二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- イナズマイレブン〜試練の戦い〜
- 日時: 2014/03/26 11:37
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 9kyB.qC3)
皆様、初めまして…の方がほとんどだと思われるしずくと申すものです。実は某大作RPGの二次もやってますが…
今回、再びイナズマ熱が蘇って来ました。
そこで、二年程前に挫折してしまった〜試練の戦い〜をきちんと完結させようと思い、再びスレッドを立てさせて頂きました!
*注意事項
:二年前の〜試練の戦い〜のリメイク版(当時のオリキャラは削除しています。すみません)
:時代遅れなエイリア学園編の二次創作
:オリキャラあり。男主人公です。
キャラ崩壊、設定捏造の類いがあります。
:荒し、誹謗中傷はお断りです。
長くなりましたが、よろしくお願い致します!
本編
序章
>>1
一章「それが、全ての始まり。」
>>4->>11
二章「全ては予定通りに。」
>>12->>13,>>17->>18,>>23->>27,>>30
三章「その風は嵐? それとも?」
>>31->>35,>>37->>39,>>41->>72
四章「その出会いは幸せか」
>>74->>83
おまけ
夜の出来事(蓮と風介。宗谷岬にて)>>73
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- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.114 )
- 日時: 2014/03/31 21:20
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: Mg3hHTO1)
こっちだよ!」と元気に走っていくユウの友達を追うこと数分。川からさほど遠くないところにユウの家はあった。いや、家と言うより店でだろう。小奇麗なスポーツショップだった。客は一人もいない。ガラス戸の向こうには、バスケットボールやサッカーボールが整然と並べられている棚が見える。奥にあるカウンターでは、一人の男が上に設置されたTVに目をやっていた。恐らくユウの父親だろう。後姿がどことなくユウに似ている。
ユウの友達は遠慮せずに、スポーツショップの中へと続く扉を押した。円堂たちも後に続く。少しほこっりぽい臭いがした。
ちりんちりんとドアの上に下げられたベルが心地よい音で来客を告げ、男が「いらっしゃいませ」と気の乗らない声で応対しながら、振り返る。
40を過ぎたくらいの黒縁めがねをかけた優しそうな男だ。直後、目を限界まで見開くと、座っていたパイプ椅子を蹴り倒しながら立ち上がった。
「あ、あなた方は雷門中サッカー部のみなさん!」
思わぬ来客にユウの父親は、興奮で声を上擦らせながら、円堂たちを見やる。憧れの人間に会えたという恍惚の表情を浮かべていたが、すぐに真顔に戻る。
倒したパイプ椅子を元に戻し、カウンター上に置かれたリモコンでTVを消した。ユウの父親が、リモコンをテーブルに置くのを確認すると、鬼道が前に進み出て話を切り出す。
「失礼ですが、ユウくんがエイリア学園から戻ってきたとお聞きしたのですが」
ユウの父親は、ユウを見つめるように店の外へと目をやった。そして、小さくため息をつきながらパイプ椅子に腰を下ろす。
「なるほど。息子に話を聞きたくてここまで来たのですね。ですが、息子はごらんの有様です。毎日食事もろくにとらず、ああしてずっと川辺で一人、水の流れを眺めています。話しかけても言葉はユウスケの心に届かず、どうすればよいのかわかりません」
ユウの父親は沈痛な面持ちで両肘をカウンターについて、頭をくしゃくしゃと掻き始めた。初めは平静を装って落ち着いた声音で話していたが、だんだん悲しむようなものになっていった。
息子を心配する父親の気持ちに、円堂たちは同情しながら、ユウを救ってやりたいと決意を新たにした。しかし上手い方法が思いつかず、どうにもならない。
「エイリア学園に攫われて、怖い思いをしたんだろうな」
