二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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イナズマイレブン〜試練の戦い〜
日時: 2014/03/26 11:37
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 9kyB.qC3)

皆様、初めまして…の方がほとんどだと思われるしずくと申すものです。実は某大作RPGの二次もやってますが…
 今回、再びイナズマ熱が蘇って来ました。
 そこで、二年程前に挫折してしまった〜試練の戦い〜をきちんと完結させようと思い、再びスレッドを立てさせて頂きました!

*注意事項
:二年前の〜試練の戦い〜のリメイク版(当時のオリキャラは削除しています。すみません)
:時代遅れなエイリア学園編の二次創作
:オリキャラあり。男主人公です。
キャラ崩壊、設定捏造の類いがあります。
:荒し、誹謗中傷はお断りです。

長くなりましたが、よろしくお願い致します!

本編

序章
>>1

一章「それが、全ての始まり。」
>>4->>11

二章「全ては予定通りに。」
>>12->>13,>>17->>18,>>23->>27,>>30

三章「その風は嵐? それとも?」
>>31->>35,>>37->>39,>>41->>72

四章「その出会いは幸せか」
>>74->>83

おまけ
夜の出来事(蓮と風介。宗谷岬にて)>>73

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Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.32 )
日時: 2014/03/01 13:42
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: DDShUS1b)  

雷門町のバスエリアで降りた蓮は、電車とバスを乗り継ぎ、さらに数分歩いて稲妻町へと戻って来ていた。まだ病院の開院時間でもないし、近くのコーヒーショップに入り、通勤をするであろう大人たちに混じり、コーヒーを飲んでいる。
 地理はめっぽう苦手だが、今の世には携帯と言う便利なものがあり、ネットを使えばたちどころにばしょがわかると言う訳である。もう稲妻病院はすぐ近くで、迷うこともない。
 のんびりしているとあっという間に病院の開院時間。出勤しようと動きだした大人たちに交じり、蓮も外へと出た。
 稲妻総合病院はコーヒーショップからほんの数分の場所にある。地域でもかなり大きな病院の一つで、三階建てのマンションの様な建物が、堂々と立っている。車が100台は置けそうな駐車場を走り抜け、中に入る。靴を脱いで下駄箱に入れ、まっすぐ受付へと進む。
 病院らしい消毒液の香りが鼻を突いた。ソファに座った子供がマスクをし、せき込んでいる。その横では熱っぽい顔をした大人が退屈そうに雑誌を読んでいる。名前を呼ばれた人が、診療室に消えて行く。
 蓮は自然とそういった人々の近くを通らない道を進んだ。受け付けに行くと、若い女性の人が微笑んでくれる。

「こんにちわ。あら、そのジャージ雷門中学校の子ね? ここに入院しているサッカー部の子のお見舞いかしら?」
「えっと……違います。豪炎寺 夕香ちゃんのお見舞いに来たんです」

 すると受付の人はああ! とはっとしたような表情になった。

「豪炎寺先生の娘さん、夕香ちゃんのお見舞いね。その子なら三階に入院しているわ。そこの階段から上がって、すぐ右手の病室よ」
「ありがとうございます!」

 受付の女性にお礼を言うと、蓮は受付から数メートル離れた場所にある階段をのぼりはじめた。天井に裸電球があるだけの、非常階段の様な場所。夜、一人で歩いたら怖いだろうな……と思う。こういう病院は、当たり前のように人が死んでいく場所。ひょっとしたら、死んだことに気づかない幽霊がここを歩いているかもしれないのだ。

「ないない……」

 二階を通り過ぎ、ようやく三階に着いた。 
 受付で言われた通り右手に進むと、病室があった。ネームプレートに『豪炎寺 夕香』ときれいな字で、書かれている。

「ここが夕香ちゃんの病室……」

 蓮は騒ぎ立てる胸を押さえるように深呼吸をし、ガラッと引き戸式のドアを右にスライドさせる。
 窓が開けられていて、白いカーテンが風に揺れていた。病室は4畳ほどの広さで、入ってすぐに洗面台。その隣に木製のクローゼットが置いてある。窓辺にはベッドが置かれ、ベッドの左横には棚が設置。上にテレビと黄色い花が生けられた花瓶がある。

「だあれ?」

 ベッドにいる少女と目があった。
 青いパジャマ姿の少女。歳の頃は6,7歳に見える。茶色い髪を二つ結びの三つ編みにしていて、大きく小動物を思わせる愛くるしい茶色の目がなんともかわいらしい——彼女が夕香だろう。

