小説の書き方 「プロット」編
たとえば、箇条書きなど短い言葉で書いて、ストーリーの土台を仮組み<かりぐみ>する作業です。
伏線や謎かけ(フラグ?)を複数まいたり、それを回収するタイミングなど、複雑なストーリーになればなるほど重要になってきますね。
プロットは「あらすじ:完成した小説について簡潔にまとめた文章」ではなく「下書き:まだ本番じゃないけど仮決めのストーリーを簡潔にまとめた文章」なので、かならずしもプロットの通りに本文を書かなくてはいけないと思いこむ必要はありません。
ただ、基本的には下書きが良ければ本文も良いものになる確率は高まりますから、変更を随時加えつつ、地道に丁寧に小説を作り上げていきましょう。
例:桃太郎
- ▼ 森の中でおじいさんとおばあさんがくらしている
- ▼ おばあさんが川で桃を発見(なぜ桃なのか…伏線や暗喩)
- ▼ 桃を切るとなかから男の子(なぜ男の子?…伏線や暗喩)
- ▼ 男の子は父母不在のまま青年に成長
- ▼ きびだんごと旗をもらい鬼ヶ島へ出発(なぜ鬼ヶ島へ?だんごと旗の意味は?…伏線や暗喩)
- ▼ 犬、猿、雉は、きびだんご1粒もらい桃太郎の家来になる(命を任せるほど欲しがるきびだんごとは一体?…伏線や暗喩)
- ▼ 悪い鬼を退治(鬼、鬼ヶ島とは何か?どこか?…伏線や暗喩)
- ▼ 鬼から宝を奪い、家へ帰還(宝とは何?だれのもの?…伏線や暗喩)
- (おしまい)
プロットを書き出すと、必要なエピソードや人物がはっきりとみえてきたり、逆に不要な要素もはっきりしてきます。
もやもや~っとした設定も「なぜ?」「どうして?」という根拠を整理することができ、初心者にはとても有効な作業です。
ストーリーを無事に最後まで書くあいだ、このプロットを何度も繰り返したたき台とすることで、あなたの迷いを少なくして心強くささえてくれますよ。
「途中で自分がどんなラストにむけて書いているかわからなくなって(忘れて)しまう ⇒ 途中で執筆を放棄」
とにかく感情にまかせて!勢いで執筆するだけ!のタイプに起こりがちなリスクも、これで回避しやすくなります。
プロットは自分に向けて書くものなので、殴り書きだろうと、単語帳だろうと、まずは自分にだけわかる書き方でいいのです。
なんなら覚えていられるなら頭の中でプロットを作ったってOKです。紙でなくても、音声だってよいのです。
本人がわかる方法ならなんだって一向にかまわない、それが「プロット(下書き)」です。
他人がこうやるから~…なんて気にせず「自分に一番分かりやすい」ものを作りましょう。
プロット=ラフ画、下書き、スケッチ
絵を描くとき、下書きをざっくりしますよね。配置やバランスをざっくりみたりするための、当て込みです。
いきなり最終的な実線を書ける人も中にはいるとは思いますが、プロを目指してまずは技術向上を目指すのであれば(作れないといけないものではありませんが)ぜひプロットを作ってみましょう。
漫画で育った世代なら、漫画家さんをイメージしてみましょうか。
最終ペン入れの前に、まずは紙にざっくりシーンを分け、必要ページ数を調整し、鉛筆でワーッと丸のようななぐり書きで、おおざっぱなセリフや位置関係考えたりしますね。画家さんなら、下書き、スケッチでしょうか。
作品にとって無駄なボリューム、理解しにくいところ、続く場合の魅力的な"ひき"など、いろいろ確認できますね。
プロット時点で思いきって1シーン丸ごと削るというのも、重要なシーンをひきたたせる一つの方法にもなります。
カメラワーク(描写)を整理する
絵画、映画、漫画だけでなく、小説でも『カメラワーク』は大事です。小説におけるカメラワークとは『描写』です。
たとえば1話について、このシーンを印象に残したいからここで人物の動きをズームした後、視線をゆっくり流しながら空に向けて終わり、などざっくり計画していきます。小説は文字だけで綴られますから、描写(セリフ以外の文字)でないとできませんね。台詞でこれらを言わせると「実況中継」になってしまいます。
特に重要なシーンなら、何パターンも考えて「もう、これ以外にない!」という、最高のタイミングとシチュエーションを選んでみましょう。絵的、図的に人間関係を整理するプロットも結構いいものですよ。自分らしいプロットを作れたらきっと楽しいでしょうね。
読者を意識する
漫画だけに限らず小説においても「ラフをおこす(プロットをつくる)」というのは、作品の出来に関わる、宝のような作業です。
素人によるプロットづくりであっても、それは立派にエンターテイメントを追求する姿勢ですから、その頑張りは小説本文にもいつかきっと現れてくると思います。人に見てもらいお金をもらうことがどういうことかを考えればわかるように、自分以外の目にふれないこのプロットづくりへの時間の使い方が、非常に決定的な分かれ道へとつながっていきます。
プロットを作ると、つい忘れがちな「他者の視線」まで戻ってくることができます。
「人の目や思考は、このストーリーを読みながら、どういう風に流れていくだろうか?」と読者目線に立ち返ってみるのは、作品を書きあげた後だけではありません。書く前も、最中も、後も「この作品を読むのは読者なんだ」ということを思い出させてくれますよ。
プロットも上達する
もちろん、いいプロットをつくったからといって、すぐに優れた作品が書けるわけではありません。
