「読書と模倣」編
余暇をつかって、良く読もう
苦行みたいな読書は、初心者には必要ありません。
教科書やメディアに取り上げられる一般に良書と呼ばれる作品であっても、自分にとって一向に楽しくもない本であるなら、無理に読み続けるのは自分に似合わない服を無理に身につけつづけるようなもの。それではいつになっても自分の良さ(感性)に気付くことはできません。
※勉学に励まなくていいということではありません。あくまで、余暇における読書についてです。
自分が読んで楽しい、目が惹きつけられる、なぜかわからないけれど抗えない魅力を感じる……など、読書している時間を集中して楽しめ、作者にまんまとやられた!この時間泥棒め!!と言いつつ顔がにやけるような、自分にとって価値ある読書体験を重ねていきましょう。読み終わったら、なぜその小説を面白かったと感じたのか、その理由も考えてみましょう。面白い小説に出会えなければ出会うまで。地道に探していきましょう。やみくもにベストセラーを読み漁るのもよし、誰もが気づかないような本棚の隅っこを狙っていくもよし。もし心から大好きと思える作品が見つかったなら、1作品でいいですから、試しに暗誦できるほどに何度でも繰り返し読み込んでみましょう。
表現の第1歩は、自分が良いと思うものや憧れるものを完全模倣できるくらいまで吸収するところから始まります。まずは既にある文化の模倣は実はとても大切で、パクリ・著作権に触れるという商業利用や盗作の問題とはまったく別次元で、純粋な文化の後継作業です。尊敬する作品の良さ=既存のお手本としての「型」を、まず心体にしみこませて理解するのです。その次の段階で、型からもがきはみ出そうと努力するわけです。
大好きな作家さん・作品の真似(模写・模倣)をしてみよう
初めは誰もが無力です。1章でも1節でもいいからまずはプロ作家さんの作品を模写してみましょう。そして、たとえ最初は既存の特定作家さんの著しい劣化コピーにすぎないとしても、その作家さんならどう書くだろうか?と意識し自分の作品にも練りこんでみてください。2~3日というのではなく、結構まとまった期間(例:3か月)を1つの模倣時間として割き、そっくり書きぶりを真似てみるといいです。有名絵画の模倣デッサン修行と似たイメージですね。
※これは練習段階でのことです。この段階でプロ輩出の小説大賞に作品を出すとただの模倣とみなされ、まず落ちるでしょうからご注意ください。
それまでの自分では全く思いもつかなかった言い回しや、シーンの組み立て方、キャラクターの魅せ方等々、自分にとって有益と思える圧倒的に優れた技術などが、体にインプットされていくのが実感できるようになります。面白く感じられない苦しい読書を延々と続けていくくらいなら、むしろ自分が大好きな本を一冊丸ごと模写してみるほうが、小説家を目指す上で限られた時間を有効に使えると思います。読みたい本が次々ある場合は、模写は後回しで多読・乱読を続けていくのも有益です。好みや生活環境も影響しますので、自分らしい上達の道は人それぞれで異なりますね。
劣化コピーのままで居続けたい人など通常いませんから、既存作家さんの強大な魅力や影響を受けながら、自分らしさを模索していく苦しい経験もしていくことになります。自然と文化や技術を受け継いでいく者の、ありのままの姿だと思います。
ただ、真似・模倣する以上は『自分の作品は○○という作品の模倣である(あるいは強く影響を受けた)』ことを宣言しておくあらかじめ必要があります。真似た部分があるにもかかわらず、あたかも自分がすべて考えて書いたかのような誤解をまねくような表記は絶対にしてはいけません。
なお、ずっと自分らしさに気づくことなく劣化コピーのまま終わるという場合もある、というのが現実の甘くないところでしょうか……。 難しいだけに、この自分で作った模倣の壁を乗り越えてどんどん先に進めるといいですね!
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