「インパクト」編

インパクトとはなにか

貴方しかできない、貴方ならではの表現のことです。
実は「インパクトを強くしなければ!」等あまり難しく考えたり意識する必要はないんです。
インパクトにはなによりも『貴方である』ことが大事です。
他人や評価を意識しないで、自分の突きつめたい境地のみにとことん集中することが大事です。
他者への媚びでなく、自身の理想追求の形が文字に現れれば成功に近づきます。


インパクトがない(弱い)とはなにか

極めて常識的な範疇にのみ、表現が収まってしまうことです。
テレビや新聞で日常的、定型的に使われている表現ばかりになっていませんか?
その人らしい視点がないもしくは足りない文章では、物語の語り部(作者)が誰なのか読者に見えません。
読者に『たとえ同じ物語(ストーリー)でも、他の作者でなく貴方に語ってほしい』と思ってもらえなければ、印象に残ることができません。


インパクトを強くするには

借り物の言葉を使って安易に表現しまっている箇所はないか、本当に自分の表現したい気持ちと言葉がぴったり合っているか、等自分が本当に表現したいものはこれなのか?これでよいのか?と常に自問して、どうすればもっと自分の理想が形にできるかを何度も苦しみながら試作していきましょう。

なお、「今までにないやり方」の解釈を、奇をてらう(珍妙な)、あざとい(媚びた)表現をすることとはき違えないよう注意が必要です。これらは自分らしさを求める姿勢とは逆方向のものですね。

例えば、「本気で泣け」と指示された役者Aと役者Bがいるとします。
・役者Aは「こうすれば役者Bの演技と被らずにすむだろう」と思いつつ、大げさに肩を震わせたり頭を床に伏せて泣く演技をします
・役者Bは「急に頼りにする人を失った時の心細さを本気で思い出し」て、ただ涙を流しました
どちらが実際に観客の心まで伝わるでしょうか?

またさらに「Aは動くな、Bは動け」と指示がでたとします。
・役者Aは(涙をたくさん出せば観客はとても悲しいことがと分かるだろう)と考えながら、ただ涙を流しました
・役者Bは(思わず体を大きく動かしてしまうほどの悲しみとは自分ならどのような心情だろうか)と考えながら、大きく肩を震わせたり頭を床に伏せる演技をしました
どちらが実際に観客の心まで伝わるでしょう。

純粋な幼児ならともかく、社会(他者との関係)にそれなりにもまれてきた観客というのは、役者Aと役者Bの現した『表現の形、外型』そのものよりも、むしろその形を生み出した根底の『心』『視点』に関心をもち、それらを鑑賞しているのです。

読者をそう簡単に騙せるとは考えない方がよいでしょう。
むしろ、作者よりも全ての能力値において優れた読者はたくさんいると考えておいた方が、覚悟できるのでいいですね。
例えば、社会に適応できなかったから(他の競争で負けたから)小説家になる、というネガティブな動機や心境に留まるうちは、読者の方が感度が高い場合その作者の作品はこてんぱんに酷評されることになります。そもそも見向きもされない可能性のほうが高いかもしれません。

でも、絶望はしないでください。
人はあきらめずに粘り続ければ必ず成長しますし、人生に数回は確変するチャンスもあります。


インパクトとは文字の使い方ではなく、作者の志(こころざし)

作者さんは自分自身の感じ方(心)を放置したり置き去りにしないでください。
小説は名文である必要はないです。しかし、貴方である必要はあります。

常識的な方法・技術論(表現法が被らなければいい/こう表現しさえすれば伝わる)だけで攻めると、その意図はまるっと読者に透けて見え、よかれとおもった手法も逆に不快に思われてしまいます。
文章技巧が今どれだけ下手でも『自分らしい視点』をつかんだ作者さんは、最終的に強いですよ。