完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

ロストヒーロー計画(完結)/ラストヒーロー計画
作者: 彩都&Lメイドウィン ◆B/lbdM7F.E  (総ページ数: 221ページ)
関連タグ: メイドウィン小説 オリジナル仮面ライダー 仮面ライダー 原作、設定:彩都、執筆:メイドウィン 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~ 160~ 170~ 180~ 190~ 200~ 210~ 220~

*193*

「……はぁ、どうしてこんな面倒を……?」
 そう呟きながら、笹原大尽は溜息を吐く。そして笹原大尽は『カリギュラ』近くの『巨大な穴』を見ながら、再度、溜息を吐いた。『巨大な穴』、通称『大神災(だいしんさい)』、確か8年程前に『一人のヒーロー』の『ヒーローソウル』が暴走して、『巨大な穴』を開けた『カリギュラ』史上最大の巨大な事件だ。この現場に色々なヒーローが居たが、『暴走』の原因で全員『消滅』し、死んだ──そう、『消滅』し、死んだ、のだ。つまり、『消滅した』だけで『死んだ』かどうかは分からないのだ。そう、『消滅した』から『死んだ』と勝手に決め付けられたのだ。そして何故『死んだ』と決め付けられたのか? それは現場に『遺留品』も『遺品』も何も無いからだ。極論言ってしまえば『消滅した』のではなく、『飛ばされた』、という可能性もある。『飛ばされた』と言っても、『この世界の何処か』か、もしくは『異世界』か……まぁ、そんな事を今考えても無駄だろうなぁ……そんな事を考えていると、戦場雁陸人が笹原大尽の顔を覗いていた。
「どうしたの、大尽……さん?」
「ん? あぁ、『大神災』の事を思い出していて、な……」
「そうか。『大神災』か……確かにあれは凄かったなぁ。『死んだ』かと思ったもん」
「……ん? 今さっき何て言った?」
 変な言葉が聞こえた笹原大尽は聞き返す。すると戦場雁陸人が返答する。
「いや、だから、『あれは凄かったなぁ』って。そう言ったんだよ」
「い、いや、その次!」
「その次? あぁ、『死んだ』かと思ったもん、か?」
「そうだよ!? お、お前……『大神災』の生き残りかよぉ!?」
「うん、一応は」
 とんでも情報を簡単に言う戦場雁陸人に対し、何でそう簡単に言うんだよ! 大事な情報を! と思う笹原大尽。そして笹原大尽は静かに考える。そういえば『大神災』で生き残った奴って……『ほぼほぼ生き残っていない』よな……? 生き残った、つまり『新聞にも名前が載っている』筈だ。だが、コイツの名前は聞いた事がないぞ……? それはどういう事なのだろうか? 逐一不思議だ……笹原大尽はそんな事を思いながら、顎に手を当てる。すると戦場雁陸人が『あっ、此処俺の家だ』と発言する。
「は、はぁ? 案外近いんだな……」
「まぁな? だって、海斗さんが居たヒーロー協会を毎日見れる位置に空家を見つけて住んでいるからな」
「す、ストーカーかよ……?」
 笹原大尽がそう言うと、戦場雁陸人が言う。
「いや、海斗さんが居ないのにストーカーとか可笑しいだろ?」
「ま、まぁな……」
 戦場雁陸人の発言に頷く笹原大尽。そして戦場雁陸人と笹原大尽は戦場雁陸人の家に向かい、家の中へと入る──だって、コイツ一人で寝かせた場合、起きる時間が明日の『ヒーロー試験』に間に合わないかもしれないからな……笹原大尽はそんな事を思いながら、靴を脱ぎ、家の中に入る──