「あ! そのジャージ!」

 首を傾げた夕香だったが、蓮のジャージを見るなり声を上げた。

「おにいちゃんとおんなじ学校の人だ」

「えっと……僕は白鳥 蓮。キミ、夕香ちゃんだよね?」

 蓮は夕香のベッドわきのイスに座る。それから小さい子に慣れていないため、少し緊張しながら自己紹介をする。

 しかし一方の夕香は、

「白鳥おにいちゃん? 知ってるよ! この前お兄ちゃんが新しい仲間が出来たって、おはなししてくれたから!」

 子供らしいあどけない笑顔で答えてくれる。明るい性格なのか、人見知りは全くしていない。

 おかげで蓮も少し、緊張がほぐれる。

「ねえ夕香ちゃん」

 あくまで平静を、自然そうに演じながら蓮は、

「最近怪しい人が来ていないかな?」

 夕香に聞きたいことを尋ねる。

 かわいらしく首を傾げた夕香だったが、思い当たることがあるらしい。来てるよ! と不安げな顔で言った。

「あのね”おじさん”が、ときどき夕香の病室に来るの。それでね……夕香すっごく怖いの」

「おじさん? どんな人かな?」

「あのね夕香、絵が得意だから描いてあげるね!」

 夕香はベッド横のタンスの引出しを開き、中からスケッチブックとクレヨンを取り出した。

 スケッチブックを何枚かめくるので、蓮はそっとその絵を覗き込む。リンゴに家族の絵……どれも子供ながらに、ものの特徴をうまく掴んでいるなかなか上手な絵である。

 白いページが出てくると夕香は、クレヨンを丁寧にすべらせていく。

 やがて完成した一枚の絵は——人らしいが人に見えない。そんなやつがいる不思議な絵であった。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.33 )
日時: 2014/03/01 17:43
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: hbLXOO8r)  

夕香が完成させた絵には、一人の人間がいた。
 体格は標準的な大人の男性のものだが、肌の色が何故か明るい黄緑色で塗られている。頭部は、髪がなくいわゆる禿げ(はげ)頭。そして目を隠すような黒いフレームのサングラス。下に来ているのは、真黒なコートの様なもの。自分は不審者です、と言っているような奇妙な身なりである。こんなやつが来たら、自分だって怖いと蓮は絵を睨みながら考えた。

「ありがと。夕香ちゃん」

 夕香に礼を言った蓮は、鞄からクリアファイルを取り出すと、その絵を大切にしまう。
 そのとき、夕香が気付いたように、

「ところで白鳥お兄ちゃん。今日はお兄ちゃんは来ていないの?」

 一番聞きたくなかった言葉を言った。
 灰色には程遠い脳をフル回転させ、蓮は夕香への言い訳を考える。

「う、うん。豪炎寺くんは、風邪引いちゃってさ。今日は来れないんだって」

 結局出てきた言葉はかなり苦しい言い訳。それに蓮の笑顔も引きつっているのでどうなるかと思ったが、夕香はくりくりした瞳に不安色を宿した。

「そうなの? お兄ちゃんは大丈夫なの?」
「……うん」

 純粋に兄を心配する妹の瞳が良心をえぐる。
 心の中で、夕香に真実を言え派とこのまま黙れ派が対立する幻聴すら聞こえてくるような気がする。

「じゃあお兄ちゃんに、早く元気になってねってつたえてほしいな」

 蓮の言葉を聞いて安心してきたのか、夕香が微笑を浮かべながら小さな小指を差し出してくる。

「わかった。約束するよ」

 夕香に向かい”必ずお兄ちゃんを連れ戻すから”と言う意味を込め、蓮はほっそりとした小指を、その小さな指に絡めて小さく上下に揺らした。

『ねえ! ——。——。約束だぞっ!』

 夕香と指切りを終えた途端、急に脳裏に声がした。 夕暮れの中、三本の指が絡み合って大きく揺れる。一つは幼いころの自分で。あれ? いつ、誰と指切りしたんだっけ……

「お兄ちゃん?」

 夕香にじっと見つめられていることに気づいた蓮は、慌てて手を離す。

「じゃあ! またね、夕香ちゃん」
「うん。またきてね!」

 夕香の笑顔に見送られながら、蓮は恥ずかしさから逃げるように病室を出た。

「ご、豪炎寺くんがいたら殺されてたかも」

 とたん身体の力が抜け、蓮は扉に背を預けたまま座り込んでしまう。

「はぁ」

 長いため息を吐くと、蓮は自分の両手を見つめる。

(誰だろ……誰と指切りしたんだ……?)

