線を送っている。その後ろ姿に、蓮は見覚えがあった。
「……風介?」
だっと鞄を揺らしながらかけだすと、台座の正面部分にある階段を上り涼野に近づく。なにか考え事をしているのか、近づいてもこちらに気がつかない。
「お〜い。風介」
蓮が彼のかたをぽんぽんと叩くと、涼野は目を大きく見開いて振り返った。
「……蓮?」
「やあ久しぶり。うわぁ〜!」
涼野に挨拶をしながら何気なしに見やった風景に、蓮は歓声を上げる。
海上の天には、宝石をこぼしたように多くの星が輝き、月と星が打ち寄せる波頭を青白く照らし出し、波の音は静かに闇をさざめかせる。空を映した海は黒く、暗闇を宿すようだった。黒い海の向こうには月の光が海面に映り込み、光の道が伸びているようにも見える。
「どうしてキミがここにいるのだ。雷門もこの稚内に来ているのか?」
「いや。僕は塔子さんと別行動」
蓮は並んで丸い台から足を投げ出すように座る。
それから会話の内容が思いつかず静寂が流れた。蓮は鞄に手を突っ込むと函館で買った土産の一つ——バター飴の袋を開ける。そして立っている風介に手を伸ばし、
「……食べる?」
「それはなんだ?」
「バター飴。北海道名物だって」
「そうか。いただこう」
手早く子袋に分けられたビニールを切り、涼野はポテトチップスの袋膨らんだの様な形をした飴を口の中に入れた。
「美味いな」
蓮も封を切り、バター色の飴をなんとなく口に入れた。甘いバターの味がとろけるように広がる。
蓮は風介に目をやった。潮風に涼野の髪が翻り、月光が横顔の輪郭を浮かび上がらせる。その姿に蓮は、またもや懐旧の思いに駆られる。知っている気がする。でもそれはどうしてなんだろう。
「蓮」
不意に涼野に呼ばれ、蓮は肩を震わせる。
「こんな遅くまで起きるなど……不健康だぞ」
「元々僕は夜行性なんだ」
バター飴を下の上で転がしながら蓮は言う。
「長年の惰性(だせい)か。……キミは大人になって、長生きしないだろうね」
「冷たいなぁ」
冷たすぎるその一言に蓮は、自分を嘲笑うように笑う。すると立っていた涼野は、蓮の横に、同じ体勢で座った。
「……前言撤回だ。早起きしろ。キミに早く死なれてしまったら、私は困る」
「へ?」
唐突すぎる涼野の言葉に蓮がほけっとしていると、涼野が蓮をしっかりと見つめて来た。
「私は、キミのことを友だと認めている。そう、だからだ。だから……早く死ぬな」
そこで言葉を切ると、涼野は揺れる黒い凪へと視線をやった。
「少し、私の昔話をしてもかまわないか?」
〜つづく〜
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