「なっ……何だこれは……!?」
 戦場雁陸人の家の中を確認して笹原大尽が大声を荒げる。否、言葉を失った。それもその筈、『戦場雁陸人の家の中はとてもとても汚かった』からだ。まるでゴミ屋敷、いや、廃材屋敷とも取れる程汚かった。
「まぁ、適当に座りなよ」
「座れるかぁ!? 何処をどう見て座れるんだ!?」
「まぁまぁ? そうかっかせずにさ?」
 戦場雁陸人はそう言って、手で床のゴミを掃って、その場に座る。笹原大尽も仕方なく真似て座る事にした。
「えーと……お前、一人暮らしなの?」
「いんや? 二人暮し」
「へぇ。誰だよ?」
「んー? 俺のおやっさん。あっ、おやっさんっと言っても、俺の親父の弟さん」
「へぇ……お前の両親は何処に?」
 笹原大尽がそう言うと、戦場雁陸人はその場で静かに答える。
「両親は……『いない』ね。物心ついた時から」
「……そうか」
 もしかして十年前の? と考えるが、流石にそんな時からこんなガキ一人置いていかないよな? と判断する。そして笹原大尽は静かに戦場雁陸人に言う。
「よし、それじゃあ、お前の話はある程度理解した。だからもう寝よう?」
「えっ? 何で? まだまだ夜は更けたばっかだぜ?」
「いや、お前が寝過ごさないように、だよ!」
「へぇ、大尽さんって優しいんだな?」
「……ケッ、何処が優しいんだか?」
 笹原大尽は小声でそう言って、寝る為に布団を探す。そして布団を見つけ、布団を敷き、就寝する事を考える。
「さぁ、寝よう? 明日は早いからな?」
「早いのかぁ」
「そうだぞ? 明日は八時迄に起きるんだ良いな?」
「難しいなぁ?」
「む、難しいって……まぁ、良いか、よし寝るぞー?」
 そう言って、笹原大尽は電気のスイッチを押して電源を消す。『はぁ、仕方無い寝るか』と言って、戦場雁陸人は寝息を立てる。そんな中、電気を消し、真っ暗闇の中、笹原大尽は静かに考える。
 一体コイツ、どんな修行をしたらあんな破壊力に……? ってか、大陸、大丈夫なのか……? 笹原大尽はそんな事を思いながら、寝転がって寝る事にする──

 そして翌日。じゅぅと何かを焼く音が聞こえる。一体何の音なのだろうか? と考え、笹原大尽は起き上がる。隣には戦場雁陸人。と言う事は『戦場雁陸人が何かを焼いている』という訳では無いんだな、と判断する。そして起き上がって、周りを確認する。すると自分達が寝ている場所の奥、厨房で一人のスーツの男性が料理を作っているのを理解する。
「……お前は、誰だ?」
「その前に他人に名前を聞く時は先に自分から名を名乗れよド三流が?」
 そう言うスーツの男性に対し、静かに笹原大尽が言う。
「……俺の名前は笹原大尽、昨日コイツが『カリギュラ』に来たから保護をした。そして俺の役職は『カリギュラ』の会長だ」
「そうか。そう言う誇大妄想、中々に面白いな」
「なっ……!? 誇大妄想では無い! 俺は笹原大尽だ! ちゃんと証拠もある!」
 笹原大尽はそう言って、財布を取ろうとするが、『ポケットに財布が入っていない』事を理解してしまう。あれっ? 財布、昨日持っていた筈なのに……? そう思うと、スーツの男性が言う。
「……まぁ、そんな冗談は置いといて、財布は此処だぜ?」
 左手で財布を上に上げて、お手玉の様に遊ぶスーツの男性。笹原大尽は一瞬でスーツの男性の背後に移動し、近くにあった包丁をスーツの男性の背に当て、財布を奪う。
「おいおい? そんな『包丁(斬る時と刺す時しか使えない脆弱な武器)』を手にしてどうするつもりだ? ミーを斬る? ミーを刺す? そんなコト、本当に出来るのか? アンタ今さっき『カリギュラ』って言ったよな? と言う事は『ヒーロー』に関わっている者、と判断しても良いかな? そんなヒーローがミーを刺す事が、ミーを斬る事が出来るかな?」
「だっ……黙れ! お前、一体何者だ!?」
 焦りながら笹原大尽が言うと、静かにスーツの男性が言う。
「ミー? ミーはコイツ……いや、陸人の父の弟だ」
「なっ……!?」
 まさかの発言に包丁を落としてしまう笹原大尽。そしてスーツの男性が言う。
「はぁ……汚れてしまった。全く……今日は厄日だ。十二時丁度に鳥の糞を頭に落とされ、ホテルを借りてシャンプーを使おうとすると、まさかの弾切れ。そして家に帰ってきたら来たで変人がいたし……」
「ほう? 俺をそう言う風に言うんだな? 後で賠償請求でもしようかなぁ?」
「勝手にすれば? 勝手にすれば良いじゃないですか? 金はたんまりあるので」
 スーツの男性はそう言って、その場でビールを一口、口に含んだ。『あぁ、美味しい』、そう言って、スーツの男性は息を漏らした。
 一体コイツは……何者なんだ? 『金はたんまりある』と言っていた……だから何か変な感覚だ。まるで金持ちに見えない風貌をしている。一体コイツは……何者なんだ? 笹原大尽はその場で包丁を拾い、シンクに置いた──今はコイツの正体を探って、弱みを握る事を先決しようか……? 笹原大尽はそう思いながら、戦場雁陸人の隣に座りこむ──正体が分からない、戦場雁陸人の父の弟の背を見つめながら──

192 < 193 > 194