批評・批判され傷つき「プロットなんか作ったって全然意味なかった……」と感じるかもしれません。
でも、プロットを作る・作らないにかかわらず、小説を書いて投稿する以上は他者の批評・批判から、この先も絶対に逃れられません。
プロ作家さんは、単なる小説の出来不出来という批評・批判にさらされるだけではありません。
「努力」や「頑張り」に一概に比例しない「売上」「人気」という得体のしれないものともたたかって勝ち抜いておられます。
自分の作品の土台を少しでも質を高いものにして、なんであろうと堂々と正面切って提供するのが『プロ』です。
『一定数の人を楽しませる小説を、結果として提出できるかどうか』がプロとアマチュアの、最初の大きな境目です。
素人でも今できることは、作品の質を、少しでも、あとほんの少しでも、高めること。
プロットをもとに本文を集中して書き、その後ぬかりなく追加・削除をくりかえし、地道な努力を続けましょう。
ロジック派の、言葉や読者の感情までも緻密に計算しバランスよくちりばめ、安心と安定のなか読者をゴールまで心地よく連れていける構成力は素晴らしい強み・魅力と思います。
計算されたストーリーを得意とするロジック派には、練りあげたプロットこそ最大の武器かもしれませんね。
※プロを目指していない人にとっては「プロットなんかつまんないし最初っから不要!」という議論・主張は成立します。
その場合は上記を参考にしないでくださいね。
プロットが要る人にはいるし、要らない人には要らない
「プロットなんかぶっちゃけいらなくね?」という一部のフィーリング派の牽制球?や、「プロットを書いたらがんじがらめで面白く書けなくなってしまうかも」「本文だけ書いたほうが効率良いんじゃ?」「よけいなことをしているのではないか?」という声で不安になるかもしれません。しかしプロットに限らず、すべての人に絶対必要な道具など存在しません。紙とペンすら不要という作家さんもいます。
実際プロット(紙)なしでも、面白い小説が書ける人がいるのは事実です。
しかしそういう人は、『頭の中にプロットをきちんと構成できているから』紙に書いて整理しなくても済むのかもしれません。
なら、頭の中だけで完全にすっきり整理できない人には、やっぱり考えを形にする作業というものは必要だと思います。
プロットは「下書き」
「プロット」という言葉じたい、あまりなじみがないですね。
プロットという言葉を聞いたとたん「プロットって何???」と疑問符がいっぱい出ます。
「(ざっくりした)下書き」ならちょっと身近にイメージしやすくなりますか。
『下書き』をしたほうがいいかと聞かれれば、したほうがいいですよね。そのほうが成功する確率は上がりますから。
「一球入魂」ならぬ「一作品入魂」の精神は大事です。下書き段階なら、何度でも考え直したり気軽に大がかりな変更もできますね。
ある程度まで書き始めてしまうと、例えば主人公をやっぱり変えたい等、大がかりな直しに踏ん切りがつかなくなるものです。
目的は「面白い小説を書く!」
漫画にしろ小説にしろ、読者が実際に目にするのは、プロットではありません。
プロットを元に『出来上がった作品』を、読者は目にするわけですから、プロットとはそういう意味ではつまらなくてもいいし当然です。
また、プロット通りに話を進めなくてはならないと思ってしまうからプロット不要という議論に向かいがちになります。
読んだ人が面白いと感じる小説ができることが第一義です。そのための一つの足がかりがプロットです。
プロット通りに完成させることが第一目的ではないのです。
面白い小説が書けるなら、プロットがあろうとなかろうとどっちだっていいので、プロットが必要か不必要か議論すること自体不毛になります。
最初はどのようにプロットを書けばいいのか(正解なんかないので)わからなくて、執筆するうえでのの道しるべというよりもむしろ足手まといか!?と思うくらい何度も作り直しが必要となったりします。
しかし徐々にプロット自体の精度も上がってくるので、手直しの回数もきっと減ってくるでしょう。
そこまでくれば、プロットが自分の心の手足のようにある程度自在に動いてくれるようになっていて、執筆する上で非常に役立つツールの一つになるはずです。
基礎力アップに有効!
自分の作品を時々鳥瞰<ちょうかん>・客観視できる方法を排除するのは、プロを目指す自分とその時間に対して目隠しするというか、命綱がない状態に等しいです。
いかなる失敗も糧になるとはいえ、一つ一つの小説執筆に対する貴重な『時間』がドボン(古いですね……)するかもというリスクは、なるべくなら少なくしたいものです。
基礎力があるかないかくらいは、自分自身の感覚で分かると思います。
自分には基礎が足りないと思う場合は、小説本文をいきなり書き始めず「ラフな下書き=プロット作成」を初心者のうちに何度もやってみておきましょう。
プロットを毎回書くことをやめるのは、プロになって一定の質の小説本文を自由自在に書けるようになったと実感できるようになってからでも全然遅くはないと思います。
- 続いては「執筆」編です。では、次のステップへいきましょう。
書き方・ルール
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