「論法」編1

ロジックの基礎を知ろう

「どうしてそう言えるの?」と誰かに問われたときに「なぜなら○○が~~だからだよ」と説明したりしたことがあると思います。
論理を学ぶと、複雑な事柄でも正しく理由を説明することが可能になっていきます。
論理にかぶれすぎると相手を打ち負かすことに使い始めるというようなデメリットもありますが、論理の基礎だけでも知っておくと、小説を執筆していくなかで、複数の考えを矛盾なく組み立てたい時などにとても役立ちますよ!!


三段論法

三段論法は有名ですね。『条件』と、その条件が導く『結論』について考えてみましょう。
三段論法では、矢印(⇒)の向きが非常に重要なポイントです。矢印の向きを逆にしてしまうと正しく推論できなくなってしまうのでご注意ください。何が条件かをしっかり押さえておく必要があります。
※ちなみに、ここでいう「命題」とは、文章中に1つの主張や判断がはっきり示されているもの、としますね。
命題が正しい時「その命題は『真』である」、命題が正しくない時「その命題は『偽』である」という言い方をします。

【例】以下の3つの命題は真であるとします。
・犯人は甘党だ
・甘党は音楽好き
・音楽好きはカキオだ

ここから、「犯人はカキオだ」と推論ができます。さて、なぜでしょう……?

以下では、なぜかわからない人向けに説明をしておきますね(わかる人は飛ばしてください)。
まず、それぞれの言葉を文字に置き換えます。

・犯人=A
・甘党=B
・音楽好き=C
・カキオ=D

そして、上記の【例】をA~Dでおきかえてみます。
矢印⇒は条件を表します。

・AならばB(A⇒B)
・BならばC(B⇒C)
・CならばD(C⇒D)

上の3つはそれぞれ成り立つので A⇒B⇒C⇒D と表せます。 ∴(ゆえに)A⇒D だといえます。

A⇒Dを文章になおすと「犯人はカキオ(答え)」になりますね。
パズルみたいで面白いですよね。
仮に推理小説を書こうとするとき「犯人はカキオ」と書いてしまえば、話が即座に終わってしまいます。
しかし、カキオを最終的に犯人と導く『条件(手がかり)』を示す「命題(文章)」をいくつも挿入していけば、小説の中身が膨らんでいきますね。上の例でいえば、「甘党は音楽好き」という、一見何の関係もないような第2の命題が真だと分からないかぎり、犯人が誰か推論することは不可能です。「犯人はカキオ」という正しい論理はきちんと通しながらも「犯人」と「カキオ」の文章上の距離は思っきり離したり、近くても容易に読み手に犯人=カキオだと気づかせない工夫ができるわけです。


事象の「逆(ぎゃく)」は必ずしも真(しん)ならず

逆とは、もとの命題(条件)の方向(⇒)を否定、順序をひっくり返した(←)ものです。

【例】の「逆」
・甘党なら犯人だ
・音楽好きなら甘党だ
・カキオは音楽好きだ

『逆』の場合は、「必ずしも」真ではありません。真となる事象がまだ他にもあったり、偽を含んでいたりするからです。


事象の「対偶(たいぐう)」は真(しん)

ちなみに対偶は真です。対偶とは、上の「逆」の命題を、順序を変えずに、各要素をさらにそれぞれ否定したものです。
元の【例】命題から見ると、順序をひっくり返して、さらにそれぞれ否定したものが「対偶」となります。

【例】の「対偶」
・甘党でないなら、犯人ではない
・音楽好きでないなら、甘党ではない
・カキオでないなら、音楽好きではない

これらはそれぞれ真(正しい)です。ゆえに「カキオではないなら、犯人ではない」も真(正しい)です。
最初はちょっと混乱しますが、基本はシンプルです。色々と応用して楽しめますよ。
今回の例文がわかりづらければ、自分のわかりやすい設定で考えてみるといいと思います。恋愛に例えると

【例】元の命題
A子はC君を好き

があったとします。元の命題の「逆」は

【例】元の命題の「逆」
・C君を好きなのはA子

となり、これは必ずしも真ではない(正しくない場合がある)ということがわかりますね。さらに元の命題の「対偶」は

【例】元の命題の「対偶」
・C君を好きでないならA子ではない

となり、これは真である(正しい)といえます。つまり

【例】『元の命題』=『元の命題の「対偶」』
・A子はC君を好き=C君を好きでないならA子ではない

が成り立ちます。さらに、もっと命題の数を増やしてみるとどうでしょう。例えば

【例】
・B君以外の男子はA子を好き
・A子はC君を好き
・B君はB子、C子とD子も気になる
・C君はC子を好きではない
・D子はB君と僕を好き
・僕はC子のことを気にしてない

などなど……さあ、複雑になってまいりました!!
何が真?何が偽?など、単純なことをあえて複雑に言い換えたり、逆に複雑なことをすっきりと整理したりなんてこともできますね。ある命題が真なら、その対偶も真ですから、正しい命題を発見したらすぐさま対偶に置き換えてみたり。同じ事柄でも、文章の言い表し方がほんの少し変わるだけで、文章から受ける印象も少しずつ変わるような気がしませんか?
言葉はまるで魔法のようだと感じる瞬間もあるかもしれませんよ。

「僕はC子のことを気にしてない」でも「C子のことが気になるなら僕じゃない」という言い方もどちらも可能です。
『C子のことを気にしてないなら僕だ』の否定、 とも言えますね。もはや「何をいっているのかわからないと思うが……」という状況ですね。ちなみに、対偶の否定の反対は、命題そのものになります。まあ、こんな言い方を実際にする人がいたら、かなり面倒くさいですが……。

こんな言い方なら、普段でも耳にするかもしれませんね。
「○○君が嫌いなわけないじゃない!」
まさに「当然○○君が好き!」命題そのものです。
まどろっこしい言い方をすることで、その人物の心のゆれ動きや複雑な変遷を表わすこともできますね!

こういう文章の組み立て方法(論理)を、小説に入れてみるのも時には面白いかもしれませんよ。


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