蓮が同情するように口を開いて、円堂が何か思いついたような顔付きになる。考え込む蓮たちを見渡しながら、大声で叫んだ。
「じゃあ話は簡単だ! 大好きなサッカーをやって、嫌なことは全部忘れればいいんだ」
「そう簡単に言うけど、話しかけても無反応だったじゃないか。どうするの?」
蓮に問われ、円堂は黙った。数秒ほど唸ると、嬉々とした表情でカウンターに近づく。カウンターから身を乗り出し、ユウの父親は少し身を引いた。円堂は、ユウの父親に顔を近づけて勢いよく尋ねる。
「そうだ、ユウくんのお父さん。ユウくんが、サッカーをやっていたときの品物ってありませんか!?」
「ス、スパイクならあるが」
円堂の気迫に押されたユウの父親は、戸惑いながら返事をした。パイプ椅子から離れると、ボールが並べられた棚に近づく。円堂たちが好奇のまなざしを向ける中、ユウの父親は棚の一番上に置かれた箱を取り上げて戻ってきた。カウンターに置かれた箱を見ようと、雷門中サッカー部が周りに集まる中、ユウの父親は箱の蓋を外す。
中には、紙で包まれたスパイクが入っていた。子供向きの小さいもので、緑の地にグリーンのラインが通っている。あちこちに泥がついていて、靴紐も汚れていて、相当使い込まれていることが分かる。
「これ、借りてもいいですか?」
「ああ。構わないよ」
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.115 )
- 日時: 2014/03/31 22:27
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: C6pp1bGb)
紙を外すと、円堂は箱の中からユウのスパイクを取り出して聞いた。断られても持って行きそうな雰囲気で蓮はひやひやしたが、ユウの父親はあっさり承諾してくれた。ユウのスパイクを掴むと、円堂は張り切って店を飛び出していく。
蓮たちは慌てて円堂の後を追い、河川敷へと向かった。
円堂が河川敷に降りる階段を下りた頃、蓮は染岡にユウに近づくことを止められていた。「ユウに近づいて体調が悪くなら、ここで待ってろ」と言われ、蓮は染岡の行為に甘えることにした。その際、吹雪が留守番役を買って出てくれて、蓮は吹雪と共に遠くから成り行きを見守ることになった。
「みんな。ユウくんをよろしく! みんななら大丈夫だ」
「ボクがしっかり白鳥くんを見ているから大丈夫だよ」
階段を下りていく染岡たちに蓮が応援の言葉を投げかけ、大きく両手を振る。その横では、吹雪が染岡たちを安心させるように声を送った。別に逃げるわけではないので、蓮は少し苦笑していた。
染岡たちは一度階段の途中で振り向くと、力強く頷いた。染岡などは、
「この染岡様がいりゃあ、サッカーの楽しさなんてすぐに思い出せるぜ」
軽い口調だが頼もしいことを言って、親指を立てた。蓮は吹雪と共に親指を立てて返す。染岡はまかせろ言うように笑うと、階段を駆け下りていく。円堂はユウから少し離れた場所で染岡たちを待っていた。
染岡たちが円堂に駆け寄ると、円堂は先陣を切ってユウに近づく。相変わらずユウは、円堂たちを無視していた。円堂は片手にスパイクを持ち、ユウの肩を掴んだ。
ユウは小さな身体を震わせ、青ざめた顔でこちらを振り向く。円堂の手を乱暴に払いのけ、逃げ出そうとする。
「安心してくれ。オレたちはキミの敵じゃない」
円堂が安心させるようにユウに語りかけながら、借りてきたスパイクを前に出した。それを見た途端、ユウの顔付きが変わる。怯えた顔が不思議そうな顔になる。
「あ、そのスパイク」
ユウが言葉を零すと、円堂は明るく白い歯を見せて笑った。
「キミのお父さんからもらったんだ。お父さん、すっげー心配してたぜ!」
「……キミたちはだあれ?」
少しは信頼してくれたようだが、まだ警戒心が残っている顔でユウが聞いてきた。円堂は、ユウにスパイクを返すと、片手で染岡たちを示しながらはっきりと答える。
「雷門中サッカー部だ」
「え、雷門中? じゃあぼくを助けてください!」
その言葉を聞くと、ユウの顔から警戒心が消えた。真剣な声で助けを求めてきた。
円堂たちはもちろん承諾し、ユウに守るという意志を見せるためポーズをとったりして見せた。