 考えれば考えるほど、記憶と言う名の糸は絡まりほどけなくなる。

 誰かは覚えていないが、手の感触だけははっきりと思いだせる。二人とも、温かくて、握ると元気になれる太陽の様なぬくもりだった。そして自分は指切りをした二人のことを、とてつもなく大好きなのだ。それだけは、はっきりと感じることが出来る。わかることができる。なのになんで名前が思い出せないのか。

「誰……」

「なんだよ白鳥。疲れちゃったのか?」

 聞き覚えのある声に蓮は現実世界に引き戻された。声の方を見やると、何故か塔子の姿があった。

「と、塔子さん? なんでここに?」

 立ち上がりながら、蓮は目を白黒させる。

 すると塔子は蓮に近づくなり腕をひっつかんで、上へと続く階段をさし示した。

 

「話は後だ。とりあえず、屋上に行くぞ!」

「あ、ああ! 待ってよ!」

 塔子に袖を引っ張られる蓮の姿は、傍から見れば飼い主に引っ張られる犬そのものに見えるに違いない。

 

 三階からの階段を登りつづけると、屋上へと続く鉄扉が視界に入ってきた。 

 階段を登り終えた塔子が両開きの扉を開くと、涼しい風が流れ込んできて蓮の短い黒髪と、塔子の長いピンク色の髪を揺らす。

「あたしが一番ノリ!」

「塔子さんはおてんばだなぁ……」

 はしゃいで先に屋上へかけていく塔子の後から、蓮はゆっくりと屋上に足を踏み入れる。

 屋上は周りを全て落下防止用の緑のフェンスに囲まれ、東西北の位置に一個ずつベンチが置かれている。北には住宅街が広がり、駅の青い屋根が見える。東側には住宅街上空を高圧電線が通り、二段重ねにした緑の丘へと消えて行く。緑の丘には、雷門町名物の”鉄塔”があるが、今は針の先っぽの様な先端が見えるだけ。そういえば円堂がここを気に行っているらしく、エイリア学園との戦いが終わったら案内すると、嬉しそうに話していた。

「雷門町ってきれいな場所だな」

 北側のベンチに座った塔子は、景色を見て歓声をあげていた。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.35 )
日時: 2014/03/02 15:05
名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: qJ0dFxMT)  

しばらく沈黙が流れ、不意に塔子が口を開いた。

「なあ白鳥。夕香ちゃんに豪炎寺のこと、聞いたんだろ?」
「え? 塔子さんが、どうして知っているのさ?」

 蓮が驚いていると、塔子は風景を見つめながら答える。

「実は瞳子監督から『白鳥くんは、放っておくと北海道の大地で凍死していそうだから、迎えに行ってあげてちょうだい』って、こっそりメールが送られてきたんだ。その中にどうして白鳥がいなくなったかも、書いてあったよ。だからあたしパパに会ってから、みんなに適当な言い訳して抜けて来たんだ」
「そっか。お父さんと会ってどうだった?」
「元気そうだったよ。本当に無事でよかった」

 そう話す塔子の横顔は本当に嬉しそうだった。しかしその笑顔はすぐに曇り、

「でも、パパはなにか隠しごとをしているんだ」
「隠しごと?」
「エイリア学園に攫われた時に、何か見せられたらしいんだけど……それがなにか教えてくれないんだ」

 塔子は不満そうに頬を膨らませ、足をぶらぶらと揺らす。
 
「あたしだけじゃない。スミスや警察の人にも……パパは一人でなにかを抱え込んでいる。あたし、どうすればいいんだろう」

 完全に表情を曇らせ、俯いてしまった塔子を見た蓮は、

「塔子さん」
「なんだよ」
「お父さんを信じてあげなよ。きっと財前総理は、なにか大事な決断をしないといけないんだ。総理って言うからひょっとしたらこの国の行く末を決める大事な決断なのかもしれない」
「どう信じろって言うのさ」
「黙って傍にいてあげれば……あ、メールとか電話すればいいと思う。僕たちは大人じゃないから、総理の悩みを聞くことなんてできない。でも、そのうち塔子さんのお父さん自身が、信じられる身近な大人に話してくれると思う。今、お父さんはきっと一人だと思っている。だからお父さんに”一人じゃないって”メッセージを発信し続けなよ。いつか誰かを信じる日までさ」

