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ロストヒーロー計画(完結)/ラストヒーロー計画
作者: 彩都&Lメイドウィン ◆B/lbdM7F.E  (総ページ数: 221ページ)
関連タグ: メイドウィン小説 オリジナル仮面ライダー 仮面ライダー 原作、設定:彩都、執筆:メイドウィン 
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 戦場海斗が『カリギュラ』の笹倉大尽、『クリスタル』の所長と戦って、十年後──『カリギュラ』の建物前に一人の少年が立っていた。その少年は『此処が……海斗さんの所属していたヒーロー組織……!』と呟いた。その少年の瞳は輝いており、他人から見ても『あの少年、すっごく目が輝いているな……ヒーローになりたいのかな?』と、思えた。少年の背中にはとても膨らんだ大きな大きなリュックを背負っていた。そして少年はその場で大声を荒げた。
「絶対……! 海斗さんみたいなヒーローになるぞぉ!!」
 少年の怒号は周りに響き、『カリギュラ』の窓を少し揺らす──これは、少年戦場雁陸人がヒーローになり、戦場海斗の背を追う物語だ──

プロローグ 戦場雁陸人は前を見続ける

「失礼します!」
 そう言って、少年が『カリギュラ』のヒーロー協会の中に入る。その様子を見ていた笹原大尽は『何だコイツ?』と思いながら右手に持った缶コーヒーごと少年を指差す。
「お前、何もんだ?」
「ん? 俺の事ですか!? 俺は『カリギュラ』のヒーローになりに来た、戦場雁(いくさばかり) 陸人(りくひと)と申します! だからヒーローに──」
 少年、戦場雁陸人がそう言うと、笹原大尽は空いた左手で戦場雁陸人の胸倉を掴んでとんでもなく焦る。
「お、お前……戦場って……!?」
「ん? あぁ、俺の苗字ですか! 俺の苗字は『戦場雁』です!」
「戦……場雁……」
 笹原大尽がそう言って驚愕する。それもその筈、『戦場』とは『カリギュラ』に所属していた『戦場海斗』という少年の苗字だ。『戦場』、『戦場雁』……何だこの共通点は? 笹原大尽はそんな事を思いながら、胸倉から手を離す。
「……ガキ。いや、戦場雁陸人」
「はい!」
「大変、言いづらい事なんだが……」
 笹原大尽は頬を掻きながら、戦場雁陸人に言う。
「『今日のヒーロー試験はもう終わった』ぞ?」
「はい? い、いやだって、このパンフレットには『八時』と書いてあるじゃないですか!」
 そう言って戦場雁陸人が手に持ったパンフレットを笹原大尽に見せる。笹原大尽はパンフレットを確認し、冷や汗を流す。これ、『朝の八時』じゃないか……えっ? 何コイツ? 時間の感覚が無いの? 頭可笑しいの? 何なのこの子? 笹原大尽はそう思うが、果たして、『正しい事』をコイツに言っても良いのだろうか? と思う。すると『おっすです、大尽さん?』と言って、一人の若い男性が現れた。
「お、お前は……大陸じゃないか、どうしたんだ?」
「どうしたんだ? じゃないですよ? 数分前に何か地響きのようなものを感じて……」
「ん? あぁ、アレ、俺の大声」
「お前かよ!? ってか、今は夜の八時! ご近所さんに迷惑だろうが! って、そのパンフレット何なんスか大尽さん?」
「えっ? あぁ、コイツ、今日『ヒーロー試験』を受けに来たんだけど、軽く12時間後に来た」
「はぁん? つまりアホの子ですね?」
「正解」
 笹原大尽は大陸と呼ばれた青年と会話する。そして大陸は戦場雁陸人に言う。
「なぁ、お嬢ちゃん? このパンフレットに書かれた時間は確かに今日、八時だ。だが、時間は『朝の八時』だよ。こんな夜じゃない」
「なっ!? マジかよ!?」
「えっ?」
 マジで気付かなかったのか? アホの子過ぎるぞ……!? 焦る大陸、そして大陸は戦場雁陸人の関係を探ろうとする。
「え、えーと、お前、一体何処から来たんだ?」
「えっ? 俺か? 俺は『ビルドシティ』からこっちに来たんだよ! 『カリギュラ』のヒーローになる為に!」
「そ、そうか……それじゃあ、お前が目指す『ヒーロー』ってなん──」
「戦場海斗さん! 俺は戦場海斗さんみたいなどんな悪も倒すヒーローになりたい!」
「戦場……? あぁ、あの賞金一億の」
 大陸がそう言うと戦場雁陸人の目が変わる。まるで苛ついたかのように──
「てめぇ……海斗さんを賞金扱いすんじゃねぇ!」
 戦場雁陸人が大陸の腹部を思いっきり殴る。その瞬間大陸は『く』の字になって、壁にぶつかる。壁にぶつかっても威力は衰えず、二枚、三枚、四枚と壁を貫いていき、最終的に『カリギュラ』協会内を超え、裏の道にぶつかった後、威力が止まった。
「……………………!?」
 な、何だあの威力!? こ、コイツ、『素手で殴った』よな……? それなのに何で『ヒーローソウル』をつけた時とそれ同等、もしくはそれ以上の力を出して……!? ってか、『カリギュラ』の壁って一番分厚い所で1mはあるんだぞ!? その壁を当たらないにしても、最低20cmの壁があるのに……普通の『ヒーローソウル』使用者でも壊せんぞ!? 焦る笹原大尽、そして笹原大尽は両手で戦場雁陸人の肩を掴んで叫ぶ。
「お、お前!? い、今のどうやって……!?」
「今の? 今のは『ただのパンチ』だぞ? かるーく殴った」
「か、かるーく殴った……!?」
 な、何なんだよこの『規格外(アウトサイド)』……! 何か面白くなってきたなぁ? 『コイツを『あの計画』に盛り込んだ』ら……この世界はヤバい事になるな……笹原大尽はそう思いながら、戦場雁陸人に言う。
「なぁ、お前。ヒーローになりたいんだろ? じゃあ、『カリギュラ』の社長に会いに行こうぜ? おっと、忘れていた。俺の名前は『カリギュラ』の会長、笹原(ささはら) 大尽(だいじん)だ、宜しく」
「へぇ、会長だったのか。宜しく! 大尽!」
「だ、大尽さんな……?」
 笹原大尽は『ちゃあんと教育(指導)しないとなぁ』と思う。そして笹原大尽、戦場雁陸人は『カリギュラ』の社長に会いに行く──