ユウは安堵したような怖がるような表情で、辺りを窺いながら話を続ける。
「何とか逃げてきたのですが、追っ手が来ていて」
「大丈夫だ。オレたちがついている」
鬼道が断言し、ユウの肩に両手を置く。そしてユウを守るように、雷門中サッカー部の中に入れ、ゆっくりと階段に向かい始めた。
ユウが近づくたび、蓮は異様なだるさに襲われる。身体がふらつき、また吹雪に身体を支えてもらった。
ユウは雷門中サッカー部に守られながら階段を上りきると、はっとした顔でズボンのポケットに手を突っ込んだ。
「あ、そうだ。ぼく、この石を押し付けられたんです」
ユウが円堂に差し出したのは、ペンダントだった。500円玉ほどの大きさで、6角形にカットされた紫色の石に、首にかけられるほどの長さの黒い紐が通されている。
円堂はその石を見て寒気を覚えた。石の色は禍々しい紫で見ていて気持ちが悪い。宝石のようにきれいにカットされているのだが、どうしても綺麗とは思えなかった。底が見えない奈落のような闇を感じさせた。見ていると引き込まれそうで怖い。
その時、円堂は風丸の声で我に返った。見ると、全員が焦った顔で蓮に注目している。
「白鳥、おい! 大丈夫か!?」
見ると、吹雪に身体を支えられた蓮が呻き声を上げていた。苦痛で顔をゆがめながら、荒い息共に必死に言葉を吐き出している。風丸が耳を近づけて掠れた声を一生懸命聞こうとしている。
「この石見ると……すごく……くる、しい」
蓮が苦しんでいたのはこの石のせいだったらしい。 どう見てもアメジストの変種などにしか見えないのだが、なにやら特殊な力があるようだ。風丸はこわばった顔でユウが差し出す石をにらみながら、鬼道に目をやる。
「鬼道、もしかすると白鳥がジェミニストーム戦のときにふらふらしてたのは、この石のせいじゃないか?」
鬼道は腕を組むと、用心深くペンダントに顔を近づけ、顔をしかめた。
「これが、やつらの言っていた“エネルギー”である可能性が高いな」
「これが”エネルギー”……」
「でも、これはただの石にしか見えないッスね」
風丸は石をじっと見つめ、壁山が恐々とペンダントを覗き込みながらのんきに呟いて、近くにいる蓮が喘ぎながら、必死に円堂たちに懇願する。
「おねがい。はやく……こわすかなにか……して」
その言葉が通じたのか、円堂たちは憎憎しげにユウの掌を睨んだ。気にはなるが、仲間を苦しませる“嫌な”ものであることには変わらない。早く壊すに限る。
染岡がジャージの袖をまくりながら、どかどかと大股でユウの差し出す掌まで近寄った。
「あっても白鳥が苦しむだけだし、さっさと壊しちまおうぜ」
「よし、じゃあオレが……」
近くにいた円堂がユウの掌に乗せられたペンダントに手を近づけ、紫の石に円堂の指が触れた瞬間。石が欠けた。円堂の指が触れたところだけがポロポロとビスケットのように崩れる。円堂が驚いて石から指を離した瞬間、石に縦横無尽に亀裂が入り始めた。ガラスがきしむような音を立てながら、ヒビは蜘蛛の巣状に広がる。
やがてガラスが割れるような音がし、紫の石は木っ端微塵に割れた。砕けた欠片はユウの手から零れ落ち、その姿をパステルカラーの砂に変えて消えていった。パステルカラーの砂は地面に落ちて消えるか、風に流されて見えなくなる。
わずか5秒ほどの出来事を、円堂たちは瞬きもせずに凝視していた。石が砕けると同時に、蓮が喘ぐのをやめた。呼吸もいつもどおりに戻り、顔色もよくなっている。
しばらく無言が続き、円堂がようやく声を張り上げた。
「え、く、砕けた!?」
「ようやく見つけたぞ小僧め!」
石のことが気になるが、悩んでいる暇は与えられなかった。
男の声がして、ユウが円堂の背中に隠れる。
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.116 )
- 日時: 2014/04/01 19:03
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: IsECsokC)
謎の石が砕けたことを、驚くことを許さないように、野太い男の声がした。ユウがびくっと身を震わせ、円堂の背中に隠れる。ジャージの裾を強く握り締め、目をきつく閉じて身を縮めていた。