 笑顔で言い切った蓮を、

「あ、ああ……」

 塔子は見つめた。すぐに蓮はたじろいで、

「あ。意味不明だし、ながったらしいよね。ごめん」
「いいよ白鳥。あたしなんか気持ちがすっきりした。パパが誰かを信じるまで、あたしがパパを支えるよ」

 蓮に笑顔が戻る。だが恥ずかしいのか、

「……ところで瞳子監督が、塔子さんを迎えによこすなんて意外」

 すぐに話題を転換させる。

「あたしもだよ。なあ、監督のメールに書いてあったんだけど、白鳥って地理が苦手を通り越してすごいやばいんだろ?」

「うん。小学校のとき、都道府県名を書くテストで0点とったことある」

 と実にあっさり蓮は言いきった。

 それに塔子は呆れた表情を見せ、

「例えば北海道の位置ってわかるか?」

「うん。日本の一番北で、その下に沖縄県があるんだよね? 首都は函館で、他にアイヌ町とか、ムツゴロウ王国とか、流氷って町があるんだよね?」

「首都じゃなくって県庁所在地! しかも函館じゃなくて札幌だぞ! それからアイヌ町とかムツゴロウ王国なんて……あるのか? 後、沖縄県は日本の最南端だ」

「うう……覚えたくない。日本の地理なんて生きて行くのに役に立たないのに」

 地理が大嫌いな蓮は、頭を抱えて悶える(もだえる)。

 そして塔子は盛大なため息をつき、

「こんな地理ダメダメのお前が、白恋中学校に行けるのか?」

「た、多分行けないかな……」

 蓮はだじだじになりながら答える。

「本当に瞳子監督の判断は正しい。白鳥一人だったら、絶対に札幌辺りで凍死しているよ」

 事実をズバッと言われ、蓮は苦笑いを浮かべる。

「瞳子監督、意外と優しいよな。だから豪炎寺をチームから外したのも、何か意味があると思うんだ」

「だったら面白い情報をつかんでるぜ?」

 名誉挽回、と蓮は夕香が描いてくれた絵を鞄から取り出し塔子に渡す。その時に夕香から聞いた話も簡潔に伝える。

 おおまかな話が終わると、絵を見ながら塔子はうなりながら手を顎にあてた。

「”怪しいおじさん”か。確かにこいつのせいで豪炎寺がチームを離れたとするのも一理あるよな」

「でも、これだけじゃなにもわからない。このおっさんがどこの誰なのか、何者なのかわからないと……豪炎寺くんって言うゴールにはたどり着けない」

「あたしたちはサッカーで言うと、まだボールを蹴ったばかりで相手陣地内に進めていないのか」

 塔子は腕組みをし、しばらくしてはっとしたような顔をした。

「そうだ! SPフィクサーズに協力してもらおう!」

「え? SPのみなさんに?」

 蓮が声を高くして問い返すと、塔子は笑顔で、

「うん。政府の機関だし、情報量も多い! このままやみくもに探しまわるよりいいと思うよ」

「せ、政府の機関を私利の目的で使用していいのか?」

「豪炎寺がいなくなったことは、世界滅亡にも匹敵するだろ! とやかく言っている暇はないよ!」

 塔子の力強い言葉に黙らされた蓮は、

「ま、まあね……」

 しぶしぶ了解した。

 心の中で国民の皆さん、税金無駄遣いしてごめんなさいと謝りつつ。

「なあ白鳥」

 塔子がまた遠くの景色に視線を送って言う。

「ん?」

「豪炎寺のこと——これから二人だけで調べないか?」

「チームのみんなには秘密にしろってこと?」

 蓮も塔子と同じく遠くの風景にめをやる。

「うん。夕香ちゃんのところにいた”おじさん”が何者かわからない以上、下手に動くと危険だ。みんなを巻き込みたくないし、二人だけの秘密にしておこう」

「……わかった。僕と塔子さんだけの秘密」

「あたしたち”豪炎寺調査隊”の、な」

 塔子は軽くウィンクをした。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.36 )
日時: 2014/03/02 15:15
名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: Wwp0q0mP)  