 そして笹原大尽に案内された戦場雁陸人はいともあっさり『カリギュラ』の社長の所に到着する。笹原大尽はノックして、勝手に侵入する。
「おぅい? しゃちょー?」
「んー? 何だい大尽君……って、また誘拐してきたの?」
 不思議がる社長に対し、ツッコミを入れる笹原大尽。
「んな訳ねぇだろしゃちょー? コイツ、今さっき、『ヒーロー試験』に来たガキ」
「戦場雁陸人だ!」
「今はそれはどうでもいい。でも、コイツ、『やべぇ』ぜ? だって、『巨塔』の朧(おぼろ) 大陸(たいりく)を殴ってぶっ飛ばしたんだからな?」
 口の端を歪ませる笹原大尽を見て、社長が冷や汗を流しながら返答する。
「へぇ? それで? 大陸君をぶん殴ってぶっ飛ばしたから、その子を『ソウル』の『ヒーロー試験』に参加させると?」
「まぁ、そう言う事だ。でも、『ヒーロー試験』は毎日しているだろ? だから明日の試験に出してくれないか?」
「ま、まぁ、良いけれど……え、えーと、陸人君、だったかな? 君、家に帰れる?」
「えぇ、帰れますよ? ただ──」
 戦場雁陸人はそう言うと静かに口の端を歪ませる。
「海斗さんが居たこの『カリギュラ』、もっと居たいです……だから、此処の仮眠室で寝かせてくれませんか?」
 戦場雁陸人の発言を受けて、社長が頬を掻きながら返答する。
「……一つだけ言っておくよ? 海斗君は此処で寝泊り、ほぼしていないよ?」
「えっ? マジ? それなら早急に帰ります」
「その方が良いね」
 戦場雁陸人の潔い返答を聞いて、『ハハハ……』と笑う社長。そして社長は笹原大尽に言う。
「そ、それじゃあ、陸人君の家迄運びなさい、大尽君?」
「はぁ? 何で俺が……?」
「大尽君? 君が進めるって事は、『それ程迄に育てたい『人間』』って事だよね? 十年以上前の加賀美君のように、ね?」
「……チッ、分かったよ。おい、陸人、一緒に帰るぞ?」
 そう言う笹原大尽。戦場雁陸人は『うん、分かった』と返答し、二人で社長の部屋を出る──
「……はぁ、海斗君かぁ……懐かしいなぁ。10歳で死ぬってか……可哀想に……」
 社長はそう呟きながら、溜息を吐いた──

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