ユウの様子がおかしいことに気がついた円堂たちは、一斉に声の方を見つめ——蓮と塔子だけが。はっとした顔つきで、声の主を眺める。
以前夕香が描いた、『あやしいおじさん』の絵がそのまま実体化した連中がそこにいたからだ。
背丈は円堂たちより遥かに高く、ニメートルはある。血の気を感じない肌の色をした顔で四十代を過ぎたおじさんに思える。連中に、髪は一本もなく、禿げ頭である。目を覆うのは、黒いフレームに赤いガラスをはめ込んだ怪しいデザインのゴーグル。濃い紫のハイネックセーターを着込み、上に丈の長いジャーンパーを羽織っている。連中は、分身の術でも使ったように、同じ背格好の奴らが五人横にならんでいる。
蓮は夕香の絵を思い出しながら、塔子に視線を向けると、塔子は頷いた。どうやら様子を見よう、と同じことを考えていたらしい。
横に並ぶ男たちは、円堂たちに気がつくと、苦虫を噛み潰した顔になった。五人は一斉に舌打ちし、
「ちぃ。雷門連中が、何故ここにいる」
「関係ない。奴らを潰し、あの小僧から石を取り返すのだ!」
男の一人が強く言い放ち、円堂たちに詰め寄ってくる。
蓮たちは、男たちを睨み据えながら、ユウを守るように円堂を取り囲み、円堂は両手を広げ、戦う意思を男たちに示す。辺りにいた人々は円堂たちから離れ、不安げに様子を伺っている。
「ガキごときに、なにができる!」
不意に男の一人が、両腕を振り上げて蓮たちに躍りかかってきた。出さない辺り、どうやら、銃やナイフなどは持ち合わせていないようだ。
蓮は、それを確認すると、不適な笑みを浮かべ、勇敢にも男に突っ込んでいく。たじろいでいた円堂たちが、止めようと手を伸ばすが、蓮は上手く身体を動かして避けた。
「白鳥先輩!」
「うわっ!」
春奈が止めるように蓮の名前を呼んだ直後。恐怖で固まっていた木暮の身体が男の強烈なタックルで宙に舞った。それを合図に、残りの男たちも攻め混んでくる。
雷門はめちゃめちゃだ。男に怖じけづき、逃げ出すもの。恐怖で固まり、男たちを見送ってしまうもの。何人かは、男たちに立ち向かったが、大人の力には敵わず、吹っ飛ばされ、身体が地面に叩き付けられた。
「みんな!」
円堂は、叩き付けられた風丸たちを気遣かう声を飛ばす。だが、仲間の心配をしている暇はなかった。三人の男たちが、円堂に近づいているのだ。距離はもう、30センチメートルとない。ユウが裾を掴む力が、一層強くなるのを、円堂は感じた。
「大丈夫だ、ユウくん」
円堂は庇うように、片手を広げて、迫り来る男たちと対峙する。男たちは、円堂の背中からユウを引きずり出そうと、片手を伸ばした。円堂になすすべはなく、男たちのての一本が、円堂の手を払いのけ、裾を握る小さな手に伸ばされた。円堂は、悔しそうに後ろを向いた。ユウが泣き叫ぶ。
その時、男の手がユウの腕を掴む寸前で凍り付いた。円堂が反射的に前を見ると、地面に華麗に着地し、にっこりと微笑む蓮と吹雪の二人がいた。
「頑張ったけど、危なかったね、キャプテン」
「ぎりぎりセーフだよ。円堂くん」
二人に労いの言葉をかけられ、円堂は状況を理解できないまま辺りを見渡す。
四人の男たちが、そっくり返った姿勢で氷の彫刻になっていた。透明な氷は、陽光を受けて、その輪郭を際立たせ、光を反射して七色に輝いている。氷らされた男たちは、罰を受けて氷にされた囚人のようだ。周りにいる仲間たちは、つついて遊んだり、感心そうに眺めている。
円堂は、氷の一つに歩み寄る。ひんやりとした冷気が、肌をくすぐる。
まだ怯えているのか、ユウは円堂の背中から恐々と顔を出しながら、氷の男を見上げていた。円堂は、手でグーを作ると、氷を軽く叩いた。中々固く、拳がじんじんする。そして、手が冷えた。
「よく凍ってるでしょ?」
蓮が吹雪を伴いながら円堂の元に来て、得意そうに言った。
「もしかして、〈アイスグラウンド〉と〈アイススパイクル〉で氷付けにしたのか!」
円堂が気づいて声を張り上げると、蓮と吹雪は互いを見合い、小さく笑い声をたてた。
「そうそう! 二人の合作『氷のエイリアン』だよ。ねー吹雪くん」
「キミとの合作、とても楽しかったよ」
蓮が冗談めかした調子で、吹雪に同意を求めた。吹雪は吹雪で、楽しそうに答えた。
