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作者: 彩都&Lメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (総ページ数: 221ページ)
関連タグ: メイドウィン小説 オリジナル仮面ライダー 仮面ライダー 原作、設定:彩都、執筆:メイドウィン
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「……ふぅ、良く寝たぜ?」
そう言って、戦場雁陸人が起き上がる。すると隣に笹原大尽を見つけ、『おっす』と発言する。
「おっすじゃねぇよ。ありゃ一体何なんだ? お前の親の弟とか言っているが……」
「んぁ? 何の話……って、叔父さんじゃないか。お久し振り。多分一週間ぶりだね」
「まぁな。仕事が忙しいしな?」
そう言うスーツの男性。その会話を聞いて、『忙しいのか』と判断する笹原大尽。そして腕時計を確認し、時間を知る。
「ふむ、七時半、か……まだまだ時間は間に合うな。体感で約十分……まだ間に合う」
「ん? 笹原大尽さんよ、アンタは何を言った?」
「いや? 別に?」
「そうか。そうか、それならいい。どうせアンタ等飯を食っていないんだろ、昨日」
「おっ、良く分かったな叔父さん!」
戦場雁陸人がそう言うと、『そりゃ……皿も出していないし、箸も出ていないからな?』と返答する。
「あっ、そりゃそっか」
「お前なぁ……」
静かに呆れるスーツの男性を見て、『コイツも苦労しているんだな』、と判断する笹原大尽だった──
そしてスーツの男性はすぐさま机に料理を置いて、『さぁ、食え』と発言する。
「頂きます」
「い、頂きます……」
戦場雁陸人は簡単に料理を食べ、『うめぇ』と呟く。だが、笹原大尽は箸を手に持ったまま動かない。
「……陸人が食べているんだから、安心しろっての」
「あ、あぁ……」
仕方なく料理を食べる陸人を見、自身も食べる事にする笹原大尽。そして笹原大尽は静かに料理を口に運び、驚愕する。
「な、何だこれは!? 途轍もなく美味いな!」
「まぁな? 一応独身時代が長かったからな?」
「そ、そうか……」
笹原大尽がそんな発言をすると、急に笹原大尽の腕時計が鳴った。何だ? と思って確認すると、ただのアラームだった。時間は七時半を指していたモノが、七時四十五分を指していた。
「……よし、それじゃあ、俺は『カリギュラ』に戻る。『戦場雁陸人の保護及び擁護』のミッションは完了した」
「おー、ありがとー」
「全く……ほら、お前も立ち上がるんだよ!」
そう言って、戦場雁陸人の腰のベルトを掴む笹原大尽に対し、戦場雁陸人は首を傾げる。そして『あっ!』と叫ぶ。
「そうだ! 俺、『カリギュラ』に入るんだった! それじゃあ、叔父さん! 料理は全部食べてて!」
「……忙しないガキだな、お前は……はいはい、分かったよ。さっさと行って、一発で合格して来い」
「うい!」
「お、お前……ヒーローに否定的では無いのか? 数年前、数十年前の出来事とかを知らないのか?」
そう言う笹原大尽に向かって、スーツの男性が返答する。
「関係ねぇよ。ヒーローになるって言ったのはコイツ。だから俺は関与しない。『自分が決めた道に大人が関わっちゃいけない』んだよ」
「……そうか。それじゃあ、このガキを借りるぜ」
「勝手に借りてろ。勝手に返すな」
「おいおい? 陸人に酷い事を言うなぁ?」
笹原大尽がそう言うと、笹原大尽に腰のベルトを掴まれている戦場雁陸人が言う。
「大丈夫だよ。叔父さんは照れているだけだから。内心俺を応援しているよ」
「ケッ? それはどうだか?」
スーツの男性はそう言って、胸ポケットから煙草を手に取り、ライターから火を燈し、煙草に火を点け、煙草を吸う。そして笹原大尽と戦場雁陸人のペアは静かに家を出た。
「……ったく、あのガキ……可愛げがねぇや。あーあ、どうしてあんなガキ、拾ったんだ……」
そう言って、灰皿に煙草の灰を落とす。そしてスーツの男性は静かに戦場雁陸人と出会った日を思い出した──
「うぉぉ! 急げ! 時間がねぇ! まさかこんなに信号を待たされるとは! 本当に激怒しちまう!」
走りながら叫ぶ笹原大尽に対し、静かに虚空を見つめる戦場雁陸人。そんな戦場雁陸人を確認する笹原大尽は静かに言う。
「お前……何処を見ているんだ……?」
「んー? あぁ、『超巨大人工衛星 エデン』の『アダム』だよ」
「あぁっ? ……あぁ、『あの』人工衛星かぁ……」
笹原大尽はそう言って、目の端に映るテレビに表示された『超巨大人工衛星 エデン』の『アダム』を確認する。『大神災』が起きた後、日本の政府及び、世界の政府は『ヒーローの暴走』を宇宙から視認出来る衛星を考え、『世界のヒーローユニフォームに『超巨大人工衛星 エデン』と通信するチップを投入』した。勿論そのチップは『カリギュラ』にも適用され、宇宙の『超巨大人工衛星 エデン』からヒーローをテレビで確認出来る様になり、最終的にはスマートフォンやタブレットで『ヒーローの勇姿』が見る事が出来る様になった。だが、笹原大尽にはもう『ヒーローになる資格』は無いので、意味が無いが。……本当、この十年間でこの街も、この日本も、この世界も、何も変わってしまった。もしも海斗が生きていたら……どんな世界になっていただろうか? とたまに夢想する。だが、今は居ない存在の事を考えていても、虚しくなるだけだから、最近は夢想しないが。でも、あの『超巨大人工衛星 エデン』も凄いよなぁ? だって、『ヒーローが変身した瞬間に録画及び撮影開始される』からな? 完全に『機械に支配されたヒーロー』だ。
そんな事を考えると、何時の間にか信号が青になり、赤になる手前の点滅が起きていた。
「っととっ。もう『カリギュラ』だ。後少しだ」
笹原大尽はそう言って、青になった信号を越え、『カリギュラ』の施設へと足を素早く運んだ──