>>オズロックさん
???何を仰りたいのでしょうか…申し訳ありませんが、今回は厳しい言葉を使います。
セリフから察するにキャラクターになりきられているようですが、こちらは小説掲示板です。小説を書いたり、その感想を言い合う場です。なりきりを書くのは場違いです。
キャラクターになりたいのでしたら、なりきり掲示板に行って下さい。そちらでなら、どんなになりきりをされても大丈夫なので。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.37 )
日時: 2014/03/02 19:24
名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: vcreLc9n)  

 屋上を降りた塔子と蓮は、稲妻総合病院二階の負傷した雷門イレブンの5人を見舞っていた。
 二階の広い20畳ほどはあろう部屋。夕香の部屋と形状はあまり変わらない。ベッドが4つ設置され、それぞれ4人が横になっている。
 松葉杖を片手に蓮と塔子を応対するのは、ピンクと青ボーダーで猫の耳のようなものがついた帽子をかぶる少年——松野 空介(まつの くうすけ)。愛称はマックス。結構小柄でぱっちりと開いた丸い黒い目は、まさに動物チック。帽子からわずかにのぞく茶色の短い髪から思うに、りすあたりかもしれない。

「白鳥に塔子かぁ〜。わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。みんなはまだ寝てるけど、ボクが話に乗るよ」

 まあ座ってよ、と言われ二人はマックスにケガ人のマックスを立たせて申し訳ないと思いつつ、見舞客用のイスに座る。
 マックス以外の4人は病人のうすい青パジャマを身にまとい、すやすやと眠りに落ちている。二人ほど、足に包帯を巻かれギプスで固定されていた。

「けがの調子はどう?」

 眠りに落ちる四人を起こさないよう、蓮はそっと小声でマックスに尋ねる。
 するとマックスはん〜と渋い表情を浮かべた。

「歩けるようにはなったけど……ずっと歩いていられるわけじゃないんだ。雷門サッカー部に戻るには、まだまだ時間がかかりそうだよ」
「そっか。『戻ってきたら猛特訓だぞ』って、円堂が言ってたぞ」
「あはは。キャプテンらしいね」

 マックスは小声でだがしばらく笑った。
 つられて蓮や塔子もトーンダウンして一緒に笑う。

「ところで地上最強への旅はどうなっているんだい?」

 逆にマックスに問い返され、今度は塔子と蓮の顔つきが曇る。

「僕たち、奈良でジェミニストームって言う、新しいエイリア学園のチームに負けてしまったんだ。しかも監督は豪炎寺くんをチームから外しちゃって——」

 蓮が悲しそうな面持ちをしているのに気づいた塔子が慌てて明るい調子で、

「で、でもこれから北海道に新しいストライカーを探しに行くんだ!」
「ストライカー?」「へー」

 瞳子に何も聞かずに飛び出してきた蓮は、新しい情報にいささか驚く。

「へ〜って白鳥も知っていることだろ?」
「あはは……」

 マックスに突っ込みを入れられ、蓮は引きつった笑みを浮かべた。

「北海道にある白恋中学校に”吹雪 士郎(ふぶき しろう)”ってやつがいるんだ。情報によると、一人で一試合に十点叩きだし、”ブリザードの吹雪”とか”熊殺し”っていう異名がある。……らしい」

「……らしい?」

 微妙なニュアンスのちがいに気がついた蓮が、首をかしげる。すると塔子は、ああ……と困ったような表情をする。

「なんでも白恋中学校はフットボールフロンティアに出ていないらしくってさ、情報が手に入らないらしいんだ。後わかっているのは、<エターナルブリザード>って言う必殺技を使うことくらいらしいぞ」

「まあ一人だけ強い選手がいても、他がダメダメじゃ全国大会には出れないよね」

 そうマックスが言って、

「でも<エターナルブリザード>には期待できそうだな。今のあたしたちには決定力が欠けている! 吹雪ってやつがいれば、エイリア学園もきっと倒せる!」

 と塔子が期待に胸を膨らます。

 その言葉に若干マックスの眉がひそまった。

「じゃあきみたち、そろそろ北海道に行くんだろ?」

 マックスはいつもののんな顔に戻り、言う。

「あ、そうだな。白鳥、さっさと行こうぜ!」

 すごい勢いで塔子が扉を開けて飛び出て行った。

 蓮は扉の前まで歩くと、一度マックスの方に振り返る。

「うん。またね、みんな! 今度こっちに寄ったら、また顔出すから」

「バイバイ」

 マックスが手を振るのを確認すると、蓮は扉を閉めた。

 二人を見送ったマックスは

「本当はボクたちも二人のように走りたい……」

 さびしそうに呟いた。

〜つづく〜


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