あまり捻っていないタイトルに円堂は、思わず失笑した。
しばらく和気あいあいと話していた三人だったが、春奈の何気ない一言で、それは止まる。
「あら? 木暮くんは?」
木暮の姿が、忽然と消えていた。
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.117 )
- 日時: 2014/04/01 23:42
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: aQf5AfGs)
木暮がいないことに気がついた円堂たちは、蓮と吹雪が氷付けにした男たちを問いただすことにした。
男たちが溶ける前に、円堂たちは、ロープを四つ、キャラバンから持ってきた。太さも長さも十分あり、簡単にはほどけないだろう。
男たちの氷が溶ける頃を見計らい、円堂たちは四つのグループに分かれて、それぞれロープを持って男に襲いかかった。
数で敵わない男たちは、あっさりと捕えられ、ロープで身体をぐるぐる巻きにされた。手は後ろ手に縛られ、身動きはとれないようだ。
男たちは、息を切らしながら、頭と足を激しく動かして逃げ出そうとするが、身体がエビのように反るだけだ。動かすタイミングは、計ったように同じで気持ち悪い。やがて疲れたのか、荒い呼吸をしながら、動くのを止める。
蓮は、転がされた男の顔の近くに歩み寄る。隣に吹雪が並ぶ。
男は、うつ伏せになっていたが、二人のスパイクが砂利を踏む音に気付くと、頭を持ち上げた。白い歯を剥き出しにした獰猛な顔で二人を睨む。
蓮も吹雪も全く動じず、穏やかな二人にしては珍しく厳しい視線を、男に送った。
「木暮くんはどこ?」
「ふん。守秘義務だ」
蓮が腕を組ながら率直に聞いて、男はつんけんした態度で答える。
残りの三人も円堂たちが問い詰めているが、答えは似たり寄ったりだった。
「じゃあ、何で子供をさらったりしたんだい」
吹雪が厳しい表情を崩さずに質問を変えると、男はにやりと怪しく笑った。
「気になるんなら、この先にある埠頭に行きな。そこで、すべてがわかる」
「口が滑ったな」
揶揄するように蓮が言うと、男はますます嫌な笑みを深くする。
「わざと滑らせてやったのだ。オレたちが警察に捕まろうと、雷門が潰れるのは確実だからな。ははははっ!」
頭だけを動かして、男は高笑いをした。蓮は睨むように目を細め、吹雪は驚いたのか目を丸くした。
そして、静かな川のせせらぎに混じり——パトカーのサイレンの音が聞こえ初めた。円堂が、知り合いの鬼瓦刑事を呼んだのである。
「くっそ。木暮の行方はわからずじまいかよ」
「木暮くん、無事でいて」
遠くなっていくパトカーを睨みながら、染岡は地団駄を踏んだ。横では、春奈が手を組んで木暮の無事を祈っていた。
染岡は、八つ当たりに足元にあった小石を一つ掴むと、川に向かって放り投げた。小石は、弧を描きながら川に向かい、僅な水音としぶきを上げて、水の中に消える。
それを目で追っていた鬼道は顔を上げ、円堂たちの方に振り向いた。
「……やはり、埠頭に行くしかないだろう」
「でも、罠だったらどうするんだ?」
用心深い風丸が意見し、何人か顔を鬼道から反らした。返り討ちにされたら、という不安の色が顔に出ている。
悩む鬼道に、蓮が助け船を出す。
「罠でも、手がかりはそれだけだ。可能性があるなら、食いつかなきゃ」
「そうだけど……!」
風丸は何か言おうとして、口を閉ざした。物言いたげな顔つきで蓮の顔を見ている。
「オレは行くぜ」
微妙な空気が漂う中、その空気を破るように円堂が声を発した。
みなの視線が、自然と円堂に集中する。円堂はみなの視線を浴びながら、堂々と断言した。
「だって、仲間のピンチなんだぜ。罠でも、木暮の手がかりになりそうなら、行くべきだ」
「けど、襲われたりしたらどうするんだ?」
風丸が聞いて、蓮が提案する。
「じゃあ、四人くらいで行ったらどうかな? 少ない方が動きやすそうだし、もし見つかっても、すぐに逃げられるんじゃないかな?」
「確かに大勢で行くより、行動できそうだな」
「白鳥! 頭いいな!」
納得するように鬼道が呟き、円堂たちが素直に誉め称えた。蓮は、仲間の感心するような声にはにかみ、円堂が高らかに宣言する。
「さあ、木暮を救うぞ!」
蓮たちは力強い雄叫びと共に拳を天に突き上げた。空は曇り始めていた。
〜つづく〜
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.118 )
- 日時: 2014/04/02 17:48
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: w1PAg8ZW)
蓮の提案どおり、埠頭へ行く4人の少人数グループが作られた。
チームのリーダー格である円堂、鬼道、そしてついて行くと言い張った風丸、鬼道の推薦により蓮。
ユウのスポーツショップに仲間を残し、蓮たち4人は埠頭に向かった。
川を北上するにつれ、家はどんどん減っていき、やがて工場が並ぶ工業地帯になった。工場の煙突からは黒い煙が天を汚すように立ち上がっている。
辺りの空気は心なしか汚れていて、煙っぽい気がする。辺りに木や草の類が見受けられないせいだろう。蓮たちは何度も咳き込んでいた。
また、汚れているのは空気だけではない。川の水も濁り、底が見えない。愛媛は人の心のようだ、と蓮は思う。
ユウの話によると、川や空気が汚染され始めたのは、子供が攫われるようになってからだという。今の環境は、愛媛の人々の心を映し出す鏡のようなものだった。子供を解放すれば元に戻るかな、と心内で呟き、埠頭に足を進める。
しばらく歩くと、ようやく埠頭が見えてきた。高い塀の向こうには、左右に広がる貸し倉庫。ペンキは真新しく、最近舗装されたばかりのようだ。ただ屋根だけは潮風でさびてしまっている。近くに荷物を持ち上げる赤いクレーンが寂しく佇んでいた。上空では、のんきにかもめが鳴きながら空を舞っている。日差しが強い。
倉庫の向こうは当然ながら海に面している。簡単に超えられてしまいそうな車止めの向こうに、工業用物質が溶け込んでいる色をした海水が揺れていた。日が反射して
円堂たちは、横に伸びる高い塀と塀の間に作られた、閉じられた鉄扉の間から中の様子を垣間見ていた。潮風が時折吹くものの、生ぬるく心地よくない。潮風で鬼道の青いマントがなびいて音を立てている。
蓮だけは、鉄扉の脇近くの塀上に設置された妙な看板に目が行っている。白地に『真・帝国学園』と明朝体で大きくプリントされた謎の看板。しかし、風丸に袖を引っ張られ、鉄扉の中を見た。
「あ、さっき逮捕された奴らがいっぱいいるぞ」
円堂が声を潜めながら鉄扉の向こうを指差す。海寄りの倉庫の扉の前には、先ほど逮捕された男と全く同じ姿・体格の男が立っていた。腕を組み前をじっと睨んでいる。こちらには気づいていないようだ。
さらに、波止場近くには、やはり同じ姿の男が十人ほど歩いている。パトロールなのか、波止場の道を行ったり来たりしている。
「何か守っているようだね」
蓮は水面を見ていたので、眩しさのため目を細めながら呟いた時。波止場を歩いていた男の一人がこちらに向かってきたので、円堂と風丸は鉄扉から見て左に、鬼道と蓮は右の塀に咄嗟(とっさ)に隠れた。四人とも強張った顔つきで互いを見やると、恐る恐る鉄扉の向こうに視線を送る。
男は倉庫の前に立つ男に何か声をかけ、倉庫の前に立っていた男と共に倉庫の中に消えた。
蓮は円堂と風丸を手招きし、円堂と風丸が素早く鉄扉の前を横切った。中の様子を窺う鬼道と蓮の横に来ると、同じタイミングで安心したようにため息をついた。
「ああ。あの倉庫に、木暮が閉じ込められていても不思議ではない」
落ち着いたところで鬼道が蓮に同意するように言った。鬼道の横から港の様子を観察している蓮が、波止場前をうろついている男を指差し、何気なく言葉を零す。
「あの男たちって、複製かなにかしたロボットみたい」
再度倉庫から男たちが出てくるのを見つけ、蓮と鬼道は身体を塀の方に引いた。鬼道は塀に背を当てながら腕を組む。
「あの石といい、あの連中といい、エイリア学園には、高度な科学技術があるようだな」
「本当。でもロボットくらいなら人でも作れそうだよね」
〜つづく〜
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